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検索対象: 現代日本の文学 Ⅱ― 9 司馬 遼太郎 集

現代日本の文学 Ⅱ― 9 司馬 遼太郎 集から 462件ヒットしました。

現代日本の文学 Ⅱ― 9 司馬 遼太郎 集


お う じ よ う よ う ー う え し ん そ う ず げ ん し ん ろ 、 つ 恵 心 僧 都 源 信 が 『 往 生 要 集 』 で 、 極 楽 浄 土 に 対 し て 地 京 都 の 町 に は 、 地 蔵 さ ん が 実 に 多 い 。 ど の 町 内 に も 獄 、 餓 鬼 、 畜 生 、 、 人 間 、 天 上 の 六 道 世 界 を 説 い 地 蔵 さ ん が 祭 ら れ 、 い つ も 新 し い 花 が 絶 え な い 。 た こ と か ら 、 庶 民 の あ い だ に 地 獄 、 極 楽 の 思 想 、 六 道 な か 工 う く ち ん 、 ) う じ の 地 蔵 盆 は も ち ろ ん 、 毎 月 二 十 四 日 の 縁 日 ご と に お 祭 ま い り の 信 仰 が ひ ろ ま っ た 。 中 京 区 の 珍 皇 寺 は い ま も り す る 町 内 も い ま な お 多 い 「 六 道 さ ん 」 と 親 し ま れ 、 本 堂 前 を 六 道 の 辻 と 呼 ん で 、 ・ つ ・ ら ば ・ ル 田 中 緑 紅 『 京 の お 地 蔵 さ ん 』 に あ げ ら れ て い る 有 名 石 地 蔵 が な ら び 、 盂 蘭 盆 に は 京 の 人 た ち は こ こ に 集 ま し さ フ り よ う な 地 蔵 だ け で も 百 五 十 体 を 越 え る が 、 そ れ ぞ れ に 親 愛 っ て あ の 世 か ら 精 霊 を 呼 び 迎 え る 習 俗 が い ま も つ づ い 感 の あ る 名 が つ け ら れ て い る の も 、 地 蔵 信 仰 が い か に て い る 。 そ こ が 冥 途 へ の 通 路 だ と い う の で 、 寺 で は 帰 っ て く る 精 霊 を 迎 え る 鐘 を 打 ち 鳴 ら す 。 京 の 庶 民 に 深 く 広 く し み わ た っ て い た か と い う 事 実 を あ ら わ し て い る 。 た と え ば 、 あ こ や 地 蔵 、 汗 出 し 地 蔵 、 こ よ る 地 極 、 極 楽 の 思 六 地 蔵 信 仰 も そ う し た 六 道 説 ー 跡 追 い 地 蔵 、 油 掛 け 地 蔵 、 雨 乞 い 地 蔵 、 洗 い 地 蔵 、 雨 オ 想 に 基 づ い て い る 。 地 蔵 は 六 道 世 界 で 苦 し む 亡 者 を 救 止 地 蔵 、 い ば 地 蔵 、 引 導 地 蔵 、 い 地 蔵 、 お 首 地 蔵 、 う た め に 六 体 の 姿 に 分 身 し て あ ら わ れ る と い う も の だ 。 く ぎ ぶ ん し 親 恋 い 地 蔵 、 髪 掛 け 県 釘 抜 き 地 蔵 、 草 が み 地 蔵 、 も と は そ ろ っ て 祭 ら れ た ら し い が 、 の ち に 分 祀 さ れ る よ ね せ き そ ら ま め よ 、 つ に な っ た の で 、 そ れ を 巡 礼 す る 風 習 が お こ り 、 こ 草 よ け 地 蔵 、 鯉 地 蔵 、 米 地 蔵 、 咳 地 蔵 、 空 豆 地 蔵 、 蛸 ど ろ あ し 地 蔵 、 乳 房 地 蔵 、 土 止 め 県 牛 引 き 地 蔵 、 泥 足 地 蔵 、 れ を 六 地 蔵 巡 り と い う の で あ る 。 さ ら に 六 地 蔵 巡 り と 掛 け 地 蔵 、 歯 形 地 蔵 、 腹 帯 地 蔵 、 人 噬 い 地 蔵 、 槲 返 い う だ け で な く 、 四 十 八 か 所 地 蔵 廴 巛 り 、 二 十 四 か 所 巡 し 地 蔵 、 夢 見 地 蔵 、 夜 泣 き 地 蔵 : : : と い っ た 具 合 で あ 寺 町 三 十 六 か 所 巡 り と い っ た 地 蔵 巡 礼 が 、 京 都 で る 。 こ れ ら の 愛 称 を 一 覧 す る だ け で 、 地 蔵 さ ん が 庶 民 は 近 世 を つ う し て お こ な わ れ た 。 の 生 活 に 密 着 し 、 そ の 願 い や 感 情 を 託 さ れ て い た こ と 六 地 蔵 の 数 え 方 は 、 時 代 に よ っ て 異 同 が あ る 。 『 京 が わ か る 。 そ う し た 地 蔵 信 仰 は 中 世 に お こ り 、 室 町 期 都 の 歴 史 』 第 三 巻 に よ れ ば 、 室 町 時 代 、 普 通 は 高 西 寺 ま う と う ざ ん ま い い ん つ ま り 『 妖 怪 』 の 時 代 に 盛 ん に な り 、 近 世 に 引 き 継 が ( 西 院 の 高 山 寺 ) 、 宝 幢 三 昧 院 ( ) 、 矢 田 寺 、 星 光 れ た も の で あ る 。 寺 、 清 和 院 、 地 蔵 院 を さ し た が 、 末 期 に は 桂 地 蔵 な ど 六 地 蔵 信 仰 が 成 立 し た の も 室 町 時 代 末 期 で あ ろ う 。 新 興 の 地 蔵 が あ ら わ れ た と い う 。 現 在 の 六 地 蔵 は そ の や み あ ま ご

現代日本の文学 Ⅱ― 9 司馬 遼太郎 集


右 昭 和 四 十 五 年 「 近 代 説 話 」 の 同 人 と 会 し て 。 左 永 井 路 子 ( 名 古 屋 で 。 撮 影 ・ 伊 藤 桂 一 ) 1 昭 和 四 十 四 年 、 勝 新 太 郎 と た と え ば 「 花 神 」 で あ る 。 わ た し は こ の 作 を も っ と ま す じ ろ う も 好 む 。 大 村 益 次 郎 と い う 維 新 志 士 の な か で も っ と も 知 ら れ て い な い じ し つ こ の 作 者 が 書 い た よ う に 益 1 一 1 一 口 / / ・ ( 次 郎 こ と 村 田 蔵 は 志 士 で は な か 0 た ー ー 人 物 を 解 売 し て 一 篇 の 小 説 に も っ て い く に つ い て 、 シ ー ポ ル ト の 娘 ィ ネ と の あ い だ の 恋 の 所 在 を 、 司 馬 は 、 大 阪 大 学 の 藤 野 直 三 郎 か ら 聞 き 、 そ れ に 密 着 す る こ と で こ の 一 作 を な し た 。 そ う で な け れ ば ナ マ 身 と し て は 煙 の よ う に そ の 人 生 が 淡 い 蔵 六 の 物 語 は な ら な か っ た 。 