アドラーの知恵 個人としての全体が 心身を動かしている : 全体論 一度木から枝を切ってしまうと、その枝は元に戻せません。 生きているものはこのように部分 ( 枝 ) が全体 ( 木 ) に統合 されて、全体として成長していくものです。この見方を「有 " 機体論」と呼びます。有機体論は、生きているものはその一 部だけを部分として分解することができないという意味で全、 体論の考え方です。 この考え方を人間に当てはめてみれば、無意識だけ、感情 だけ、心だけを、その人全体から取りだして考えることには、 意味がないことがわかるでしよう。これらすべてが身体と共、 同することによって全体として活動し、成長しているからで : す。 それでは一個の人間全体を統率しているものは何かと言え、 ば、それは仮想的に「個人 (individual) 」と呼んでいるもの です。その個人が、あなたの心身を使って、あなたの目的の ために、あなたの人生を決めていると考えるのです。アドラ ー自身は、自分の心理学を「個人心理学 (indiQiduaU psychology) 」と呼びました。その「個人 (individual) 」と。 は「分割できない」というのが語源上の意味です。分割でき , ない個人が、その人全体を動かしているという全体論の立場を を明示したのが、個人心理学という名称なのです。 c 0 1 Ⅱ m n 2 070
の係 と関 他良 互いに関連する 3 つのライフタスク 他者との 協力 タスク難 。交友 仕事 人間のタスクは他者と切り離せない 2 つめの課題は、仲間の中で自分の居場所をどの ようにして見つけるかという課題です。これを「交 友のタスク」と呼びましよう。人類の一員として生 きていくためには、常に他者と結びついていなけれ ばなりません。 続 そのためには、他者に対して関心を持ち、他者の の 類存在を考慮することが必要です。この結びつきが発 展すると「友情」という感覚になります。 3 つめの課題は、子孫を残すことで人類の継続に 寄与するという課題です。これを「愛のタスク」と 呼びましよう。人類には男と女の 2 つの性があると いうこと、その性の役割を成就することで人類の継 愛の課題が課されています。 1 つのタスクだけを 完璧にやり遂げる、 ということはできない 1 33
L e 5 5 0 n 5 解説 1 一 3 つのライフタスクとは ? 私たちはなぜ人間としてここに存在しているのでしようか。それは、人類が地球という惑星の 上で、滅亡せずに発展してきたからです。あたりまえのことですが、私たち一人ひとりは人類の 一員なのです。 アドラーは、「私たちは地球上で生きている人類の一員である」という動かせない事実から考 えをスタートさせました。そして、私たち自身の幸福と人類の幸福のために、個人がなすべき課 題は 3 つあると主張しました。それを「ライフタスク ( 人生の課題 ) 」と呼んでいます。 1 つめの課題は、人類の一員であり続けるために、厳しい自然の中で人類が存続するための仕 事をどのようにして見つけるかという課題です。これを「仕事のタスク」と呼びましよう。人間 は一人ではとても弱い存在です。しかし、仕事を分担し、協力し合うことによって、地球上で存 続し続けてきました。一人ひとりが違った資質を持ち、違った能力を発揮することで、私たちの 社会を発展させることができるのです。 132
L e 5 5 0 n 4 解説 1 一 4 つのライフスタイルとは ? 人は劣等感を補償するために努力するわけですが、その仕方は人それぞれで違います。それを 私たちは「個性」や「性格、や「パ 1 ソナリティ」と呼んだりします。 アドラ 1 心理学では、人は生まれた時から自分の人生を独自の方法で描き続けると考えて、こ れを「ライフスタイル」と呼んでいることは既に説明しました ( ペ 1 ジ ) 。ライフスタイルに は遺伝や生育環境などの条件が間接的に影響していると考えられます。しかし、最終的にはその 人個人が決め、選び取っていくものです。その結果として、その人独自の人生が描かれるのです。 ライフスタイルはだいたい川歳くらいの年齢で安定してくると言われていますが、決心次第で、 いつでも変えることは可能です。また、一人として自分とまったく同じ人がいないように、ライ フスタイルも一人ひとりで異なっています。とは言っても、ライフスタイルは、その特徴によっ て大まかに分類することができます。自分や自分の周りの人たちが、類型的なライフスタイルの どの位置あたりにいるのかを知ることは役に立つでしよう。
