インターネット・バブル - みる会図書館


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1. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

[ コラム ] KP のポートフォリオとインターネット・バブル 右ページの表は、 KPi»•出資しているインターネット関連企業 のうち、株式を公開している 15 社からなるポートフォリオであ る。本章の冒頭で述べたように、 KP のポートフォリオは、 1999 年 6 月 11 日現在のインターネット・バブル全体の 40 % に相当し ている。また、同じ日の時点で、新規株公開当時の価格よりも 低い水準で取引されている銘柄はなく、 15 社のうち 13 社は、 1999 年 3 月 31 日締めの四半期の時点で、依然として赤字経営を続け ている。これらの企業のうち 3 社 ( アマゾン、 AOL 、アットホー ム ) は、 KP が出資している企業全体の株式時価総額のうち、 87 % を占めている。 筆者たちのインターネット・バブルの試算によれば ( 詳しく は、付録 A 「バブルを試算する」を参照のこと ) 、この 15 社をグ ループとして見た場合、現在の株価水準を正当化するためには、 年間 80 % 以上の売上高成長率が必要になる。この成長率は、試 算の対象とした 133 社に求められる平均成長率と矛盾しないもの である。このように、必要成長率が一致している点から考えて、 KP のポートフォリオは、インターネット・バブル銘柄全体のポ ートフォリオよりも過大評価されているわけではないといえそ うだ。市場における KP の影響力を物語る事実として、市場価値 が 100 億ドルを超え、純粋なインターネット関連企業の成功企業 と呼べる 8 社のうちに、アマゾン、 AOL 、アットホームの 3 社が 入っており、この 3 社がインターネット・バブルのポートフォ リオの株式時価総額のうち 34 % を占めているのは、興味深い事 実だ。

2. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

を俎上に乗せている。 べンチャー・キャピタリストが「企業を丸ごと創り上げ、発展させる手練手管」の実態が絵に描いた ようにわかるが、「 O 型ザイバッ」がシリコンバレーのダイナミズムのひとつの主要な源泉であること に刮目させられる。日本の孫正義氏率いるソフトバンクの「ネット財閥」は日本型べンチャー・キャピ タリストの先駆けか。 第三点は「インターネットは現実である」との基本的前提に立っ本書ではあるが、インターネット関 連株の高騰ぶりはまさに「根拠なき熱狂 (irrational exuberance) 」であり、バブルが発生しているこ とは疑問なしと結論し、一般投資家に早急にネットバブルから撤退せよと警告していることだ。 本書を読めば、べンチャー・キャピタリストや機関投資家などの— O に直接関わる、いわゆるイン サイダ 1 が巨額のキャピタルゲインを独占し、アウトサイダーの一般投資家は最終的にババを掴まされ るだけの運命であることがわかってくる。 また、本書は「インターネット・バブル」を数量的に把握するために、株式時価総額が一億ドル以上 の企業 ( 一九九九年六月一一日現在 ) 一三三社を対象として選び、バブル推計を行っている。詳細は本き 書の付録に譲るが、現状の一三三社の時価総額の総計四〇九八億六七〇〇万ドルに対して、バブル総額 者 は一三〇〇億ドル—二三〇〇億ドル、比率にして三二 % —五八 % と推計する。 この推計が正しいとすれば、インターネット株価は平均して現状 ( 九九年六月 ) よりも六割から三割 下落して当然ということになる。ところが、米国の株式市場、とりわけインターネット銘柄のほとんど が上場されている市場は二〇〇〇年に人ってもバブル崩壊どころかさらに急騰を演じ、三

3. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

バブル銘柄と目した企業のうち、少 上という驚くべき数字なのだ。実際、筆者たちがインターネット・ しでも利益を上げているのは、全体の一六・五 % にあたる二二社しかない。 何よりも驚くべき点は、インターネット・バブル銘柄に含まれる企業が現在の評価額を正当化するに は、今後五年間、平均して年八〇 % というべースで売上高を伸ばしていかなければならないという点だ。 これに対し、マイクロソフトの売上高は、直後の五年間で年五三 % しか伸びず、デルも六六 % ど まりである。インタ 1 ネット・バブル銘柄一三三社のすべてがデルと同じ年間平均成長率を達成したと して、それでもなお、これらの銘柄は全体として一三〇〇億ドル、三三 % も過大評価されている計算に なる ( 詳しくは、付録「インターネット・バブルを試算する」を参照のこと ) 。言うまでもなく、イン タ 1 ネット銘柄は、金融世界の歴史に例を見ない売上ならびに利益の成長を前提とした株価水準で取引 されているというのが、ここでの結論である。 一攫千金は可能か さて、企業に対する評価がこれほどまでに現実離れしているとすれば、現在のインターネットに対すグ る熱狂の原動力はいったい何なのかという疑問が生じてくるだろう。これはいい質問だが、そう簡単に。ロ は答えを出せない。問題は複雑である。というのも、何よりもまず、市場心理という要素が絡んでくるエ からだ。 インターネット銘柄に対する熱狂を煽っている最も分かりやすい要因は、単に、人間の本性である。 あお

4. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

選後の二〇〇一年春頃に米株価の大調整は必至ではないだろうか。八〇年代前半の「パソコンプーム」 が崩壊し、アタリ、コモドール、タンディなどが総退陣した O 全滅事件をここで思い起こさざるをえ ない。現在〃勝ち組〃とされているデルもコンパックも、このパソコンプームの崩壊後に台頭した新勢 力なのだ。 一九九五年八月のネットスケープの新規株式公開 ( — O ) が「ネットバブル」の幕開けだった。だ が、ネットスケ 1 プは収益増大に焦り過ぎて経営悪化を招き、その後まもなくに買収されてしま った。バブルを抱えるプームとは、。、 ノソコンであれ、インターネットであれ、浮沈が付きものだ。だか ら、あの「パソコンプーム」の中でも、数ある企業の中で生き残った一社はアップルだった。つまり、 「インターネット時代は現実」であるが、それはまた同時に玉石混交の時代でもあるのだ。 金鉱やダイヤモンドを求めての「ゴールドラッシュ」のフィー バ 1 が現代では株式市場を彩るネット バブルの熱狂に代っただけなのか。著者たちはべンチャ 1 ・キャピタリスト精神の原型は米国特有の「ゴ ールドラッシュ魂」にこそ求められていると言っているが、米国人は賢くもゴールドラッシュ精神でい き ま、ネットバブルの狂宴を楽しんでいるのかもしれない。 さいな・刀一 一方、つい少し前の八〇年代後半に巨大なバブルに熱狂し、その後の一〇年なおこのバブル崩壊に苛と まれ続けている日本においてはインターネット事情はどうなっているだろうか。たしかに、この長い閉者 塞からの突破を求めて、太平洋の彼方から押し寄せるインターネット革命や革命というビッグウ ープにサ 1 フしたいとの期待感は日本でも異様な高まりを見せつつある。 っ 0 っ 0 いまでは猫も杓子も「伝導者」になって、ネット経済の夢を熱つばく語る。ヤフー株 ( ヤフー

5. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

ゾンのジェフ・べゾス、ヤフ 1 のジェリー・ヤンをはじめインターネット関連分野に膨大な人的ネット ワークを持つ。まさにインターネット産業の出自、現状そして将来について客観的かっ詳細に語るには 最適な著者たちなのである。 本書の主題はいうまでもなく、題名のごとく、米国株式市場が一七世紀前半のオランダのチューリッ プ・バブルと同類のユーフォリア状態に陥り、その中心がインターネット関連銘柄のバブル化であるこ とを詳細な取材とデータで明らかにすることにある。 とはいえ、本書は単純なバブル批判書でも、辛気臭い反投機論でも、センセーショナルな過熱株式警 告論でもない。通読すればすぐわかるように、本書は「ネットバブル」への警鐘を含め、次の三点で極 めて有益かつ重要な価値ある情報を提供している。 第一点は、九五年前後にプレークした米国のインターネット産業の実態について具体的かっ詳細に、 しかもエキサイティングに描出していることだ。これは、著者たちも言っているように、一〇〇名以上 のインターネット関係者を対象に行った直接取材の賜だ。著者たちは「リポータ 1 」として関係者の意 見やコメントを客観的に評価し、公平な著述を行っている。 第二点はインターネット企業が立ち上がり、新規株式公開 (—;„O) を行い、さらに発展 ( あるいは しオしわゆるインサイダー 衰退 ) に至る過程に関わるべンチャー・キャピタリストや機関投資家とゝっこ、 ) について実に具体的かっ生き生きと描出していることだ。 なかでもべンチャー・キャピタルの起源や役割、その特性などを論じつつ、具体例として最大のべン チャー・キャピタルのクライナー ーキンス・コーフィ 1 ルド & バイヤ 1 ズ ( 略称 ) の行動様式

6. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

付録 < バブルを試算する 「インターネット・バブル」の実態を明らかにするため、筆者たちは多くのべンチャー・キャピタリ ストや投資銀行家のアドバイスをもとに、この現象を数量化するさまざまな手法を編み出した。 まず、株式を公開しているインターネット企業 ( 一九九九年六月一一日現在 ) のうち、株式時価総 額が一億ドルを超える企業一三三社を対象として、以下に示すようなインタ 1 ネット銘柄株価指数を 作成した ( 全一三三社の企業リストは、付録 o もしくは「レッド・ヘリング」誌のウエプサイト http:// www.redherring.com/internetbubble を参照のこと ) 。また、この付録のグラフの中で、このイン タ 1 ネット銘柄株価指数を co & P500 種平均株価指数およびダウ工業株三〇種平均と比較してある。 このグラフを見れば、インターネット銘柄が他の市況を示す指標をかなり上回る実績を挙げている のは明らかである。一般に成長ポテンシャルの高いテクノロジー中心銘柄が、投資家が引き受けるさ らなるリスクを相殺できるほど大きな利益率を上げるのは当然期待されることだが、それにしても、 インターネット銘柄が生み出す約四〇〇 % という利回りは、平均一八・九 % という & P500 種や ダウ平均とは桁違いの大きさである。 インタ 1 ネット・ バブルを試算するもう一つの方法として、筆者たちはインターネット企業に期待 される業績を数量化する仕組みを作り上げた。この仕組みは、急成長期 ( 五年間 ) を経過した後は、 358

7. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

してアットホームとエキサイトである。のパートナーが画策したこの二つの動きは、明らかに、イ ンターネット上のポータル・スペ 1 スにおける勢力を統合し、マイクロソフトのオンライン・サービス である Z に大差をつけたままにしておくことを目標としていた。 このように、マイクロソフトに対する優位を追求し、インターネット産業の支配に向けた努力を続け るなかで、は意識的かどうかはともかく、インターネット・バブルの膨張に大きく荷担してきた。 自らの縄張りを守るため、は過去五年の間に、最も高い評価を得ているインターネット企業の一部 に出資し、事実上、インターネットという成長市場のあらゆるセグメントをカバ 1 するようになった。 信じがたいことに、これらの企業のうち一五社はすでに株式公開を済ませ、その株式時価総額を合計す内 ス ると一五〇〇億ドルを超えている。 だが、こうした数字の行間を読むと、これだけの市場価値にもかかわらず、これらの企業の売上高は 総額わずか五九億ドル、一九九九年三月三一日までの一年間で、損失は合計一一六〇〇万ドルという驚異キ 的な額にのばっていることが分かる。さらに、これらの企業のうち大きな一角を占める <O*-Äを差し引一 いて考えると、事態はさらに悪化する。残りの一四社に残されるのは売上高一七億ドルで、損失は七億チ 四〇〇万ドルに跳ね上がる。を含めた筆者たちの試算でも、売上高の成長率を六五 % と仮定したべ 場合、この一五社からなるポートフォリオは五〇〇億ドル以上 ( 三〇 % ) も過大評価ということになろ最 う。同じく筆者たちの試算では、この額は本書の冒頭で述べたインターネット・バブル全体のうち、実 に四〇 % を占めているのである ( 付録 << 「バブルを試算する」を参照のこと。また、詳細については本 3 章末のコラムを参照されたい ) 。残念なことに、これらの企業の株式の大半を保有しているのは一般の投

8. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

キャピタリストは言う。「市場が二〇〇ポイントも落ちている状況でも、その銘柄の株価を上げるために 一〇〇〇万ドルの買い注文を入れることができる。相場が上向いている場合には、その銘柄の株価をさ らに押し上げつづけることが可能だ。こうしたフロートの少ないハイテク銘柄の場合は、非常に価格操 作が楽だ。そこで、ミューチュアルファンドは一握りの銘柄を支持する。だから、現状のように二層構 造の市場が生まれるんだ。おおいに支持されている銘柄と、それ以外の振るわない銘柄だ。それがこの ゲームの本質なんだ」 何かもっと大規模な共謀が進められているかどうかはともかく、インターネット銘柄のフロートの少一丁 ノイー なさは、「タイム」誌の表紙まで飾るに至った熱狂と結びついて、これらの銘柄の株価を押し上げ、イン気 投 る ターネット・バブルを膨らませるのに一役買っているのである。 す 中 熱 変わりゆく投資銀行 ドン・ヴァレンタインやハープ・アレンと同じ意見の者は世界中にいるが、彼らが投資銀行を説得しお て手数料を引き下げさせ、慣習を改めさせるのに成功するかどうかは定かではない。だが、長期的にはタ インターネットによってこの業界が大きな変貌を遂げるのは確実である。全般としては、インターネッイ トによって競争の舞台が、大手の投資銀行と中小の投資銀行、あるいは個人投資家と機関投資家のいず 4 れにも公平なものに近づいていくことが期待される。そして、こうした競争状況の変化が、株価 っ 0 の高騰、株式を公開する企業に流人する資金の増大、投資銀行が得る手数料の低下をもたらすのは確実夘

9. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

バブル市場では、貪欲さと右へ倣え式の考え方が蔓延し、それとともに、過剰なギャンプルに走った 、詐欺の被害に遭ったり、銘柄で大ャケドするといった傾向が現われる。なかでもそれが顕著 なのが、テクノロジー″金ピカ〃時代だ。非常に多くの人が手つ取り早く確実に富を手に入れられるよ 一つに田 5 ) どれだけのリスクが含まれているかを過小評価してしまいがちなのである。 本章では、この巨大なリスク、つまり筆者たちの言う「インターネット・バブル」の渦中でのテクノ ロジー銘柄への投資に関して、若干の展望を提供しよう。その中で、「弾み買い」投資の落とし穴、株式 市場へのアプローチにおける自信過剰の危険性、増加する一方のインターネット投資関連詐欺、 銘柄への投資のワナといった問題について、いくつか警告しておきたい。インターネット銘柄投資とい うゲームに参加するのは、見た目ほど簡単ではない それが結論だ。以下を読んで、何に気をつける べきなのかを見抜いていただきたい。 これらの銘柄に対する評価の高さは息を呑むばかりだ。大きなリスクを好まない人 に、インターネット銘柄への投資はお勧めできない。人々は、まるでゴールドラッ シュのときのように市場に飛び込んでいっている ビル・ゲイツ ( マイクロソフ上則会長 ) なら 288

10. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

産業の自然淘汰 歴史と数字が筆者たちの考えを裏付けている以上、過大評価を受けた現在のインターネット銘柄市場 がもたらす結果は一つしかない。筆者たちはそれを、「産業の自然淘汰」と呼んでいる。過去の商業革命 においてあまりにも多くの企業が誕生した場合に見られたように、いずれは適者生存の戦いが繰り広げ られるだろう。株式を公開したインターネット関連企業のほとんどは、他社と合併するか、完全に消え しかばね てなくなるか、「生ける屍」の世界でのたうつ結果に終わるだろう。 べンチャー・キャピタル業界のべテラン、ドン・ヴァレンタインは、「破綻するインターネット関連企 業が続出するだろう」と予言する。何十社ものメ 1 カ 1 が株式を公開し、バブルの大波に乗って株 価を膨らませ、最終的に一九八三—八四年のバブル崩壊という結末を迎えたのを最前線で見てきたヴァ レンタインだけに、状況はよく分かっているはずだ。さらに、 O の販売台数はほば二〇年にわたって 年率二五 % 以上の成長を続けてきたにもかかわらず、初期の投資プームの間に設立された企業で今 日も生き残っているのは、アップル・コンピュータ一社だけという点も忘れてはならない。最先端のテ クノロジ 1 によって予期せぬ変化が起き、初期の業界をリードしていた企業が時代遅れになってしまう すれも P-•O バブルが弾けた 例は多い。たとえば、今日の二大 O メーカーであるデルとコンパックはい、 後に台頭した企業であり、強大なマイクロソフトでさえ、株式を公開したのは一九八六年になってから の話なのである。 340