そ の こ と へ の 密 着 と わ た し が い う と こ ろ を 理 解 し て も ら 、 つ に は 、 実 例 を あ げ る よ り ほ か は な い で あ ろ 、 フ 。 女 な こ と に な っ た 。 こ の 夜 、 亥 ノ 刻 ( 午 前 十 時 ) を 告 げ る 鐘 を き き つ つ 、 蔵 六 は 限 っ た 。 自 分 が い ま 振 舞 い つ つ あ る こ と に 、 の で わ れ な が ら お ど ろ い て し ま っ て い た 。 ( な ん と い う こ と だ ) を ィ ネ が 、 蔵 六 の 腕 の 中 に い る 。 そ の か ほ そ い 肩 を 〕 第 。 街 伯 蔵 六 は 抱 い て し ま っ て い る の で あ る , 画 こ の 、 妙 な こ と に な っ た 、 な ん と い う こ と だ 、 は 作 せ り ふ 7 頁 中 の 蔵 六 の 科 白 な の か 作 者 の 科 白 な の か 。 双 方 で あ る 。 -4 / ノ / 和 で そ こ が 密 着 と い う 第 一 で あ る 。 第 一 一 は 、 つ い で イ ネ と 457

現代日本の文学 Ⅱ― 9 司馬 遼太郎 集


438 こ と が で き た の は ど う や ら そ れ ら し く 思 い ま し て 、 そ れ で 竜 馬 を 本 読 物 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 新 選 組 血 風 録 』 ( 中 央 公 論 社 ) を 、 五 月 、 格 的 に 調 べ て み よ う と 思 い は じ め た ん で す 》 。 八 月 、 「 理 心 流 異 聞 」 『 燃 え よ 剣 ( 完 結 篇 ) 』 ( 文 藝 春 秋 新 社 ) を 刊 行 。 六 月 、 「 侠 客 万 助 珍 ( 「 文 芸 朝 日 」 ) 、 九 月 、 「 花 房 助 兵 衛 」 ( 「 小 説 新 潮 」 ) 、 「 奇 妙 な 剣 客 」 談 」 ( 「 オ ー ル 読 物 」 ) 、 七 月 、 「 喧 草 雲 」 ( 「 小 説 新 潮 」 ) 、 「 関 ヶ 原 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) 、 十 月 、 「 お れ は 権 現 」 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 ) を 発 表 。 ( 「 週 刊 サ ン ケ イ 」 に 連 載 ↓ 四 十 一 年 八 月 ) を 発 表 。 同 月 、 『 暗 殺 』 同 月 、 『 古 寺 炎 上 』 ( 角 川 書 店 ) を 刊 行 。 十 一 月 、 「 燃 え よ 剣 」 ( 「 週 刊 映 画 化 ( 篠 田 正 浩 監 督 ) 。 『 鬼 謀 の 人 』 ( 作 品 集 ・ 新 潮 社 ) を 刊 行 。 文 春 」 に 連 載 ↓ 三 十 九 年 三 月 ) を 発 表 。 同 月 、 『 真 説 宮 本 武 蔵 』 ( 作 十 月 、 「 天 明 の 絵 師 」 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 ) 、 「 愛 染 明 王 」 ( 「 小 説 現 代 」 ) 、 品 集 ・ 文 藝 春 秋 新 社 ) を 、 十 二 月 、 『 風 神 の 門 』 ( 新 潮 社 ) を 刊 行 。 十 一 月 、 「 達 の 黒 船 」 ( 「 日 本 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 竜 馬 が ゆ く ( 狂 ひ じ か た と し ぞ , こ の 年 、 土 方 歳 三 の 故 郷 ・ 武 州 多 摩 の 地 を し ば し ば 訪 ね る 。 瀾 篇 ) 』 ( 文 藝 春 秋 新 社 ) を 刊 行 。 十 二 月 、 「 酔 っ て 候 」 ( 「 別 冊 文 藝 昭 和 三 十 八 年 ( 一 九 六 = l) 四 十 歳 春 秋 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 尻 啖 え 孫 市 』 ( 講 談 社 ) を 刊 行 。 こ の 年 、 一 月 、 「 幕 末 暗 殺 史 」 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 に 連 載 ↓ 十 一 一 月 。 の ち 『 幕 末 』 高 知 を 初 め 長 崎 、 北 陸 、 北 海 道 等 を 取 材 旅 行 。 と 改 題 ) 、 = 一 月 、 「 割 0 て 、 城 を 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) 、 五 月 「 の 昭 和 四 十 年 ( 一 九 六 五 ) 四 十 二 歳 ろ せ つ 剣 客 」 ( 「 小 説 現 代 」 ) 、 六 月 、 「 軍 師 一 一 人 」 ( 「 小 説 新 潮 」 ) 、 「 千 葉 周 作 」 一 月 、 「 蘆 雪 を 殺 す 」 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 ) 、 「 北 斗 の 人 」 ( 「 週 刊 現 代 」 に し り く ら ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) 、 七 月 、 「 尻 啖 え 孫 市 」 ( 「 週 刊 読 売 」 連 、 載 ↓ 三 十 連 載 ↓ 十 月 ) 、 一 一 月 、 「 き つ ね 馬 」 ( 文 藝 春 秋 」 ) 、 三 月 、 「 加 茂 の 水 」 九 年 七 月 ) を 発 表 。 同 月 、 『 竜 馬 が ゆ く ( 立 志 篇 ) 』 ( 文 藝 春 秋 新 社 ) ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 ) を 発 表 。 同 月 、 『 酔 っ て 候 』 ( 作 品 集 ・ 文 藝 春 秋 け ん ら ん に わ か な に わ ゆ う き ょ , を 刊 行 。 八 月 、 「 国 盗 り 物 語 」 ( 「 サ ン デ 1 毎 日 」 に 連 載 ↓ 四 十 一 年 新 社 ) を 刊 行 。 五 月 、 「 絢 爛 た る 大 」 ( 「 小 説 新 潮 」 ) 、 「 俄 ー 浪 華 遊 侠 六 月 ) 、 十 月 、 「 大 阪 物 語 」 ( 「 婦 人 生 活 」 に 連 載 ↓ 三 十 九 年 九 月 ) 、 伝 ー 」 ( 「 報 知 新 聞 」 に 連 載 ↓ 四 十 一 年 四 月 ) 、 六 月 、 「 〈 の 若 旦 那 」 「 功 名 が 辻 」 ( 地 方 紙 に 連 載 ↓ 四 十 年 一 月 ) を 発 表 。 