C h 0 p te 「 1 新・経済バラダイムの出現 「スタートアップ」や「起業」、そして「イントレプレナー」というキーワードが時代を謳歌 している。ビジネスアイデアを話し合う場や発表しあう場はあちこちに広がり、クラウドファ ンディングの普及もあって、チャレンジの数は劇的に増加している。 一方、そのチャレンジを、継続性をもって発展させていくには、新たな概念の生成と、ビジ ネスモデルという発想が不可欠だ。これから隆盛を極めるであろうビジネスモデルの波を捉え て、自社の事業を高度に昇華させることができれば、そのビジネスはビッグバンを起こしたよ うに社会に大きく広がっていく。 私は、社会の構造的変化をリサーチし、事業開発・ビジネスモデル構築におけるコンサルティ ングを行っているが、現場に出向けば、各人が考え抜いた複数のアイデアとコンセプトに出会 う。そこから私が行う仕事は、社会の構造変化と大きなビジネスモデルのトレンドを見極めな がら、コンセプトを磨き上げ、ビジネスモデルの高みへと昇華させていくことだ。 例えば、ものづくりの業界を変える 3 プリンタは、確かに素晴らしいデバイスだ。しかし、 今重要なのは、工業型製造業から知識型製造業へと構造が変化する中で、既存のビジネスモデ ルをどう再構築するか ? という問題意識だ。この問いに巨大な価値が潜んでいる。 新たな経済社会の登場とテクノロジーの進化。また、それに合わせたビジネスの劇的な変化。 これからの社会を作る概念とビジネスモデルが今、世界中で芽吹き始めている。 現代は数百年に一度の文明的大転換期と言われるが、その序章はすでに始まっており、その
ビジネスモデル 202 5 目次 chapter 2 ビジネスモデルの バラダイムシフト 95 8
C h 0 p te 「 1 新・経済バラダイムの出現 社会を変える 7 つのビジネスモテル 今、経済は、新たなパラダイムの入り口にある。その経済は、収入にかかわらず生活水準を 上げていける社会であり、貨幣経済に、共有経済、物々交換経済、贈与経済などが高度に融合 していく世界である。それは、誰もが安心感を持って、価値創造に挑戦していける社会へと進 化することを意味する。 こう一言うと、果たしてそんな都合のいい社会が、本当に生まれてくるのか ? という疑間を持 つ人も多いかもしれない。しかし、この新たな経済世界は、まぎれもない現代の潮流の中に生 じている支流であり、「すでに起こった未来」として、その勢いは増すばかりである。 そして、このような新たな経済圏を再構築し、その上に形成されてくるビジネスモデルが存 在する。ハイプリッド型の経済社会と、そこで巨大な影響力を発揮する 7 つのビジネスモデル を記すと、次ページの図のようになる。 人々の欲望を煽って無理矢理利益を上げるだけではもう嫌だ、社会貢献を強烈に打ち出す が、継続性のない活動も嫌だ。イノベーションを起こし、社会に莫大な価値を提供する「次世 代ビジネス」と言える事業を作りたい。また、自社のビジネスモデルをそのようなモデルへと 再構築したい、 と思う人にとっては重要な「時 , が到来している。
B u s i n e s s M 0 d 引 20 2 5 ハイプリッド型経済に対応する新ビジネス 物流 再構築 モデル ロボットの 継続課金 モデル 貨幣経済 共有経済 モノの クラウド ボット ソーシング ソーシング 利用モデル 利用モデル 価値消費 最適化 モデル ントム オプフ サプライ チェーン 贈与経済 交換経済 経済社会の概念的進化とそれに伴い隆盛を極める 7 つのビジネスモデル。本業に 組み入れたリ、新規事業を立ち上げていく際に大切なコンセプト。
衝未 B05 デ e55 ModeI 2025 ◎人間よりも賢い人工知能 ◎無人で配達を行うドローン ◎温かい接客が得意なロボット 「技術的失業」がリアルに迫る、次の旧年を生きのびるための 「 7 つのビジネスモデル」と「ロボット時代のビジネス哲学」 これからの社会、これからのビジネスモデル ◎新・経済バラダイムの出現 どこが現代経済社会の限界なのかワ ビッグバンティスラブションという新ルール コストゼロ社会への道筋 貨幣によってむしろ取引コストが高くなる 価値消費ピラミッドと 21 世紀の消費 安心感ある価値創造社会の潮流 ◎ビジネスモデルのバラダイムシフト ロボットの継続課金モデル モノのオープンプラットフォーム 物流再構築モデル ネットワ - クカによる価値消費の最適化 クラウドソーシング利用モテル ボットソーシング利用モテル 個人と地域を活かす二ューサプライチェーン ◎ロボット時代のビジネス哲学 テクノロジーが世界を謳歌する 人間は「進化するバターン」ではない A21 世紀に最も高い価値を持つもの イフ性 ラ一 プエ地 サチ 0 長沼博之 ( ながめま - ひろゆき ) イノベーションリサーチャー / 経営コンサルタント 大学卒業後、東証一部上場企業・株式会社船井総合研究 所の創業者 - 船井幸雄氏が設立した船井幸雄グループに 入社。企業及び NPO 等を支援し、年間最優秀賞を最年 少で受賞。その後、一般社団法人ソーシャル・テザイン を創業。大企業や中企業に向けて経営及び事業開発コ ンサルティングを行っている。 また、世界中の次世代ビジネスのトレンドをいち早く紹 介するウエブマカジン「 SOC 回 Design News 」を運営 するなど、情報発信にも積極的に取り組んでおり、時代 の先端テーマでテレビや雑からの取材多数。本書は、 仕事とワークスタイルの未来を体系的に提唱した「ワー ク。テサインこれからのく働き方の設計図 > 」 (CCC メ ティアハウス ) に続く、 2 冊目の著作となる。 SOCial Design News http://SOCiaトdesign-net.com/ B し引 ness Mo 日 2025 フラット フォー イノベーションリサーチャー 経営コンリルタント Social Design News ファウンター クリエイタ、 長 沼 之 フ 0 のビジネスモデル ビジネスモテル 2025 写真 0 tOtuss - FotOlia.com
