止まり木 - みる会図書館


検索対象: だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-
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1. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

矢が当たって動きが止まったところを剣で突く。あのロを黙らせてやる。 一息に限界まで引き絞られた弦は、凄まじい速度の矢を放っていた。 男が間一髪で横に避ける。 肩をかすめた矢が金属製の扉を直撃し、折れ飛んだ。 男は感嘆の吐息を漏らしつつ、腰の辺りから武器を引き出した。幻覚魔法で隠していたのか、 現れた得物は長剣だった。 木 正面から突きかかってきたジャスパーの刃を寸前でかわし、男が長剣を振り下ろす。 ま ジャスパーは突進の勢いをそのままに床へ身を投げ、身体を思いきり丸めて前転した。 止 のプーツの踵すれすれを刃がかすめた。 ん 二回転して勢いを殺し、立ち上がる。振り向いた先の男は追撃する様子もなく、余裕の笑み よ じを浮かべながらジャスパーにうなずいてみせた。 「いい判断ですよ。お嬢さんの弓も見事でした。訓練のときとは大違いではないですか。困っ た子供たちだ 「だまれ ! ジャスパーは再び突きかかった。 カ任せの剣は当たらない。手数を多く。丁寧に小刻みに。人狼を圧倒したエドワードの剣 のように。 ワーウルフ

2. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

だんじよん村の止まり木亭 -StartLine- もで法は よー良脱にジな い出巻ヤい つ やことしきス た込パ ロつろ挙ん一 論らだ句でが つ、も絡 収経た実、み ま験。戦大つ りをで蛇か つ積蛇され つめのえた あば 頭眠際 る面をつ 白正て工 人え確しド を冒にまワ 眺険射えー め者抜ばド い救は がなて出睡 らるみで魔 、なせきの るる術 なとを ド ど判指 ワ ド 工しし は 含 ワたう ーめと み し てのジ た み状ヤ れ態ス ばかパ 定自を 外カ魔 104 次の通路にはコウモリの巣があった。エルムの持っ火に驚いたのか、無数のコウモリが一斉 に飛び立ち五人の視界を埋め尽くした。 ジャスパーの剣は空を切るばかり 相手は小さい上に高速で飛び回るため狙いが定まらない だった。 エルムもたいまつを振ってコウモリを追い散らそうとしたものの、火が離れれば再び群れが 寄ってくる。

3. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

身構える六人の前で、扉がゆっくりと開いた。 姿を現したのは金髪の若い女性だ。 「ここでしたか。みなさんご無事ですか」 その顔を見るや、エドワードとケインはロを開けたまま固まった。 「フィオナさん : : : 」 アトリが呆気にとられたようにつぶやいた 「アトリさんも大丈夫ですね。よかった」 笑顔を浮かべたその女性は極めて軽装だった。ルピニア同様に皮の胸当てを着け、弓と矢筒 シャツやズボン を背負っているものの、腰のポーチを除けば荷物らしい荷物はほとんどない の生地は頑丈そうで飾り気がないが、セミロングの飾りスカートをズボンの上に被せ、実用性 朝と女性らしさを絶妙なバランスで成立させている。 目 : なぜあんたがここに 日 「アルデイラさんに頼まれたんです。夜が明けてもみなさんが戻らないので、様子を見てきて ほしいと エドワードに答え、フィオナは六人を見回した。その視線が縛られた細目の男に止まると、 苦笑が浮かんだ。 251

4. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

あとがき 初めまして、またはご無沙汰しております。サークル「巡風堂」主宰のベネ・水代です。よ く間違われますが水代はミズシロと読みます。大事なことやからきっちり言っとくで。 ここまでお読みくださりありがとうござ 本作「だんじよん村の止まり木亭 -StartLine ・」 います。お楽しみいただけたなら幸いです。 本作はサークル「白羊雑貨店」主宰の Ar 一 es さんとの合作です。 この企画は元々、 A ュ es さんがメインキャラクター四人のラフ画を私に見せてくれて、「こ の子達が活躍する物語を書いてほしい」と持ちかけてくれたことから始まりました。その段階 では「冒険初心者が依頼を受けてダンジョンに潜る」という基本コンセプトがあるのみで、各 キャラクターも「犬少年」や「エルフ娘」というコードネームで呼んでいました。キャラクタ ー達の名前や舞台設定、ストーリーの流れは何度も打ち合わせを行いながら煮詰めています。 とその中で Ar 一 es さんのこだわりのギミックや小ネタを教えてもらい、ストーリーに盛り込んで いきました。 特に、重要キャラクターであるアトリの名前や、作中で彼女が見つけた答えは A ュさんの 案です。私一人ではあの結末にたどり着けなかったことを明記しておきます。

5. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

だんじよん村の止まり木亭 -StartLine- 318 ゆっくりと動き出した馬車に背を向け、アトリは顔を上げた。 深緑の瞳が映すのは三人の仲間たち。 ここからは自分の足で歩いて行ける。この道はもう孤独ではない。 アトリは穏やかに微笑んだ。 「わたしたちも帰りましよう。次の冒険が待っています だんじよん村の止まり木亭 ー Start Line ー了

6. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

店員は懐から一枚の羊皮紙を取り出し、内容をあらためた。 「ルピニア、ジャスパ エルミイのお三方で間違いありませんか」 「連絡やて ? 」 「タベのうちに知らせをいただいております。当店と止まり木亭は親密な関係ですので」 「噂の冒険者支援ネットワークやな。たしかにようできとるわ」 「噂なの ? 亭 木 きよろきよろと周囲を見回していたエルミイが口を挟む。 ま 「あんた、なんも知らんで止まり木亭に来たんか ? 」 止 の 「止まり木亭が、魔王を倒した冒険者の開いた店だってことは知ってるよ。たしかバッタモン んド商会も、あのひとたちがこの村に呼んだんだよね」 よ じ 「そのとおりです。冒険者はダンジョンで価値ある物品を見つけ、当店がそれを買い取る。一 ん 方で当店は装備品などを提供し、冒険者はより強くなる。お互いに利益がある良い関係です 「 : : : もしかして、オレたちの予算もお見通しだったりするのか ? 」 店員は穏やかな笑顔をジャスパーに向けた。 「おおよそ見当はついております。初心者向けクエストの報酬金と、装備類の準備金といった ところでしよう」 「そんなら遠慮なく相談させてもらうわ。正直ウチは武器の相場なんてよう知らんし。言い忘

7. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

だんじよん村の止まり木亭 -start Line- 316 ートラムは馬車の窓から丘を見上げていた。 赤茶。青紫。薄緑。黒。四つの色が個を主張しながら一つにまとまろうとしている。草原の 緑も彼らを呑み込むことはできない。若く希望に満ちた彼らの未来を祝福するかのように、空 の青がどこまでも広がっていた。 「迷宮にお前たちを縛らせはしない」 歴戦の戦士が静かにつぶやく。 葉の茂る枝をあしらった円状の枠。枝に止まり、向かい合ってさえずる二羽の小鳥。 「止まり木亭の紋章や」 ルピニアが立ち上がり大きく手を振った。 慌てて身を起こしたジャスパーの眼下で馬車が停止し、小さな人影が車両から飛び出した。 束ねた金髪を揺らしながら、少女は丘を駆け上がる。二枚の羽が陽光を浴びて美しくきらめ 鳥が、飛んだ。 駆け下りていくルピニアを追い、走り出したジャスパーの頭にそんな言葉が浮かんだ。

8. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

「あー。もうさつばり分からん。結局ウチは怒ってええんか ? それとも感謝せなあかんのか : ごめんなさい。話さないといけないことがたくさんあるんです。長くなってしまいます から、説明は止まり木亭に戻ってからでもいいですか」 アトリが申し訳なさそうに頭を下げる。 「ややこしい話は終わったか ? 」 木 ケインは肩に細目の男を担いでいた。 ま「さっさと戻ってこいつを引き渡そう。そのあとはヤケ酒飲んでたっぷり寝させてもらう。一 の杯くらいおごれよエド。ああ、それとだな」 ん 四人を見回すケインの顔はどこか楽しげだった。 よ じ「止まり木亭に着くまでじっくり聞かせてもらうぞ。どうやってこいつを倒したのか。スカッ だとする話を期待しているからな」 12 不揃いのピースたち

9. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

ルピニアはじろりとジャスパーを睨んだ。 「あんたが驚かせてどうするんや。初対面で匂いなんか嗅いどるからやで」 「そんなにいやだったのか ? だったら謝る。ごめん」 「あ、いえ、そういうわけではないんです 頭を下げかけたジャスパーを、アトリは慌てたように制した。 「止まり木亭であのひとを見かけた覚えがないので、ちょっと気になっただけです。登録して 木間もない冒険者なのかもしれません」 ま「見かけた覚えがない ? アトリは前から止まり木亭にいたのか ? 」 の 「少し前から働かせてもらっています」 村 ん 「ああ、それでルピニアが顔を知ってたのか」 よ じ納得してうなすいたジャスパーだったが、なおも首をかしげているエルムを見て顔をしかめ 「まだ何か気になるのか」 あのひとの匂いを覚えてる ? : ジャスパ 「分かるわけないだろ。ここはひとの匂いだらけだぞ 「それもそうだね。たくさんひとがいたし」 エルムは思案顔で訓練場の出口を眺めていたが、不意に片手で腹を撫でて笑った。

10. だんじょん村の止まり木亭 -Start Line-

「ずいぶん思いきり叩いたんですね。縛ってあるということは官憲に引き渡すんですか ? 必 要でしたら憲兵を止まり木亭に呼んでおきますよ」 「フィオナさん、こいつを知っているのか」 ケインが目を丸くする。 詛 フィオナは首を振った。 「その姿を見たのは初めてです。本当の名前も知りません。どんな顔なのか興味があったんで 木すが、まともな素顔を見る機会はなさそうですね。少しだけ残念です ま ジャスパーは眉を寄せた。 止 の 「あんた誰なんだ ? なんで妖精狩りのことを 村 ん フィオナがわずかに考え込む。 よ 「 : : : 止まり木亭の常連、ということになるんでしようか。アトリさんの事情は聞いています」 ん 困惑するジャスパーらにフィオナは頭を下げた。さらりとした長い金髪がランタンの灯にき らめく。 「リックさんたちが話してくれました。初日からひどい目に遭わせてしまってごめんなさい その男が妖精狩りなのかどうか、確信が持てなかったんです。あまりアルデイラさんたちを責 めないであげてくださいね」 エルムは不思議そうにフィオナを見返した。 252