同 月 、 『 花 房 助 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 ) に 発 表 。 同 月 、 『 功 名 が 辻 ( 上 ) 』 ( 文 藝 春 秋 新 社 ) 兵 衛 』 ( 作 品 集 ・ 桃 源 社 ) を 刊 行 。 十 二 「 英 雄 児 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 を 、 七 月 、 『 功 名 が 辻 ( 下 ) 』 ( 前 同 ) を 、 八 月 、 『 竜 馬 が ゆ く ( 怒 濤 秋 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 幕 末 』 ( 文 藝 春 秋 新 社 ) を 刊 行 。 篇 ) 』 ( 前 同 ) を 刊 行 。 九 月 、 「 王 城 の 護 衛 者 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) 、 昭 和 三 十 九 年 ( 一 九 六 四 ) 四 十 一 歳 「 ア ー ム ス ト ロ ン グ 砲 」 ( 「 小 説 現 代 」 ) 、 十 月 、 「 十 一 番 目 の 志 士 」 め か け 一 月 、 「 斬 っ て は み た が 」 ( 「 小 説 現 代 」 ) を 発 表 。 一 一 月 、 読 売 テ レ ビ ( 「 週 刊 文 春 」 に 連 載 ↓ 四 十 一 年 十 一 月 ) 、 「 嬖 女 守 り 」 ( 「 オ 1 ル 読 で 「 日 本 の 文 学 ー 平 家 物 語 」 を 連 続 講 蕘 「 鬼 謀 の 人 」 ( 「 小 説 新 潮 」 ) 、 物 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 城 を と る 話 』 ( 光 文 社 ) を 、 十 一 月 、 『 国 盗 り 「 慶 応 長 崎 事 件 」 ( 「 オ ー ル 読 物 」 ) 、 「 百 年 の 単 位 」 ( 「 中 央 公 論 」 ) を 物 語 ( 斎 藤 道 三 ・ 前 編 ) 』 ( 新 潮 社 ) 、 『 司 馬 遼 太 郎 選 集 』 ( 全 六 巻 ↓ 発 表 。 同 月 、 『 竜 馬 が ゆ く ( 風 雲 篇 ) 』 ( 文 藝 春 秋 新 社 ) を 刊 行 。 三 四 十 一 年 五 月 ・ 徳 間 書 店 ) を 刊 行 。 月 、 東 大 阪 市 中 小 阪 一 七 三 の 一 二 の 現 住 所 に 移 転 。 「 人 斬 り 以 蔵 」 昭 和 四 十 一 年 ( 一 九 六 六 ) 四 十 三 歳 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 燃 え よ 剣 』 ( 文 藝 春 秋 新 社 ) を 一 月 、 『 北 斗 の 人 』 ( 講 談 社 ) 、 『 国 盗 り 物 語 ( 斎 藤 道 三 ・ 後 編 ) 』 ( 新 刊 行 。 四 月 、 「 五 条 陣 屋 」 ( 「 小 説 新 潮 」 ) 、 「 薩 摩 浄 福 寺 党 」 ( 「 オ 1 ル 潮 社 ) を 刊 一 一 月 、 「 新 史 太 閤 記 」 ( 「 小 説 新 潮 」 に 連 載 ↓ 四 十 三

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433 注 解 三 名 柳 営 将 軍 の 陣 営 。 幕 府 。 三 大 緒 方 洪 庵 の 塾 江 戸 時 代 後 期 、 蘭 学 者 で あ り 医 者 で あ っ た 緒 方 洪 庵 ( 一 八 一 〇 ~ 一 八 六 一 一 l) が 大 坂 に 開 い た 蘭 学 塾 で 、 緒 方 て き て き さ い 塾 、 適 々 斎 塾 、 適 塾 な ど と よ ば れ る 。 大 村 益 次 郎 、 大 鳥 圭 介 、 福 沢 諭 吉 な ど 多 く の 人 材 を 輩 出 さ せ た 。 ち ば ー ・ , さ く 三 北 辰 一 刀 流 千 葉 周 作 を 開 祖 と す る 剣 道 の 流 派 。 三 独 銛 密 教 で 用 い る 仏 具 の 一 つ で 、 鉄 ま た は 銅 製 の 両 端 の と が っ た 棒 。 魔 を 払 う と い う 。 い ん え い 三 究 宝 蔵 院 流 奈 良 興 福 寺 の 中 の 宝 蔵 院 の 僧 、 胤 栄 を 祖 と す る 槍 術 の 一 派 。 さ か い う る し こ , 三 合 春 慶 塗 り 泉 州 堺 の 漆 工 春 慶 に よ っ て は じ め ら れ た 漆 塗 り の 一 法 。 の ち 飛 騨 の 高 山 、 秋 田 の 能 代 な ど で も 盛 ん と な る 。 三 子 / 刻 夜 の 十 一 一 時 。 ル ん じ よ う は 三 会 吉 村 寅 太 郎 一 八 三 七 ~ 一 八 六 三 。 幕 末 尊 驤 派 の 志 士 。 土 佐 て ん ち ゅ う く み 藩 士 で あ っ た が 、 脱 藩 し て 討 幕 の た め の 天 誅 組 を 組 織 し 、 挙 兵 し た が 、 敗 死 し た 。 三 会 遷 化 高 僧 な ど の 死 去 す る こ と 。 じ ぎ さ ん 三 陪 臣 臣 下 の 臣 。 ま た げ ら い の こ と 。 直 参 の 対 。 三 兊 佐 藤 信 淵 正 し く は 「 の ぶ ひ ろ 」 と 読 む 。 一 七 六 九 ~ 一 八 五 〇 。 江 戸 時 代 の 農 政 学 者 。 「 農 政 本 論 」 「 経 済 要 録 」 な ど 農 学 か ら 国 家 の 経 営 に 及 ぶ 著 書 が 多 数 あ る 。 け い ど う 三 九 一 藤 本 鉄 石 系 : : : 藤 本 も 松 本 奎 堂 も と も に 天 誅 組 の 中 心 メ ン た だ よ し 三 九 一 忠 光 一 八 四 三 ~ 一 八 六 四 。 姓 は 中 山 。 大 納 言 中 山 忠 能 の 子 で 、 吉 村 ら に か つ ぎ あ げ ら れ て 天 誅 組 の 総 帥 と な り 兵 を あ げ た が 、 敗 れ て 長 州 に 逃 が れ 、 刺 客 に 殺 さ れ た 。 四 8 版 籍 奉 遠 維 新 政 府 に よ る 中 央 集 権 化 の 一 過 程 で 、 一 入 六 九 ひ だ 年 、 諸 藩 主 が 土 地 ( 版 ) ・ 人 民 ( 籍 ) に 対 す る 支 配 権 を 朝 廷 に 返 上 す る と い う 形 式 を と っ て 、 政 府 の 藩 へ の 統 政 力 を 強 化 し た 。 