目次 【三日目朝】 【三日目昼—夕方】 【エピローグ】 あとがき 【一日目】 【二日目】 【プロローグ】 319 187 271 311
s コ L 一 ne 編についてはもう改稿しないつもりです。数年後にシリーズが完結したら考えるか もしれませんが、今後は続編に集中します。 少し裏話をしますと、エルム ( エルミイ ) については 3 冊目 ( 長編 ) で多くの謎が明らかに なる予定です。実はそのエピソードの原稿は半分くらい書けているのですが、 2 冊目 ( 短編集 ) のエピソード群が遅々として進まず、なかなか陽の目を見られない状態になっています。 だんじよん村が平仮名表記であることにも意味があります。こちらは 2 冊目のエピソード群 をお読みいただければ、何となく察していただけるのではないかと思います。 : 要は早く続きを書けという話ですね。すみません。 ちなみに初版冊子の裏話ではアトリの名前の由来や、前編ペ 1 ジ・後編 140 ページと いう頭の悪い分量になった経緯などを書きました。これらはいずれ設定資料集などの形で再録 したいと考えています。 と紙面が尽きました。計算通り : : : げふんげふん。名残惜しいですが今回はここまでで失礼し ます。また続編でお会いしましよう。 2 016 年 11 月 15 日未明 ( 〆切前夜 ) ベネ・水代
【二日目】 147 頭上に掲げる。空気穴の周辺を光が照らし上げた。 エルムはにこやかに笑った。 「一応、用心だよ ) 」 「 : : : ありがとうございます」 アトリが浮かべる笑顔はわずかに固い エルムはうなずき、ついと視線を逸らした。 「ええかジャスパ ついでやから覚えとき。ああいう気遣いが女のエスコートには必要なん ゃ。エルムに負けとったらまずいで 「なんだよ急に。お前しつかり見えてるんだろ」 「そういう問題やない ええか、女心っちゅうもんはな」 空気穴の右側を迂回する二人のやり取りが聞こえ、エルムは苦笑をにじませた。深い穴のす ぐ横を歩いているというのにルピニアの調子は変わらない 「エルムもエルムやーーーー」 穴の向こう側でルピニアがくるりと振り向く。 言葉が途切れた。その目は一杯に見開かれていた。 「う、後ろやバカー 「え ? 」
【二日目】 159 かに焦点が合っていない 「エルム、落ち着け、 ジャスパーがエルムの横にかがみ、肩に腕を回す。 「大丈夫だ。誰も死なない」 ゆっくりとエルムの目の焦点が合い始める。 やがてエルムはロを開け、エドワ】ドの手を解放した。 : ジャス、 「ここにいるぞ 「ねえさん : : : は : : : 」 ジャスパーはかすかに顔をしかめ、肩越しに背後を指した。 「あっちだ」 エルムのうつろな視線が指先を追い、ようやく呼吸が整いつつあるアトリの姿を捉えた。 : え ? 顔を上げたアトリは、呆けたようなエルムの視線に気づき目をしばたいた。 「あの、エルミイさん : : : ? 」 「 : : : よかった」
【二日目】 127 脇を締める。 低く構えたショートソードをまっすぐに突き出す。 たしかな手応えとともに刃が白い柄の中心を貫いた そのまま刃を下へ向け、股に当たる箇所までを裂く。 ファンガスは後ろへ倒れ、しばらく痙攣して動かなくなった。 「やった : : : 」 「六体目だな。十体目まではお前がやれ」 「分かった、センパイ」 「そのあとはルピニアの番だ。お前さんなら狙えるだろ」 「任しとき。こんなでかい的なら楽勝や」 「よし」 エドワードは壁にもたれ、どっかりと座った。 「そいつの傘を取ったら休憩だ。水を飲んどけ」
【二日目】 「二階で行き倒れかよ。しかも一人じゃねえだと。どこの馬鹿だ」 エドワードが毒づき、右方を指す。 「迂回するぞ。悪いが構っちゃいられねえ」 アトリは目を見開いた。 「助けないんですか ? 」 「普段なら助ける。だが今は話が別だ。お前らを余計な危険にさらすわけにいかねえ。話し声 がするってことは、そいつら生きてるんだろ ? 俺らは入り口に戻って救援要請を出せばいい」 「それは : : : そうですけど。でもこのまま直進すれば階段への近道です。どのみち近くを通る ことになります」 エドワードは訝しげにアトリを見た。 「この通路はまだ半分も歩いてねえぞ。地図を暗記でもしたのか ? 「ここは交差点。階段はあちらですね」 アトリが静かに進み出て、杖で斜め前を指した。一行が歩いている通路の先から大きく右へ 外れた方向だ。杖が指す先には壁があるだけで、ルピニアの目にも何の変哲もない通路の壁と しか見えなかった。 「階段を左上としたら、縦の通路に文字。横の通路に数字が割り振られています。ここは縦の 通路と、横の 4 番通路の交差点。このまま直進すれば左端の < 通路に突き当たります。右に 135
