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検索対象: 小説トリッパー 2013年秋季号

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小説トリッパー 2013年秋季号


也 招 少 隼 待 女 ! 也 解 , K 放 6 15 現 第 雪 受 卓 月 ! 賞 日 者 者 者 作 時 文 登 仁 平 乾 家 代 ↑ 学 志 茂 緑 短 小 か を 坦 寛 郎 肅 説 郎 隈 遠 立 大 取 き 兄 兄 絵 世 作 賞 郎 医 師 の は 外 桜 104 〈 第 1 特 集 〉 〈 巻 頭 漫 画 〉 28 22 一 一 第 5 回 朝 日 時 代 小 説 大 賞 発 表 受 賞 作 ひ を と こ 「 火 男 」 〔 抄 録 〕 吉 来 駿 作 〔 選 評 〕 縄 田 一 男 物 語 作 家 と し て の 芽 松 井 今 朝 子 寓 話 的 な 大 人 の メ ル ヘ ン の 山 本 兼 一 主 人 公 の 魅 力 〈 第 2 特 集 〉 冖 新 連 載 〕 38 36 408 90 39

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潤 一 郎 賞 受 賞 。 著 書 に 『 日 間 で 「 名 文 」 究 考 証 部 門 ) 受 賞 。 著 書 に 『 「 宮 本 武 蔵 。 深 町 秋 生 ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 年 『 果 て し な き 渇 き 』 で 「 こ の ミ ス テ リ 1 が す と は 何 か 』 ほ か 。 を 書 け る よ う に な る 方 法 』 『 非 常 時 の こ と ご い ! 」 大 賞 受 著 書 に 『 ア ウ ト ク ラ ッ ば 』 『 ば く ら の 文 章 教 室 』 『 銀 河 鉄 道 の 彼 仁 志 耕 一 郎 ◎ 浦 年 生 ま れ 。 作 家 。 肥 年 宝 シ ュ 』 『 ア ウ ト サ イ ダ ー 』 ほ か 。 方 に 』 ほ か 。 兎 の 望 』 で 小 説 現 代 長 編 新 人 賞 、 『 無 名 の 辻 原 登 ◎ 菊 年 生 ま れ 。 作 家 。 年 『 村 の 虎 』 で 朝 日 時 代 小 説 大 賞 、 年 に 歴 史 時 藤 田 香 織 ◎ 年 生 ま れ 。 ェ ッ セ イ ス ト 。 著 書 に 『 だ ら し な 日 記 』 『 や つ ば り だ ら し 名 前 』 で 芥 川 賞 、 年 『 遊 動 亭 円 木 』 で 代 作 家 ク ラ ブ 賞 新 人 賞 受 賞 。 な 日 記 + だ ら し な マ ン シ ョ ン 購 入 記 』 ほ 谷 崎 潤 一 郎 賞 、 年 『 花 は さ く ら 木 』 で 大 佛 次 郎 賞 、 肥 年 『 韃 靼 の 馬 』 で 司 馬 遼 橋 本 治 ◎ 絽 年 生 ま れ 。 作 家 。 肪 年 『 蝶 の か 。 太 郎 賞 、 年 『 冬 の 旅 』 で 伊 藤 整 文 学 賞 受 ゆ く え 』 で 柴 田 錬 三 郎 賞 、 年 『 双 調 平 賞 。 家 物 語 』 で 毎 日 出 版 文 化 賞 受 賞 。 著 書 に 穂 村 弘 ◎ 年 生 ま れ 。 歌 人 、 エ ッ セ イ ス ト 。 年 『 短 歌 の 友 人 』 で 伊 藤 整 文 学 賞 『 失 わ れ た 近 代 を 求 め て Ⅱ 』 『 浄 瑠 璃 を よ 受 賞 。 歌 集 に 『 シ ン ジ ケ ー ト 』 ほ か 。 著 も う 』 『 初 夏 の 色 』 ほ か 。 永 江 朗 ◎ 年 生 ま れ 。 フ リ 1 ラ イ タ 1 書 に 『 世 界 音 痴 』 『 現 実 入 門 』 『 に よ っ 記 』 著 書 に 『 セ ゾ ン 文 化 は 何 を 夢 み た 』 『 広 辞 苑 の 中 の 掘 り 出 し 日 本 語 』 『 新 宿 で 新 年 、 葉 室 麟 ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 年 『 銀 漢 『 絶 叫 委 員 会 』 『 蚊 が い る 』 ほ か 。 本 を 売 る と い う こ と 』 ほ か 。 の 賦 』 で 松 本 清 張 賞 、 肥 年 『 蜩 ノ 記 』 で 直 木 賞 受 賞 。 著 書 に 『 柚 子 の 花 咲 く 』 『 こ 松 井 今 朝 子 ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 年 『 仲 蔵 狂 乱 』 で 時 代 小 説 大 賞 、 年 『 吉 原 手 梨 木 香 歩 ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 年 『 沼 の 君 な く ば 』 「 陽 炎 の 門 』 『 月 神 』 ほ か 。 引 草 』 で 直 木 賞 受 賞 。 著 書 に 「 円 朝 の 地 の あ る 森 を 抜 け て 』 で 紫 式 部 文 学 賞 、 火 坂 雅 志 ◎ 浦 年 生 ま れ 。 作 家 。 年 『 天 地 『 壺 中 の 回 廊 』 ほ か 。 Ⅱ 年 『 渡 り の 足 跡 』 で 読 売 文 学 賞 受 賞 。 著 書 に 『 家 守 綺 譚 』 『 植 物 園 の 巣 宀 公 『 雪 人 』 で 中 山 義 秀 文 学 賞 受 賞 。 著 書 に 『 真 田 三 羽 省 吾 ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 肥 年 「 太 と 珊 瑚 と 』 『 エ ス ト ニ ア 紀 行 』 『 鳥 と 雲 と 三 代 』 『 常 在 戦 場 ー 家 康 家 臣 列 伝 』 ほ か 。 陽 が イ ッ パ イ い つ ば い 』 で 小 説 新 潮 長 篇 介 薬 草 袋 』 ほ か 。 者 平 茂 寛 ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 Ⅱ 年 『 隈 取 新 人 賞 受 賞 。 著 書 に 『 厭 世 フ レ 1 筆 執 『 タ チ コ ギ 』 『 Junk 』 『 傍 ら の 人 』 ほ か 。 縄 田 一 男 ◎ 年 生 ま れ 。 文 芸 評 論 家 。 一 絵 師 』 で 朝 日 時 代 小 説 大 賞 受 賞 。 年 『 捕 物 帳 の 系 巴 で 大 衆 文 学 研 究 賞 ( 研