美 濃 浪 人 四 日 美 濃 浪 人 昭 和 四 十 一 年 十 月 「 別 冊 小 説 現 代 」 に 発 表 さ れ た も の 。 「 資 料 な ど の 中 で 、 た だ 固 有 名 詞 だ け で 登 場 す る 人 物 が あ る 。 そ の 人 物 が 、 ど う い う 経 歴 で ど ん な 性 格 の 、 ま た ど う い う 志 を 抱 い て い た 人 物 な の か 、 な に も わ か ら な い 。 こ の と き ほ ど 気 に な る こ と は な い が 、 し か し ど う に も な ら な い の で 、 捨 て て お く 。 数 年 後 、 別 な 物 を 見 て い る と き 、 ふ と そ れ が ど の 地 方 の う ま れ で あ る と い う こ と が 出 て き た り す る 。 も う そ れ だ け で か れ が 机 の そ ば に 寄 っ て き て く れ た よ う な 感 じ が す る 。 さ ら に 縁 が あ れ ば 、 別 な 目 的 で 書 物 を 見 て い る と き 、 そ の 人 物 に つ い て の こ と が あ り あ り と 書 か れ て い た り す る 場 合 の 感 激 は ど う で あ ろ う 。 君 は こ ん な と こ ろ に い た の か 、 と い う よ う な 、 旧 友 に 十 年 ぶ り で 会 っ た よ う な 、 む し ろ そ れ 以 上 の 感 動 を う け る の で と こ ろ い く た ろ , あ る 。 「 美 濃 浪 人 」 に 書 い た 所 郁 太 郎 と い う 幕 末 に お け る 無 名 の 人 物 も 、 そ う い う 経 過 で 私 の 知 人 に な っ た ひ と で あ る 。 か れ も ん た は 史 上 、 井 上 聞 多 が 重 傷 を 負 っ た と き に に わ か に 出 現 し 、 治 療 し て や る 。 そ れ だ け し か 記 録 さ れ て い な い し 、 歴 史 の な か で た だ 一 度 登 場 し て 、 そ れ だ け で 消 え て ゆ く 。 か れ の 死 後 、 維 新 が え い よ , 誠 立 す る 。 維 新 後 、 栄 耀 の 位 置 に つ い た か れ の 同 志 た ち の う ち 、 子 爵 品 川 弥 一 一 郎 が ふ と か れ を 思 い 出 し 、 『 美 濃 の う ま れ で あ る と き い て い る が 、 そ の 他 の こ と は な に も 知 ら な い 。 い ち ど 調 べ て も ら え ま い か 』 と 、 岐 阜 県 の 知 人 に 手 紙 を 書 き 、 こ の こ と か ら か れ の こ と が 次 第 に あ き ら か に な っ て く る 。 た だ し 、 こ の 品 川 弥 一 一 郎 の 一 件 な ど を 、 私 は な が く 知 ら な か っ た 。 あ る と き そ

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す す ー す 一 下 桂 地 蔵 を は し め 、 笋 治 木 幡 ( 現 在 ・ 伏 見 区 桃 山 町 ) の 大 善 く ら ま ぐ ち ー う ざ ん 寺 、 山 科 の 徳 林 寺 、 鞍 馬 ロ の 上 善 寺 、 周 山 街 道 の 源 光 一 つ の 観 光 コ ー ス に も な 庵 、 印 の 浄 褝 寺 を い っ て い る 。 そ れ ら の 地 蔵 堂 の 位 置 は か な り 動 い た も の も あ る が 、 い す れ も 京 に 集 ま る 主 要 街 道 の 入 り 口 で あ ん の か み る 。 地 蔵 は 災 害 が 他 郷 か ら は い っ て く る の を 防 ぐ 塞 神 の 古 い 土 俗 信 仰 に も 習 合 し た か ら で あ ろ う 。 あ そ ん お の の た が む ら こ の 六 地 蔵 の 縁 起 に は 、 平 安 前 期 の 朝 臣 小 野 篁 の 伝 説 カ つ い て い る 篁 は 大 病 に か か っ て 冥 途 へ ゆ く と 生 身 の 地 蔵 に 会 い 、 苦 し み か ら 救 わ れ よ う と 願 う な ら 自 さ と 分 を 信 仰 す る よ う に 庶 民 に 教 え よ 、 と 諭 さ れ 、 気 が っ く と 生 き 返 っ て い た 。 そ れ で 、 そ の 生 身 の 地 蔵 尊 の 姿 を サ ク ラ の 一 本 彫 り で 六 体 刻 ん で 宇 治 木 幡 の 里 に あ す け た い ら の き よ も り け た 。 そ れ を 平 清 盛 が 六 か 所 に 分 け て 祭 っ た と い う も の で あ る 。 つ い で に い え ば 、 篁 は あ の 世 と 往 復 し た と い う の で 、 珍 皇 寺 に も そ の 木 像 が 祭 ら れ て い る こ 人 じ ゃ く 地 蔵 伝 説 は 『 今 昔 物 語 』 に い ろ い ろ 出 て お り 、 六 地 蔵 だ け で な く 京 の お び た だ し い 地 蔵 に は そ れ ぞ れ 伝 説 か つ い て 愛 称 の 由 来 も そ れ に 語 ら れ て い る が 、 す べ て れ い げ ん た ん が 霊 験 譚 で あ る 。 『 妖 屋 』 の よ う に 石 地 蔵 の 大 群 か 行 進 か つ ほ し 、 巨 大 な 化 け 地 蔵 が 深 夜 の 町 を 闊 歩 す る と い う よ う な の は な い 。 こ れ に つ い て 司 馬 さ ん に 聞 い て み た こ と が あ る 。 地 蔵 が 化 け る 話 を 何 か で 読 ん で 心 を 惹 か れ た じ ん や ま し な

