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検索対象: インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか
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1. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

張したがるのだ。 近年では、テクノロジ 1 に基づいた新しいパラダイムの一部として、「ロングプーム」を主張する人々 が現われている。その主役の一つが、テクノ・ポッブ系コンピューター業界人にとっての中心的印刷媒 一九九三年の創刊以来、「ワイヤード」は、「デジタル 体である「ワイヤード」誌なのは意外ではない。 革命」を高らかに宣言し、その自然な流れとして、ニューエコノミー説を支持している。 「ワイヤ 1 ド」誌のニューエコノミー論の主張が頂点に達したのが、一九九七年七月だった。このとき 「ワイヤード」誌は、「ザ・ロングプーム」と題する長大な特集を発表した。この特集は、調査・コンサ ーバル・ビジネス・ネットワークの共同創立者で会長を務める、未来学者ピーター・ ルティング会社グロ シュワルッと、「ワイヤード」誌の特集記事担当編集者ピーター・ライデンの協力によるものだった。 この特集の執筆者は、「ロングプーム」は一つのシナリオであると主張している。それはすべてがうま 実 くいく ( ガンは治り、世界平和が実現し、テクノロジーによってあらゆる人の労働が軽減される ) とい虚 う完璧なものだ。だが、実際に読んでみると、シナリオというより予測のように思えてくる。息もっかミ ノ ーバル規模のコ せぬ、なかば宗教がかった筆致で、この特集は「過去に体験したことのないような、グロ 好景気の始まり」について語る。その好景気によって、「世界経済は一二年ごとに二倍のペースで成長す一 る」という。このプームは、完璧な自然環境保護、アジアの急成長、ロシアの復興を伴うものである。 章 執筆者たちによれば、こうした展開は主として五つのテクノロジーの流れによって推進される。すなわ ち、 ーソナル・コンピューター、電気通信、バイオテクノロジー、ナノ ( 極微小 ) テクノロジー、オ フ / 2 ルタナテイプ ( 代替 ) テクノロジーである。

2. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

直線のグラフ上の小刻みな波動にすぎない。長期的には、波動の最初の時期に経済が少しばかり落ち込 んだり、そこから脱出するときに上昇したりということよりも、このトレンドがどれくらいのペースで 進んでいるかの方が重要である。 「『ニューエコノミー』や『ロングプーム』について極端な主張をする人は、こうした波動の一つにおけ る上昇を、全体としてのトレンドが完全に変わった兆候だと見誤ってしまう」と、ローマーは言う。「い ずれにせよ、成長率という点では、実際には少しばかり低い。このトレンドを見るかぎり、『私たちが過 これまでどおりだ』と言うしかない」 去一〇〇年間に比べてうまくやっているという兆候はない。 ということは、一九九六年以来の生産性の向上も含め、最も新しい傾向である九〇年代の景気拡大も、 実際には何も特別なものではないということになる。ローマ 1 の目には、今回のプームも、やはり一時 的な出来事に対する過剰反応の一例のように映っている。「一九八〇年代には、高いインフレ率とリセッ 実 ションのせいで、多くの人々が、米国経済は成長を生み出す能力を完全に失ってしまったと、思い込ん虚 だ」と、ローマーは一言う。「ところが一九九〇年代に入ると、インフレ率の低さとリセッションからの回一 復のおかげで、同じ人々の多くが、米国経済は、新しい前例のない方法で成長を生み出していると信じコ 込んでしまった」 ュ 彼は、経済全体については、その根底にある成長率の傾向は、どの時期を見ても変化していないと主ニ 張する。こうした所得ならびに生産性の着実な成長のうえに、エコノミストたちがリセッションや回復 7 と呼ぶ波動が上乗せされている。リセッションの際の低成長や回復のときの高い成長率は、常に、根底 しゅうれん 。「資産利益率と生産量は同じ道を歩むから、経済が、資産利益率 にある成長率の傾向へと収斂していく

3. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

グプーム』論者は、すでに以前よりも速いペ 1 スでの成長が実現していると主張しつづけている」と、 ローマーは一一一一口う。 「新しい成長」理論は、生産性の成長に貢献する重要な要因として、富の創出の仕組みと、科学的発見、 テクノロジーの変化、イノベーションの役割を検証する。人々が既存のリソースを取得してよりよくそ れを活用する方法を見つければ、必ず経済成長が見られる。ローマーは、これを料理にたとえる。「私た ちは材料の配合を変えて、もっと価値のあるものを生み出すレシピを開発する」と、彼は言う。「青銅器 時代の人々が銅とスズを混ぜるようになったとき、交換可能な部品を使いはじめたとき、あるいは鉄鉱 石や石油の精製を始めたときが、これに当たる。インテルがシリコンを使って半導体を作るときにやっ ていることは、まさに料理なんだ。私たちは常にこのプロセスを進めている。それは継続性のあるもの なんだ」 今日の状況が今までと違うのは、料理そのものよりもレシピ作成の方に多くの時間・労力が投入され虚 ているという点だ。私たちは、よりよいレシピを生み出すために多くのリソースをたえず投入しており、 ノ コ 今やそのレシピが経済成長を後押しし、生活水準を改善している。 工 「新しい成長」理論では、成長を加速する特別な要因は三つあると考える。一つは、物理的な世界のう一 ち未開拓の可能性がたくさん残されている部分、二つ目は、多数の人々による協力と通商、三つ目が、 章 人々による発見や情報共有を促すような市場のインセンテイプである。 だが、テクノロジー〃金ピカ〃時代には、テクノロジーの変化の中でも洗練された高度な最終的部分 っ 0 を過大評価し、素朴な草の根のよさを過小評価する傾向が見られる。ローマーは、イノベーションの例

4. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

いては、付録 0 で具体的な業種分類に入れていない。彼らのビジネスモデルは、やや独自のものだか らだ。ここでは、については純利益率を一〇 % に設定している。事業内容がコンテンツ・プロ バイダ 1 と付加価値電気通信サービスの組み合わせであり、以前からロイヤリティの高い顧客基盤を 持っているからである。ネットワーク・ソリューションズについても純利益率を一〇 % に設定した。 ビジネスモデルが他の付加価値サービスと似通っており、現在政府に公認されている独占状態の効果 が残るからという判断である。将来の純利益率をいったん設定してしまえば、現在の株式時価総額か ら考えた将来の想定収入が計算できる。アマゾンの将来の利益と想定した一一億ドルに五 % の純利益 率を適用すると、将来の収入は一三三億ドルとなる計算だ。 想定売上成長率を検証する この将来の売上を過去一二カ月の同社の売上と比較すれば、想定売上成長率が算出できる。この計 算によって、対象となっている企業が過小評価されているか過大評価されているかが判断できる。そ の企業が今後五年間、算出した成長率よりも早く成長すると考えられるならば、その企業は過小評価 されていることになろう。逆に、もしその企業がとてもそんなペースでは成長できそうにないと考え られるならば ( あるいは、その業界全般がそのような成長率を実現できないと考えられるならば ) 、そ の企業 ( もしくは業界 ) は、過大評価されていることになる。 ここでの例に戻ると、アマゾンは一九九九年三月までの一二カ月間で、八億一三三〇万ドルの売上 を上げている。すると、現在の株式時価総額を正当化するためには、アマゾンは今後五年間、年九四 366

5. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

一」亠よ賛、 2 の基本的な成長率が一九九〇年代に上昇したなどという、正統な根拠のない『ロングプーム』説。。 2 成できない」と、ローマーは一一 = ロう。 ローマーの指摘によれば、「ロングプーム」論者は、資産価格やインフレ率、失業率などの指標には注 目するが、生産性の成長や労働者一人あたりの成長率についてはあまり目を向けないという。また、テ クノロジーが自動的に労働者の生産性を高めるという考え方にはデータの裏付けがないとも主張する。 ローマーが実際に信じているのは、米国経済が複雑な原動力によって動かされており、そこで生み出 されるシステムが、物理的にも社会的にも、またテクノロジーの点でも、以前に比べてはるかに複雑で あるという点だ。そして、これに応じて、複雑性の増大に対処するのに必要な教育とスキルへの要求も 高まっていく 。「持てる者」と「持たざる者」の所得格差の拡大も、一つには、彼らの教育とスキルの水 準の差に原因がある。 だが、そうした新たな複雑性については、たとえば内燃機関や電気、デジタル・エレクトロニクス、 インターネットといった特定のテクノロジーによるものだと考えるべきではない。そうしたテクノロジ ーの発展は、単に複雑性の表われにすぎないのである。 米国では、過去一二五年の間、比較的安定した量の物理的な原材料からより多くの価値を生み出す方 法を社会が学んでいくなかで、複雑化と安定した成長とが表裏一体となって進行してきた。生産性の成 長は、どうにも脱出できない休止状態に陥っているわけでもないが、かといって、「ロングプーム」や「ニ ューエコノミー」の信奉者が信じたがっているようなハイバー成長モードにあるわけでもない。「基本的 な制度面でのイノベーションがあれば成長のペースは加速できると私は言いつづけてきた。だが、『ロン

6. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

だった。企業の態度もそれと変わらず、経済成長への貢献から遠ざかっていた。クルーグマンは、株価 の大幅な下落が米国民に与える影響もこれと同じだと考えている。「ダウ工業株平均が一万三〇〇〇ドル 以上に上がり、それから七〇〇〇ドルまで落ちたら、米国民の消費支出はどうなるだろうか」と、クル ーグマンは「ニューヨーク・タイムズ」紙上で問いかけている。「もちろん、大幅に減少するだろう」と、 彼は言う。消費支出が減少すれば、その影響で企業は生産を縮小しレイオフを行なう。こうして、リセ ッションへの道が開かれる。 新しい成長としてのレシピエコノミー論 テクノロジーのパラドックスの陰で、実はホワイトカラーの生産性がかなりの程度増大しているかも 実 しれない。また、流動性の罠が進行しないかもしれない。しかしそれでもまだ、経済成長の加速という虚 「ロングプーム」シナリオを根底から蝕む問題がたつぶり存在する。とはいえ、それは経済についてまる一 というのも、「ニューグロース ( 新しい成長 ) 」というコ つきりの悲観主義者になるという意味ではない。 考え方が可能だからである。 ュ この「新しい成長」という主張の先頭に立っているのが、スタンフォード大学のエコノミスト、ポー一一 ル・ローマーである。「ニュ 1 エコノミー」の熱心な信奉者の中には、ローマーも「ロングプーム」支持 の立場をとっているとこじつけようとする者もいるが、彼はそうした位置づけを慎重に避けている。「私 としては、米国におけるテクノロジーの変化のペースが過去に比べて永遠に加速しつづけるとか、経済

7. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

時価総額 、 ( 百万ドル ) 三百万ドル ) ・ : 将来の想定売上ー想定売上成長率 ( 百万ドル ) ! 5 ′ 062.0 ・ 2 ′ 904.4 : し 263.0 。 759.3 : 5 ′ 2 引 . 3 , 馬′ 220.0, 企業数 区分 コンテンツ e コマース サービス ソフトウェア 通信サービス 合計 「 / っ 0 1 ー C-D 0 8 8 マー「ー CD 8 CV っ 0 っ ( っこ にし 006.2 65 ′ 880.4 . 円′ 367.2 : ロ 43.7 : 66 ′ 482.7 ・ 285 ′ 880.2 : 5 ′ 866.9 8 ん 058.2 : 24 ′ 976.0 30 83.7 : 田し 782.6 409 ′ 867.4 : 単位 : 百万ドル 寺来の成長率の予測を含んだ株式 ! 65 % でのインター ・時価総額の合計一価値 : ネット、バブル分 50 % 65 % 9 o. る。言い換えれば、二〇〇四年の第 1 四半 0 っ 0 8 0 ) 4- ・ っ 1 ー LD 4- 一 .0 っ 0 C.D 8 8 0 ) 期までに、売上げを一八倍に増やさなけれ LO CD 【 0 8 っ 0 0 》 「 / っ 0 ばならないということを意味する。 最後に、「インタ 1 ネット・バブル」の実 0 8 0 「 / 4- C.D 4- 8 4- 8 ・ 0 つ」 ( っ 4- 0 態をさらに解明するため、現実の市場での 0 0 株式時価総額と、筆者たちが想定する本来 の評価額とのギャップを試算することにし た。このため、前述の仕組みを使いつつ、 今後五年間について、より現実的と思われ る平均成長率を適用してみた。この成長率 を推測するため、一九八〇年代、九〇年代 のテクノロジー革命においてトップクラス の業績をあげた企業五社を調べ、また代表 的なインターネット企業五社について証券 アナリストの売上成長率予測を参照した。 後、最初の五年間の売上成長率を見 ると、マイクロソフトが五三 % 、デルが六 六 % 、サン・マイクロシステムズが八五 % 、 56 ′引 5 コ 3 し 607 . 9 Ⅱ′田 4.9 ′ 24 に 0 60 ′ 8 田 . 3 ロ 3 ′ 797.2 5 ′ 866.9 87 ′ 058.2 : 24 ′ 976.0 30 83.7 、 田し 782.6 409 ′ 867.4 コン・テンツ e コマーース サービス ソフトウェア 通信サービス 合計

8. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

付録バブル試算の手法 本書の中で何度も触れてきたインターネット・バブルの試算は、 ) しくつかの重要な仮定を前提とし ている。一般的モデルは、テクノロジー企業の評価について何年もの経験をもつアナリスト、投資銀 行家、べンチャー・キャピタリストの助けを得て開発された。株価収益率やディスカウント・キャッ シュフロー法など伝統的な評価手法は、インターネット企業には適用できない。 というのも、過去の 利益実績がないし、期待度が高いと同時に将来の成長が不確実だからだ。 筆者たちが拠り所としている最も重要な前提は、インターネット投資家が期待している急成長が、 少なくとも部分的には一定の期間内に実現し、その後は、それ以降の成長がもっと数量化しやすくな るというものである。その将来のある時点になったら、従来のテクノロジ 1 専門企業に対して使われ ていたのと同様の、より伝統的な評価手法に基づいて評価が行われるようになるだろう。単純化のた め、ここでは五年という期間を想定した。つまり、二〇〇四年六月になれば、短期的な急成長ではな く、もっと現実的な財務指標に基づいてインターネット企業を評価できるようになるだろうという意 味である。この方法を、アマゾンを例にとって説明してみよう。 362

9. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

[ コラム ] KP のポートフォリオとインターネット・バブル 右ページの表は、 KPi»•出資しているインターネット関連企業 のうち、株式を公開している 15 社からなるポートフォリオであ る。本章の冒頭で述べたように、 KP のポートフォリオは、 1999 年 6 月 11 日現在のインターネット・バブル全体の 40 % に相当し ている。また、同じ日の時点で、新規株公開当時の価格よりも 低い水準で取引されている銘柄はなく、 15 社のうち 13 社は、 1999 年 3 月 31 日締めの四半期の時点で、依然として赤字経営を続け ている。これらの企業のうち 3 社 ( アマゾン、 AOL 、アットホー ム ) は、 KP が出資している企業全体の株式時価総額のうち、 87 % を占めている。 筆者たちのインターネット・バブルの試算によれば ( 詳しく は、付録 A 「バブルを試算する」を参照のこと ) 、この 15 社をグ ループとして見た場合、現在の株価水準を正当化するためには、 年間 80 % 以上の売上高成長率が必要になる。この成長率は、試 算の対象とした 133 社に求められる平均成長率と矛盾しないもの である。このように、必要成長率が一致している点から考えて、 KP のポートフォリオは、インターネット・バブル銘柄全体のポ ートフォリオよりも過大評価されているわけではないといえそ うだ。市場における KP の影響力を物語る事実として、市場価値 が 100 億ドルを超え、純粋なインターネット関連企業の成功企業 と呼べる 8 社のうちに、アマゾン、 AOL 、アットホームの 3 社が 入っており、この 3 社がインターネット・バブルのポートフォ リオの株式時価総額のうち 34 % を占めているのは、興味深い事 実だ。

10. インターネット・バブル : 来るべき反動にどう備えるか

として踏ませていた車のこと・に乗ったら、走りつづけるしかないんだ」と、 OßO のクヴァムは一 = ロう。 2 2 「アナリスト連中からしよっちゅう電話がかかってくる。何をやっても、皆にあれこれと邪推されるんだ」 マネジャーを採用するのも、後は面倒になった。株式を公開する前は、経験豊富な経営幹部が 大勢参加しようとする。株式公開によって株価が上昇する前に、自社株をたくさん入手できるからだ。 こうした変化がすべて、 0 の健全さという点では悪い方向に働いた。株式を公開したことによっ て九〇日 ( 四半期 ) 単位で業績が測定されるようになり、無理にでも成長せざるを得なくなった。 1 四 半期でも成長を実現できなければ、「この会社はもうダメだ、勝負を投げている」という印象が広がって しまう。 一九九八年、株式市場で長い低迷を続けた末に、 o co は co ウエプと合併する。 co ウエプはイン ターネットそのものよりも、イントラネット / ェクストラネット市場に力を注ぐ企業だったが、 O co との合併によってあらゆる分野をカバーできることになった。 「率直にいって、もし最初からすべてをやりなおせるなら、株式を公開したりはしないだろう」という のが、クヴァムの結論だ。「我々は黒字経営で、成長も続いていたし、売上高も三〇〇〇万ドルあった。 株式公開の必要なんてなかったんだ。資本は必要なかったのだから」と、彼は言う。「でも、シリコンバ レーの流れとして、企業を設立したら次は株式公開という風潮が一部にあった」 — O に際して、 O co は「インターネット関連企業」とみられていた。だが、当初の騒ぎが収まる と、結局は、利益率も低く成長のペ 1 スも遅いサービス企業だという、の実状を反映した認識に — O の大き 落ち着いた。そして、株価も本来の価値で安定したのである。がたどった運命は、