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湊 か な え ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 四 年 『 告 六 歳 は セ ッ ク ス の 齢 」 で ー 絽 文 学 賞 読 者 『 花 鳥 の 夢 』 ほ か 。 賞 受 賞 。 著 書 に 『 こ こ は 退 屈 迎 え に 来 て 』 。 白 』 で 本 屋 大 賞 、 肥 年 「 望 郷 、 海 の 星 ー 吉 田 大 助 ◎ 行 年 生 ま れ 。 ラ イ タ ー で 日 本 推 理 作 家 協 会 賞 短 編 部 門 受 賞 。 著 ヤ マ ダ ト モ コ ◎ 年 生 ま れ 。 マ ン ガ 研 究 書 に 『 少 女 』 『 夜 行 観 覧 車 』 『 サ フ ァ イ ア 』 鷲 田 清 一 ◎ 年 生 ま れ 。 哲 学 者 。 年 『 白 ゆ き 姫 殺 人 事 件 』 『 母 性 』 『 望 郷 』 ほ か 。 者 、 日 本 マ ン ガ 学 会 理 事 。 手 塚 治 虫 文 化 賞 選 考 委 員 。 共 著 に 『 マ ン ガ の 居 場 所 』 。 『 モ 1 ド の 迷 宮 』 で サ ン ト リ ー 学 芸 賞 、 肥 村 田 喜 代 子 ◎ 菊 年 生 ま れ 。 作 家 。 的 年 『 龍 年 『 「 ぐ す ぐ ず 。 の 理 由 』 で 読 売 文 学 賞 受 秘 御 天 歌 』 で 芸 術 選 奨 文 部 大 臣 賞 、 川 年 山 本 兼 一 ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 『 火 賞 。 著 書 に 『 だ れ の た め の 仕 事 』 『 「 待 っ 」 『 故 郷 の わ が 家 』 で 野 間 文 芸 賞 受 賞 。 著 書 天 の 城 』 で 松 本 清 張 賞 、 年 『 利 休 に た と い う こ と 』 『 〈 ひ と 〉 の 現 象 学 』 、 共 著 に に 『 人 が 見 た ら 蛙 に 化 れ 』 『 あ な た と 共 に ず ね よ 』 で 直 木 賞 受 賞 。 著 書 に 『 銀 の 島 』 『 臨 床 と こ と ば 』 ほ か 。 逝 き ま し よ う 』 『 縦 横 無 尽 の 文 章 レ ッ ス ン 』 『 ゅ う じ よ こ う 』 ほ か 。 氏 載 昌 休 森 晶 麿 ◎ 四 年 生 ま れ 。 作 家 。 Ⅱ 年 『 黒 猫 在 沢 は の 遊 歩 あ る い は 美 学 講 義 』 で ア ガ サ ・ ク 大 リ ス テ ィ ー 賞 受 賞 。 著 書 に 『 ホ テ ル ・ モ 1 占 ハ リ ス 』 ほ か 。 差 説 氏 森 山 大 道 ◎ 年 生 ま れ 。 写 真 家 。 写 真 集 カ に 『 何 か へ の 旅 1971 ー 1974 』 『 カ ラ 1 』 山 『 モ ノ ク ロ 1 ム 』 ほ か 。 美 亜 よ す 南 来 ま 江 去 し 山 内 マ リ コ ◎ 年 生 ま れ 。 作 家 。 年 「 十 「 小 説 ト リ ッ パ ー 」 冬 季 号 は 、 2013 年 月 衵 日 ( 水 ) 発 売 予 定 で す 。 週 刊 朝 日 別 冊 小 説 ト リ ッ パ ー 2013 年 秋 季 号 発 行 日 2013 年 9 月 日 定 価 80 円 ( 本 体 857 円 ) 発 行 人 市 川 裕 一 編 集 長 長 田 匡 司 発 行 所 朝 日 新 聞 出 版 〒 1 - 11 東 京 都 中 央 区 築 地 5-3-2 電 話 03 ー 5 図 1 ー 32 ( 編 集 ) 03 巧 図 g7793 ( 販 売 ) 本 誌 掲 載 記 事 の 無 断 転 載 を 禁 じ ま す ◎ 朝 日 新 聞 出 版 2013 バ ッ ク ナ ン バ ー の お 求 め に つ い て [ 注 文 方 法 ] 最 寄 り の 書 店 か A S A ( 朝 日 新 聞 販 売 所 ) ま で ご 注 文 く だ さ い 。 小 社 か ら 直 送 を ご 希 望 の 場 合 は 、 下 記 の 「 朝 日 新 聞 出 版 ・ 出 版 業 務 部 直 販 担 当 」 ま で ご 連 絡 く だ さ い 。 TEL : 03 ー 5540 ー 7793 ( 営 業 時 間 は 平 日 10 ~ 18 時 と な っ て お り ま す ) ※ 小 社 よ り 直 送 の 場 合 、 送 料 が 別 途 必 要 に な り ま す 。 バ ッ ク ナ ン バ ー の 保 存 期 間 は 基 本 的 に 発 売 日 か ら 1 年 で す 。 執 筆 者 紹 介 452

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に な っ て 先 づ 其 第 一 篇 が 紅 葉 山 人 の 作 で 一 一 人 比 丘 尼 色 懺 悔 と い ふ そ れ が 正 岡 子 規 の 「 書 き た い 。 と 思 う よ う な 小 説 で は な か っ た か も の が 出 版 せ ら れ た 。 其 が 非 常 の 評 判 で 世 の 中 に 持 て 囃 さ れ た け ら だ ろ う 。 だ か ら そ の 翌 年 に な っ て 幸 田 露 伴 の 『 風 流 仏 』 に 出 会 れ 共 、 予 は 其 を 侮 る の か 妬 む の か 、 敢 て 読 ま う と も 思 は ず た ゞ 何 う と 、 子 規 は 全 面 的 に 降 伏 し て 、 「 『 風 流 仏 』 の よ う な 小 説 を 書 き 事 か あ ら ん と 済 し 込 ん で 居 た 。 》 ( 同 前 ) た い 」 と 思 、 つ よ 、 つ に な っ て し ま 、 つ 早 い 話 が 嫉 妬 で あ る 。 