B u s i n e s s M 0 d 引 2025 すらも情報化していく世界の中で、価値創造はますます「人」に依存していく。 いや、もっと言ってしまえば、個人とロポットの連携、そこから派生した少人数のチーム、 そしてクラウドソーシングなども入れた細やかでコンパクトな価値創造の生態系に依存するよ うになる 企業は、この価値創造の生態系が変化していることに気づかなければならない。これまで何 百年も続い ているような伝統的な産業の老舗企業と言われている会社でさえも、価値創造の新 たな生態系を無視できなくなるのである。 【ワンポイントアドバイス】 ・仕事は常にボットソーシングサービスありきの発想で進めていく心構えを持とう ・自社の仕事や新規事業を、ボットソーシング系サービスを利用することで効率化できるか 検討してみよう ・クラウドソーシングとボットソーシングを組み合わせて、自社事業を再構築できないか 考えてみよう ・自社のノウハウをボットソーシング化して、新たなサービスとしてマーケットに 提供できないか議論してみよう 173
Chapter 1 新・経済バラダイムの出現 かを検証する。そして規模拡大、スケールできることが分かれば、それをひたすらに反復させ ることによって利益を出し、成長させていくわけだ。いくつもの強力な柱を持っという理想は、 実際のところは簡単ではなく、多くの場合、ひとつに集中させていくことが問われる。 つまり、その再現性及び反復運動によって事業は成り立っており、その運動の強化こそが企 業の重要な課題となる。 この反復が強化された構造の中から、新し、 し、別の再現性を持つ事業を発見し、育てること は容易ではない。結果、企業は自社で新しい事業を立ち上げるよりも、自社の本業で稼いだお 金で、会社を買収することを選択する。よく経営者はこのような買収を「時間を買うためーと とい , つのか 表現するが、実際のところは、事業の根本構造から考えると購入せざるをえない、 本音なのである。 そういう背景があるため、思ってもみなかったところから競合がいきなり登場した場合、そ れに対応するのは難しい 見えにくいところから彗星のごとく登場した競合は、さりげなく、そして時に目立たないよ うに安い価格、もしくは無料でそれを提供し始める。しかも、それは誰もが持っスマホのよう な端末を経由して提供されていくのだ。そして最終的には、自社の製品群、もしくは自社の生 態系へと誘い込み、一気に新しい価値提供モデルを現実化してしまう。 今後は、あらゆるビジネスがこのようなスピード感で進んでいく。また、イノベーションで
C h 0 p te r 2 7 つのビジネスモデル が情報化していく中では、物理的な製品を扱う会社も、同じようにそれを真剣に考えざるをえ なくなっているのである。 前述したように、自動車業界にイノベーションを起こし続けるテスラは、自社の電気自動車 技術の特許をオープンソース化した。電気自動車の世界を前進させるためという大きな理念の 元に行われたことで、世界からの拍手喝采を集め、結果、他社も戦略的に追随している。 閉じることで価値を生み出す時代から、開くことによって価値を生み出す時代へ。この価値 観の変化は強烈だ。頭で分かっていても、いざ実行に移そうと思えば、これまでの価値観に染 まっていればいるほど、愕然とするほどの勇気がいる。 人間の行動様式が変化し、あらゆる製品が再定義される シンプルで薄く、 iPhone と一体化させて持ち歩ける財布「シンプルウオレット 2.0 」がクラ ウドファンディングサイトの K 一 ckstarter で人気を集めた。私も実際に購入し、利用しているが、 なかなかに便利だ。家の周りを動く際は、大きな小銭入れを持ち運ぶ必要はなく、スマホと一 体にして、ほとんどこれだけを持ち運べばこと足りる。この財布が注目を集めた後には、世界 中で「薄い財布プーム」が巻き起こっていった。 さらに、同じく Kickstarter にて、財布に入る充電器「 TravelCard. 」も注目を集めた。薄いバッ テリーで、側面からケープルが出てきてスマホを充電できるというしくみ。シンプルだが、 122