アドラーの知恵 人はます目的を持ち、 そのために行動する : 目的論 私たちがある人の行動について「どうしてこの人はこんな ふうに考え、行動するのだろうか」と疑問を持ち、それを 理解しようとする時、 2 つの見方があります。 1 つは、「この人は過去にこんな経験があって、こんなふ うに育ってきたので、今このように行動するのだ」という見 方です。いわば「その人の過去が現在を決定する」という見 方で、これを「原因論」と呼びます。 もう 1 つは、「この人はこういう目的があって 0 その目的 に向かっているので、今このように行動するのだ」という見 方です。これは「その人が向かおうとする目的が現在を決定 する」という見方で、これを「目的論 (teleology) 」と呼び ます。 アドラーは次のように言って、目的論を採用することが人 ~ 間を理解するために必要であることを主張しました。「もら とも重要な問いは、『どこから』ではなく『どこへ』である発 あなたも周りの人の行動について目的論的に考えてみると、 「ああ、この人はこんな目的を目指して行動しているんだな第 1 と、理解できることがあるかもしれません。 c 0 1 u m n 1 048
アドラーの知恵 c 0 1 m n 3 世界を見ている : 仮想論 人は自分専用のメガネで 例えば「あの人は私のことを嫌っている」という信念があ ! ] ま 響を受けた意味づけが施されているということなのです。 ~ 、ま鬮、 , ことであり、そこには、自分がこれまで培ってきた信念の影 : いることはすべて、現実であるフ、のように ' 認知している if understanding) 」と呼びます。私たちが現実だと認知して ; に " 理解しているのです。このことを「かのように理解信 s ー 分を含めたこの世界を、あたかも「現実」である。かのよ引 これを「仮想論 (fictionalism) 」と呼びます。つまり、自 私たちは、自分が意味づけをした一世界」として見ています。 私たちが世界を見る見方は、客観的なものではありません。 ができないのです 。こから脱出するためには、別の理解、 このような仕組みによ。て、人は自分の信念を捨てること とを嫌っている」という信念を強めることになります。 行為に見えるでしよう。その結果として、ますます「私のこ れば、その人の行為はすべて自分を避けている・・かのような : = 、入れてみることです。もしそれでうまくいくならば、その信一 つまり「私のことを嫌ってはいない」という信念を仮に取り 念を採用しておけばいいのです。 092
まだ仕事が あるんだ 親が来たら 呼んでくれ ロロ : ・ふん 勝君・ : ど - っして こんな 関係 ねーだろ カネ払えば いいんだろ , ほらよー みんなどれだけ 心配してると藤崎先生 思ってるの 000 - つっせー
C h a p t e 「 2 人には人の数だけ 生き方がある ライフスタイルを知る 人の生き方や個性は、 困難を乗りこえようとする時にこそ現れる。 アドラーはそれを「ライフスタイル」と呼び、 そこにその人が独自に培ってきた 生きる動きが現れるとした。 人はみな、ひたすら精一杯生きているのだ。
0 そこまで お母さん 連れてきたよ し 前にヨンテンドー O なくした時あんた 夜も眠れなかった じゃない ! どうして 万引きなんか , 7 : こんなの ゲームみたいな もんだろ よゃ。て おんす あれが盗まれてた としたら あんたどんな 気持ちだと思うのー : し 知らねーよ 親が頭下げてる のに何とも 思わねーのか , 0 0 申しわけ ありません 父親がいなくて ちゃんと叱って やれなかったから : ・ もう警察 呼ぶぞ ? 142
この荘までに 大きな坂が あるだろう ? 同じ上るにも ・ 0 荷物を全部自力で 運ぶ人もいれば 誰かに平気でお願い しちゃう人もいる : この間の 現実との 折り合い方の 話ですか ? 唐突な : ・ まあ・ : ね ( 2 ) 人生 0 て基本的に 思い通りには いかないものだから その困難を ヾターン化されると 克服するやり方はノ それがその人の性格に 人それぞれだよ " 見える。ことがある アドラーはそれを 「ライフスタイル」 なんて呼んだけど : ・ じゃああんな 周りを利用する 生き方も一つの夜道 気を付けてね 知恵だと ? 0 少なくとも 僕は お仕事 行ってき まーす☆ 7 誰がど - ついう 行動を選択しようが それを理由にその人を 拒絶しようとは 思わない