行動主義 P25 心理学の基本的な立場の一つ。客観的で観測可能な人の行動を研究対象とし、刺激 = 反応 の関係性、法則性を見出すことで人間の性質を解明しようとする。 交友のタスク P133 ・ 135 アドラーが提唱した、人間が克服すべき 3 つのタスク ( ライフタスク ) の一つ。仲間の中で 自分の居場所をどのように見つけるか、という課題。達成するには、他者に対して関心を持 ち、他者の存在を考慮する必要がある。他者との結びつきが発展すると「友情」が生まれる。 個人心理学 P70 アドラーによる自らの心理学の呼び名。個人 (individual) とは、「分割できない」という意味で、 アドラーは、個人はそれ以上分割することはできす、全体として理解するべきだ、と説いた。 個人の主体性 P22 ・ 160 人の人生は何かの原因や環境で「できる」「できない」が決まるのでなく、自分で人生を決め ることができる、とする考え方の根拠にあるもの。 個性 P110 劣等感を補償するための行動様式でパターン化されたもの。同じような劣等感を抱いてい る人でもそれに対する向き合い方や、乗り越え方は人によって異なる。アドラー心理学にお いては「性格」「パーソナリティ」などの語も同様の文脈で使われる。 さ行 自己欺瞞 P90 自らの無能さが露呈することを恐れて、「〇〇のせいでできない」などと言い訳をして、行動 を起こさないこと。 自己受容 P157 共同体感覚を構成する感覚。所属する共同体の中で、自分があリのままでいることができて いる、という感覚。 仕事のタスク P132 ・ 134 アドラーが提唱した、人間が克服すべき 3 つのタスク ( ライフタスク ) の一つ。地球上で人類 が存続するためには、人は一人ひとりが、自分らしい資質を生かして社会の発展に貢献する 必要がある。そういう仕事をどのようにして見つけるかは、人生において重要な課題となる。 私的論理 P159 自分にしか通用しない目的達成のための考え方。他者とは共有されえないため、固持している と共同体感覚を抱くことができない。共同体感覚を育むとは、私的論理で動いている自分に 気づき、共同体のメンバーが共有できる共通感覚へと変換していくこと。 社会統合論 P22 ・ 114 「人間は社会に埋め込まれている社会的な存在である」とし、何者にも依存しない孤立する人 間を考えることはできない、とする考え方。 使用の心理学 P68 意識、無意識、理性、感情、心、身体といった要素 ( 部分 ) の活動を最終的に決め、全体と しての行動を決めているのは個人の意志である、とする心理学の考え方。アドラー心理学は この立場をとる。 ( 対 : 所有の心理学 ) 所属 P156 共同体感覚を構成する感覚。「この共同体の中に自分の居場所がある」という感覚。仲間の 中で安心していられる感覚。 2
アドラー心理学がわかる用語集 47 あ行 アイデンティティ P114 「自分とは何者か」に対する実感。「自分はどう生きるべきか」「何のために生きているのか」 など、社会に自分を位置づける問いに対して肯定的な回答ができるとき、人は「アイデンテ イティが確立された」状態を獲得する。 愛のタスク P133 ・ 134 アドラーが提唱した、人間が克服すべき 3 つのタスク ( ライフタスク ) の 1 つ。 2 つの性の うちの一方として、その役割を成就することで、人は人類の継続に貢献できる。ー対一で異 性と向き合い、愛し合うことは、幸せのための重要な課題。 アドラー P22 ・ 24 ・ 26 アルフレッド・アドラー ( 1870 ~ 1937 ) は、オーストリア生まれの心理学者で、個人心理学 の創始者。ウィーン大学医学部を卒業した後、眼科医を始める。 1902 年頃からフロイトと交 流を始める。晩年はアメリカに渡って活動した。 因果律 P22 「原因が作用するから結果が生まれる」 ( 原因のない現象は存在しない ) とする考え方。自然科 学の立場がその典型。 怖れ P136 自分への関心にとらわれた人が陥る感情。他者が常に競争相手となるため、困難な課題を 回避しようとして現れる感情。 か行 仮想論 P22 ・ 92 ・ 160 「人間は、自分、他者、周りの世界を見たいように見ており、 " あたかもそれが真実である かのように " 意味づけ、行動している」とする人間理解の立場。 かのように理解 P92 人間が、自分を含めたこの世界をあたかも現実である " かのように " 理解している、その様 のこと。 完全への努力 P46 共同体に貢献し、共同体が完成することを目指して努力すること。完全への努力は、人との つながりを意識させ、失敗しても共同体が成長するための礎として評価される。 ( 対 : 優 越への努力 ) 共同体 P158 ある範囲で人と人とがつながったグループのこと。ー対一の関係が共同体の最小単位。家族、 友人、町内、サークル、勉強会、自助グループ、会社、国、民族、国家、宗教など、さま ざまな規模と種類の共同体がある。 共同体感覚 P156 ・ 158 ・ 160 社会に対する関心のこと。努力と練習によって培っていく必要がある。共同体感覚は、所属・ 貢献・自己受容・信頼の 4 つの感覚から成リ立っている。 原因論 P48 「過去の原因が現在の行動を決めている」というように人間を見る立場。 ( 対 : 目的論 ) 質献 P156 自分の能力を使って周リの人に貢献できている、という感覚。 1