C h 0 p t er 2 7 つのビジネスモデル 新しいサプライチェーンが地域を活性化 少人数の 大規模 複数の 大工場 消費者 デザイナー 小売業者 無数のテサイナー 地域工房 オープンプラットフォーム 消費者 小さなチームで事業をスケール 供る 提が また、これまで解説してきたような環境 を広 タが 変化の結果、小さなチームで事業をスケー ルできるようにもなってきている。たとえ 製チ てイ ば、ファッションメーカー「 Gustin 」は、べ しラ 用プ ンチャーキャピタルなどからの資金調達はせ 利サ をう ず、自社で行うクラウドファンディングだけ 「で躍進を続けている。 ト届 同社は、これまで小売店で約 2 万円程度で ラぐ プす販売されていた「高品質なジーンズーを、卸 価格のドルで販売するというプロジェクト ナ行 イで ザ所を Kickstarter に立ち上げ、目標金額の倍を や近超える万 9 6 5 4 ドルを集めた。それ以降 タ客 は、自社サイトにクラウドファンディングを イ顧 工は リ造導入し、目標金額に到達した商品だけを生産 ク製 販売する仕組みで躍進を続けている。 1 80
B u s i n e s s M 0 d 引 20 2 5 単純なウェアラブルデバイスの開発と販売という事業モデルは、よっぽど強固な技術的基盤に よって、真似されにくい何かを持っているか、巨大資本の後ろ盾がないと難しい つまり、モノをオープンプラットフォームにすることで参加者を増やした企業が、その分野 を大きく開拓していくこととなる。 クローズドな企業は社会において隔離された存在となる 企業が、公益性とかけ離れた、自己利益のための「知的財産の保護」という古いパラダイム の中に取り残された場合、そこは研究者の隔離施設になるとも言われはじめた。 これまで企業は、「閉じること」により価値を生み出すことが一般的だった。新しい会社を 立ち上げたら商標登録し、自社の研究者・エンジニアによって特許をばんばん取っていく。 もちろんこのすべてを否定するものではないが、しかし、新しく生まれ、幻世紀の常識とな る価値創造は、もっとオープンなプロセスだ。 「自社のものー「自分のもの」とただただ囲い込んでいく戦略ではなく、どこをどのようにオー プンにしていくか ? とい , っところにこそ本質がある。 グーグルが検索エンジンの利用に関してお金を取るというクローズドな戦略をとっていた ら、今のグーグルは存在していないはずだ。 こう言うと、それは情報産業を中心とした話では ? と思われるかもしれないが、モノ自体
C h 0 p te 「 1 新・経済バラダイムの出現 大企業の役割はどうかわるのか ? 現在、大企業は、国家と拮抗するような影響力をつけている。実際、どこの会社も「少額課 金モデルで大衆から税金を取るように」お金を徴収するモデルを良しとして進んでいる。あた かも東京に住んでいれば使わざるを得ないのような存在、また日本に住んでいれば払わざ るを得ない携帯代などと同じモデルを目指し、企業は発展を続けていこうとする。 この進展のべクトルの中、中央という概念がない分散型の社会において、企業の役割はどの ようなものになるのか そのひとつは、基本的人権を守るインフラである。 2014 年 2 月、各地で歴史的降雪量を記録したが、それにともない山梨県が大きな被害を 受けた。予想を大きく上回る雪の量で、交通網が各地で遮断され、県内で生活必需品や食糧が 不足し、深刻な状態に陥った。 そこで、セプンイレプンは、自社で 2 機のヘリコプターをチャーターし、 5 0 0 個のパン などを輸送したのである。東日本大震災の時にも、コンビニエンスストアの高度な流通システ ムは、重要な食糧調達網として機能した。 日常的に必要になる企業というインフラは、幻世紀においてはより、この公共性が求められ るよ , つになる。 また、ふたつ目は、プラットフォームとしての企業だ。ュニクロがシャツを自分でデザイ