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「 や あ 」 郁 太 郎 が 長 州 藩 邸 を 訪 ね た 日 、 桂 小 五 郎 は 大 坂 に い た 。 と 、 そ の 男 も 応 じ 、 頭 を ベ こ り と さ げ 、 愛 想 よ く 笑 っ た そ の 翌 日 藩 邸 に 帰 り 、 典 医 長 野 昌 英 の 手 紙 を 読 み 、 留 守 中 、 所 郁 太 郎 と い う 美 濃 人 が 訪 ね て 来 な か っ た が 、 そ れ つ き り す れ ち が っ て し ま っ た 。 郁 太 郎 は 、 羞 し く な っ た 。 相 手 は 自 分 を 忘 れ て し ま っ て い る の で あ ろ う 。 と か 。 あ け が た い う よ り 、 あ の 日 の 暁 方 、 か れ が 腹 痛 で 苦 し ん で い た と き と 、 一 座 の 者 に い っ た 。 松 原 音 造 が あ っ と お ど ろ き 、 い ま ぶ た 臉 を 閉 じ き っ て い た よ う に 思 え る 。 そ れ に 部 屋 も ま だ 暗 く 、 き さ つ を 話 し た 。 桂 は そ れ を き い て 苦 い 顔 を し た 。 じ ゅ く 郁 太 郎 の 顔 を 見 る よ う な 余 裕 は な か っ た の で あ ろ う 。 「 そ れ が 、 緒 方 塾 の 俊 才 を 遇 す る み ち か 」 て い ち ょ う ち ゅ う げ ん 門 わ き に い る 老 中 間 に 、 あ の 方 は ど な た で す 、 と 鄭 重 に そ の ひ と こ と で 、 藩 邸 に 小 さ な さ わ ぎ が お こ っ た 。 不 覚 き く と 、 中 間 は 、 に も 、 居 所 さ え 確 か め て い な い と い う 。 「 志 道 聞 多 殿 」 「 た だ の 浪 人 で は な い 。 帷 幕 に 参 加 し て も ら え る よ う 、 当 と 、 無 愛 想 に 答 え た 。 郁 太 郎 も 、 そ の 名 を き い て い る 。 藩 か ら 辞 を ひ く く し て 頼 む べ き 仁 だ 。 そ れ が わ か ら ぬ の か 」 長 州 藩 過 激 派 の な か で も も っ と も 重 要 な 一 人 で 、 藩 主 の 覚 長 州 藩 に 人 材 を あ つ め よ う と い う 点 で 、 桂 ほ ど 熱 心 な 男 た か す ぎ し ん さ く ぞ う ろ く ら ん が く え が 抜 群 で あ り 、 高 杉 晋 作 や 桂 小 五 郎 が 立 案 し た こ と を 藩 は い な か っ た 。 や は り 緒 方 洪 庵 塾 の 出 身 の 闌 学 者 村 田 蔵 六 主 に と り つ ぐ に は 聞 多 の ロ を 借 り る の が も っ と も い い と い を 、 懸 命 に 説 い て 藩 に 仕 官 さ せ た の も こ の 桂 で あ っ た 。 村 ま す じ ろ う わ れ て い た 。 田 は の ち に 大 村 益 次 郎 と 名 乗 り 、 長 州 陸 軍 の 総 指 揮 者 に な ( あ の 男 が 、 そ う か ) る の だ が 、 そ の 出 身 は 長 州 人 で は あ っ た が 武 士 で は な く 、 郁 太 郎 は 自 宅 に 帰 っ た が 、 気 持 が 沈 み 、 数 日 ひ き こ も っ 郁 太 郎 同 様 、 領 内 の 百 姓 医 で あ っ た 。 え ぞ ち は こ だ て て い た 。 い っ そ 蝦 夷 地 の 函 館 で 開 業 し 、 北 辺 の 開 拓 に 骨 を 「 そ の 仁 は 、 美 濃 の 人 か 」 人 う ず め よ う か と 思 っ た の は 、 こ の 時 期 で あ っ た 。 も っ と も と い っ た の は 、 井 上 聞 多 で あ る 。 聞 多 に も 思 い あ た る ふ 浪 そ の こ と に 定 見 が あ る わ け で は な く 、 こ の 北 辺 の 防 衛 と 開 し が あ り 、 「 こ れ は 草 の 根 を わ け て も さ が さ ね ば な ら ぬ 」 拓 は 、 こ の 時 期 、 浪 人 志 士 た ち の あ い だ で や か ま し く 論 議 と い っ た 。 美 さ れ て い た 話 題 で 、 郁 太 郎 は 多 少 そ れ に 影 響 さ れ て い た に 「 知 人 の 名 を あ げ て い な か っ た か 」 お う み 四 す ぎ な い 。 「 左 様 。 京 の 呉 服 商 で 淡 海 弘 と い う 人 物 と は 懇 意 で あ る と 申 さ れ て い ま し た が 」 は ず か じ ん

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三 月 の 空 襲 で 大 阪 の 家 は 焼 失 、 母 の 実 家 に 復 員 す る 。 ま ず 訪 れ た の 熟 読 し た 作 品 と い う も の が あ り ま せ ん で し た 。 だ か ら か っ て 文 学 青 は 、 難 波 の 精 華 小 学 校 に 間 借 り し て い た 市 立 図 墅 だ 0 た 。 年 の 仲 間 に 入 る こ と を は ば か っ て い た の か も し れ ま せ ん 。 小 説 を 書 昭 和 ニ 十 一 年 ( 一 九 四 六 ) 一 一 十 三 歳 く よ う に な っ て か ら 、 こ れ が 小 さ な 劣 等 感 に な っ て い ま し た 。 あ る 京 阪 地 方 の 新 興 紙 、 新 日 本 新 聞 社 ( 京 都 本 社 ) に 入 社 。 と き 開 き な お っ て し ま っ て 、 好 き な 作 家 が あ れ ば 小 説 な ど と い う 面 昭 和 ニ 十 三 年 ( 一 九 四 八 ) 一 一 十 五 歳 倒 な も の を 書 か な く て も 読 み 手 に ま わ れ ば い い の で 、 わ ざ わ ざ 小 説 か っ と う 重 役 間 の 葛 藤 に よ り 新 日 本 新 聞 社 が 倒 産 し 、 五 月 、 産 経 新 聞 社 ( 京 を 書 く の は 、 自 分 が 最 初 の 読 者 に な る た め の も の だ 、 小 説 を 書 く 目 都 支 局 ) に 入 社 、 大 学 と 宗 教 を 担 当 す る 。 的 は そ れ だ け に 尽 き る 、 と お も う よ う に な り ま し た 。 こ の こ と は 、 昭 和 ニ 十 七 年 ( 一 九 五 一 l) 一 一 十 九 歳 い ま で も 変 り ま せ ん 。 自 分 が 読 み た い も の を 書 く 、 つ ま り 自 分 に 似 七 月 、 大 阪 本 社 の 地 方 部 に 転 勤 。 た 精 神 体 質 の 人 が 、 一 億 人 の 日 本 語 人 口 の な か に 一 一 三 千 人 は い る だ 昭 和 ニ 十 八 年 ( 一 九 五 = l) 三 十 歳 ろ う 、 自 分 お よ び そ の 人 た ち を 読 者 に し て い け ば い い 、 そ れ 以 外 の 読 者 を 考 え な い 、 と 思 い 、 そ こ か ら ハ ミ 出 す ま い と 思 っ て い ま す 。 五 月 、 文 化 部 勤 務 と な り 、 文 学 ・ 美 術 を 担 当 す る 。 