プラトンのイデア論 自 井女 美美 西欧社会の遠近法的思考ー 2 実際 彫刻 現実世界の 事物に宿る 美のイデア 絵画 建 き刃識には 理性的な 思考が必要 感覚的に 認識できる いるのに、なぜ人は美しいものに対して「美 しい」という感想を持つのか それは、それらのものごとが「美しさ」 を成立させる本質的な何かを有しているか らだ。 このように考えたのが、古代ギリシアの 哲人プラトンだ。このような美しさを成立 させる超越的な根拠をプラトンは「イデア」 と呼んだ。つまり、理想の世界に「美のイ デア」というものがあり、それがある形を 通して実世界に現れた事物が、花や美男美 女と言われたり、芸術作品などになる、と いうわけだ。 ただし、完全な美のイデアは真理とし て存在するだけであって、実際に見たり触 ったりすることはできないあくまでも現 実世界に形を持った仮の姿 ( 仮象 ) として しか、人間は美に接することはできない したがって、プラトンの考え方では、イデ アの存在は、思考を通してしか認めること はできないとされる。 9
00 ー m れ 2 年表でみる西洋哲学占代 ~ 現代まで 哲学の系譜を振り返ってみよう 「世界とは何か」「人間とはどう生きるべきか」 ーチェを含めた数々の哲学者が、この問いをくり返し、 歴史を塗り替えてきた ップで古代ギリシアから現代に 0 C C 、 至るまでの哲学思想の流れを簡単に紹介しておこう。 プラトン 「イデアは原型として自然の内にあり、他のも のはイデアに似た像である」【イデア説】 B ℃ .427 頃 ~ B ℃ .347 頃 古代ギリシア最大の哲学者といわれる。すべての事象は、存 在の本体 ( イデア ) を持っているとし、原理論を統合する考え 方となった。 B. c. アリストテレス 400 ド存在するものとはなにか◆という問いは、実 体とは何かという問いである」【形而上学】 B ℃ .384 ~ B ℃ .322 プラトンの弟子。ギリシア哲学を体系的に研究し、原理を形 相・質料・始動因・目的因の 4 つの概念 ( 四因 ) として整理した。 哲学はイデア ( 理想 ) ではなく、現実の存在 ( 実体 ) の意味や根 拠を扱うべきであるとして、形而上学の必要性を唱えた。 工ビクロス B ℃ . 300 「快楽はこのうえなき幸福な人生の始めであり 終わりである」【快楽主義】 B ℃ .341 頃 ~ B ℃ 270 頃 魂や宗教に思いを馳せるのでなく、現実的な人の幸せを追求。 。快楽、、 ( 平安 ) こそが人を動かす動機であり、善であり、人生 の目標であると考えた。 を 紀元前 600 年以前は、おもに神話や 伝説によって「世界」が説明されてい た。哲学の始まりによって 世界を概念で説明しようとする 動きが起こる。 600 タレス 「万物の源は水である」 B ℃ .624 頃 ~ B ℃ .546 頃 初めて合理的思考で世界と向き合った人物として、哲学の祖 ともいわれる。西洋哲学は諸文化が交流するギリシアで始ま った。タレスは、森羅万象は水が起源となっていると説いた。 B. c. ヘラクレイトス 500 「同じ川にニ度と踏み入ることはできない」 【万物流転】 B ℃ .540 頃 ~ B ℃ .480 頃 一切は絶え間なく変化し続けるという万物流転説を唱えた。 ビタゴラス 「万物の原理は数である」 B ℃ .570 頃 ~ B ℃ .470 頃 「ピタゴラスの定理」で知られる哲学者・数学者・宗教家。すべ てのものは数えられ、秩序と調和を持っていると考えた。 バルメニデス 「あるものはあり、あらぬものはあらぬ」 B ℃ .515 頃 ~ B ℃ .445 頃 「存在」とは何かを初めて問い、無は存在しないと思考した。 ゼノン 「アキレスは決して亀を追い抜けない」 B ℃、 500 頃 ~ B ℃ .430 頃 パルメニデスの弟子。師の遺志を継ぎ、時空間が無限分割で きることを論理的に証明した。 デモクリトス 「甘さ、辛さ、温かさ、色、真実にはアトムと空虚」 【原子論】 B ℃ .460 頃 ~ B ℃ .370 頃 すべての現象は原子 ( アトム ) と原子が必要とする空間 ( 空虚 ) とで説明できると唱えた。 ソクラテス 「私は実際に知らず、知っているとも思ってい ないたけ、彼よりもほんの少しばかり知恵があ る」【無知の知】 B ℃ .470 頃 ~ B ℃ .399 哲学は、世界の存在原理だけでなく、人間の生き方の原理を 考えるべきと説いた。識者との問答法を通して真の認識への 自覚をうながした。 ギリシア哲学 ヘレニズム文化 混乱と不安の時代へ アウグステイヌス A. D. 300 「我々は信仰への入り口として、哲学を役立て るのがよい」【キリスト教神学】 354 ~ 430 初期キリスト教の神学者。