なると、企画から商品開発、マーケティングや宣伝、広告、そして販売と、それはそれは 莫大な労力が必要になります。もし売れたら莫大な利益を生む可能性もありますが、そこ には計算だけでなく運の要素も絡んでいます。 この運こそが、マルクスが一一一〕うところの「命がけの飛躍」。真の愛を実らせるには、運 が必要になるわけです。 利益を伸ばそうとするほど、つまりを大きくしようとするほど大きな労働力が必要に なるし、そこに搾取という構図が生まれてくる。前にも触れましたが、資本家は商品の生 産に必要な材料のひとっとして労働力を購人しているのだとマルクスは説いています。 わば、生産をするための「材料費」の一部です。 もしみなさんが商売をやるとしたら、材料費はできるだけ安く抑えようとするでしよう。 そして利益がどれだけ上がろうが、その支払価格をアップすることはないはずです。生産 に必要な金額をできるだけ安く抑えることで、利益を最大化しようとするわけです。 働く人の労働力を生産の手段や材料費ととらえることが資本主義の本質です。そこで搾 取が生まれるのですが、ビジネスを大きくするということは、このような搾取の構造をつ
の額も含めて議論が巻き起こりました。 分配の場に労働者はいない 「企業 ( 資本家 ) は、利益を社員 ( 労働者 ) には分配しない このことは、マルクスが『資本論』で明確に指摘しています。会社に雇われる、雇用契 約を結ぶということはどういうことか。マルクスによれば、そこで働く人はその段階で労 働力を会社に売っていると考えます。 初任給はいくら、賃金はいくらとその段階で労働力の対価が規定されており、その条件 が不服であれば契約しなければいし というのが企業側の考えです。 ですから会社がどれだけ儲かっても、社員個人がどれだけ利益を上げても、それを会社 と従業員の間で分配することはありません。雇用契約で決まった賃金の範囲を大きく超え ることはないのです。利益は経営陣、あるいは株主によって独占され、そこで分配されま す。分配の場から従業員や労働者が排除されていること 。それがいわゆる「搾取、の
抵抗しています。そこで厚生労働省は、対象者の範囲を「年収 1000 万円以上」「企画・ 立案・研究・調査・分析の 5 業務に絞る」との基準を明らかにしました。しかし最近では、 同制度を正社員の年収上位炻 % に適用したいとしています。 正社員の年収上位炻 % とは、年収がほぼ 700 万円以上に当たります。つまり同制度が そのまま導人されれば、年収 700 万円以上の人は残業代はほぼカットになるし、仕事を たくさん抱えて、土日も家で仕事をすることにもなりかねません。 年収 6 0 0 万円で上位 % こうしたことを考えると、これからの時代の稼ぎ方や仕事の仕方が見えてくるような気 がします。私が提案したいのは、今の社会や企業の仕組みの中で、無理をしないで上手に 稼ぎ、生き抜くということです。 先ほど国税庁の調査で平均年収が 414 万円だとお伝えしました。この数字は平均です から、高所得者に引っ張られています。同調査では給与階級別分布も調べており、それに
「会社員」と「大金持ちは矛盾する みなさんはどれくらい年収を得たいと思っていますか ? 500 万円もらえれば十分と いう人もいれば、 10 0 0 万円、 2 0 0 0 万円、いやもっと上を目指すという人もいるか もしれません。ただ、会社に勤めている場合には限界があります。副業をするにしても、 今の時代、年収を増やすのはそう簡単ではありません。 国税庁の民間給与実態統計調査 ( 2 013 年 ) によると、一年を通じて勤務した給与所 得者の平均給与は 414 万円 ( 男性 511 万円、女性 272 万円 ) 。ちなみに、 2003 年の平 均給与は 440 万円で、ここ 2 年は右肩下がりという状況です。 アベノミクスで賃金の上昇が期待されましたが、これもどうやら期待外れになりそうで す。厚生労働省の毎月勤労統計調査によれば、名目賃金は多少上がっているものの、物価 上昇率を加味した実質賃金はマイナスが続いています ( 2015 年 6 月時点 ) 。 仮にアベノミクスが大成功してデフレが収まり、企業業績が飛躍的によくなったとしま
をつくり、それを売ることでを生み出す。もちろんはよりも大きい金額で、そのプ ラスアルフアが利益であり、マルクスが言うところの「剰余価値」になります。 Ⅱ利益 ( 剰余価値 ) たとえば、 100 万円を使って屋台と麺と肉やキャベッ、ソースを買って焼きそばをつ くったとしましよう。その売り上げが 14 0 万円になった。今度はこの 14 0 万円でさら に麺や野菜、肉を買ってさらにたくさん売る。するとさらに儲けが出る。あるいは、まっ たく違うビジネスに投資をしてさらに利益を拡大する。 最初の、 cD からをつくり出すところに労働力が必要になります。ここに労働力をつぎ 込めばたくさんの商品が生産でき、さらに大きな利益が生じる。資本というのは、この ・・を半永久的に繰り返しながら自己増殖していくのだとマルクスは説きます。 マルクスはこの流れをシェークスピアの『真夏の夜の夢』のセリフを使って、文学的に