と そ っ て ん 昭 和 三 十 一 年 ( 一 九 五 六 ) 三 十 三 歳 十 二 月 、 同 誌 二 号 に 「 兜 率 天 の 巡 礼 」 を 発 表 。 四 月 、 「 ベ ル シ ャ の 幻 術 師 」 で 第 八 回 講 談 倶 楽 部 賞 ( 講 談 社 ) を 受 賞 。 昭 年 三 十 三 年 ( 一 九 五 入 ) 三 十 五 歳 筆 名 は 『 史 記 』 の 司 馬 遷 に 遼 か に 及 ば ぬ と い う 意 味 で 司 馬 遼 太 郎 と 四 月 、 日 刊 宗 教 新 聞 「 中 外 日 報 」 に 「 梟 の い る 都 城 」 ( の ち 『 梟 の 付 け た 。 小 説 を 書 く こ と を す す め た の は 寺 内 大 吉 氏 で あ っ た 。 ^ 彼 城 』 と 改 題 ) を 連 載 ( ↓ 三 十 四 年 一 一 月 ) 。 同 紙 の 編 集 局 長 で 、 か っ て は 親 切 に も 懸 賞 小 説 の 応 募 規 程 を ひ と そ ろ い 切 り ぬ い て 送 っ て く れ 新 日 本 新 聞 時 代 の 同 僚 で あ っ た 青 木 幸 次 郎 氏 の す す め に よ る 。 ^ 忍 ま し た 。 そ の な か で 一 番 早 い 〆 切 り が ″ 講 談 供 楽 部 賞 ″ で 、 「 ・ ヘ ル 術 使 い と い う 思 い き っ て 大 衆 的 な 人 間 た ち を 自 分 の 考 え て い る よ う シ ャ の 幻 術 師 」 は 二 晩 で 書 き あ げ た 。 こ れ が 小 説 を 書 い た は じ め で な イ マ ジ ネ 1 シ ョ ン の 世 界 で 書 こ う と 書 き 始 め た の で す 。 さ し 絵 も し た 》 。 五 月 、 文 化 部 次 長 と な る 。 こ の 年 、 寺 内 大 吉 氏 の 提 案 に よ な い 新 聞 小 説 で し た 。 書 き だ す と 、 わ り に お も し ろ い 小 説 に な っ て た け お り 同 人 雑 誌 「 近 代 説 話 」 刊 行 会 を 作 る 。 同 人 誌 発 行 は 藤 沢 桓 夫 氏 の ゆ く 。 自 分 と い う 作 家 は こ う い う タ イ 。 フ の 小 説 家 な の か と 自 己 発 見 こ ん と う こ , 援 助 と 今 東 光 氏 、 源 氏 鶏 太 氏 、 海 音 寺 潮 五 郎 氏 、 北 町 一 郎 氏 ら の 激 し ま し た >0 七 月 、 『 白 い 歓 喜 天 』 ( 作 品 集 ・ 凡 凡 社 ) を 刊 行 。 励 を 受 け て 出 発 。 同 人 に は 寺 内 氏 、 司 馬 の ほ か 、 石 浜 恒 夫 氏 、 清 水 昭 和 三 十 四 年 ( 一 九 五 九 ) 三 十 六 歳 正 二 郎 氏 、 堤 清 一 一 ( 辻 井 喬 ) 氏 、 黒 岩 重 吾 氏 、 伊 滕 桂 一 氏 、 永 井 路 一 月 、 産 経 新 聞 文 化 部 記 者 松 見 み ど り と 結 婚 。 四 月 、 「 大 坂 侍 」 ( 「 面 子 氏 ら が い た 。 白 倶 楽 部 」 ) 、 七 月 、 「 泥 棒 名 人 」 ( 「 小 説 倶 楽 部 」 ) を 発 表 。 九 月 、 『 梟 昭 和 三 十 ニ 年 ( 一 九 五 七 ) 三 十 四 歳 の 城 』 ( 講 談 社 ) を 刊 行 。 ^ こ の 小 説 を 講 談 社 が 出 版 し て く れ た の き よ う ど 五 月 、 「 近 代 説 話 」 を 創 刊 、 「 戈 壁 の 匈 奴 」 を 発 表 。 ^ お か し な こ と は う れ し か っ た 。 な に し ろ 無 名 で し た か ら 一 版 し か 出 な か っ た と お で す け れ ど も 、 小 説 好 き の 少 年 期 を 送 っ て い な が ら 、 好 き な 作 家 や も い ま す が 、 ど う に か 売 切 れ た と 聞 い て 、 非 常 に う れ し か っ た で す は る

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こ ん ど 京 都 を 歩 き な が ら 、 司 馬 さ ん と 出 会 っ た こ ろ し か し 、 『 妖 屋 』 に 限 っ て は 改 め て 京 都 巡 り も せ ず 、 の こ と も 自 然 に 思 い 出 さ れ た 。 そ し て 、 『 妖 怪 』 の な 戦 後 六 年 余 の 京 都 時 代 の 知 見 に た よ り 、 所 蔵 の 『 洛 中 貶 か に 描 か れ た 京 都 地 図 は 、 そ の 時 分 す っ か り 司 馬 さ ん 洛 外 屏 風 』 の う え に 幻 想 を 展 開 さ せ た の で は あ る ま い の 記 億 に 蓄 え ら れ た も の で あ る と 考 え た 。 地 図 だ け で な く 、 想 念 の 大 半 も 、 で あ る 。 京 都 か ら 帰 っ て 司 馬 さ こ れ も 京 都 か ら 帰 っ て 電 話 で た す ね て み る と 、 果 た み ぶ て ら ね ん ぶ つ え ん に 電 話 で 聞 い て み る と 、 た と え ば 壬 生 寺 も 念 仏 会 を し て そ う で あ っ た 。 屏 風 に 描 か れ て い る 風 俗 は 明 ら か 見 る た め に 何 日 も か よ い つ め 、 も ち ろ ん 焼 け た 地 蔵 に 室 町 時 代 末 期 の も の と 思 わ れ 、 虫 眼 鏡 で 仔 細 に め 、 お ん ね ん 薩 像 も 熟 知 し 、 樹 木 も な く て 、 白 け た 怨 念 が 積 み 重 な 『 妖 怪 』 の 地 理 、 風 俗 は す べ て こ れ に 拠 っ た と い う 。 わ っ て い る よ う な 寺 の 印 象 は い ま も 強 い と い う 。 そ れ が た し は そ の 屏 風 を も う 一 度 見 た い と 思 っ て そ れ を も ら す ぐ に 『 妖 怪 』 の 地 蔵 幻 化 で 形 象 化 さ れ た と は い わ な す と 、 い ま は 手 放 し て 無 い 、 と い う い が 、 こ の 小 説 の 底 に は 京 都 時 代 の 体 験 が 重 く 沈 海 し 「 あ の 屏 風 好 き で 、 あ あ い う 美 術 品 を 個 人 が 死 蔵 す べ は っ こ う て お り 、 そ れ が 発 酵 し た と は い え る だ ろ う 。 