B u s i n e 5 s M 0 d 引 20 25 行えるか検討してみよう ・クラウドソーシングを利用し、自社がティレクションを行うカタチで新サービスを 開発できないか検討してみよう ・自社の顧客を親密なバ ートナーと位置づけ、その顧客にクラウドソーシングできることは 何かを考えてみよう ・クラウドソーシングをプロジェクト、そして事業創造のネットワークと考えて、 利用の可能性を継続的に探っていこう 163
B u s i n e s s M 0 d 引 20 2 5 更に、今後「自動運転車」が登場し、人間が車を運転する必要がなくなれば、事故の件数は 激減する。結果、修理件数はもちろん、保険に関する手数料も大きく下がっていく。よって、 若手で鈑金を仕事にする場合は、先がないと思っている人達も多い しかし、そんな地域の工場に、今後は大いなる可能性が秘められている。そのアイデアの 1 つがモノづくりができる工房としての利用だ。 前述したツールライプラリーとしてもそうだが、本命の 1 つはローカルモータースのよう な、自動車作りを地域で担う存在だ。もちろん、規制の問題がネックになるが、世界が先んじ て動く中で、いずれは日本でも規制緩和されていく可能性は十分にあるだろう。 もちろん、現在の大手自動車会社が突然なくなるということはないが、下請企業への過度な 価格低減圧力など、今の産業構造に対する不満の声は年々高まっている。 地域経済を担う、地域のための自動車製造工場が、市民の賛同を得ながら登場してくる可能 性がある。そういった存在へと向かうステップとして、自社をオープンな地域工房へと進化さ せる選択肢が、今、現実的に見えはじめてきている。 新たなサプライチェーンが業界に及ぼす影響力 既存の巨大なサプライチェーンが、我がもの顔で世界に拡大していると単純に見えるかもし れないが、密かに植えられたイノベーションの種は、静かにではあるが、着々と芽吹き始めて
Business Model 2025 一度ポトフを作り直すか、できあいのポトフを買ってくるしかない 企業にとって、買収とは、ポトフを買いにいく作業である。よって、大企業はどんどん進出 したい分野の企業を買収し続けながら、コングロマリットを作って成長し続けていくしかない わけだ。 日本で言えば、まさにソフトバンクのような会社がやり続けているのはそういうことだ。よ く言われる「時間を買う」という表現よりも、むしろビジネスが生まれ成長していくモデル自 体が持っている宿命的な構造なのである。 事業が利益を生む期間がますます短くなる今後は、ビジネスの成長プロセスが持っ根源的な 問題に焦点を当てざるをえなくなる。つまり、ゼロから新しい価値を創造するプロセスを企業 が自社の構造の中にどう取り入れ込んでいくか ? という大問題である。 そのヒントがクラウドソーシングの仕組みの中にある。今は「企業から仕事を請負う個人が 集う場所ーというイメージがあるかもしれないが、これから 3 年、 5 年でそのイメージは大き く変わっていくだろう。クラウドソーシングのカタチはどんどん進化をしていき、 o から 1 を 生み出す価値の源泉を作るための重要なリソース、プラットフォームとして認識されていく。 例えば、起業のためのオープンコラボレーションプラットフォーム「 Babele 」がある。自分 やチームのビジネスプランを構築していくためのオンラインツールだ。具体的には、自分たち の事業を登録し、そこにコメントや提案をもらいながらビジネスモデルを練り上げていく。 1 5 9
B u s i n e s 5 M 0 d 引 20 2 5 【ワンポイントアドバイス】 ・自社製品の中で、テジタルテータで配送できそうなものを書き出してみよう ・原料だけを運んで、現場で最終製品を作るためのアイテア、また、そのために必要な テパイスを考えてみよう ・現在の自社ネットワークとアプリを利用して、新たな物流網 ( 物流関連事業 ) を 構築できないか議論してみよう ・ドローンでの空輸も含めて、今は無理かもしれないが、近い将来可能になりそうな 物流網のアイデアを書き出しておこう になる。 133