る。日本のキャリア官僚のようなものなのだ。 こせがれ 日本と異なり、庶民の小伜がグランゼコールに人れることはまずない。その面では フランスは日本以上に学歴社会である。ある意味では、貧農の子弟が帝大や海兵・陸 士 ( 海軍兵学校・陸軍士官学校 ) に人り、将官や高級官僚になれた戦前の日本のほう がまだ平等な社会であるといえる。 フランスでは中規模の企業が少ない。大企業の他は多くが規模の小さい同族企業で あり、副社長が社長の奥さん、専務が息子というような家族経営だ。また、パトロ / と呼ばれるオーナーが社長を雇う場合もある。この場合、社長は番頭のようなもので ある。であるから、これまた叩き上げで出世することは難しい。 このためフランスの産業界では身分が固定化されているので、子供は親と同様の職 業につき、労働者の子息は労働者で一生を終わることが多い。 まったくなんのためにフランス革命を起こしたのだか。まだ、貴族社会が残ってい ても、雑貨店の娘やサーカス芸人の息子が首相になれる英国の方が社会として健全で あろ一つ
社員の高額の給料に化けているのだ。こんなことが続けばアニメのみならずテレビの 番組の製作能力は低下の一途を続け、番組が作れなくなる日が来るだろう。 「キン肉マン」が放送差し止めに 話を戻そう。年になるとラ・サンク ()a 5 、 5 チャンネル ) と 6 ( 6 チャン ネル ) が、さらに年からは国営のル・セット ( 7 チャンネル ) が登場した。 ラ・サンクは政界にも進出したイタリアのメディア王で、のちにイタリアの首相と なるシルヴィオ・ベルルスコーニも出資していた会社である。 ラ・サンクは米国のテレビドラマやお色気番組、高価な視聴者プレゼントを提供す るクイズ番組を多数放映するなど、徹底した娯楽路線を追求したテレビ局だった。夜 の 8 時台から「 O 嬢の物語」などソフト・ポルノをバンバン流して物議を醸した。 無論、アニメも子供向けの娯楽番組として重視していた。 ベルルスコーニのメディア帝国の傘下には、イタリア向けにアニメの買い付けを行 なっているレティ・イタリア (Retei ltalia) というプロダクションがあり、「日本ア ニメーション」などの膨大なアニメの版権を獲得していた。これをフランス向けに投
間の文化のギャップが挙げられる。 我々日本人には間題ないことが彼らにとっては大変背徳的となる場合がある。 フランスでは一般に、アニメⅡ幼児番組であると認識されており、日本のように大 学生がアニメを観たり、「週刊少年ジャンプ」を中年まで読んでいることが理解でき ない。日本では大人と子供の文化に明確な境界線がないが、フランスを含むヨーロッ しパでは子供と大人は同じ文化を共有しないのが常識である。 上よく言われることだがフランスでは犬はレストランに連れて人れるが、子供は人れ という話がある。子供はあくまで未完成な人間であり、大人と区別しなくては ン 、と考えられているのだ。 フ て このためテレビでの規制はもちろん、劇場映画にしても暴力シーンやセックスシー ンの度合いによって人場の年齢制限が細かくなされている。それゆえ、暴力に寛容な アニメが暴力的と映るのだろう。 メ だが、現実問題として「暴力・セックス・アニメ漬け」の日本のほうが欧米に比べ 本性的犯罪や暴力事件は桁違いに少ない。 このことはアメリカ人のフレデリック・ *-Ä・ショットがその著書「 DREAMLAND JAPAN: Wr 三 ngs on Modern Manga 」 ( 「ニッポンマンガ論」のタイトルでマール
