信号 - みる会図書館


検索対象: ラプラタ沖海戦
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1. ラプラタ沖海戦

別れをいうときがきてしまった。その司令官をほとんどの乗組員が召集兵で、過去何週間か前の できごとには誰一人何ひとっすることのなかった連中ばかりのポロ巡洋艦に、一人たけ残して去 るのである。 アキリーズはひときわホーキンスに接近した。そのホーキンスでは軍楽隊が "For He ・ s a J011y Good Fe110w" をかなで、乗組員たちが声をかぎりに唱和している。たがそれもついに 最後の自発的な三回の″マオリ族流のさよなられの喚声でもって終った。司令官は信号を送って きた。 「諸子ニ余ノ篤キネギライヲ送ル。幸運ノ貴艦 = テ過ゴセシ日々 ( 余 = トリテコノ上ナク愉快ナ リシナリ。サラ・ハ。健闘ヲイノル」 アキリーズにいた間に司令官は士官たちに、 ″ビディ、ビドウ〃という酒席でのダイスの切り 方を教えたのたった。それでこのとき数人の士官がペアリー艦長のところへ、司令官に″ビディ、 ビドウ〃と信号を送ってよいかとうかがいをたててきたのである。もちろんすぐきき入れられた。 ところがこのたった二語の信号が、ホーキンズの信号兵がそれを諒解するまでには何回も何回も くり返し送られねばならないことになってしまったのであった。そして司令官はこれに対して、 味な信号を返してきたのである。 《六五三》この目がビディにもビドウにも勝つのだった。 ところでホーキンスに旗艦を移す少し前に、 私信が入っていた。 ーウッド少将には軍令部長からのつぎのような

2. ラプラタ沖海戦

て大声でなにかどなりおろしてきたのである。だがその声は風と艦の音響とにかき消されて何を いっているのかわからない。ききとろうと耳をそばだてたウッドハウス大佐の耳に、ちょうどそ のときェクセターからの信号を信号兵が読み上げ始めるのが人った。またペニファーザーがどな ってきた。「ポケット戦艦ですッ " こほとんど同時に信号兵がエクセターからの信号を読み上げ おえた。 ーウッド司令官の判断は正しかったのであった。 やつばり、 艦内に警報電鈴が鳴りも終えぬうちにその司令官は羅針艦橋に上がってきていた。左舷の方の 方角に、一団の煙をたなびかせて、彼の敵は今こそ小さく黒く、輪郭のさだかでない艦影を、水 平線上にあらわしてきたのである。 アキリーズは続行してきている。左舷艦尾方向にあたってはエクセターが、戦闘旗をするする とかかげながらその敵艦に向かっている。いわずして彼の三隻の巡洋艦は彼の望んでいた通りの 隊形をとりつつあるのだった。すなわちェクセターはいま艦列をはなれて、別の方向から攻撃で きるよう占位しようとしているし、エージャックスとアキリーズは別な一隊となってそれを別方 向から攻撃できるよう運動しつつある。いまさらの信号旗をかかげる必要はもはやなくな ったのだった。 ーウッドの視野にも人るまでになった。威力の懸絶した一一イ ムつはもうグラフ・シュペーはハ ンチの巨砲弾にものをいわせて、その敵艦は彼の弱勢な兵力を一気に抹殺してしまおうとしにか かるかもしれない。それともその巨砲の射程内につけ入らせないよう間合いを保ちつつ、夜に入 って逃げをうつ気かフ ーウッドが何をおいても先ずしなければならないことは、敵発見を しかしいずれにせよいま (

3. ラプラタ沖海戦

戦前のこの艦のコールサインを使って、エージャックスにあてて無電を送信してきたのだった。 ナニトゾイギリス商船ノ救命艇ヲ救助サレ度シ。 これがこの敵艦がアドミラル・シェーアではなくて実はグラフ・シュペーであったことが判明 する最初の手がかりとなったものなのである。これに対してエージャックスでは何の応答もしな かったが、ものの一五分もたっと同艦自身がその商船に十分接近していた。みればこの船はまだ 救命艇を降してもいず、船員たちはみな船に残留していた。この船は英汽船シェイクス。ヒアだっ た。そこでエージャックスは信号を送った。 無事ナリヤ ? 無事ナラ・ハ国際 0 旗ヲ掲揚セョ これに対してシェイクスビアは国際規定にある O の信号旗をガフにあげた。 貴船ハアドミラル・グラフ・シュペーヨリ信号ヲ受ケタルャ ? 「然り」の応答をシェイクスビアは送ってきたが、この船の者たちはポケット戦艦が通った道筋 にいあわせていながら生命がたすかったといううれしい驚きが、まだ少しもさめていないようだ