【二日目】 103 旦那が目をかけるわけだせ。 エドワードはひそかに全身の緊張を解いた。 本来、大蛇は初心者が戦うべき相手ではない。大蛇の動きは素早く不規則で、人間の常識が 通用しない。もしあれが毒蛇だったなら、最初からアトリの魔法で眠らせて始末していただろ しかしエドワードはジャスパーが訓練で見せた反射神経と勘に賭けた。大蛇の初撃を盾で弾 き返した動きは期待以上のものだった。 計算違いだったのはルピニアの的確な状況判断だ。弾いた大蛇が絡みついてくると見抜き、 とっさに離れるよう指示を出す。反撃で頭が一杯になっていたジャスパーが混乱するのも無理 アトリが小さく声を上げたが、言い争う二人の剣幕には到底かなわなかった。 「少し待ってみようよ、アトリちゃん エルムが穏やかに笑う。 「ですけど : : : 」 「大丈夫、ジャスパーはそんなに怒ってないよ。言いたいことを言ったらすぐ飽きちゃうしね」
【二日目】 「あの変人が懐くわけやな。あんたくらいシンプルでないと一緒におれんやろ」 「エルムのことか」 ジャスパーがわずかに苦い顔をする。 「あいつのことは勘弁してやってくれ。害はないだろ、 「それも分かっとる。悪いけどエルムはコウモリより無害や . 「 : : : それはそれで、あいつが気の毒な気がする」 ジャスパーの顔はひどく複雑そうだった。 ちょっといじめてしもうたかな。 ルピニアは壁際で横になっているエルムに目をやった。見た限りでは静かに眠っているよう 「今さらやけどエルムも大丈夫なんか。怪我はともかく、心のほうが相当まいっとるやろ」 「一晩寝れば大丈夫だと思う。さっきも治療術を使ってたしな」 エルムにはそ それもそうか、とルピニアは思う。精神を集中できなければ魔法は使えない れができるだけの余力があったのだ。 ・・と 「ならええけど。魔法使いが二人とも倒れたままやったら、ウチら大ピンチやからな。 ころで」 ーこ見泉を戻した。 ルピニアはジャス。、 181
が二階へ戻ったせいで、この五人は殺されかけた。先導の報酬は受け取れない」 「、、にろ - っ ートラムはうなずき、懐から小さな皮袋を出した。 「だが二階に紛れ込んだガーゴイルを少なくとも四体倒し、上層の安全を確保したな。これは 討伐報酬だ。断るとは言わさん、 ケインは逡巡の後、頭を下げた。 「借りは必ず返す 「かなわねえな」 エドワードは肩をすくめ、金貨の袋を懐に入れた。 タ「さて。あたしにいろいろ質問があるでしようね」 昼 アルデイラが六人を見回す。 目 「まず二階で何があったのか、順を追って説明してくれるかしら。リックたちの話では人狼 日 にまで出たそうね、 「そんならウチが話したる。アトリ、足りんとこは補足頼むわ」 ルピニアが立ち上がった。 「ウチらはケインはんのパーティに遅れて二階へ下りた。通路を 1 番から順に、東西へ往復し 275 ワーウルフ
【二日目】 125 ジャスパーはロの中でつぶやいた。 闇の中、単調な通路を歩き続けることの危険性を、ジャスパーは今になって思い知らされて 「ここからは魔法抜きだ エドワードがささやき声で四人に告げる。 「アトリに頼りつきりじゃお前らも申し訳ねえだろ。ジャス公、お前からだ」 「分かった」 「ところでさっきの追いかけっこな、あいつはどうやってお前を避けたり、逃げたりできたと 思う」 「そりやオレが追ってくるのを見てーーーん ? 」 ジャスパーは一瞬考え込んだ。 「 : : : たぶん目や鼻じゃないよな。目があるなら触られるまで動かないのは変だし、匂いで避 けるなんてオレにも無理だ」 「よし。五感は知ってるな ? 視覚と嗅覚じゃねえなら残りはなんだ」 : ってことはあいつ、音 「味覚は関係ないし、もし触覚があっても離れてちや意味がない 「それなりに頭が回るじゃねえか。ついでにもう一つ、こいつらは生えていた場所から遠くへ で」