だ か ら こ の 文 章 は こ う 続 く 「 新 著 百 種 」 と い う の は 、 吉 岡 書 籍 店 と い う と こ ろ が 企 画 し た オ 《 話 が 横 に そ れ る が こ の 硯 友 社 の 成 立 に つ い て は 予 は 詳 し い こ と リ ジ ナ ル の 叢 書 で 、 雑 誌 の よ う な 安 価 な 値 段 で 書 き 下 ろ し の 書 物 は 知 ら な い け れ ど 、 兎 に 角 同 級 者 な ど に そ の 末 派 に 居 る 者 も あ っ が 手 に 入 れ ら れ る よ う に と 考 え ら れ 、 そ う 厚 く は な く 、 一 冊 完 結 ぬ す ひ そ か た の で 、 我 楽 多 文 庫 な ど 、 い ふ 極 め て 幼 稚 な る 雑 誌 を 偸 み 見 て 窃 を 原 則 と し て 毎 月 刊 行 を 目 指 し た も の で あ る 。 新 著 百 種 は 方 向 性 に 其 紙 面 の 才 気 多 き に 驚 い て 居 っ た の で あ っ た け れ 共 先 づ 同 輩 位 を 小 説 だ け に 限 定 し た も の で は な か っ た が 、 そ の 第 一 号 が 『 二 人 な 書 生 が や る の で あ る と 思 ふ 為 め に 半 ば 之 を み 、 半 ば 之 を 軽 蔑 比 丘 尼 色 懺 悔 』 で あ 0 た と う こ と は 、 版 元 の 方 に 「 新 し 小 説 し て 居 っ た の で あ っ た 。 さ う い ふ 次 第 で あ っ た か ら 、 色 懺 悔 が 出 を 世 に 出 し て 行 く . と い う 意 図 が あ っ た か ら だ ろ う 。 だ か ら 、 紅 た 時 も 、 強 て 世 間 の 好 評 を 打 消 し て せ 、 ら 笑 ひ し て 居 っ た が 、 或 葉 と 同 年 に デ ビ ュ ー し た 幸 田 露 伴 の 新 作 も ラ イ ン ナ ッ プ に 加 え ら れ る こ と に な る 。 友 人 が 是 非 読 め と い ふ て 本 を 貸 し て 呉 れ た の 「 始 め て 色 懺 悔 を 一 読 し て 今 度 は 本 統 に 安 心 し て 仕 舞 ふ た 。 予 自 ら 嫉 妬 心 を 除 い て 公 正 岡 子 規 は 、 既 に 《 今 の 世 の 小 説 家 は こ れ 位 の も の で あ る か 》 平 に 考 へ て 見 て も 、 色 懺 悔 は 少 し も 傑 作 と い ふ べ き 処 は な い 。 こ ( 同 前 ) と 、 小 説 そ の も の を 見 く び っ て い た の だ が 、 下 宿 で 同 室 の れ 位 の も の な ら ば 予 自 身 で も 書 け る 。 否 今 少 し 面 白 く 書 け る で あ 友 人 は 『 風 流 仏 』 を 読 ん で い る 。 《 友 人 は 其 小 説 の 文 章 の む づ か し ら う と い ふ こ と を 慥 め た 。 》 ( 同 前 ) い こ と ゝ 且 っ 面 白 い こ と 、 を 予 に 説 い た け れ 共 、 予 は フ ン と い ふ 硯 友 社 文 学 と い う と 「 後 ろ 向 き で あ ま り 近 代 的 で は な い も の 、 返 辞 で 簡 単 に そ れ を あ し ら っ て 仕 舞 ふ た 。 》 ( 同 前 ) ー 厄 介 な 正 的 な イ メ ー ジ を 持 た れ て い る が 、 日 本 最 初 の 文 学 結 社 で あ る 硯 友 岡 子 規 は 、 そ ば で 友 人 が 読 ん で い る の を 聞 い て 、 「 な ん だ か よ く 分 社 は 、 帝 大 と そ こ へ 続 く 大 学 予 備 門 第 一 高 等 中 学 校 ( 一 高 ) の か ら な い 、 ひ ね く れ た 文 章 だ 」 と 思 っ て い た の で あ る 。 学 生 を 中 心 と し た 、 当 時 の 最 先 端 を 行 く エ リ ト 集 団 だ っ た の で そ れ か ら 一 年 後 、 本 郷 の 夜 店 に 『 風 流 仏 』 が 並 ん で い た 。 《 善 か あ る 。 硯 友 社 は 正 岡 子 規 と 極 め て 近 い と こ ろ に あ っ た か ら 、 子 規 れ 悪 か れ 兎 に 角 人 に 解 し 難 い や う な 文 章 を 書 く も の は 尋 常 で な い 》 の 自 負 心 あ る い は 敵 愾 心 は 相 当 な も の だ っ た ろ う 。 ( 同 前 ) と い う こ と が 気 に な っ て い た 負 け ず 嫌 い の 子 規 は そ れ を 買 っ 「 俺 の 方 が も っ と 面 白 く 書 け る 、 は 、 単 な る 子 規 の 自 負 心 で 、 一 一 て し ま う の だ が 、 《 果 し て 冒 頭 文 か ら 非 常 に 読 み に く 、 て 殆 ど 解 す 十 三 歳 当 時 の 文 章 は 幼 稚 で 人 前 に 出 せ る よ う な も の で は な か っ た る こ と が 出 来 な か っ た 。 》 ( 同 前 ) つ い で だ か ら 、 正 岡 子 規 が 「 こ ん な も の か 」 と 思 っ た 尾 崎 紅 葉 と 、 そ の 当 時 を 振 り 返 る 子 規 は 認 め て い る が 一 妬 み か ら で は な く 《 本 統 に 安 心 し て 仕 舞 ふ た 》 と 言 う の は な ぜ だ ろ う ? 単 純 な 話 、 の 作 と 、 《 殆 ど 解 す る こ と が 出 来 な か っ た 》 幸 田 露 伴 の 作 の 冒 頭 を 橋 本 治 312

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橋 本 失 わ れ た 近 代 を 求 め て Ⅲ 高 橋 源 一 郎 青 少 年 の た め の ニ ッ ポ ン 文 学 全 集 鷲 田 清 一 素 手 の ふ る ま い ア ー ト が さ ぐ る 〈 未 知 の 社 会 性 〉 〔 連 載 評 論 〕 火 坂 雅 志 北 条 五 代 梨 木 香 歩 椿 宿 の 辺 り に 湊 か な え 物 語 の お わ り 鈴 木 英 柳 生 左 門 雷 獣 狩 り 村 田 喜 代 子 焼 野 ま で あ さ の あ っ こ ア レ グ ロ ・ ラ ガ ッ ツ ア 葉 室 麟 風 花 帖 井 上 荒 野 悪 い 恋 人 深 町 秋 生 シ ョ ッ ト ガ ン ・ ロ 1 ド 麻 生 幾 背 面 捜 査 森 晶 麿 偽 恋 愛 小 説 家 〔 連 載 小 説 〕 429 136 2 J88 180 166 4J9 228 282 7 0 〔 写 真 & 創 作 〕 森 山 大 道 文 ・ 赤 坂 英 人 O<EZ-WO 藤 田 香 織 畠 中 恵 『 明 治 ・ 妖 モ ダ ン 岡 崎 琢 磨 「 物 語 に た た の 天 才 は 要 ら な い 」 を = 山 内 マ リ コ 「 「 僕 に 会 え な く て 寂 し か っ た か ら で す 」 」 内 田 洋 子 「 行 く 先 を 探 す 旅 」 永 江 朗 ジ ャ ス が 聴 こ え る 冊 第 6 回 朝 日 時 代 小 説 大 賞 応 募 規 定 執 筆 者 紹 介 〔 季 刊 ブ ッ ク レ ビ ュ ー 〕 〔 私 を 変 え た こ の 一 冊 〕 〔 連 載 ェ ッ セ イ 〕 386 278 219 367 248 178