4. ラプラタ沖海戦

祐ライアン大将、それにカン・、 ーランドにまで通報すべき時になった。ところで彼の第一報は軍令 部にグラフ・シペーの発見を報じたので、例の〇六一五に発したものであった。 緊急。ポケット戦艦一隻。〇三四度南、〇四九度西、針路二七五度。 ついでカン・ハ ーランドに可及的すみやかに合流するよう通知した後、〇六三九にエージャック スからはつぎの簡潔な、そして劇的な信号が発せられているのである。 ェクセター、アキリーズト共ニ、ポケット戦艦一隻ト交戦中。 これにつづいて〇七一七に発しられたつぎのせつば詰まった信号であった。 南緯三四度、西経四九度ニテポケット戦艦一ト交戦中ナリ これで、ライアン大将や軍令部、それにカン・ハ ーランドまでも、一挙に臨場感にひきずりこん だのであった。 この後でエージャックスの無線機が使えなくなると、 ーウッドはアキリーズにつぎのように 信号している。 貴艦 ( 平文ニテ次ノ全商船通報ヲ発シラレ度シ。ポケット戦艦一。三四度南、五〇度西、

5. ラプラタ沖海戦

235 長から舵機室までの間を操舵下令の逓伝のため水兵がずらりと列を作ってならび、人間の鎖がで きあがった。 これでともかく操艦はできるようになったので、ベル艦長はポナムに舵機故障表示の信号をあ げさせるため前部の艦橋へ派遣した。相つぐ至近弾になお弾片のしきりにとび交う中を、それで もポナムは怪我もせずに艦橋にたどりつくと、いあわせた両腿に傷を負っている志願兵ハー・ヘン に手伝わせて、切れ残っている信号索の一本を使って黒球二個を掲揚した。だがこの信号はほん の数秒間掲揚されただけたった。黒球が折れた信号桁ごと落ちてしまったからである。 ・ミンヒネットは前もって艦長から特命を受けていた一人だった。その特命と 機関兵長ジョン いうのは、舵機室操舵に切り換えた場合、主機室に行ってそこの機関科の者たちでもって舵機室 の要員を勤めるようにとの艦長命令を彼自身で伝達することであった。この特命にしたがって彼 は機関操作室の甲板まで降りてゆき、おりから全速で運転している主機の騒音ごしではあったけ れども、この命令を伝達したのである。だがそこで彼のいわれたことは、舵機室の方へ行って、 最寄りの持場についている機関科の先任下士に、直接にその命令を伝えろということであった。 ところがそれを伝えにゆく途中で彼は近くで炸裂した敵弾のため負傷してしまったのである。救 急隊員が彼を後部仮手当所に運び込んだ。けれどもミンヒネットは自分の伝達すべき命令がたし かに伝えられたことを自身で確認するまでは、あらゆる手当を拒みとおしたのであった。 だが、この間ェクセターもまたなにがしかをグラフ・シ、ペーに報いていたもののようである。 同艦の仰角手をつとめていたクック兵曹のいい分をきこう。「たしか五回めか六回めの斉射だっ たと思います。こちらの弾が挾叉しまして敵艦の煙突近くに命中弾一発をえました。その後別の 斉射で数発命中するのを私は見とります。それに斉射全弾が敵艦の水線に至近弾となったのもあ

