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検索対象: ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号
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1. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

し 9 り一日 O で 団仮 @ 布 会 りす たま し 福 作 をすた 、カ す . こト や きょウ ま く人 本 か会 土社 アから 運命、だとされる瞬間は世の中に様々あると思う。だけど全 部をざっくり言ってしまえば、生活や考え方がパラダイムシフ トしていく瞬間のことが運命だと思っている。 このエッセイを書いている今日は 20 一 7 年の 3 月末日。どう やら今月で大学を卒業するらしい。就職先は決まっているので、 これからも時間割表をスケジュール帳に持ち替えて時間とのに らめつこは続いていくのだけど、今日でバスの学割定期券を使 えなくなることが目下最大の問題だ 私の乗るバスの学割定期券はシステムがちょっと変で、学生 0 0 0 0 0 」第■第第 の間は乗り降りできるバス停の区間を指定するのではなく、周 りの 7 つの市全体なら、どこへでも乗り降りができるようになっ ている。小学生の頃からこのシステムと暮らしてきたから、思 春期の真っ盛りは家族と喧嘩をし次第、お金がなくても家を飛 び出て、なるべく遠くへ行くバスの、乗ってる時間だけで半日 を過ごす、みたいに過ごしてきた。なんなら 1 日のなかで親の 顔を見る回数より、バスに乗る回数のほうが多いくらいだった。 そうやって、親よりバスの定期券システムに甘やかされるくら いに育ってしまったので、学割定期券を使えなくなる明日から は、 = 移動 ' の一般的な常識とは馴染めないこと間違いなしであ る。頭を抱えるしかない 社会人って移動、どうしてるんだろう。海を見たくなったら 海に寄って出社、とかできないんだろうな。 社会人なのだから、遠出するには相応のお金を払うか自分で 車を運転するかが必要になることも、それを簡単にできるよう になることも分かってはいるんだけど。だけど、これまでどこ へでも簡単に行っていたその簡単さと、これからの簡単さには 大きな違いがある、のだと思う。その違いが何なのか、それが 変われば私の行動も変わってしまうのか、それもよく分からな いままに、学籍から放り出される運命前夜、とりあえずは頭を 抱えて布団に潜り込んでいる。

2. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

「俺も良くは知らんが、鉄の塊に体を括りつけて海に放り込んだんは差し掛かるところだった。 だそうだ。トクベッコウゲキタイに参加するのは名誉な事とされ、俺は今海の上を走っている。一瞬、自分の境遇を忘れて俺は興奮 した。 皆すすんで生贄になりたがったらしい」 「俺には全く分からない。お前には分かるのか、そいつらの気持ち近付いて見た海は俺が思っていた物とは随分違っていた。直線に 見えた水平線は、無数の凹凸が立っていた。水面に沢山の鳥が群れ 「もちろん分からんよ」 ていた。目を凝らすと、鳥は水中にいる何かを捕らえて食べていた。 オザキはまた笑った。 人間が乗った見慣れない乗り物がいくつも浮かんでいた。世界は俺 「ただ、生贄になる人間はこう言っていた。『ャスクニで会おう』」が思っていたよりずっと広く、驚きで満ちている。だがもう俺がそ 「ヤスクニ ? 」 れを知ることは無い。 「これも良くは知らんが、当時の人間にとっては故郷のような場所やがてトラックは橋を越え、再び山の中に入った。いくつかの丘 だったらしい。どこで死んでも、魂はヤスクニに帰る信じられていをトラックは越えた。その中の一つに、学校の校舎とよく似た建物 たんだと」 があった。一瞬、その窓の中に特子の姿を見たような気がした。狭 「俺らの魂はどこに帰るって一一一口うんだ ? 」 い室内に繋がれ、自慢の乳房を絞り続けられていた。壊れた人形の 「さあ、どこだろうな」 ように弛緩した目は、何も見ていなかった。 オザキは寝床に敷かれたワラを一本口に咥えた。 坂を上り切り峠を越えた向こうに見覚えのある景色が見えた。鉄 「だけど俺は思うんだ。奴らに殺されることは、奴らに屈服するこ板を張り合わせたような無骨な外観。半年前に迷い込んだ施設。海 とじゃない。殺されながら勝利する方法がある。きっと、生贄になつを越えた先の場所まで俺達が辿り着いていた事に、俺は軽い衝撃を た人間達はそれを知っていたんだ」 覚えた。 「吉・コーポレーション」 トラックは山間を抜け、町へ続く道に入った。立ち並ぶビルが目そう書かれた看板が脇にある門が、ゆっくりと開くのを待って、 の前に迫って来る。あれほど来たかった町に、こんな形で来るとはトラックは血生臭い匂いのする敷地内に滑り込んだ。正面を迂回し、 思っても見なかった。 建物の裏側に回りこんだ所で、俺と二、三の仲間はトラックを降ろ ビルの隙間から銀色に光る直線が見え始めた。海だ。トラックはされた。俺を待っていたのはあの日のままの行列だった。最後尾に 海に向かって走っていた。海は町の真ん中に大きく湾曲して入り込俺達は並ばされた。 み、その端から端まで一本の橋が渡されていた。その橋へトラック鉄錆びと血と油の匂いがする裏庭で、俺達は何時間も待ち続けた。

3. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

ある晴れた昼下がり、一台のトラックが俺を迎えに学校へやって めんね。涙声で繰り返す先生に俺は返す言葉が見つからなかった。 俺達は一人ずつ校長先生に呼ばれた。この日だけはあだ名ではな来た く正式名称で呼ばれる。と言ってもただの番号だが。 特子は三日前、オザキは前の日に別の車に連れられて行った。 「番、旭ケ■動物園」 閑散とした校舎の前で、俺は二、三の仲間と共にトラックに誘導 特子の親友の花子はそう告げられて嬉しそうにはにかんでいた。された。車に乗り込む寸前、 >- 先生の姿が見えた。とっさに俺の胸 それぞれが違った行き先を告げられた。喜ぶ者もいれば落胆するに一縷の希望が湧いた。卒■式の前の晩にしたように、俺を助け出 者もいた。「カル■ス闘牛場」行きを告げられたオザキは証書を引してくれるのではないか。俺は必死で先生に合図を送ろうとした。 き裂き、校長先生に突っかかった。先生達があわてて壇上に駆け上最後にははっきり声を上げた。だが先生の目が俺を見ることは一度 がり引き離した。 も無かった。 考えてみれば当たり前だ。人間に俺達の一一一口葉は分からない。俺達 「行番」 ついに俺の名前が呼ばれた。 が人間の一一一一口葉を分からないように。分かった振りをしていただけな 不思議と期待も不安も感じなかった。冷えている頭の中に心臓ののだ。先生がかけてくれたと思っていた一一一口葉も、本当のことだった 音だけが別の誰かの物の様に激しく鳴っていた。 のか今では確信できなくなった。 「吉・コーポレーション」 俺達を乗せたトラックは校門を出て坂道を下り始めた。途中で何 その言葉を聴いた瞬間、心臓の音が連続した轟音になって頭に襲度か見覚えのある景色が見えた。俺達が何時間もかけて歩いた道を、 い掛かった。校長先生の姿が歪み、戻ったときには天井が見えた。 トラックは十数分で駆けた。 吉■コーポレーション。俺はその名前を知っていた。自分が誰か も、学校がどういう場所かも、自分のこれから辿る運命も、知りなあの日、卒■式の後で俺の所に特子が来た がらただ見ないようにしていたのだ。 「落ち込んでる ? 」 薄れ行く意識の中、特子の名前が呼ばれるのを聴いた。「 90 番、特子は言わずもがなな事を訊いた。彼女は勝者で俺は敗者だった。 ・・ディ」壇上に上がった特子は誇らしげに胸を張っていた。 初めて特子を疎ましいと感じた。 「濃い牛乳を出し続けるんだよ」 「でも、遅いか早いかの違いかもよ」 校長先生が特子に言った。はなむけには奇妙な一一一口葉だ。そう思っ特子は俺の隣に腰を下ろした。 た所で俺の記憶は途切れた 「乳牛の平均寿命は 5 年程度なんだって。その後は乳が出なくなる から、食肉用に回されるらしいわ」

4. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

女外に出るとか 男 1 外に出ても、何も変わらない 女 それを言うなら、ここに居続けても、変わり続ける。 男 1 ・とういう意朱 女 あなたか言う変わらない っていうのは、何か事・件のこと を宀一口ってるんでしよ。 尢黙 男 1 み、、フー々ネも 女 私か ~ = ロってるのは、もっと大医、な赤久化のこと 女全然 男 1 事件は、大きな変化じゃないの 男 1 ん。 女 もっと。大きすぎるものは、例えば、地球の位置が変わり 女 時間、経たないね 続けてるのとか、大地が動くのとか言 = 。 忍叺しないでしよ。 男 1 そうだね 田刀 1 うん 女 これから、すっとこんな感じ。 女 私、そういう変化を、たまに認識してみるの。本当に体感 男 1 そうだろ、つね できるわけじゃないんだけど、意識を向けてみると、違うの。じっ 女 とうするの 自分 と、部屋に一人で 1 時間とか、長い時間いても、退屈しない 男 1 夜まで ? ・ の身体が変わり続けることとかを、認識するの 女 というか夜まで時間が経って寝ても、起きたらまた同じ男 1 でも、本当に地球が公転してるのか、とか、分からないよ でしよ。 女 認識するの。本当にそ、フじゃなくても関係ない 男 1 そ、つとは限、らない。状况がまた亦久わるかもしれな、 男 1 まあ、歳は取るわけだし、身体はこの瞬間にも変わり続け 女 今も、状况は変わり続けてるでしよ。 てるんだとはうけど。その、さっき ~ = 0 ってた、外に出ても変わら 男 1 そ、フだけと。 って、あ、僕が言ったことだけど、それを君は否定するよう 女 私たちは変わらなくていいの な言い方をしたよね 田刀 1 赤久えよ、つかない 選択肢が無いんだから。 女 否定 ? ・してないよ 女 選択肢ならあるわよ。 男 1 : なんて言ったつけ、実が、外に出ても変わらない 男 1 て言って 男 1 女 ( 笑って ) 男 1 ( 笑う ) ( 水を飲む ) 女 ( 水を飲む ) 男 2 ( 水を飲む ) : ごめん。 っ

5. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

中学の制服に着替えて、制服って着崩した方が可愛いってその時もずっとミントの匂いが顔にこびりついてて、家に帰って顔を洗っ は思ってたから、いつも通り着たらね、おじさん、無一言のままで私たけど鼻の奥の方にまだミントが残っているみたいだった。 のセ 1 ラー服の前ホック留めだして、袖のスナップ一個ずつ嵌めて。 あと、貰ったは駅のゴミ箱に捨てて帰ったんだけど。 スカ 1 トの丈、短くするために付けてた安全ピンも、腕にプレスみ たいに着けてた黒い髪ゴムも取られてさ。 それからは、身体売るとか、他の悪いことも何もしなかったよ。 「制服はそのまま着るのが一番可愛いんだよ。」 でも、その一日で、それまでの自分の普通の生活とか、普通の友 って言われて、納得いかなかったけど。 達とか、親からの愛情みたいなのとか、全部だめにしちゃったなっ て。おじさんも私と同じで、全部だめにしちゃっていて。そして、 脱いだら白プリーフ履いててドン引きしてさ、なんか色々ぎこち世の中にはそういう人たちが、沢山居るんだなって悟っちゃったみ ないし、あっ、この人童貞だ、って途中で気付いて。私、慣れてるたいな。悟りとか一言うと大袈裟だけど : ・わかっちゃった、知っちゃっ 人に軽く済まして貰うつもりだったから、どうしようって思って。た、みたいな。 結局入んなかった。おじさんのほうは擦ったりしてたら勝手にイっ 売れないミュージシャンで、新幹線で中学生を買いに来る白プ てたけど。 リーフ履いてる人間とか、そういう人間に自分の処女を売りつける 四万円貰う約束だったんだけど、おじさん、一万円札を五枚出し人間が居るなんて考えもしないで生きてたし、これから時間をかけ てべッドの上に置いて。三秒位して、多く出したのに気付いて、慌て、順序立てて知っていくはずだったのに、色々と端折ったなって。 てて札を引っ込めて。その仕草がなんかすごい哀れだったし、一万いや、知りもしないで生きてたかもなんだけど。 円多く貰えるかもって一瞬思った自分もすごい哀れな感じがして。 あつでも、そういう事があったから、色々巡り巡って君と会えた 「本当は仕事何してるの ? 」 のかもって思うし、別にそんな深刻な話でもないから。 って聞いて。本当にミュージシャンしてるとか思ってなかったから。 なんか長々とごめんね。言いたかったのは、君の使っている化粧 でも、ミュージシャンしてるって言ったじゃん ? って一言われてね、品の匂いがあんまり好きじゃないってことだったんだけど。君の なんかもやっとしたんだけど、でもそれ以上なにも聞かなかったけ使っているギャッビーかなにかが、同じミントの匂いがして。おじ ど。 さんのやっと。それで急に思い出して。 私、ずっと忘れてて、何も無かったみたいに暮らしてたんだけど 帰り際にはじめてキスされて、アフターシェープローション ? つね。 ていうの ? あれのミントの匂いがすごくて、帰りの電車乗ってる時

6. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

れとは異なる宗教論がある。それは神学の立場から語られる宗教論運転手はかたくなに往復切符を買えと言った。運転手の言い分は、 である。この立場において神と人間の立場は逆転する。人間が神をランズエンドから街に戻る交通手段はこのバスしかない、というも 造ったのではなく、神が人間を創造した。神は万物を秩序づけておのだった。私は元より街に戻るつもりなどなかったので、片道で良 いと言い張った。運転手はさぞ理解に苦しんだことだろう。とにか り、万物は神の摂理の下に生きている。人間の生きる意味は神にこ そある。それがこちらの立場における真実なのである。そして、私く、私は片道切符で、ランズエンドに到着した。そこは、小さなホ の心を捉えていた疑問はまさに、キリスト教において、この二つのテルが一軒と、期間限定の野外劇場とーーー私が訪れた時期、その劇 、その他には大西洋を臨む断崖が続くだ 立場のどちらに組するかという問いであった。つまり、私にとって場はやっていなかった 本物の宗教とは、人々の救済を求める心性に実在する神が応えてくけの、まさに陸の終点であった。私は唯一のホテルに、一週間の宿 れる宗教であり、偽物の宗教とは、神は人間の想像の産物であり救を取った。 にもかかわらず、神の実在を語る 六日目の夜、十時くらいだったと思う、私は宿を出て断崖の前に 済は永遠にやってこない 宗教であったが、私の意志はキリスト教が前者であると主張し、私立った。暗闇の中で、踏み出せる限りのぎりぎりの場所に立って、 の理性は後者を主張していたのである。分裂状態であった私は、結海原をじっと見つめていた。一歩踏み出せば死ぬ。そんな場所で、 局、キリスト教の真偽についてはキリスト教の神に委ねることにし暗い海原をじっと見つめながら、私は自問していた。私はこの一歩 を踏み出せるだろうか、と。踏み出せばそれで終わりであり、元よ キリスト教が本物の宗教であるならば、神は実在する。神が実在りそのために決行した旅である。しかし、その一歩は、たまらなく するならば、神は私を救済してくれる。私の自殺を留めてくれるは怖ろしい一歩で、私はその一歩が踏み出せなかった。何時間も、独 ずである。一人の人間の自殺も止められないような神は、神ではなりで、私は崖の前に立ち続けていた。暗闇に目が慣れてくると、断 故に神は実在しない。それが私の「神の存在証明」であった。崖と海原はより怖ろしいものとなり、私の躊躇いはますます強く 三月になって、当初訪れたいと思っていた場所をあらかた訪れてなっていった。私は切に神の実在を求めた。「お前はそんなことを しまった私は、冒険熱の収まりを感じ始め、いよいよ、最後の計画する必要はないんだよ」と言ってくれる存在があれば。私を救って を実行に移そうと考えた。私のイメージに適う場所は既に見つけてくれる存在がいたならば。死の瀬戸際で、自らの臆病を恥じながら、 私は神のことを考え続けた。ィー 反こ、これが中世の素朴な説話であっ いた。それはランズエンドという場所で、イギリスの靴型の地形、 そのつま先にあたる場所である。陸地の終点という響きは、私にとったならば、私はきっと、この時神に出会っていただろう。そして、 て、いかにもであった。今でも、終点に向かうバスでの運転手との後に教会で洗礼を受けて、キリスト教徒の道を歩んでいたに違いな 。しかし、私に訪れた運命は違っていた。死を考えていながら死 やり取りは覚えている。私は運転手に片道切符を買いたいと言い 一」 0

7. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

欲しいの。外の世界には彼らみたいな人達が沢山いる。でも、本当朝靄が晴れる頃、小道はアスファルトの道路にぶつかった。打ち は彼らのほうが間違っているの」 合わせ通り俺達は右へ歩いた。谷沿いの道を何度か折れつつ、基本 「・ : 僕にはよく分かりません」 的にはまっすぐ町を目指す。出来るだけ木陰に入るように歩きつつ、 「私ももう分からないわ。あなた達が外に出ることが良いことなの車の音がすると路肩の藪に身を隠した。 かどうか・ : 本当は私、あなた達にはずっとそばにいて欲し、。、 ししつ下り勾配がほぼ平坦になる頃、太陽は頭上から照りつけ、アスファ までも一緒に暮らして欲しい。でも、それは叶わない望み : ・」 ルトからは湯気が上がった。時々川へ降りて水を補給しながら俺達 「先生、聞いてください」 は進んだ。川べりの花、鳥の声、木々の間に見え隠れする小動物の影、 「どうしたの ? そんな目をして」 道路標識、遠くの人影、見るもの全てが俺達にとって未知の存在だっ 「教えて欲しいことがあるんです。僕のお母さんは誰ですか ? どこた。思わず見惚れそうになる俺をせかすのはオザキの役目だった。 に行ったのですか ? 」 町へ出てどうするのか、実を一一一口えば俺もオザキも確かな考えがあ 「もうすぐ雨が降るわ。今のうちに戻りなさい。大事な体なんだから」るわけではなかった。ただこのまま学校で卒ーを待つよりは良い。 先生の言葉を待っていたように、俺のトレードマークでもある天オザキはそう言った。俺はといえばただ海を見たい、それだけのた 気雨が空から落ちて来た。 めに彼の計画に乗った。 道すがらオザキは俺に語った。町には俺達と同じ境遇の奴が必 夏が秋に変わる頃、夜明け前に俺とオザキは学校を抜け出した。ずいる。学校を出た皆が奴らの思い通りになる訳じゃない。俺は 2 夏の間こっそり打ち合わせて準備を重ねてきた。柵の破れ目、警年前に卒■した先輩から町のことを聞いた。きっと先輩も今頃町で 備の緩い時間帯、発覚を遅らせる偽装、抜かりない計画を立てるの自由になっている。俺達も仲間に入れてもらえよ、 。道端の草を に一月もかかった。 咥えては吐き吐いては咥えしながらオザキは話し続けた。 最大の難関は地形を把握して覚えておくことだった。地図を書け俺はそんな事はどうでも良く、ただひたすら町を抜けて海に出る とお前達なら言うだろうが知っての通り俺達にはそれが出ことを考えていた。町までのルートは暗記していても、そこから先 来なかった。代わりに学校から何時間も地形を眺めて記憶した。道は遠すぎて道が分からなかった。遠目にもはっきり見える大きな建 路の分岐、身を隠せる茂み、水場に繋がる路、全てを頭に叩き込んだ。物の間にはちゃんと切れ目があるのか。迂回して歩くとどれ位かか 朝露に濡れた草を踏んで俺達は校舎裏の小道を下った。正門からるのか。海は全て水で出来ていると聞いたことがあるが、水に触れ 伸びる道は広くて見晴らしが利く分見つかりやすい。こっちなら学られる場所まで降りられる地形になっているか。俺の悩みは尽きな 校からは死角になり誰かとすれ違う危険も少ない かった。俺達はまるつきり同床異夢の道連れだった。

8. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

運命の日がるならば、そ一、 の新と」その、日常が存在ー 継続すを時間の中て記憶 は断片的だが白々ナられ ~. 、一 ガし まけた物必〈粤」 よ想だにし、 我々日常を変えでいく こ、たのか、その 前夜と 日常はどのよ 」っな物だ「たの、本同人誌 、 ~ 一蠱〔参加者達に書いて貰った。 そこにあるのは果てなき社 →会の不条理か、光り輝く生の ー美しさか闇を越え至る夜 けと、沈んだ陽光の淡き黄昏 冫との狭間に、私たちの運命の 、一日がある

9. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

崩れてい 崩れてい 突然崩れてい それか当たり前に続くと 誰か亠 = ロった ? ・ 信じてきたのは何故 ? ・ きの 医、よよ、フ あ・あ・あ・あ・し・ 昨日 今日 明日 昨日 今日 明日 「闇を貫いて」 ューカラ 振り向けば昨日のわたし 知らなかったー あそこが陽射しの中だったなんて 無邪気に笑ってる 何も知らすに ほんの何時間前かのわたし ねえ、気づいてる ? 明日あなたはあなたではいられなくなるんだよ 知っている筈だった 平穏な日々とは 実は奇跡なのだと 昨日 今日 明日 ここは何処 ? ・ 明日はどっち ? ・ なのに 空が堕ちてきた時 受け止められない現実 突然通り道に 石を投げ人れられた蟻のよう 逃げ惑うわたしたちー ちっぽけなわたしたちー 笑って 笑って 天から笑って でも見てて 医、つと立ち上がるか、ら 昨日より・・ネも強′、 昨日よりも憂しく そして 昨・日より・もしつかり・と 目を凝らして 新しい道を探せ 心の中で声いするから いざ進まん 闇を貫いて 4 4

10. ゆとり世代の総合表現マガジン さかしま 2017年度号

た骨と一緒に、俺の魂は学校に帰るだろう。同じ土に眠る仲間達や解体され、その大部分はお前達オキャクサマの体内に納まった。一 先輩達、その土の上の草を食む後輩達が俺を迎えてくれる。いっか部はお前達の糞となって下水に落とされ、いずれは海に流れ着くだ ろう。俺自身が今やあれほど憧れた海の一部であり、同時に学校の は特子やオザキの魂も戻ってくるかもしれない やがて俺達の魂は学校の草を通じて後輩達の体の一部となるだろ土でもあり、お前達の体の一部でもある。 う。後輩達もシュウカ■され、あるものはここで殺されるが、その最初にも言った通り、俺はお前達に心から感謝している。 この地球上で多くの生物種が生まれ、死に、子孫を残し、絶滅す 魂は再び骨と共に学校に戻ってくる。こうして俺達は学校の土の一 部になり、後輩達の一部になり、仲間達と混ざり合いながら永遠にるその時まで生命の輪をつなぎ続ける。俺達の輪を繋がせてくれて いたのは、紛れも無くお前達だ。 生き続けるだろう。 俺の魂が学校の畑に撒かれてからもうすぐ 5 年になる。特子の魂 「意味の無い命なんて無い」 特子は正しかった。彼女が特別な存在なんじゃない。俺達は皆特もそろそろ帰ってくる頃だろう。俺にそれが分かればいいのだが。 別な存在だったのだ。オキャクサマにも、他のどんな人間にも、俺 達の存在を奪うことは出来ない 行列の切れ目が間近に迫っていた。俺にはもう動揺は無かった。 むしろその瞬間を待ち望んですらいた。早く解体されて、早く学校 の土に帰りたい。そう願っているうち、突然体が軽くなった。 この作品は、 20 一 4 年に AFG が web 上で公開した CM 『 Blendy そこからは妙な感覚だった。目の前に体が見えた。一目で俺の体特濃ムービーシアター「旅立ち」篇』の二次創作として作られてい だと直感した。自分の模様を自分で見たことは無いのにおかしな話ます。卒牛式の場面、卒牛生、校長先生のキャラクターは元の CM だ。俺の体は鉤に吊るされ、皮を剥がれ、頭部が切り取られた。そを参考にしていますが、それ以外の場面やキャラクターの仇名等細 こからは沢山の部位に分かれる俺の体の全てを俺は同時に眺め続けかい設定は筆者が付け加えた物です。また >- 先生なる人物は筆者の た。内臓をくり貫かれた胴体を吊るした鉤が移動していく先に、建創作です。 ( 尚、元の CM は現在では閲覧不能になっております ) 物の出口が見えた。大型トラックが待っている。あれに乗って、早最後に、現行の法律では牛の肉骨粉は BSE 予防の観点から牛の く学校へ帰ろう。いや、その前に役目は果たさねばならない。実態飼料及び牧草用肥料に用いることは禁止されていることを付け加え ておきます。 がどうあれ、俺達の体はオキャクサマのためにあるのだから。 こうして俺は「シュウカク」され、「卒牛」し、出荷され、殺され、