き で は な い と 限 っ た の で 展 覧 会 に も 出 し た し 、 ク ワ の 「 ら く ち す い ぶ ん 以 前 、 京 都 博 物 館 で 洛 中 洛 外 屏 風 展 」 を 木 で ガ ク プ チ を こ し ら え て も ら っ て ガ ラ ス 張 り に し た 。 見 た と き 、 そ の な か に す っ き り し た 一 点 が あ り 、 「 司 す る と 、 と て も 大 き う な っ て 家 に は い ら ん の だ 。 そ の 馬 遼 太 郎 蔵 」 と あ っ た の で 驚 い た こ と が あ る 。 名 所 、 う ち 、 信 頼 で き る 愛 好 家 か ら 譲 っ て ほ し い と い わ れ た 風 俗 の 描 き こ み が 過 多 で な く 、 描 法 か ら も 江 戸 時 代 初 ん で 、 渡 り に 船 と 買 い 値 で お 渡 し し た 。 ば く に は 大 体 期 の も の と 思 わ れ た 。 細 部 は 忘 れ た け れ ど 、 の ち の 賑 あ あ い う 美 術 品 を 身 辺 に 留 め て お く と い う よ う な 執 着 や か な 極 彩 色 の 屏 風 に く ら べ る と さ び し い ほ ど の 余 白 、 い は な い ん だ 」 が あ っ た よ 、 つ に 記 慮 し て い る そ ん な わ け で 屏 風 を 一 見 で き な く な っ た の は 残 念 で こ ん ど の 京 都 歩 き の 最 中 、 そ の 屏 風 が 突 然 思 い 出 さ あ っ た が 、 そ の 司 馬 さ ん の 答 え ぶ り に も い た ず ら に 物 れ た 。 『 妖 怪 』 の 地 図 、 風 俗 は ほ と ん ど あ の 屏 風 に よ に 執 着 し な い 、 ま し て 偏 執 せ す 、 さ ら り と 水 の よ う に っ て 描 か れ て い る の で は な い か ? 司 馬 さ ん は 小 説 を 物 事 を め て ゆ く 性 格 が あ ら わ れ て い て お も し ろ く 思 書 く と き 、 き ま っ て 舞 台 に 選 ん だ 土 地 を た す ね て い る 。 え 、 何 事 に も 偏 執 せ す に は い ら れ な い 自 分 が 省 み ら れ さ っ

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ね 。 自 分 と し て は 結 婚 記 念 の よ う な 作 品 で し た 》 。 十 一 一 月 、 入 尾 市 ( 講 談 社 ) を 刊 行 。 六 月 、 「 風 神 の 門 」 ( 「 示 タ イ ム ズ 」 に 連 載 ↓ 三 の 両 親 宅 よ り 大 阪 市 西 区 西 長 堀 の マ ン モ ス ・ ア パ 1 ト 十 階 一 一 十 号 に 十 七 年 四 月 ) 、 七 月 、 「 売 ろ う 物 語 」 ( 「 小 説 新 潮 」 ) 、 「 言 い 触 ら し 団 右 衛 門 」 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 ) を 発 表 。 八 月 、 『 戦 雲 の 夢 』 ( 講 談 社 ) を 転 居 。 同 月 、 『 大 坂 侍 』 ( 作 品 集 ・ 東 方 社 ) を 刊 行 。 昭 和 三 十 五 年 ( 一 九 六 〇 ) 三 十 七 歳 刊 行 。 十 月 、 「 お お 、 大 砲 」 ( 「 小 説 中 央 公 論 」 ) 、 「 女 は 遊 べ 物 語 」 ( 「 講 一 月 、 『 梟 の 城 』 で 第 四 十 一 一 回 直 木 賞 を 受 賞 。 《 小 説 を 書 い て い る と 談 倶 楽 部 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 お お 、 大 砲 』 ( 作 品 集 ・ 中 央 公 論 社 ) を い う こ と は 、 な ん だ か は ず か し い こ と の よ う に 思 え て 、 社 内 の 人 に 刊 行 。 十 一 月 、 「 伊 賀 の 四 鬼 」 ( 「 サ ン デ 1 毎 日 」 ) 、 「 岩 見 重 太 郎 の 系 も 話 し ま せ ん で し た か ら 、 新 聞 社 内 で は ほ と ん ど 知 ら れ て い ま せ ん 図 」 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 ) 、 「 古 寺 炎 上 」 ( 「 週 刊 サ ン ケ イ 」 連 載 ↓ 三 十 七 で し た 。 直 木 賞 の ニ = 1 ス が 入 っ た と き 、 部 内 の 者 が 変 な 顔 を し て 年 一 月 ) 、 十 二 月 、 「 侍 太 将 の 胸 毛 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) 、 「 雨 お ん な 」 い ま し た 。 困 っ た こ と に 、 私 は ″ 直 木 賞 作 家 〃 を 紹 介 す る 人 物 紹 介 ( 「 講 談 倶 楽 部 」 ) 、 「 魔 女 の 時 間 」 ( 「 主 婦 の 友 」 連 載 ↓ 三 十 七 年 十 一 欄 に つ い て 、 部 下 に 指 示 を 与 え ね ば な ら な い 立 場 に あ っ て 、 こ れ に 月 ) を 発 表 。 同 月 、 『 果 心 居 士 の 幻 術 』 ( 作 品 集 ・ 新 潮 社 ) を 刊 行 。 は 閉 ロ し ま し た 。 Z 君 と い う 後 輩 が ま と め て く れ た 原 稿 を 見 て み る 三 十 九 歳 昭 和 三 十 七 年 ( 一 九 六 一 l) と 、 ば か に ほ め て あ り ま し た の で 、 そ の あ た り を 削 っ て い る う ち に 、 一 月 、 「 京 の 剣 客 」 ( 「 別 冊 週 刊 朝 日 」 ) 、 三 月 、 「 越 後 の 刀 」 ( 「 別 冊 文 ほ と ん ど 換 骨 奪 胎 し て 、 自 分 の 記 事 の よ う に な っ て し ま い 、 ど う に 藝 春 秋 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 一 夜 官 女 』 ( 作 品 集 ・ 東 方 社 ) を 刊 行 。 も 弱 0 て し ま い ま し た 》 。 文 化 部 長 と な る 。 