たことに関しては同じ意見ですが、彼の説が近代経済学の「分配論」に基づいているのに 対して、私はマルクス資本論の「生産論」に基づいた解釈をしています。 前章でお話ししましたが、生産によって得た利潤を資本家と労働者が分配する ( できる ) という大前提に立つのが「分配論」。格差が広がっているのは、その分配がしつかりでき ていないからだというわけです。 それに対して「生産論」では、分配は資本家と地主の間、もしくは産業資本家と金融資 本家の間でのみ行われるもので、最初から労働者は排除されている。労働者がどんなに一 生懸命働こうが、それによっていくら利益を上げようが、賃金は最初から決められている とします。 つまり、資本主義経済における労働者は構造的に搾取されており、必然的に格差は広が っていくというわけです。 立場の違いはあれ、格差が広がっていることに議論の余地はありません。 ところが、その格差が縮小した期間がこれまで 2 回だけあるのです。それは第一次世界 大戦期と第二次世界大戦期です。戦争には莫大なお金がかかります。近代の戦争は挙国一
説明しています。「商品 (>) は貨幣 (0) を愛する。しかし真の愛が穏やかに進んだた めしはない」と。つまり、貨幣は常に商品に交換することができる (0->)0 ところが商 品を貨幣に換える (>-O) ことはなかなかできません。 10 0 円あればいつでもどこでも 10 0 円のガムを買うことができます。と たとえば、 ころが、そのガムを売ろうとしても、同じように 100 円で売れる保証はどこにもありま せん ( むしろ、売れないことのほうが多いでしよう ) 。だからこそ、マルクスは「商品が貨幣に変 わるには命がけの飛躍が必要だとまで言い切っています。 労働力は単なる材料費の一部 まして tD 、つまり 120 円で売って利益を出そうとしたら、それこそ大変です。命がけ の飛躍をするためには、運の要素が必要になります。多大な人間のカ、すなわち労働力を 投人した商品でも売れるという保証はありません。 みなさんも、日常の自分の仕事を考えればわかるでしよう。何か売れるものをつくると 91 第 3 章プロに騙されずにお金を増やすには
章フロに騙されずに 第 お金を増やすには 髜業て稼ぐにはい、 し時代ーー 意外なものが意外な値段で売れる スモールビジネスの大原則ーー % 商品をお金に換えることの難しさ 労働力は単なる材料費の一部ーー 修羅の世界に飛び込む覚悟があるか 映画で修羅場を仮想体験できる リスクをどれだけとるべきか 個人投資家は圧倒的に不利
お金と主体的につき合う マルクスの『資本論』や貨幣経済の限界についてよく話をするので誤解されがちですが、 私自身はお金が悪いものだとか、不要なものだとは思っていません。むしろ社会や経済を 円滑にするのに不可欠だし、上手につき合うことで人生を豊かにすることができます。 大事なのは、お金とどんな関係を築くかということ。その関係性によって、人は幸せに も不幸にもなる。お金はあくまで社会、経済、そして人生の道具であり、手段です。 まず、自分自身が何をしたいのか、どんな生活を送りたいのかという具体的な目標とイ メージを描く。すると、そのために必要なお金がどれくらいなのかがわかるので、仕事に 対する向き合い方も変わってきます。 普通に会社に勤務している限り、収人が飛躍的に上がることはまずありません。前述し た通り、ビジネスの分野で大金持ちになるには、他人の労働を搾取するというたったひと つの道しかないのです。経営者になって社員を雇い、彼らの労働で得た利益を積み上げる。 146
万円の人より、 1000 万円の人のほうが大きな不満を感じているという逆転現象です。 その年収 7 0 0 万円でさえ、会社員として稼ぐことは簡単ではありません。おそらく、 正社員として普通の会社で普通に働いていたら、年収 500 万円がひとつの壁になるはず です。 私のイメージでは、そこから 700 万円に増やすとなると、役職が上がる必要があるの はもちろん、超過勤務は当たり前。それも賃金に跳ね返らないサービス残業がほとんど、 ということになるのではないでしようか それを裏づけるのがホワイトカラーエグゼンプション制度です。産業構造の変化に伴っ て、ホワイトカラーの仕事はこれまでの事務処理的なものからよりクリエイテイプなもの に変わってきました。すると、必ずしも労働時間で成果が左右されません。企画を立てる、 商品のデザインをするなどの仕事の場合、時間や場所を選ばないからです。 そこで、働いた時間で賃金を算出するのではなく、生み出した価値や利益を基準に賃金 を評価しようという動きが、ホワイトカラーエグゼンプション制度です。 これに対しては、サービス残業を増長させ正当化させるとして、野党や労働組合などが 25 第 1 章私たちを衝き動かすお金という幻想