6. ラプラタ沖海戦

142 もちろんつい先だっての ドリック・スターの救難信号はこちらも受けていましたので、近くに 敵の通商破壊艦が一隻いることは知っておりました。ですがこのときばかりは私はこの艦がイギ リス巡洋艦で、今までにどうかして見かけたことのないもののうちの一隻だろうと思い込んでし まったのです。でも念のためみんなを最上甲板にあがらせて、救命艇をいつでも降ろせるよう舷 外に出させ、応急食糧などを積み込ませてはおきましたが、そのままの針路を保ちました。 その巡洋艦はすっとこちらに艦首を向けたままでどんどん近づいてきました。迷彩はしておら ず、それに何やら信号旗をかかげておりましたけれども、艦首をずっとこちらに指向している間 はそれが何なのか、私には読みとれませんでした。そのままでしまいにはとうとうこちらの右舷 から船二はい分ぐらいの近くにまで来てしまいました。そこでぐっと転舵してこちらと同航する ことになりましたが、このときになってやっと敵艦たとわかったのです。それにあげている信号 の意味も、「無電を打っちゃいけない。打ったらすぐさま砲撃するそ」っていうんだとわかった 始末で : : : 」 いつも通り臨検隊が乗り込み、それに混じった私服の諜報部員があちこちひっかきまわして、 機密書類や何か値打のあるものはないかと探したけれども、例によって収穫らしいものはなかっ た。ロビンスン船長以下はポケット戦艦に乗り移らされたのであるが、再び船長の話すところに よると、「私が連れ込まれましたのは航海科の個室で、二人の士官がおりましてその一人の〈ル ッペルク大尉というのが、ビールを一杯あてがってくれながら、ラブラタフリ , ータウン間の航 路について私から何かきき出そうとしますんです。 そりゃあたしかにラブラタを出てきたことにまちがいないんですが、実は私このときいつもの 航路から何マイルも船をそれさせてしまっていたのです。ですから私は何もしらないし、それに

7. ラプラタ沖海戦

報らせを受けたルーインは伝声管で煙発見をまずウッド ( ウス艦長に報告し、ついで ( ーウッ ド司令官にも報告した。司令官はエクセターに調べさせ、それがくだんの英船だったなら通信さ せるようにと命じたが、このころにはもうェクセターでもその煙を発見していて、《煙。方位三 二〇度》の信号旗をかかげたのである。数秒後には掌信号兵スウオンストンが司令官の命令をベ ル艦長にあてて送りはじめていた。 方位三二四度ノ煙 = ッキ調査セョ。而シテラブラタ向ケ = テ早期入港見込ミノ英船ナリセ カネテノ通信ヲ委託サレ度シ。 ときに時刻は〇六一四になっていたが、エクセターは司令官命を諒解し、左舷に転舵すると北 西の方角のその煙に向かって艦列を離れた。 しかしそれから数分後にスウオンストンが、あの煙の下にどうもポケット戦艦がいるように思 えるのでありますがとル ! イン大尉にいったのである。レ ノーインもペニファーザーも双眼鏡を使 っているから掌信号兵よりずっと遠眼がきく。二人とも軍艦の司令塔の頭のように見えるのは、 ありゃあ黒い煙のかたまりだよという結論になった。ところがしばらくするうちに、レ ノーインは スウオンストンの見解の方に宗旨がえしたくなってしまい、そこで警急電鈴を鳴らすことにした。 もしまちがっていたらそれこそこけにされてさんざんからかわれるだろうけれども、逆にもし当 たっていたら貴重この上ない数分間というものをかせげると考えたからである。 もちろんウッドハウス艦長はすぐ艦橋に上がってきたので、ル ーインは状況を説明した。その 船の正体を断定してしまうことにまた少なからぬ疑念を抱いていたペ = ファーザーの方は、艦長

8. ラプラタ沖海戦

148 このときカンく ーランドはフリータウンからすでに七〇〇マイルの距離をかせいでいた。した がってこの報告を受けた同艦の艦長は、よしその救難信号が陸地の無線局にキャッチされていず とも、この航路上では自艦よりもずっとその船に近い船がいあわせなかったはずはなく、それら の船のどれかは必ずその信号を受信しており、フリータウンのライアン提督に通報しているたろ うと判断してしまったのである。カン・ハ ーランド艦長としては無線封止の厳守が目下の最重要事 項と考えていたのも当然であり、そこで彼はこの際無線封止は破るまいと決めたのであった。 まことに残念なことには、この = = ートン・ビーチの発した救難信号ーーそれは至近のグラフ ・シュペーにおいてすらきわめて徴弱なものとしか記録されていないものだったがーーーそれがマ ートランド以外のイギリス汽船でどれか受信したものがあったとするに足るような事実は、どこ にも見あたらないのである。したがって当然のことながらこの当日の英海軍軍令部は、この日早 朝のグラフ・シ = ペーの艦位が南緯九度二〇分、西経六度一九分であったという重要な事実を、 全く知らないままで過ごしてしまうことになったのである。ライアン提督は英海軍の公式戦闘記 録中で、もしこの重要な情報がこのとき達すべき先に達していたとして、それを受けてすぐ行動 が起こされていたならば、グラフ・シ = ペーと、そしてアルトマルクも、もっとずっと早期に撃 破できていたであろうと、自分の見解を述べている。ところが実をいえばこのライアン提督も、 一九四〇年一月二一日を迎えるまでの間は、この五日にこのようなマ ートランドの受信とカンく 1 ランドへの通報があったという事実を、全然知らなかったのである。 こうしている間にも軍令部には混乱させられるような情報ばかりが流れ込みつづけていた。そ れそれにドイツの艦艇や潜水艦の所在をまことしやかに中し立ててくる。それを受理した上で評 価をするのもまた海軍情報局の勤めなのだが、入ってくる情報といえばざっとこんなものだった。