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ロ 事 件 と み て 捜 査 を 開 始 し た 。 新 聞 の 記 事 、 あ る い は わ れ わ れ が 通 常 、 営 業 報 告 や レ ポ 1 ト 現 場 付 近 で 、 さ ら に 二 つ の 爆 発 物 が 見 つ か っ た が : で 書 い た り す る 文 章 は 、 表 現 そ の も の を 目 的 と し て い な い 。 表 登 原 現 さ れ た も の 、 つ ま り 意 味 さ れ る も の を 伝 え る こ と が 目 的 で す 。 こ れ は 伝 達 の 文 章 で す ね 。 文 章 が 指 し 示 す 出 来 事 ( 内 容 ) が 文 章 の 外 側 に あ る 。 外 側 に あ る 出 来 事 を 文 章 が 指 し 示 す 、 通 常 中 原 中 也 の 「 タ 照 」 と い う 詩 の 冒 頭 で す 。 わ れ わ れ は 基 本 的 に は 文 章 を こ う い う ふ う に 使 い ま す 。 散 文 で す 。 丘 々 は 、 胸 に 手 を 当 て 退 け ・ り .0 で は 、 同 じ 散 文 で 成 り 立 っ て い て も 、 こ こ に 川 端 康 成 の 『 雪 国 』 が あ り ま す 。 有 名 な 冒 頭 で す 。 落 陽 は 、 慈 愛 の 色 の 金 の い ろ 。 国 境 の 長 い ト ン ネ ル を 抜 け る と 雪 国 で あ っ た 。 夜 の 底 が 白 く な っ た 。 信 号 所 に 汽 車 が 止 ま っ た 。 大 岡 昇 平 の 「 歩 哨 の 眼 に つ い て 」 と い う 短 篇 小 説 で 、 主 人 公 向 側 の 座 席 か ら 娘 が 立 っ て 来 て 、 島 村 の 前 の ガ ラ ス 窓 を 落 が こ の 詩 を 朗 唱 す る 、 非 常 に 印 象 的 な 場 面 が あ り ま す 。 し た 。 雪 の 冷 気 が 流 れ こ ん だ 。 娘 は 窓 い つ ば い に 乗 り 出 し て 、 中 原 中 也 に は も っ と 有 名 な 詩 が あ り ま す ね 。 遠 く へ 叫 ぶ よ う に 、 「 駅 長 さ あ ん 、 駅 長 さ あ ん 。 」 汚 れ っ ち ま っ た 悲 し み に 明 り を さ げ て ゆ っ く り 雪 を 踏 ん で 来 た 男 は 、 襟 巻 で 鼻 の 上 今 日 も 小 雪 の 降 り か か る ま で 包 み 、 耳 に 帽 子 の 毛 皮 を 垂 れ て い た 。 ( 川 端 康 成 『 雪 国 』 ) 汚 れ っ ち ま っ た 悲 し み に 今 日 も 風 さ へ 吹 き す ぎ る ( 中 原 中 也 「 汚 れ っ ち ま っ た 悲 し み に : 『 雪 国 』 の 文 章 と 、 新 聞 の 「 マ サ チ ュ ー セ ッ ツ 州 ボ ス ト ン で 開 か れ た う ん ぬ ん 」 と い う 文 章 は 変 わ ら な い 、 同 じ 散 文 で す 。 し か し 、 指 し 示 し て い る も の は 違 い ま す 。 と い う よ り も 、 こ の 『 雪 こ れ は も ち ろ ん 散 文 で は な く 韻 文 、 詩 の 言 葉 と 呼 ば れ て い る 国 』 の 散 文 は 何 も 指 し 示 し て い な い 。 文 章 の 外 側 に 国 境 の 長 い も の で す 。 こ れ は 何 も 指 し 示 し て い ま せ ん 、 も ち ろ ん 当 然 で す 。 ト ン ネ ル が あ る わ け で も 、 夜 の 底 が 白 く な る と い う 現 象 が 起 き こ の 言 葉 の 外 側 で 、 丘 々 が 胸 に 手 を 当 て て 後 退 す る わ け で も 、 て い る わ け で も あ り ま せ ん 、 文 章 の 中 で し か 起 き な い 。 つ ま り 、 汚 れ っ ち ま っ た 悲 し み が あ る わ け で も な い 。 「 汚 れ っ ち ま っ た 悲 こ れ は 表 現 そ れ 自 体 を 目 的 と す る 文 章 で す 。 し み に 」 と 読 ん だ 瞬 間 、 あ る い は 声 に 出 し た 瞬 間 、 立 ち 上 が る

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進 路 だ っ て コ ロ コ ロ と 変 わ る 。 正 岡 子 規 と 知 り 合 う 前 の 夏 目 漱 石 書 生 気 質 』 と 出 会 っ た 正 岡 子 規 は 「 哲 学 , を 目 的 に し て い た か ら 。 そ こ で ま た 珍 妙 な 煩 悶 が 始 ま る 。 は 、 建 築 家 志 望 だ っ た が 、 人 か ら 「 日 本 で 建 築 家 は た い し た 仕 事 を す る こ と が 出 来 な と 言 わ れ て 、 志 望 を 英 文 学 に 変 え 第 一 高 坪 内 逍 遥 の ー と 言 う か べ ン ネ ー ム 「 春 の や お ば ろ 」 の 書 い た 『 当 世 書 生 気 質 』 に よ っ て 「 小 説 」 な る も の に 夢 中 に な っ て し ま っ た 等 中 学 校 の 本 科 に 進 学 す る 。 そ れ も 明 治 二 十 一 年 の こ と で あ る 。 