「長いことを扱って、漫画本の売れ方にはひとつのメカニズムが存在することが わかったんです。のファンは、必ず子供の頃好きだった作品を、大人になってか ら収集したくなるんですよ」 ドミニクは自信に満ちた顔で語る。確かに、人間は子供の頃に刷り込まれた文化的 な嗜好を引きずるようである。ルーカスが「スター・ウォーズ」を撮ったり、スピル ーグが「トワイライトゾーン」のリメイクを製作したのも、日本でウルトラマング ムッズが売れているのも同様の理由であろう。年にバンダイが新たに型を起こして発 ン 売した「超合金魂」の「マジンガー N 」は初回 5 万体を売り切り、さらに増産されて いる。その購人者は多くは代の男性である。 フランスでも「タンタン」で育った世代向けに様々なタンタングッズが企画され、 の 界 安定した人気を博している。 ク オ「フランスでは、間年代後半に『ゴールドラック ( ロボ・グレンダイザー ) 』、 ~ 『マジンガー N 』といった日本アニメがテレビ放映され、子供たちの間で、大好評だ ン ったんです。それから跚年以上経った今、当時の子供たちは、社会人となり、可処分 所得の大きい年齢になっているんです。ですから昔熱中していたアニメやマンガを、 きっと手に人れたくなるハズだ、そう確信に近いものを感じていたんです」
スでは子供に飲食施設以外の公衆の面前で飲酒シーンを見せることはよくないし、そ のうえ酔っ払って人に迷惑をかけるのはさらに恥ずべき行為と考えられているから だ。フランスの子供たちは「日本人てレモネードを飲んで酔っ払うの ? 」と首をかし げていたそうだ。 また、日本独自の文化で翻訳しにくいものは適当に「改竄」された。たとえば銭湯 はスポーツジムにされてしまっている。 また池田理代子原作の「おにいさまへ : ・」は近親相姦的な内容であり、教育上よろ しくないという理由で放送中止となった。 人気司会者、ドロテに去られたもアニメ批判にまわった。同局はドロテに去ら れた後もアニメ番組を流していたが、多くは過去の再放送などで、買い付けが下手だ った。このため視聴率を取れず、アニメの放送をやめてしまっていた。 それまでアニメを苦々しく思っていたフランスのジャーナリズムもアニメの粗をさ がすようになり、積極的にネガテイプな報道を行なった。 「ル・モンド」系の「教育世界」という雑誌の年 6 月号ではアベ・プロとバンダイ を取り上げ、テレビの公共性の後退と商業主義化を批判している。同誌ではまた、テ レビの民営ヒ苅よ 4 。、 イ目。 9 ノーセントの親がチャンネル権を握っており、子供に勝手にテレ あら
リス英語ではフットボール ) の本場ヨーロッパでサッカー・アニメがヒットしないは ずがない。フランスだけではなく、イタリアやスペインといったラテン系の国々でも 大ヒットとなった。その後「がんばれ ! キッカーズ」 ( 現地では「キャプテン翼」 の続編と思われていたらしい ) も放映された。 また女の子向けには「魔女っ子メグちゃん」「魔法の天使クリイミーマミ」「魔法の 妖精ベルシャ」などの魔女ものが放映された。同じ時期ではこれに対抗、「魔 法使いサリー」「魔法のプリンセス・ミンキーモモ」「魔女っ子チックル」などが投人 された。まさに子供向けの番組は日本のアニメに独占されたといってよい状況となっ てきた。何しろ子供番組の 9 割以上がアニメとなってしまったのだ。 ところがこのような日本アニメによる子供向け番組の独占化と、それにともなう子 供たちに与えうる影響の大きさに危惧を抱く声も強くなってきた。 アニメに対しては以前より批判の声があり、年には当時の文化相、ジャック・ラ ングは「日本のアニメは文化侵略を行なう敵である」と公言し、日本のアニメに対抗 すべく、フランス製のアニメを振興させるべくアニメ製作者への補助金の助成を決定 した ( この政治的に正しいアニメを国産するという「社会主義的」な政策は大して成 功しなかった。何しろ 1 分のアニメを製作するのに日本アニメ話分の製作費がかか
なくなかった。彼女はそんな精神状態から逃れようとして、薬物に溺れていった。 精神的にとても不安定だった彼女を守るために、彼は歳の後半に結婚をした。そ して、定職を探したのだ。 定職につくなら、かねてから好きだったの仕事がしたいと思っていたが、その 春執念が通じたのか、幻歳の時、を扱う仕事につくことができた。 の年代まではフランスでは漫画Ⅱは子供のものという認識が強かったが、それ ニに反抗する若者たちが新たな自分たちの世代の文化としてをとらえるというムー プメントが起こっていた。このためは若者の文化として定着し、多くの実力ある 作家が登場していった。状況としては、日本で「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガン 界ダム」が登場し、アニメが子供のものから若者の文化になっていったのと似ている。 ク タ オ のディスカウント販売 ス ン フ行年、ドミニクが、初めて定職として選択した仕事は、それまでフランスではただ 一人として試みたことがなかった。それはのディスカウント販売だった。 フランスでも、日本と同様再販制度を採用しており、各出版社が発売した新刊は、