所 る のあ人々は 分 自 4 つの感覚からなる「共同体感覚」 周りの人の 役に立てる 能私 がは る ありのままの 自分でいられる 共同体 己容 自受 る にれ りら 周せ ありのままで委ね合える場を見つける 「自己受容」とは、その共同体の中でありのままの 自分でいられるという感覚です。自分を飾ったり、 偽ったりすることなく、そのままの自分でいていい と感じることです。 「信頼」とは、周りの人たちに任せることができる という感覚です。周りの人を信頼し、安心して任せ ることができると感じることです。 以上のうち、所属と信頼を「人々は仲間だ」とい う感覚、貢献と自己受容を「私には能力がある」と いう感覚だとまとめることができます。周りの人た ちが自分の仲間であり、その中で自分は自分の能力 を使って、周りの人たちの役に立ち、貢献すること ができるという感覚が、共同体感覚だと言えるでし よ、つ 157
解説 1 一所属↓貢献↓自己受容↓信頼のサイクル 共同体感覚とは、英語では social inte 「 est" つまり「社会への関心」ということです。その反 対は、 selfinterest 、つまり「自分への関心」ということです。人間は生存していくために自分 への関心は必然的なものです。一方、社会への関心は、生まれつきのものではなく、努力と練習 によって育てていかなければなりません。 共同体感覚を細かく見てみると、所属・貢献・自己受容・信頼の 4 つの感覚からなっています。 「所属」とは、その共同体の中に自分の居場所があるという感覚です。自分が他の人たちと同じ ように所属していること、安心してその中にいられるという感覚です。もし所属の感覚がなけれ ば、自分は仲間外れになっていると感じるでしよう。 「貢献 , とは、周りの人の役に立っことができるという感覚です。自分の能力を使って他の人と その共同体に貢献できるという感覚です。 L e 5 5 0 n 6 156
L e 5 5 0 コ 6 解説 2 一自分の共同体感覚を育てることが幸福への道になる 共同体感覚でいう「共同体ーとは、ある範囲で人と人がつながったグル 1 プのことで、その大 きさや性質にはさまざまあります。アドラ 1 が「地球上に生きる人類ーということから話を始め ているのを見ると、共同体感覚とは人類全体に関わる抽象的な概念であると捉えられます。しか し同時に、共同体感覚は、目の前の他者との関係をどう考え、どう振る舞えばいいのかという非 常に具体的な問題でもあります。 例えば、目の前にいる人に対して、その人にとっては厳しいことを言わなくてはならない時が あります。しかし、その人との関係を壊したくないので、それを一言うべきかどうか迷います。こ のように私たちの悩みの多くは対人関係です。こんな時は、自分の行動がより大きな共同体にと ってどういうことなのか、ということを考慮することが判断基準になります ( 図 ) 。私たちの共 同体感覚は、常に挑戦を受けています。それに対して、自分自身の共同体感覚を着実に育ててい く必要があるのです。 158
所有の心理学 P68 無意識や感情などの部分は、人 ( 全体 ) を支配 ( 所有 ) して突き動かすことがある、とする心理 学の考え方 ( 対 : 使用の心理学 ) 信念 P88 ・ 92 「世界は ~ である」など、世界や周りの人に対する仮想的な理解の仕方のこと。 人は信念に 劣等感を感じている欠陥部分を努力によって肉体的に克服したリ、劣等感を感じずにすむ 補償 P44 かを解明しようとする心理学の領域。幸せとはどのように創り出せるのか、を関心事とする。 人間や組織、社会の姿はどのような状態、要素によって本来あるべき優れた方向に向かうの ポジティブ心理学 P25 エネルギー ( リビドー ) によって人の行動の多くを説明しようとした。 晩年にはナチスに追われ、ロンドンに亡命した。無意識に着目し、性的衝動の基になる心的 ジークムント・フロイト ( 1856 ~ 1939 ) は、精神分析を創始した人物。ウィーンで長く活動したが、 フロイト P24 は行 解明しようとする。行動主義と対比的な立場で、脳科学と関連して発展。 心理学的アプローチの一つ。人の記号・情報処理 ( 認知 ) の過程を理解することで人間の性質を 認知心理学 P25 あると見なして、人間を全体的に理解しようとする心理学の立場。 人は無意識や外的環境に支配されて行動するのではなく、自由意志をもった主体的な存在で 人間性心理学 P25 な行 その人にとって心理的に大きな打撃となった経験のこと。 トラウマ ( 心的外傷 ) P90 た行 方。 ( 対 : 要素論 ) 人としては一貫している」とし、人間を一つの分割不可能な全体 ( 統一体 ) としてとらえる見 「人間の意識、無意識、思考、行動などは、対立せす協力し合って人間全体を作っておリ、個 全体論 P22 ・ 67 ・ 70 人の行動と意識の現象との関連性を研究する学問。 