正 岡 子 規 は 、 哲 学 と 詩 歌 小 説 を 、 質 の 違 う 対 立 す る も の と 思 っ て 漱 石 だ っ て 、 漢 学 好 き だ っ た の が 「 こ れ か ら は 英 語 だ 」 と 方 向 転 い た の で あ る 。 本 当 に な に も 知 ら ぬ ま ま 次 々 と 現 れ る 新 し い も の 換 を し て 、 そ れ か ら 建 築 家 志 望 に な っ て ま た 英 文 学 に 戻 る の だ か に 仰 天 す る 明 治 の 第 一 世 代 の 無 垢 さ に は 驚 い て し ま う が 、 正 岡 子 ら 、 似 た よ う な も の だ 。 『 当 世 書 生 気 質 』 に 衝 撃 の 大 感 動 を 受 け て 、 し か し 正 岡 子 規 は 「 小 規 が 哲 学 と 詩 歌 小 説 を 「 両 立 し が た い 反 対 の も の 」 と 考 え て い た 理 由 は 、 《 哲 学 者 ハ 四 角 四 面 な る 者 に て 、 文 芸 の 末 技 な ど に 区 々 た る 説 を 書 き た い ー と も 「 文 学 者 に な り た い 」 と も 思 わ ず 、 更 に は 坪 も の に あ ら ず 。 僧 侶 が 小 説 を 作 り し こ と も な く 、 ス ペ ン サ 1 が 詩 内 逍 遥 以 外 の 人 間 が 書 い た 小 説 を 読 も う と も し な か っ た 。 理 由 は え せ 歌 を 作 り し 話 を も 聞 か ざ れ バ 也 》 ( 正 岡 子 規 『 筆 ま か せ 』 の 内 「 哲 《 予 の 心 底 で は 世 の 中 の 似 非 小 説 家 な ど が 何 事 を す る も の か と 頭 か ら 高 を く ゝ っ て 見 く び っ て 居 っ た の で あ る 。 》 ( 『 天 王 寺 畔 の 蝸 牛 廬 』 ) 学 の 発 足 」 ) で あ る 。 更 に 素 敵 な の は 、 哲 学 を 人 生 の 目 的 に し よ う と し た こ の 当 時 の 子 規 が 、 イ ギ リ ス の 経 験 論 の 哲 学 者 ハ 坪 内 逍 遥 崇 拝 と 言 う よ り も 、 十 九 歳 の 時 に 読 ん だ 『 当 世 書 生 気 質 』 の 感 動 を そ の ま ま に し て 審 美 学 の 方 へ 進 ん で い た 正 岡 子 規 が ス ペ ン サ 1 以 外 の 哲 学 者 を 知 ら な い ま ま だ っ た と い う こ と で あ る そ れ で 哲 学 を 志 し て し ま う の だ か ら い い 度 胸 だ が 、 哲 学 を 目 指 次 に 衝 撃 を 受 け る 相 手 は 、 同 年 の 幸 田 露 伴 で あ る 。 し な が ら そ れ と 対 立 す る よ う な 詩 歌 小 説 に も 引 か れ て し ま う 正 岡 三 正 岡 子 規 と 紅 露 時 代 子 規 は 、 「 こ の 相 反 す る 一 一 つ を 結 び 付 け る も の は な い か 」 と 思 っ て 、 詩 歌 書 画 の 美 術 を 哲 学 的 に 論 ず る 「 審 美 学 」 と い う ジ ャ ン ル の 存 正 岡 子 規 は 、 我 が 強 い と い う か 異 様 に プ ラ イ ド が 高 い 。 八 歳 年 在 を 知 り 、 「 こ れ だ ! ー と 審 美 学 の 方 に 進 ん で し ま う こ と に な る 。 《 小 説 な く て ハ 夜 が あ け ぬ 》 ( 同 前 ) と 思 う く ら い に な っ て い た 子 、 上 の 逍 遥 な ら 尊 敬 出 来 る が 、 そ れ 以 外 の 若 い 同 年 代 の 人 間 が な に Ⅲ 規 は 、 「 審 美 学 , と い う も の に 出 会 っ て 、 自 分 の 中 に 健 在 だ っ た 文 を し て も 、 「 知 ら ぬ も の か 」 と い う 態 度 で い る 。 や っ と こ の 章 の 冒 て め 人 的 資 質 を 西 洋 的 に 提 え 直 そ う と し た の で あ る 。 正 岡 子 規 が ス ペ 頭 に 戻 っ て 、 二 十 三 歳 に な っ た 正 岡 子 規 が 第 一 高 等 中 学 で 夏 目 漱 求 を ン サ 1 と 出 会 う の は 、 明 治 二 十 一 年 二 十 二 歳 の 時 で あ る 。 石 と 知 り 合 う 明 治 一 一 十 一 一 年 、 尾 崎 紅 葉 は 『 二 人 比 丘 尼 色 懺 悔 』 で 代 も ち ろ ん 、 威 勢 が い い だ け で な ん に も 知 ら ず 、 お ま け に よ そ か 文 壇 に デ ビ ュ ー す る 。 同 年 な が ら 既 に 帝 国 大 学 に 進 ん で い る 尾 崎 近 れ ら の 影 響 を 受 け や す い 正 岡 子 規 だ か ら 、 そ の ま ま 審 美 学 の 方 向 へ 紅 葉 の 成 功 を 、 帝 大 の 手 前 に い る 正 岡 子 規 は ど う 見 た の か ? わ 失 突 き 進 ん だ り は し な い 。 す ぐ に ま た 方 向 転 換 を 考 え る 。 明 治 生 ま れ の 第 一 世 代 の 前 に は 、 次 か ら 次 へ と 新 し い 選 択 肢 が 現 れ る か ら 、 《 そ の 頃 で あ っ た と 思 ふ が 新 著 百 種 と い ふ も の が 発 行 せ ら れ る 事