同 月 、 「 上 方 武 士 道 」 四 月 、 「 大 夫 殿 坂 」 ( 「 別 冊 小 説 新 潮 」 ) 、 「 真 説 宮 本 武 蔵 」 ( 「 オ ー ル 読 ( 「 週 刊 公 論 」 連 載 ↓ 八 月 ) 、 三 月 、 「 渕 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) 、 物 」 ) 、 「 覚 兵 衛 物 語 」 ( 「 講 談 倶 楽 部 」 ) 、 五 月 、 「 信 九 郎 物 語 」 ( 「 小 説 新 「 風 の 武 士 」 ( 「 週 刊 サ ン ケ イ 」 連 載 ↓ 三 十 六 年 一 一 月 ) 、 六 月 、 「 け ろ 潮 」 ) 、 「 新 選 組 血 風 録 」 ( 「 小 説 中 央 公 論 」 に 連 載 ↓ 三 十 八 年 十 一 一 月 ) 、 ど , と ん り よ う ま り の 道 頓 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) 、 七 月 、 「 最 後 の 伊 賀 者 」 ( 「 オ 1 ル 読 六 月 、 「 竜 馬 が ゆ く 」 ( 「 産 経 新 聞 」 タ 刊 連 載 ↓ 四 十 一 年 五 月 ) を 発 表 。 ふ た ば ら 物 」 ) 、 「 豚 と 薔 薇 」 ( 「 週 刊 文 春 」 連 載 ↓ 八 月 ) 、 八 月 、 「 戦 雲 の 夢 」 ^ こ の こ ろ よ り 数 年 前 の こ と で す が 、 君 と い う 後 輩 が 遊 び に き ま ( 「 講 談 倶 楽 部 」 連 載 ↓ 三 十 六 年 七 月 ) 、 十 一 月 、 「 壬 生 狂 言 の 夜 」 し て 、 こ れ は 土 佐 う ま れ な ん で す 。 雑 談 し て い る う ち に 、 君 が 、 ( 「 別 冊 週 刊 朝 日 」 ) を 発 表 。 同 月 、 『 上 方 武 士 道 』 ( 中 央 公 論 社 ) 、 『 最 い っ か 坂 本 竜 馬 を 書 い て も ら い た い も の で す な 、 と い い ま し た 。 私 後 の 伊 賀 者 』 ( 作 品 集 ・ 文 藝 春 秋 新 社 ) 、 『 豚 と 薔 薇 』 ( 東 方 社 ) を 刊 は 竜 馬 に つ い て は あ ま り 知 る と こ ろ が な か っ た も の で す か ら 聞 き 流 ど お う か じ 行 。 十 一 一 月 、 「 牛 黄 加 持 」 ( 「 別 冊 文 藝 春 秋 」 ) を 発 表 。 し て お り ま し た と こ ろ 、 人 間 の 日 常 に は 妙 な こ と が あ る も の で す ね 、 昭 和 三 十 六 年 ( 一 九 六 一 ) 三 十 八 歳 他 の 資 料 を 調 ・ ヘ て い る と 、 ひ ょ っ こ り 坂 本 竜 馬 と い う 活 字 が 出 て く 一 月 、 「 風 の 武 士 」 に 続 い て 、 「 上 方 武 士 道 」 が 関 西 テ レ ビ で 連 続 放 る の で す 。 そ れ も 連 日 で す 、 一 週 間 ほ ど っ づ い た よ う に 思 い ま す 。 や た が ら す 年 映 さ れ る 。 同 月 、 「 飛 び 加 藤 」 ( 「 サ ン デ ー 毎 日 」 ) 、 「 八 咫 烏 」 ( 「 小 説 一 週 間 目 に は な ん と な く 竜 馬 に つ い て 知 る よ う に な り ま し た 。 竜 馬 新 潮 」 ) を 発 表 。 三 月 、 出 版 局 次 長 を も っ て 産 経 新 聞 社 を 退 社 。 同 と い う の は 、 ど う も あ の 時 代 の お な じ 仲 間 か ら よ ほ ど 魅 力 的 な 人 物 月 、 「 果 心 居 士 の 幻 術 」 ( 「 オ 1 ル 読 物 」 ) を 発 表 。 五 月 、 『 風 の 武 士 』 と し て 印 象 さ れ て い た よ う で す ね 。 か れ が 、 多 く の 人 の 力 を 借 り る

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加 茂 大 橋 か ら 見 る 糺 の 河 原 。 高 野 川 ( 右 ) と 賀 茂 川 ( 左 ) の 合 流 点 で あ る み け ん び す 、 ご ラ さ く ど う け さ ご ゼ ん は や や 下 目 で こ ち ら を 見 お ろ し て い る 。 眉 間 の 白 毫 は 古 の 道 、 鳥 羽 作 道 に 面 し て い る 。 袈 裟 御 前 の 墓 が あ る び る 金 色 に 輝 い て お り 、 ま く れ あ が っ た 厚 い 唇 は 真 赤 だ 寺 と し て も 知 ら れ る 。 地 蔵 堂 は 山 門 か ら 石 畳 を 伝 っ た し ゃ ( じ さ っ と 肇 り と ざ 左 の 手 の ひ ら に 乗 せ た 宝 珠 、 右 手 の 錫 杖 、 衣 も す べ て 正 面 の 奧 に あ っ た が 、 扉 が 閉 さ れ て い て 何 も 見 え な い 堂 の 横 手 に は 風 化 し て す ん べ ら 棒 に 近 い 石 地 蔵 が 何 体 金 、 青 の 原 色 で 塗 り こ め ら れ て い る 。 も な ら ん で い る 。 聞 け ば 、 最 近 塗 り 直 し た の だ と い う 。 よ く 見 れ ば 地 庫 裡 へ 回 っ て 主 婦 ら し い 人 に 来 意 を 告 げ る と 、 縁 日 蔵 さ ん の 顔 は な か な か か わ い ら し い の だ け れ ど 、 大 善 か い ひ 以 外 は 開 扉 し な い こ と に な っ て い る と い う 。 そ れ を 無 寺 で 塵 の 浮 い た 地 蔵 を 見 て き た ば か り で あ り 、 こ ん な レ み ど 金 ピ カ 、 極 彩 色 の 大 地 蔵 が あ ら わ れ る と は 思 い も っ か 理 に た の む と 、 鍵 を あ け 、 次 い で 蔀 戸 を あ げ て く れ た 。 な か っ た の で 、 そ の 真 新 し い 色 調 が な ま な ま し す ぎ て 光 線 が さ し こ ん だ と き 、 わ た し は ほ ん の 一 瞬 だ け れ ど 、 ゼ ん は な は だ 異 様 で あ っ た 。 凝 然 と な っ た 。 大 き な 木 造 の 地 蔵 が 大 き な 目 を 見 開 い 浄 褝 寺 の 真 前 を よ ぎ る 鳥 羽 作 道 を 北 へ 歩 く と 、 し ば て い た か ら だ 。 と い う よ り な ま な ま し い 彩 色 に 意 表 を ら く は 古 い 往 還 だ っ た こ と を 思 わ せ る 家 並 も 見 え た が 、 衝 か れ た か ら で あ ろ う 。 顔 は 真 白 に 塗 ら れ 、 真 黒 な 目 た だ す