心理学 P22 ・ 24 きる、という感覚。 共同体感覚を構成する感覚。所属する共同体の中で、周リの人に安心して任せることがで 信頼 P156 とも言える。「ほら、やつばリ世の中は〇〇だ」などと人が思いがちなのはそのため。 基づいて世界や人の行動を意味づけるため、常にその信念を強化する理由を探している、 3 「人間は目的がまずあって、それを達成するために思考したり行動したりしている。人間の 目的論 P22 ・ 48 ま行 に努力すること。アドラー心理学においては、人間の行動の動機として重視される。 ( ごまかせる ) ような価値観を持っこと。劣等感を解消または覆い隠すために肉体的、精神的
アドラーの知恵 c 0 1 u m n 6 共同体感覚を個人の 主体性によって採用する 実行するのは、あなた自身なのです。 したら私の生き方はどうなるかを試してみよう」と決断し 0 の提案に対して、「 OK 、その考え方を採用してみよう。そう。 P. 92 のコラムで説明した「仮想論」に基づいています。そ ように定義できる」ということを提案しています。それは、 れば、世界はこのように見えて、あなたの生きる意味はこの アドラー心理学は、「もし共同体感覚というものを想定す 終的にはあなた自身が決めるということです。 (creativity) 」と呼びます。あなたの考え方や生き方は、取 めるのは、あなた自身です。それを「個人の主体性 相対的な価値である共同体感覚を採用するのかどうかを決、 あるという立場を堅持します。 は「科学」ですので、共同体感覚もまた「相対的な価値」で。 宣言したとたんに、それは宗教になります。アドラー心理学、 それは絶対的な価値ではありません。絶対的な価値であると ことへの鍵になるとアドラー心理學は教えています。しかし、 自分の共同体感覚を育てていくことは、幸せな人生を送る 160
C 0 n t e n t s ( み司幸せを呼ぶ絆 解説 1 3 つのライフタスクとは ? ・ 解説 2 3 つのタスクはすべて人類全体への関心に向かう : ・ ColumnL0 勇気と布れ : 心を満たす幸せのかたちーー「共同体感覚」を持っ : Lé生きる喜びは「つながり」の中に・ 解説 1 所属↓貢献↓自己受容↓信頼のサイクル : 解説 2 自分の共同体感覚を育てることが幸福への道になる : columnec 共同体感覚を個人の主体性によって採用する : 謝辞 : 巻末付録アドラー心理学がわかる用語集町 : 員 攵者 経 レ 登 土元 主 Chapter 6 166 138 137 160 134 158 大久保健司 単身赴任中の 会社員 ※このまんがはフィクションです。実在の人物・団体・事件などとは関係ありません。 ※作品中の引用文の出典は、すべてアドラーの著作です。
正しく関心を ' ~ ー ( 持たれることで、グを 人に正しく 関心を持っ その機会が ことを学ぶ ないか、ら 人はそうい一つ道に 進んでしまうんだ だからあんな話を・ 誰だって 誰かのおかげで 生きている 先人の知恵や 成果も 含めてね それに 気づかせて あげる必要が あるんだ われわれは見ること、聞くこと、話すことにおいて他者洋、 結びついている。人は外界に関心を持ち、他者と結びついでる、・・ 時にだけ、正しく見、聞き、話すのてある。 「生きる意味を求めて』 p.23Q. 、 感つ人 = を ? 、、 覚なと て る それを アドラーは 呼んで 「共同体感覚」と ひとことで言えば 人とつながって いる感覚・ : かな 人が成長する ためにとても 重要なものと したんだけど : さつ、 0 ・】 ( 、・言いかけてた こと・た
少しすつ大きな共同体のことを考えていく 共同体 ( 人類全体 ) にの人との関係を壊 したくない」 「職場の秩序を守らな ければならない」 「環境を破壊する事業 はやめるべき」 「人類の幸せに貢献で きる活動を選ぶべき」 共体域 ) 共同体 ( 職場 ) 共同体 「自分たけの理屈」を共有できるものに変える 人は共同体の中で、常に自分の居場所 ( 所属 ) を 共行 にい求めています。人はすべて最終目的として所属を目 りかが指していると考えると、複雑に思える他者の行為も シンプルに見えてくるでしよう。ただし、その方法 は千差万別。自分にしか通用しない考え ( 「私的論 体を 自 「同動 理〔 private 一 og 一 c 〕」 ) で達成しようとすると、周り からは不適切な行動とみなされます。共同体感覚を ク国る サ社が 育てる努力とは、各自が自分の私的論理に気づき、 会 町共同体のメンバーが共有できる「共通感覚 ( common 人」ま 、グま sense) 」へと変換していくことなのです。 族助 家自 釟教 共通感覚を持っことで、その共同体の中で、その 同強淙 共勉族 ままの自分の居場所があり、自分の能力を使って他 阜コ , 阜」者に貢献できるようになっていきます。それが喜び を生み出し、幸福な人生につながっていくのです。 159