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明 」 な ど な い 。 舞 台 と な る 《 大 音 寺 前 》 を 登 場 さ せ る に し て も 《 廻 明 治 二 十 二 年 に 文 壇 デ ビ ュ 1 を し た 幸 田 露 伴 と 尾 崎 紅 葉 は 、 す れ ば 大 門 》 の ひ ね く れ 方 で 、 し か も そ の 《 大 音 寺 前 》 が 、 《 仏 く さ ぐ に そ の 才 能 を 認 め ら れ て そ の 年 の 暮 に は 読 売 新 聞 に 抱 え ら れ 、 け れ ど 、 さ り と は 陽 気 の 町 》 と 言 い か け は す る が 、 「 そ こ の 住 人 が 読 売 新 聞 は 二 人 を 盛 大 に 売 り 出 し 「 紅 露 時 代 。 と 言 わ れ る も の が 言 っ て い る だ け だ か ら 私 は 知 ら な い 」 と 、 断 定 を 避 け て し ま う 。 到 来 す る 。 そ し て 、 明 治 二 十 三 年 に 尾 崎 紅 葉 は 紅 葉 版 『 好 色 一 代 そ の 言 い 差 し の 保 留 が こ の セ ン テ ン ス を 長 く 続 け さ せ て 、 《 仏 く さ 女 』 と も 言 う べ き 『 伽 羅 枕 』 を 発 表 し 、 翌 年 に 幸 田 露 伴 は 露 伴 版 け れ ど 、 さ り と は 陽 気 の 町 》 ら し 《 大 音 寺 前 》 が 《 是 れ ぞ と 見 『 好 色 一 代 男 』 と 言 う べ き 『 辻 浄 瑠 璃 』 と そ の 続 篇 の 『 寝 耳 鉄 砲 』 ゆ る 大 廈 も な く 、 か た ぶ く 軒 端 の 十 軒 長 屋 一 一 十 軒 長 屋 、 商 ひ は か な り を 発 表 す る 。 も う 当 然 の 「 西 鶴 プ 1 ム 、 に な る が 、 こ れ に 物 み つ っ ふ つ 利 か ぬ 所 と て 、 半 さ し た る 雨 戸 の 外 に 、 怪 し き 形 に 紙 を 切 い て く れ る の が 、 明 治 二 十 五 年 に 『 厭 世 詩 家 と 女 性 』 を 発 表 し て り な し て 、 》 ( 同 前 ) と 、 「 ど こ が 《 陽 気 の 町 》 な ん だ , ド と 言 い た 評 論 家 と し て 脚 光 を 浴 び た 北 村 透 谷 で あ る 。 彼 は 自 身 の ホ 1 ム グ く な る よ う な 描 写 が 続 い て 、 そ の 上 げ た り 圷 げ た り の 記 述 の 中 か ラ ウ ン ド と な り つ つ あ る 『 女 学 雑 誌 』 に 、 『 伽 羅 枕 及 び 新 葉 末 集 』 ら 、 吉 原 の 遊 廓 に 依 存 し て 生 き て い る 《 大 音 寺 前 》 の 独 特 な 雰 囲 と い う 論 を 発 表 す る ( 『 新 葉 末 集 』 と は 、 『 辻 浄 瑠 璃 』 と 『 寝 耳 鉄 砲 』 気 が 伝 わ っ て 来 る 。 「 文 章 そ の も の が 語 る べ き こ と を 語 っ て 、 そ こ を 合 わ せ た 単 行 本 の タ イ ト ル で 、 こ こ に 「 新 」 の 文 字 が あ る の は 、 に 書 き 手 の 視 点 が し つ か り 存 在 す る 」 と い う の は こ う い う 文 章 で 、 既 に 露 伴 に 『 葉 末 集 』 と い う 短 篇 集 の 単 行 本 が あ る か ら ) 。 だ か ら こ そ 樋 口 一 葉 の 文 章 は 「 名 文 」 と 言 わ れ る の だ 。 北 村 透 谷 は 、 明 治 一 一 十 五 年 に 幸 田 露 伴 と 尾 崎 紅 葉 を 並 べ て 論 じ て 、 そ の 筆 は そ の ま ま 西 鶴 と 元 禄 文 学 、 更 に は 江 戸 時 代 の 町 人 思 五 北 村 透 谷 と 紅 露 時 代 想 へ と 向 か 、 つ こ と に な る 。 『 伽 羅 枕 及 び 新 葉 末 集 』 は 、 こ う 始 め ら れ る 私 の 話 は 「 文 体 , の こ と だ け で 、 そ の 文 体 で 書 か れ る 作 品 の 内 じ っ し ゅ そ 、 つ む ね コ ウ ョ ウ ロ 容 に 関 し て は ま っ た く 触 れ て い な い 。 し か し 正 岡 子 規 の 言 う よ う 《 一 は 実 を 主 と し 一 は 想 を 旨 と す る 紅 葉 と 露 伴 。 一 は 客 観 的 実 相 に 、 読 み 慣 れ た 完 成 さ れ た 文 体 が い じ ら れ て 変 え ら れ る と 、 そ れ を 尚 び 一 は 主 観 的 心 想 を 重 ん ず る 当 代 の 両 名 家 。 紅 葉 は 伽 羅 枕 を 、 だ け で 難 解 な 読 み に く い も の に な る 。 西 洋 の も の を 紹 介 す る 文 章 露 伴 は 辻 浄 瑠 璃 を 、 時 を 同 ふ し て 作 り 出 た り 。 此 二 書 に 就 き 世 評 な ら 、 分 か ら な い 内 容 の 生 硬 な 文 章 で あ 0 て も 、 人 は 読 も う と す 既 に 定 ま れ る に も 拘 引 ず 余 は 、 聊 余 が 読 来 り 読 去 る 間 に 念 頭 に 浮 る 。 し か し 、 日 本 人 の 書 い た 小 説 な ら 、 そ の 内 容 よ り も ま ず 文 体 び し 感 を 記 す る 事 と な し ぬ 。 》 ( 北 村 透 谷 『 伽 羅 枕 及 び 新 葉 末 集 』 ) で 、 文 体 が 読 み 慣 れ な い も の な ら 、 「 な ん だ 、 ( こ の 読 み に く い も の は ? 、 と 投 げ 出 さ れ る 。 そ れ が 明 治 二 十 年 代 の 初 頭 だ か ら 、 旧 套 こ れ を そ の ま ま 真 に 受 け る 必 要 も な い が 、 北 村 透 谷 に と っ て 尾 を 脱 し た 新 し い 文 体 を 作 り た い 尾 崎 紅 葉 は 、 「 通 る か 、 通 ら な い か 」 崎 紅 葉 は 「 客 観 的 な リ ア リ ス ト 」 で 、 幸 田 露 伴 は 「 主 観 的 な 奇 想 家 、 で 、 《 一 風 異 様 の 文 体 》 と へ り 下 ら な け れ ば な ら な い 。 な の で あ る 。 彼 は 、 文 体 の こ と な ん か ま っ た く 問 題 に し て い な い 。 0 橋 本 治 318