重要指標 活動目的となる指標 企業 人材と組織 B u s i n e s s M 0 d 引 2025 ビジネスの構成要素 シェアの定義と顧客アプローチ マーケティング 生産・流通の枠組み 提供モテル・流通 利用モテル 顧客と商品の関係 ☆ 顧客 顧客、流通、組織など、ビジネスモデルを組み立てるにあたり考慮すべき要素は 複数ある。主な要素がどう変化するかをまとめると、下のようになる。 すべての構成要素が変化する 重要指標 基本の人材 リソース 提供モデル 物流 利用モデル 占有概念 顧客アプローチ あり方 これまでのビジネス 利益の最大化 従業員 標準規格化 リアル & アウトソーシング 所有 マーケットシェア 買わせる・消費させる クローズドカンバニ → これからのビジネス 影響力の最大化 クラウドソーシング 個別化 オンデマンド & クラウドシッピング 共有 マインドシェア 好きになる・生産する オープンプラットフォーム 事業が目指すべきものは「利益」から「影響力」へ。モノやサービスが活用され 「利用」へ。事業の構成要素すべてが大きく変化する。 9 / るシーンは「所有」から
C h 0 p te 「 2 7 つのビジネスモデル ネットビジネスは、土地建物、設備、原材料、物流網、販売店、その全てがほとんど必要あ りません。とても安価になったパソコンやサー バー代が多少かかるだけです。ほとんど人件費 だけなのです。 だから失敗しても致命傷を負う会社は本当は少ないです。 それにも関わらず、サービスが大ヒットすれば、成長市場かっ収穫逓増モデルに乗って驚く ほど儲かることがあります。 つまり、ローリスク、八ィリターンなのです。ローリスク、八ィリターンであれば、私は数 多くのチャンレンジをするほうが有利だし合理的だと考えてます。大ヒットを生み出せる確率 が上がるからです。 ネットビジネスにおいて、その正否を分けるもの、他社に対する競争力になるもの、それは 人材です。 引用元〕渋谷ではたらく社長のアメプロ ここは、ネットビジネスとなっているが、これからの高度な情報社会において、つまりモノ
C h 0 p te 「 2 7 つのビジネスモデル ビジネスモテルのバラダイムシフト 「 2 0 2 0 年に発売されるデバイスの % 以上が、新たに登場したメーカーの製品であり、 2 0 2 5 年、このトレンドの中で生まれた、影響力のあるニュータイプの家電メーカーは 10 0 社以上にのぼるだろう」 オンライン上でハードウェアを設計・開発できるプラットフォーム「 Upverter 」が示すハ ドウェア革命の近未来像だ。今、これを、否定できる人はいないだろう。モノづくり業界にお ける環境の変化は、まさに、現代におけるイノベーションの象徴的な事例だ。 このような巨大な変化が起きる激動の時代に、どのようなビジネスが登場し、ビジネスモデ ルはどう進化していくのだろうか ? ビジネスモテルの全要素が変化する ビジネスモデルを構成するさまざま要素がどう変化しているのかを説明する前に、議論の対 象となる各要素を確認しておこう ( 次ページ上図 ) 。また、議論の見通しをよくするため、変化の 概略も表にまとめた ( 下図 ) 。 8 9 ページ以降の内容を理解するための助けにしていただきたい。
ビジネスモデル 202 5 目次 chapter 3 次世代ビジネスの 哲学 1 85
C h 0 p t e 「 2 7 つのビジネスモデル 単なるマッチングから創造のプラットフォームへ 「企業は大きく成長し続けなければならない」。特に上場をしているような会社には、常にそ の厳しい課題が突きつけられる。しかし、前述したように、この時代においてそれは簡単なこ とではない 一章で記したようにビジネスの成長は、利益を生み出す仕組みを反復し続けることよって可 能となる。どのポイントでお金になるのか ? という点を見つけ、それが再現可能性を持つかど うかを検証する。そして規模の拡大、つまりスケールできることが分かれば、それをひたすら に反復し、成長させていくわけだ。 一方で、成長企業にも限界がある。それは競合かもしれないし、市場規模かもしれないし、 人口かもしれない。そして、成長を宿命づけられた企業は考える。その限界を超えてまで、成 長をする方法を。 結果、他分野への進出をはかっていくわけだが、ひとつのビジネスモデルの再現性を強化し ていくのが企業の基本的な方向性なので、新しくお金を生み出すポイントを見つけて、まった く別のモデル作り、再現性を強化することは簡単ではない それは例えるなら、熟成カレーを作ったところに、突然「それをベースにホワイトシチュー を作ってください」と頼まれるようなものだ。また、カレーの完成間近に「やつばりポトフに しようかな ? 」と考えるようなものだ。カレーからポトフを作ることは無理で、ゼロからもう 158