9. ラプラタ沖海戦

本の煙突が眼に入るようになったが、・ とうやら商船のものにまちがいなさそうである。さっそく に一隊の士官と兵に整列がかかったが、海軍中尉シ = ーネマンを指揮官とする今度のこの隊は、 臨検隊ではなくて拿捕隊なのであった。ラングスドルフは次の船をもし無傷で捕えることができ たなら、それ以後の獲物のための捕虜収容船にしようと考えていたのである。たからこのシ = ー ネマン隊には機関兵もいれば通信兵もおり、船橋でかわって当直任務をこなせるような初級士官 もくわわり、その他交替で配置につく要員はすべてそろえてあったのである。 刻々に測距儀から報告が入る。そして較正済みの文字板の針がついに一八〇〇メートルを指し たとき、ラングスドルフは、「停船セョ。無電ヲ発スルナカレ」の旗旒信号をあけるよう命した。 なおもグラフ・シュペーはその商船に艦首をびたりと向けて迫っていたが、やがて間合いをはか ってだしぬけにきりきりと艦首をめぐらし、かかげられていたフランス軍艦旗がおろされ、ドイ ツ軍艦旗がするすると揚げられると、同時に艦の停止が発令された。ラングスドルフをはしめ、 艦橋にいた士官たち全員は、その船足を落とし、停まろうとしているイギリス汽船を、双眼鏡を 通してなめるように観察した。グラフ・シ = ペーの五・九インチ副砲はすでに旋回して、威嚇的 にその船を指向している。救難の無電を発する気配はないか ? グラフ・シュペーの行足が停まるのを待ちかねたようにしてランチが一隻おろされると、シェ ーネマン以下の拿捕隊が乗り込んで獲物に向かった。それが近づいているときにグラフ・シュペ ーの艦橋では電話がなったが、それは無線室からで、イギリス船が救難信号を発しているが、た いそう徴弱な電波たと報らせてきた。 その数分後にはシェーネマンが当のその英船の船橋から信号を送ってきて、船内のあらゆるも のを制圧下においたと報らせた。さらに船は四六五一トンの = = ートン・ビーチで、積荷のほと

10. ラプラタ沖海戦

173 トヘレナ南西方海面に進出することを命じられた。しかしウエルズ中将の申し立てでこの進出点 はもう五〇〇マイルだけ南へ移すことにあらためられたのである。この地点ならウエルズの部隊 はフリータウンからも、フォークランドからも、そしてリオ・デ・ジャネイロからもほ・ほ等距離 に位置できるからであった。 翌印のまだ朝まだき、それは右の二群の四艦それそれに燃料庫に燃料が注ぎ込まれている真最 中であり、とくにアークローヤルの甲板では整備兵たちが艦上機を飛べるようにしようといそが しく働いていた時であったが、このときまたしてもグラフ・シュペーがやったのである。儀牲に チ なったのは他ならぬタイロアで、その哀れな船からの救難信号を何とかききとろうとポート・ ャルマーズが躍起になったのもこのときなら、それを苦労して何時間もかけてようやく陸上無線 局に転送することができたのも、またこの時のことだったのである。 ライアン大将も、またしてもサイモンズタウンの海軍監督官から急報を受けることになった。 報らせがフリータウンにとどいたのは一〇三〇で、スラングコツ。フ局が正体不明の船から救難信 号を傍受したというものであったが、その船がタイロアだろうかという推察はともかく、傍受し た文面は次のように途切れとぎれのひどいものであった。 、フォン・シェーア、。〇五〇一、。•-•二一度二〇分南、三度 だが後刻これにつづいて完全な形の救難信号全文が報告されてきた。ー お手柄で、同船が転送したものが〇五三〇に傍受されたことによるものであった。 ナト・チャルマーズの