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記 を さ せ た 矢 野 龍 溪 は 講 談 師 の よ う な 熱 弁 を ふ る っ て い た と い う 。 名 だ 、 る も の は 大 方 読 ん で し ま う た 。 》 ( 同 前 ) 少 年 子 規 は こ の 他 に も 『 源 平 盛 袞 記 』 や 『 保 元 物 語 』 『 平 治 物 語 』 《 こ れ は グ リ 1 キ の 歴 史 の 事 を 書 い た 演 義 的 小 説 で 、 今 日 か ら 見 治 本 と い う 日 本 の 軍 記 物 も 読 ん で い る 。 近 代 に な っ て も 、 読 書 好 き の れ ば 勿 論 文 学 だ の 小 説 だ の と い ふ て 騒 ぐ 程 の 者 で は な い が 、 馬 琴 日 本 少 年 の 読 む も の は 、 こ う い う 江 戸 時 代 以 来 の 勇 壮 な 戦 い の 物 の 著 述 の 外 に 一 歩 も 踏 み 出 し た 事 の な い 吾 々 に は 此 書 物 が ど れ だ 語 だ っ た 。 そ こ に 新 し く 、 新 聞 小 説 と い う も の が 加 わ る 。 け の 感 動 を 与 へ た か は 其 当 時 比 較 的 に 高 價 で あ っ た 此 書 物 を 書 生 の 身 で 買 ふ て 来 た の で も わ か る 。 》 ( 同 前 ) 《 其 外 に は 親 戚 の う ち に 東 京 の 字 喜 世 新 聞 と い ふ 新 聞 が 来 て ゐ た の で 、 其 小 説 を 読 ま せ て 貰 ふ 事 も あ っ た 。 併 し 此 時 の 新 聞 小 説 と い 正 岡 子 規 に と っ て 『 経 国 美 談 』 は 、 古 代 ギ リ シ ア ( グ リ 1 キ ) ふ も の は 伊 藤 専 三 な ど い ふ 人 が 書 い て 居 た も の で 、 其 は 明 治 の 文 学 を 舞 台 と し た 自 由 民 権 風 の 軍 談 で 、 故 郷 で 慣 れ 親 し ん で い た も の と は 到 底 い へ な い も の で あ っ た 。 何 故 と い ふ に 此 人 等 の 書 く 時 代 が ま っ た く 違 う 新 し い 装 い で 登 場 し た そ の こ と が 、 子 規 を 驚 か せ ひ ょ う せ つ 物 は 皆 古 い 小 説 又 は 昔 の 軍 談 な ど を 剽 竊 し て 来 て 綴 り 合 し た に 過 た の で あ る 。 だ か ら 、 政 治 家 志 望 で 東 京 へ 出 て 来 た 子 規 は 「 ま す ぎ な い し 、 又 其 新 作 物 と い ふ の は ヂ ャ ン ギ リ 頭 に 靴 で も 穿 い て 出 ま す 政 治 へ の 志 を 強 く し た 」 な ん て い う こ と に な ら な い 。 哲 学 に る と い ふ 位 の 画 様 の 珍 ら し み が あ っ た 位 で 其 実 千 篇 一 律 の 趣 向 で 方 向 を 変 え た ま ま 、 『 当 世 書 生 気 質 』 と 出 会 う 。 三 面 雑 報 の 稍 長 い も の と い ふ 位 に 過 ぎ な か っ た 。 さ う し て 其 文 章 《 馬 琴 の 小 説 か 春 水 の 人 情 本 か 、 又 は 当 時 の 千 篇 一 律 な る 新 聞 小 は と い ふ と 、 時 代 物 と 世 話 物 と に 係 ら ず い つ も 七 五 調 で 持 て 行 た 説 か 、 是 等 の 外 に 小 説 と い ふ も の が ど ん な に 変 っ た 種 類 の も の を も の で 、 七 五 調 で な け れ ば 小 説 で な い と 思 は れ た 位 で あ っ た け れ ど 含 有 し て 居 る か は 夢 に も 知 ら ぬ 所 の 余 に 取 っ て は 、 経 国 美 談 で さ も 、 其 頃 の 余 は 固 よ り 批 評 眼 が あ っ た わ け で は な し 、 唯 今 日 の 新 聞 へ も 其 珍 ら し さ に 驚 い た 程 で あ っ た の に 、 况 し て 此 書 生 気 質 を 見 を 読 ん で 明 日 の 続 き を 待 ち か ね る と い ふ 風 で あ っ た の だ 。 》 ( 同 前 ) た 時 に 文 章 の 雅 俗 折 衷 的 な る 所 か ら 、 趣 向 の 写 実 的 で し か も 活 動 か な が き ろ ぶ ん 伊 藤 専 三 は 仮 名 垣 魯 文 の 門 下 の 戯 作 者 で 、 彼 の 書 い た も の は 正 し て を る と こ ろ か ら 、 其 上 に 従 来 の 小 説 の 如 く 無 趣 味 な も の で な 岡 子 規 が 言 う 通 り の も の だ っ た ろ う 。 読 書 習 慣 だ け は 付 い て も 、 く 或 る 種 の 趣 味 を 発 揮 し て を る と こ ろ か ら 、 何 れ 一 つ と し て 余 を 十 代 の 少 年 子 規 の 前 に は 読 む に 価 す る も の が な い そ れ で も 新 驚 か さ ぬ も の は 無 か っ た の で あ る 。 》 ( 同 前 ) 聞 と い う も の は 来 て し ま う か ら 、 そ の 小 説 は つ い 読 ん で し ま う 。 当 時 「 書 生 」 だ っ た 正 岡 子 規 に と っ て 、 維 新 前 の 上 野 の 戦 争 で そ の 他 に 「 読 む も の , が あ る の か ど う か を 知 ら な い 少 年 子 規 は 、 孤 児 と な り そ の 後 に 芸 者 と な っ た 若 い 娘 と 年 若 な 書 生 の 恋 物 語 を た め な が し ゅ ん す い 軸 に し た 『 当 世 書 生 気 質 』 は 、 紛 れ も な い ヴ ィ ヴ ィ ッ ド な 「 現 代 十 七 歳 で 東 京 に 出 て 来 て 、 為 永 春 水 の 江 戸 時 代 製 人 情 本 と 出 会 う 。 成 長 と 共 に 馬 琴 か ら 春 水 へ 至 る の は 当 時 の 読 者 パ タ 1 ン だ が 、 ま 小 説 , だ か ら 、 後 の 評 論 家 の よ う に 「 江 戸 の 戯 作 と あ ま り 変 わ ら だ 年 若 い 地 方 出 身 の 子 規 に は 、 こ の 人 情 本 が ピ ン と 来 ず 、 し ば ら な い 作 品 」 な ん て こ と は 言 わ な い 。 読 ん で ひ た す ら 感 動 興 奮 す る け い こ く び だ ん や の り ゅ う け い の だ が 、 だ か ら と 言 っ て 「 小 説 家 に な り た い 、 小 説 を 書 き た い ー く し て か ら 矢 野 龍 溪 の 『 経 国 美 談 』 と 出 会 う 。 『 経 国 美 談 』 は 古 代 ギ リ シ ア を 舞 台 に し た 政 治 小 説 だ が 、 ロ 述 筆 な ん て こ と を 考 え な い 。 ど う し て か と 言 う と 、 前 述 の 通 り 、 『 当 世 や や

