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検索対象: ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号
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1. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

私、持ってる服で一番可愛いの着て行ったのに、子供つぼくて ピロウ・ト 1 ク 坂本系目立つからって、おっさんの着てたグレーのコート羽織らされて、 そのコートがなんかポソボソしてて嫌だなって思ったのと、あと、 昔の話だけど、私が中学一一年の時、出会い系の人に会ったことが とにかくデカくてプカプカだったから、余計に目立つんじゃない あって。 の ? って感じだったけど、着たまま移動して。ホテルのエレベーター 私まだ処女だったし、好奇心があったし、お金が欲しかったんだ で掃除のおばさんと一緒になってドキドキしたけど、途中の階で降 けど、お小遣い月一一千円だし、その時どうしても欲しいスカートが りて安心して・ : 今思えば、おばさん、なんとなく察してたんだと思 七千円だったし。親が厳しかったから、色々こじらせていたんだと 思うけど、細かいことは思い出せないけど。 おじさんの名前は忘れたけど、下の名前が女の名前みたいな変 『私の処女買ってください。』 わったものだったのは覚えてて。私はナオコって偽名で、同じクラ って書き込みして。まずはパンツ売る、みたいに段階踏まないで最 スの不良の子の名前だったんだけどね。 初から身体売るっていうね。で、何人かメール送ってきて、 彼女、顔はそんなに可愛いでもないのに変な色気があって、体つ 『君の住所はわかっているよ。とりあえず話を聞こうか。』 きとかも中一一つぼくない感じで、なんていうか、肉感的 ? みたいな。 みたいなメールもあって、話って何だよって、キモ過ぎて笑ったけ 授業中に男から電話かかってきて早退したり、先生に喧嘩ふつかけ ど。それはそのままスルーして、岡山の人と会うことになって。そ たりとか。化粧もしてた。家が荒れてて親に見せしめで不良になっ の人、わざわざ新幹線でこっち来るって話でね。 たって噂があって。 お互い写真の交換もしてないのに、すごく楽観的だよね。向こう 私と特別仲が良いとかじゃなかったんだけど、彼女のこと、少し も私も、お互いに問題ない人間が来るって信じてたんだもんね。 憧れてたのかな。 私、わかんない位に眉毛剃ったり、スカート短くしたりするくら それから、休みの日に待ち合わせて、駅に着いたら公衆電話から いだったから、彼女の名前を借りて、彼女の強さみたいなのを借り 電話かけて迎えに来てもらって。携帯は持っていたけど番号バレた たような気分だったんだと思う。 ら怖いと思って、言わなかった。変なところ気にするのが中学生の ごめん、自分で言ってて良く意味わかんないかも。 ガキって感じでさ、で、四十代位のおじさんが来て。髪がちょっと 長くて、 ーマつぼくて、眼鏡かけてて、痩せてひょろっとしてて。 おじさん、自分はミュージシャンやってるって、 OQ くれて、自 そんなャパそうな感じは無い普通の人だったかな。 分でパソコンで作ったやつ。

2. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

文句言わないの 女 しばらく、無言で、生肉と格闘する 男 1 あーだめだ。ちょっと焼いてくるよ。塩コショウも欲しい は、ま、。卩約してよ 女 男 1 へ刀かってるよ。君は 女 私はこのままでい、。 男 1 、部屋の奥へ、自分の皿を持ってい 女、肉を食べている と、部屋の奥から、男 1 の「おえええ」と、吐く声のする 女、気に留めす、そのまま完食する 男 1 、于ぶ、らで戻ってくる 女食べなかったの。 男 1 や、向こうで食べてきた。 あ、そう 女 男 1 : あと、どれくらいもっかな。 : さあ 女 男 1 今、見てきたんだけどさ。その、死体を うん 女 男 1 あいっ元々痩せてたけど、もう、ほとんど骸骨だな。 笑、んないよ 女 そ、つだな。 男 1 皿も洗ったよ。 うん 女 男 1 あれかいよいよ骨だけになったら、とうするんだ。 女 骨は洗ってあげよう。本当は火葬したいけど : 男 1 死んだやつのことはいい。 生きてる俺達のことだよ 女 この部屋にいるんでしよ。 男 1 いるだけ ? いて、何も食わず、死ぬのか ? 女 人間、水だけで川日は生きられるよ 男 1 その後は ? 餓死 ? 女 私はそれでいし この部屋でしばらく生きてきて、死ぬの も悪くないって思えてきた。 , 目殺なんてできないけど・ 男 1 僕は嫌だ死ぬためにわざわざこんなところに来たんじゃ ない。せつかく、君を連れて来たのに。また食べ物を探してこない と。外に出て 男 1 それでいし ? 男 1 君も、食べ物があったら生きるだろう。 女 あれば食べるけど : : でも、私は手伝わないよ。それでい いの ? 男 1 うん。それでいし 歩 ( は、君と生医、ていきたい : それ、プロポーズ ? 女 男 1 : まあ。うん 亠め・り・カと、つ 女 う、うん 男 1 ここか、ら出て打こ、つなんて老・えない

3. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

での旅。そして冬になり、一一月になって、私はこの旅を決行した。 救済論 下園知弥イギリスという国に対してさして思い入れがあったわけではな い。放浪の旅への憧れ、英語に限定される外国語力、アメリカへの 今から十年前になる。その当時、私は、死のうと考えていた。「死 のうと考えていた」というのは、「死のうと思っていた」よりも近嫌悪、そういったさまざまな要因から半ば必然的に出てきた結論で しく、「死を決意していた」よりも遠い、そんな死に対する距離感あった。ただ一つ、イメージはあった。それは、遠い遠い異国の地 である。ただ思いを募らせながら日々を過ごしていたわけではなく、で、崖から飛び降りるイメージだ。そのイメージに適う場所を持っ 計画があって、それを実行する用意があった。しかし、それを実際ていて、私の要望にも適う国が、イギリスだった。そうして、私は に行えるほどの覚悟があるわけでもなかった。当時の心境を正確にイギリスに渡った。 言い表すのは難しい。しかし、一つだけはっきりと一一一〔えるのは、死最初の三週間は、ただ、イギリスという国を放浪することを愉し に対する強烈な意識である。私は、確かに、自殺という出来事が自んだ。北はサーソー、南はペンザンス。バスをひたすら乗り継いで、 分にも起こり得ると考えていた。そう信じていた。 日が昇ってから沈むまで歩き続け、旅の感覚を味わうことに没頭し 当時私の心を支配していたのは二つのものであった。一つは、芥た。その日々で、私の心を強烈に捉えたのは、郊外の自然の美しさ、 川龍之介の最期。「将来に対するぼんやりとした不安」という、あそして「キリスト教」であった。イギリスがキリスト教プロテスタ の印象的な言葉だ。芥川が何を思いこのような一言葉を残したのか、ントの国であることは、もちろん教養として知っていた。教会建築 私は知らない。しかし私は、この言葉に、自分の精神的貧窮から来も映画などで何度も観ていた。しかし、街と教会の気負いのない一 る不安と同種のものを感じていた。私は物質的に貧窮した経験がな体感や、教会内部のえもいわれぬ静けさ、あそこで私が直に感じ取っ しかし精神的には、大学に入った時から、あるいはそれ以前かたあの空気は、私の知らないキリスト教の姿であった。いっ頃から ら、ずっと貧窮に悩まされていた。その貧窮が私を不安にさせ、そだっただろうか、旅の最中に、私は、キリスト教とは本物の宗教な の不安が私を殺すのだ、という奇妙な想いに囚われていた。いま一のだろうか、と考えるようになった。 つは、クリス・マッカンドレスという青年の生涯だった。自分とさキリスト教に限らず、あまねく宗教というものは「救済」を語る。 ほど変わらぬ歳で、途方もない決断をし、その決断に「殉教」した人類学の立場から言えば、「救済」を求める人々の普遍的な心性が、 青年がいる。クリスの情熱の根源は資本主義・物質主義の文明社会土着の文化と結びついて固有的に儀礼化され、形式化され、一つの に対する絶望であり、その点では私も彼と同じであった。この二つ共同体として結実したものが、宗教だ。この立場において、宗教は のものが私の中で混ざり合った結果、私は一一十歳の秋、旅に出る計人間が造ったものであり、神は人間の想像の産物ということになる。 画を立てた。イギリスへの旅。一一度と日本に戻らぬという心積もり人間がより善く生きるための道具に過ぎないのである。しかし、こ

4. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

"Annani as and 「はい、その金額です。」 信じた人々の群れは 心も思いも一つにし 一人も貧しい人がいなかった 一人として持ち物を 自分のものだと言う者はなく 全てを共有していた 上地や家を持っている人が皆 それを売っては 代金を持ち寄り 使徒たちの足元に置き 「わたしはしりません。」 「わたしはしりません。」 Sapphira" つなとしき 使徒たちの足元に置きその金は 必要に応じておのおのに 「あげたでしよう。」 おのおのに分配されたからである 「しりません。」 「あげていたでしよ。」 「しりません。」 「その金額です。」 「食べますか。」 「私たちを神のもとに導くのは食物ではありません。」 それから母親は神殿の境内に入り そこで貧しい人を皆追い出し 「私の家は、祈りの家と呼ばれるべきです。」 「ところが、あなたはそれを強盗の巣にしています。」 41

5. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

を覚悟していなかった私は、夜が明けるまで、ただただ崖の前に立つ一一一一〔えば、私には最初から死ぬつもりなどなかったからだと言える。 ているだけだった。神は現れず、奇蹟も起こらなかった。この断崖だから、私が自殺できなかったという事実と、神の存在を結びつけ で起きた最後の出来事はこうであった。夜が明け始めて、ふと、自るのは、理に適った結論だとは言いがたい。しかし、それでも、思 分の立っている場所から東の方を見ると、崖の上に人影が立っていわずにはいられないのだ。あの人影はキリストだったのではないか、 た。遠くて顔は見えない。しかしその人影は、確かに私の方を向いと。 ていて、微動だにせず、じっと佇んでいた。私は、視られている、 運命の日というものがあるとしたら、私にとってそれは、イギリ と感じた。たった一歩を踏み出せないでいる臆病な自分を視られてスの断崖で海原を見つめていたあの日に他ならない。しかし、あの いる、と感じた。羞恥の感情と、言い訳めいた思考が私の中を駆け日の出来事を他人にどのように伝えるべきかは、迷うところが多い 巡り、まもなく私は、崖に背を向けて、ホテルに戻った。そうして、だから、他人にはあまり話したことがない。この原稿を書いている 昼になる前。 ( 」こまもう、ホテルを後にしていた。逃げ帰るようにして。今も、果たしてこのようなかたちで記すべきだったかと、迷いなが それから先、イギリスでの私の足跡について、語るべきことはほら書いている。読者が思い思いに解釈してよい類の話であれば、私 とんどない。一事が万事、何処に行っても私は自殺を決行できず、の迷いは杞憂だろうけれども。しかし私は、やはり、この話の解釈 最後に、自殺の名所と言われるセプンシスターズの崖で、自分にはには一つの方向性を持たせたいと願う。 無理だ、と悟った。そうして日本に戻ってきた。私の旅は、それでこの小話の題は、そんな作者の我儘によって付けられたものである。 終わった。 そのような話として、私の運命についての小話を受け取ってもらえ あれから十年が経った。あの旅から、私は一一つのものを持ち帰っれば、幸いである。 た。一つは、自分は到底自殺などできる人間ではないという実感。 もう一つは、キリスト教への関心。自ら死ぬことはできないのだか ら、とりあえず積極的に生きるしかないだろうと思い、自らの関心 の赴くまま、地元のキリスト教系大学の神学部に入った。キリスト 教徒と対話しながら、学問に専心し、神学の学位を取った。それか ら大学院に進み、今も、神学の研究を続けている。 今になって私は思う。あの時、私は神に出会っていたのではない か、と。人生で最も死に近づいていた時期、結局、私は死ななかっ たのだから。それはもちろん自身の臆病の故であるし、つきつめて

6. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

と思った御仁である。土偶、勉強しかできない。故に、平日休日全「下衆のお前がか。急いたんちゃうか。結婚は墓場やで」 てに資格試験に費やし、受ける試験は全て通るのだが、全く仕事に「いえ、寄り道です。下衆の寄り道。私にとって、結婚は寄り道ですよ。 活かせないポンコツである。しかし、同情に値しないことに、彼女帰り道は一人、増えているかもしれませんが」 は勉強出来ない人間を鼻で笑う癖がある。 そして私は東京都庁の上で「伴侶となって大阪に来て下さい」と お局は今や年齢だけで女性陣のマウントを取れる位置にある。そプロポーズした。 の気分一つで男性陣の評価を書き換えられる力を持っている。 しかし、世の中はよく出来たもので、お局の力はありんこ以下だ。 なぜなら私は女性陣トップを既に攻略していたからである。どんな 手かはご想像に任せよう。忘れて欲しくないのは「私は悪い事はし ていない」だ 狭い世界のカンカンの中で戦いをギリギリでやるのも飽き、そもそ も小説を書きたい私であったというところに戻ってきたとき、「酒 に逃げている」と友人から指摘があった。 確かにそうだ。しかし、どうするのか 「君の評価で協調性がない、とある」 ポーナス後の面談で支店長は高々と述べた。 何を以て為て協調性とするのか、何の話もない 空気を読め、というならば確かにそうであろう。一連の出来事が 目に浮かぶ。しかし、仕事の効率でいえば私が正しいに違いない そこはサラリーマンで、わけのわからない説明対し、わけのわから ない返答をして終わった。 部屋を出て嘆息する私は、唐突に「結婚しよう」と思い至った。 金はないのに。いや、ポーナスは残っている。 おっちゃんと車で融資開拓に行く。 「結婚しますわ」

7. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

Kawahara Netarou 1 ` 、 C9 生 学 大 現 の 身 出 岡 福 私は、現役大学生です。市内の大学に通いながら、芸能活動 をしています。作詞作曲や歌、ギターもしています。今回、偶 然募集を見かけ、興味を持ちました。私は、気持ちを声にする のが苦手な分、いかに文字にして気持ちを伝えていけるかを考 えました。「私たちの運命の 1 日」がテーマということで、運命っ てなんだろう。皆さんは、運命って信じますか ? こうして生活 ができていること、毎日生きてることって運命なのかな。人は 支え合いながら生きています。苦しい時、悲しい時、誰かがそ ばにいてくれるだけで人って変われるんです。 / い物る、 齋藤優生 S ait 0 u Yuu 走いも 疾てか カつだ 全な何 き事ル 向」ン ろるヤ ジ てる 人書て をいい 歳辯墻な 寝 6 3 は人て 住段本っ 在普 阪。が分 大中るう 運命の一日がテーマ、という事でこれは困りました。 というのも私には人生において運命の一日と呼ぶべき日がそ もそも思いっかないからです。どれ程いい加減な人生を送って きたのかという声が聞こえてきそうですが、実にその通りです ( 赤面 ) 。 運命といえばやはり定番は進学・就職・結婚、子供がいるな らその子の節目に関わるようなものを挙げるのが無難なやり方 でしようが、あいにく私は高校受験は実に投げやり、大学は 5 回受けたのでどれが運命だか分からず就職活動はまともにしな かったので合格通知や入社式とも無縁、とどめに未婚なのでそ の方面は全滅です。いっそ大病や大怪我でもしていればその切 り口から運命を覗き見ることも出来たかもしれませんが傷病歴 も特になし。 このままでは本題に入れぬまま文字数制限を越えそうで焦る 0

8. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

ひょろ長も変わり種で、情熱が怒られない為に全振りされていて、 下衆の寄り道 上住断靱その為ならなんだってやるイカレたおじさんである。 宵越しの金がない しかし、彼でも 持たないのは江戸っ子だが、持てないのは文士ではないだろうか。「そりゃないやろ」 一一十代半ばは宗右衛門町に出入りして、親から貰った金を使い果た というほどの事だから、即座に注意へと赴いた し、物書きが過ぎて、酒を飲む以外の金は本とお金に消えていった。返すお局、号泣して「わたしは何も聞かされてない」と汚い顔で 会社で定年を迎えたおっちゃんからは「滅茶苦茶な男」と呼ばれ訴えた。 ている。 私は、そんなに嫌なら仕事を辞めればいいのにと眺めていた。が、 友人からは「不良銀行員」と呼ばれている。 驚いたことに、周辺の上司達はうろたえたのである。一銭の価値も なんにせよ、私は悪い事はしていない。遣り果せる事や失敗が、ないプスの涙にー 常の男と違うだけである。それは特別ではなく、ただ我が人生を遊結局、私はひょろ長に呼ばれ び尽くしたいという一貫した理念の元に自分勝手に過ごしているだ「もう少し人の気持ちを考えてや。相手の仕事がやりやすいように けだ。勿論、他者は顧みる。ある程度のところまで。 とか」 私は書類を確認すると、お局のところへと持って行った。 と説教される羽目にあった。 これがまた嫌な奴で不機嫌だと無言で書類をひったくり、機嫌が客にも頭を下げ、能力スライム以下のプスの機嫌まで取らなきや 良ければぶりつ子する、顔も悪けりや正確も悪いプスの中のプスでいかん事になったわけだ。 ある。因みに私が「プス」と呼ぶ唯一の存在だ。 それならば、何も案件を取らなければいいわけである。 「わたし、忙しいから自分でやれば ? 」 私はバイクを走らせ、大阪城公園の花見を見物し、トレジャラー 今日はどう出てくるのかと思ったら、「なら、あんたいらんやろ」という英国の煙草を吸いながら、愚痴をこぼした。 と返したくなる返答できた。 その裏でお局も愚痴をこぼしている。 金融機関はその性質からして、営業が持って帰ってきた案件は事エステがどう、結婚がどう、男がどう、などだ。 務方が処理をする。そうしなければ、客と組んでお金を勝手に増や女性陣は白い目で見る。 し、そのおこぼれを貰うなど不正がやりやすくなってしまう。 ほとんどが結婚しており、お局の話に目を輝かせているのは今年 ひょ 流石にこれではまずいので、私はひょろ長の上司に「こんな事言っ入った高学歴新人ぐらいだ。この新人、あだ名が土偶といい、 てまっせ」と報告した。 ろ長が面接の司会を務めたのだが、「絶対に落ちる。いや、落とせ」 4

9. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

つにひっかかって住んでいる。今の町から猫の窓辺をおもうとき、 あまりにも遠い、とおもう。遠い網目の端と端だ。あの道を再び毎 日通るようになることは、おそらくないだろう。そして今のいつも の道も、いっか通らなくなるだろう。道は毎日通っていると永遠に おなじ日々が続くような気がするが、あるとき、ふとした理由の積 み重ねで、違う道をたどる日々が始まる。そしてずいぶん遠くまで 来て、ふいに猫たちのことを思い出す。白い猫たち。レ 1 スのカー テンを背に、いつも外を見ていた猫たち。いっか季節にまぎれてそ 知らぬ顔で、昨日の続きを始めるように、あの窓の前に立ち、猫に 手を振ってみたい。 ス日と果 めのに効 始ク相 を 読マ業 ン詩日 詩町プとの り伎刀一児墾 子 よ舞オ育開 頃歌っの 年に立ば催 3 心もと主キ 0 中にこ」み 野 論 人西一行き目 、冫詩関テ発ぶを 立ったままあんドーナツを貪り食べた冬の日から数ヶ月が過 ぎ、猛暑の夏を迎え、出産予定日きっちりに帝王切開術にてあ こ丁寧に額にあ んこちゃんはわたしのお腹から取り出された。、 1 ずき粒のようなほくろをくつつけていて、帝王切開の麻酔で頭 らりらりだったわたしはお腹を縫われながら上半身だけでえへ えへと笑った。ひとしきり笑った後にようやく息子が産声を上 げたので今度は阿呆のように泣いた。 生まれてからもしばらくあんこちゃんと呼んではいたけれど 男児だったので名を安吾とした。かの昭和の文豪・坂口安吾と は何ら関係がない。自宅の前の公園には毎年桜が咲くのだけれ ど特に何の反応もしない。死体が埋まっているとか言われても 困るだけなのでそれで良い。きっと大きくなったら国語教師に でもからかわれるんだろう。文学コンプレックスが露出しちゃっ たような名前、しかも母親は詩人。笑われるよな。でも笑われたっ てぐれたって息子とわたしの関係、それはやつばり好きとか嫌 いとかじゃない 母親になってから夜更かしができなくなった。いつも朝に詩 を書いている。書いてからようやく 3 歳になった息子を起こす。 朝食は大抵パン食だ。今朝は安い缶詰で小倉トーストを作って やる。喜んで頬張る。桜色の薄い唇のまわりを真っ黒にしてい るので指であんを拭い、舐める。くすぐったがりの息子は、た だえへえへと笑う

10. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

「外に出たい ? 」 「サンプルは届けたのか ? 」 「そう思ってました。ちょっと前までは。今はよく分かりません。「発送はしましたが何しろ夜です。返って来るのは明日ですね。まあ、 僕らが外に出る事がどういう事なのか : ・分からなくて」 ただの風邪だと思いますよ」 「そうね。私も : ・あなた達が卒■する事が本当に良いことなのかど「安心は出来ん。検査結果が分かるまでは隔離しておけ。万が一と うか、分からなくなることがある」 いうことがある」 独り言のように >- 先生は呟いた 「分かってます。分かってます。何しろ、シュウカ■前の大事な体 「外の世界には、色々な人がいるわ。良い人もいるけどそうでないですからね」 人もいる。あなた達をただのモノと同じように消費しようとする人「あの子達をまとめて廃棄処分にするような事は万が一にもあって も沢山いるでしようね」 はならん。くれぐれも気をつけてくれ」 「前にオザキが同じような事を言ってました。でも特子や他の先生それは高熱が生んだ幻聴か夢だったのかもしれない。声の主が誰 はあいつの言うことには耳を貸すなって」 かも分からぬまま俺は断続的な眠りに飲み込まれた。 「私がこんな事を言って良い立場ではないことは分かってる。でも 時々考えてしまうの。ここでは誰もがあなた達を大切に思ってるわ。 オキャクサマが学校に来る。 そこからあなた達を外へ送り出すことが、どんな意味を持つのかっそう聞かされたのは蒸し暑い初夏だった。 先生達は総出で学校を隅から隅まで片付け、掃き清め、磨き上げ、 今の俺にはそのとき先生の表情の意味が分かる気がする。だが俺達にもくれぐれも失礼の無いように言い含めた。 その時の俺にはオザキの言葉以上に全く分からなかった。先生の目当日、俺達は運動場に整列してオキャクサマを迎えた。 は俺を見ているようでも、俺のずっと向こうの何かを見ているよう初めて見たオキャクサマは、何だか奇妙だった。 でもあった。 当時の俺の頭では上手く一一一一口えないが、印象として何か骨格や肌の 艶が俺達とは別の生き物のように思えた。 その晩、俺は熱を出した。 これまで学校の外から来た人を遠くから見たときにも、同じ印象 何度も嘔吐し、息を切らす俺を先生はっきっきりで看病してくを持ったことはある。だが間近で見るオキャクサマにはもっと強い れた。 違和感、はっきり一一一口えば嫌な感じを受けた。 高熱と悪寒にうなされる俺の耳に、途切れ途切れに誰かの会話が数十名でぞろぞろと入ってきたオキャクサマは俺達をじろじろと 聞こえてきた。 眺め回した。いつもの外から来た人達の鋭い視線とは違う、胡乱で