とうとう、父のドミニクへの怒りは頂点に達した。キレたのである。彼は、その憤 りを、「勘当」という手段で表わした。 それは、日本でよくある、「お前は、ウチの子供じゃない。勘当だ ! さっさと出 ! 」と怒鳴りつけるだけの、ある意味では一時の怒りにまかせた「勘当」では のきちんと法に基づいた家族からの追放行為であった。 フランスには、「慴歳未満を未成年としており、未成年の子供のことは親が絶対的 に責任をもつ。ただし、事情によっては、親はその責任を放棄することができる」と いった、法律が存在する。 の ドミニクが「勘当」された当時の法律では、「未成年を幻歳未満とする」となって 界 タいた。そして、彼の父は、裁判所を訪れ、ドミニクの数々の間題行動を述べ、 オ クに対する親としての責任を完全に放棄する手続きをとったのだ。当然、私立高校も ン退学処分となった。 ドミニク、歳。今、家を出たら、どんなに悲しいことが、辛いことが起ころうと フ も、帰る場所はもうない。それでも、耐えられるか : だが、その頃、フランスの若者たちの間では、自分たちの手で新しい価値観を作り 163
材く今の日本の顔 ( 文化・生活 ) を紹介する場にしたい」と述べている。是非がんばっ てほしいものだ。 アニメ批判に関してはフランスの放映側にも間題がある。自国の文化特性を考慮し た上で放映を考えればよいのに、近視眼的に視聴率を稼げればよいと、無作為に刺激 が強いものを放映してきた。それゆえアニメはセックスと暴力に満ちているというイ メージを形成してしまった。 アニメがフランスで大量に放映された最大の理由というのは言うまでもなく、 かった」からである。それが結果として当たったのだ。これがアメリカの作品並みに 権利料を要求していたらフランスでこれほどアニメは放映されてはいないだろう。 アニメの劣悪な製作現場が存在する反面、生み出された作品が現場に経済的な還元 がされずに、「安い」がゆえに作品が世界に伝播していくというのは、何とも皮肉な 話である。 だが、これほどまでにアニメがフランスで放映されたのは、無論安かっただけでは ない。感情移人ができる魅力的なキャラクター、比較的年齢が高い子供が見ても楽し めるストーリー ロポットなどかっこいいメカ、派手なアクションなど様々な要素が 子供たちに支持されたからである。また、キャラクターたちが比較的無国籍風である
行なったと見られている。もしこれが保守内閣であれば、への接近は実現しな かっただろうというのが業界筋の分析だ。 「安さ」ゆえに世界に広がる日本アニメ さて、駆け足でフランスにおけるテレビアニメの状況を紹介してきた。日本のテレ 陸 上ビアニメはフランスの子供たちを魅了してきた。フランス語に翻訳されようとも、ス ス ト丿ーの運び方、物事の価値観、登場人物の思考過程、ビジュアルの様式などは、 ン フランスの子供たちに多大な影響を与えたことは間違いない て その結果として成長したフランス人のいくばくかは大人になっても依然としてアニ メが好きでオタクとなったのだ。それはぼくたちが「スタートレック」「サンダー ード」などの欧米のテレビドラマに影響を受けたのと同じようなものであろう。 ニ同時にアニメはフランスでは大きな間題も巻き起こした。その最大の原因は日本と 本の文化のギャップにあったとぼくは考える。異質な文化が接触すれば摩擦は避けられ ない。それゆえ、ある程度のトラブルは文化の相互交流の過程ではありうるものだ。 それを増幅したのが現地の文化人とマス・メディア、日本からの文化情報の発信の