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谷 は あ ま り 一 つ に し て 語 ら れ な い し 、 漱 石 と 子 規 の 交 遊 は 有 名 で あ っ て も 、 こ の 二 人 と 紅 葉 、 露 伴 は あ ま り 一 つ に し て 語 ら れ な い 。 同 年 代 で あ っ て も 、 早 く 世 を 去 っ た 北 村 透 谷 に は 、 夏 目 漱 石 や 正 岡 子 規 と の 接 点 が な い 。 し か し 、 同 年 の 尾 崎 紅 葉 、 夏 目 漱 石 、 正 岡 子 規 の 三 人 は 、 へ ん な と こ ろ で す れ 違 っ て い る 。 三 人 比 丘 尼 色 懺 悔 』 で 文 壇 デ ビ ュ ー を 果 し た 時 、 尾 崎 紅 葉 は ま だ 学 生 だ っ た 。 一 明 治 生 ま れ の 第 一 世 代 東 京 の 帝 国 大 学 法 科 と い う 不 似 合 な ほ ど に 堅 い と こ ろ に い た 紅 葉 は 、 や が て 国 文 科 に 転 科 す る が 、 翌 年 の 学 年 末 試 験 に 落 第 し て 、 明 治 二 十 二 年 ( 一 八 八 九 ) 四 月 、 二 十 二 歳 の 北 村 透 谷 は 『 楚 囚 い 幸 い と ば か り に こ れ を 退 学 し て し ま う 。 夏 目 漱 石 、 正 岡 子 規 に に ん び く に い ろ ざ ん 之 詩 』 を 発 表 す る が 、 同 じ 四 月 に は 尾 崎 紅 葉 が 三 人 比 丘 尼 色 懺 の 二 人 が 同 じ 大 学 の 英 文 科 と 国 文 科 に そ れ ぞ れ 入 学 す る の は 、 尾 悔 』 で 文 壇 デ ピ ュ 1 を 果 し 、 そ の 前 の 大 日 本 帝 国 憲 法 が 発 布 さ れ 崎 紅 葉 が 退 学 し た 後 の 新 学 期 で あ る 。 漱 石 の 作 家 デ ビ ュ ー は 尾 崎 た 二 月 に は 、 幸 田 露 伴 の デ ビ ュ 1 作 で あ る 『 露 団 々 』 の 雑 誌 掲 載 紅 葉 の 死 ん だ 後 だ か ら 、 二 人 は 関 係 な い と 言 え ば 関 係 が な い が 、 が 始 ま る 。 こ の こ と は 既 に 前 々 回 に 言 っ て は あ る が 、 紅 葉 も 露 伴 し か し 、 尾 崎 紅 葉 の 去 っ た 国 文 科 へ 入 っ た 正 岡 子 規 と 紅 葉 の 間 に は 微 妙 な 因 縁 が あ る 。 同 じ 明 治 生 ま れ の 第 一 世 代 で あ り な が ら 、 も 北 村 透 谷 を 語 る 話 の 枕 に 使 わ れ た だ け だ か ら 、 別 段 記 憶 に 残 る わ け で も な か っ た だ ろ う 。 そ の た め に こ こ で 改 め て 言 っ た の だ が 、 明 治 文 学 の 有 名 人 で あ る 透 谷 、 紅 葉 、 露 伴 、 漱 石 、 子 規 の あ り 方 『 楚 囚 之 詩 』 で デ ビ ュ ー し た 北 村 透 谷 の 死 ま で の 五 年 間 は 、 文 壇 的 は 相 互 に 関 係 が あ る と も 思 え な い が 、 こ こ に 一 本 の 筋 を 通 し て く に は 「 紅 露 」 と 並 び 称 さ れ た 尾 崎 紅 葉 と 幸 田 露 伴 の 時 代 で 、 北 村 れ る の が 正 岡 子 規 な の で あ る 。 透 谷 の 時 代 な ん か で は ま っ た く な い 。 正 岡 子 規 は 四 国 松 山 藩 士 の 子 と し て 生 ま れ た 。 廃 藩 置 県 と な っ 尾 崎 紅 葉 と 幸 田 露 伴 は 同 年 の 生 ま れ で 、 明 治 二 十 一 一 年 に は 北 村 透 谷 よ り 一 歳 年 長 の 二 十 三 歳 。 こ の 年 齢 は 数 え 年 だ か ら 、 尾 崎 紅 て 、 武 士 が 髷 を 切 り 刀 を 差 さ な く て も よ い よ う に な っ た の が 五 歳 Ⅲ 葉 と 幸 田 露 伴 は 明 治 維 新 の 前 年 に 生 ま れ て い る こ と が 分 か る 。 明 の 年 で 、 学 制 が 出 来 上 が っ て 「 小 学 校 」 な る も の が 出 現 す る の は て め 治 維 新 の 年 に 生 ま れ た 北 村 透 谷 を 含 め て 、 彼 等 は 、 江 戸 時 代 か ら 六 歳 の 年 だ が 、 だ か ら と 言 っ て 子 規 は い き な り 近 代 の 子 に は な ら 求 を 脱 し た 明 治 生 ま れ の 第 一 世 代 な の で あ る 。 同 じ 第 一 世 代 に は 夏 目 な い 。 幼 い 子 規 は 髷 を 結 い 、 外 出 の 時 に は 腰 に 小 刀 を 差 し て い て 、 代 漱 石 と 正 岡 子 規 も い る 。 作 家 と し て の デ ビ ュ 1 は ず っ と 遅 い が 、 母 方 の 祖 父 が 旧 松 山 藩 の 儒 学 者 だ っ た か ら 、 小 学 校 に 入 る と 同 時 れ 漱 石 は 紅 葉 や 露 伴 と 同 年 の 生 ま れ で 、 彼 と 親 し か っ た 俳 人 の 正 岡 に こ の 祖 父 か ら 漢 文 の 教 育 を 受 け て い る 。 わ 失 子 規 の 生 ま れ も 同 年 で あ る 。 明 治 の 第 一 世 代 と し て 生 ま れ て も 、 少 年 正 岡 子 規 を 育 て た の は 、 同 じ 明 治 生 ま れ の 第 一 世 代 で あ り な が ら 、 紅 葉 、 露 伴 と 北 村 透 江 戸 時 代 以 来 の 武 士 の 教 養 で あ る 漢 学 で 、 十 代 の 半 ば ま で 、 子 規 第 四 章 紅 露 時 代 こ 、 つ ろ っ ゆ た ん だ ん