キリスト教と新プラトン主義を調 和させ、人は自由な意志と欲望を持っ存在から出発すべきと 信じた。受肉、三位一体、原罪などの重要な神学を哲学的に 考察した。 1200 中世哲学 ー ( キリスト教支配を軸に哲学が展開された ) ローマ帝国時代 トマス・アクイナス 「人間は救済を得るために、人間理性を超えた 事柄が神の啓示によって知らされることが必要 であった」【神の知】 1225 頃 ~ 1274 キリスト教とアリストテレス哲学を融合させ、中世キリスト 教会の中心的な教義体系を作る。理性を起えた神からの啓示 の正当性を主張することで、人間には神を知ることが可能で あると論じた。 朝 , ギリシア哲学の最盛期 ※「」の言葉は哲学者の思想を象徴するフレーズ、【】はその哲学者の立場や思想の特徴を表す用語です。 ※哲学者の並び順は、流れがわかりやすいように一部整理してあります。
ンヨーベンハウアー〈しょーベんはうあ↓・ 実存主一莪〈じっぞんしゅぎ〉↓ existentialism 、、 Existentialismus 山上の垂訓〈さんじようのすいくん〉・ ー、、 A. Schopenhaue 「 ( 一 788 5 一 869 the Se 「ョ0n 0 コ the Mount 、、 die Be 「 gp 「 edigt 人間の存在そのもの ( 実存 ) を中心に位置づけて世ドイツの哲学者。厭世主義 ( ペシミズム ) を説いた 『新約聖書』の『マタイによる福音書』 5 章でイエス・ 界のあり方を説明しようとする哲学の立場。実存主代表的論者。世界とは人間の自我の表れであり、人 キリストが行ったとされる説教。「こころの貧しい 間に本来的にある欲望は常に満たされないので人生 義は、人間を理性 ( 精神 ) と肉体で分離できる存在 人たちは、さいわいである」などのフレーズで知ら は苦しく不幸に満ちている、と説いた。ニーチェは とみなすのではなく、感じ、行動する全体としてと れる。 らえ、人間がみずから選択し行動することに重要性ショーベンハウアーを自身の哲学を準備した人物と を見いだす。ニーチェの哲学は実存主義の源流にも位置づけた。 自我〈じが〉↓貶、 139 位置づけられている。主唱者にハイデガー、サルト self 、、 lch. Selbst メルロⅡポンティなど。 真理〈しんり〉・貶 人間において、知覚、思考、意志などの主体とされ truth 、、、 Wah 「 heit プラトン哲学を根底に、物質や事象、生物、概念な るもの。外界と区別して意識される。自分自身。の終末疆〈しゅうまつろん〉・ こと。ニーチェは自我の存在は虚構であるとみなし ど物事すべてに存在するとされる本質の姿。 eschatology 、、 Eschatologie 世界の歴史には終末がある、とする宗教思想。ユダ ヤ教・キリスト教が代表的。キリスト教の終末論で生の哲学〈せいのてつがく〉↓ 2 自己愛〈じこあい〉↓ P108 、 142 philosophy Of life 、、 Lebensphilosophie は、すべての人間は一度復活し、神の裁き ( 最後の れんごく self-love 、、 Selbstliebe 四世紀後半から囲世紀初めにかけて、生きている生、 審判 ) を受けたのち、天国、煉獄、地獄へ振り分け 自分で自分を愛すること。自分で自分の価値を認め られる。 体験としての生の価値をそのまま受け止めようとし ること。超人は自分の価値の根拠を他人や世間の価 てヨーロッパで展開された哲学の流れ。代表的な哲 学者に、ショーベンハウアー、ニーチェ、ジンメル、 値観に求めず、自己愛だけで 100 % 自分を満たす主観〈しゆかん〉・ ことができる。ニーチェは、自己愛で満たされた者 ヘルクソンなどかいる subject 、、 Subjekt だけが本当に他人を愛することかできる、と考えた。 認識、思考、行為する人間の主体。主観は人間存在 の中心であり本質であるとされる。 西羊析ロ学〈せいようてつがく〉↓ 自己中、じ主〈じこちゅうしんしゅぎ〉・ P142 weste 「 n philosophy 、、 westliche PhiIosophie 類〕自我対〕客観 egocentrism 、、 Egoismus 西洋を中心に展開された哲学全体のこと。古代ギリ シアから中世ヨーロッパのキリスト教世界を経て、 自分をもっとも価値があると位置づけ、自分の感情、十戒〈じ。かい〉↓ 欲望、利益を最優先する考え方のこと。利己主義。 the Ten Commandments 、、 die Zehn Gebote 近世以降世界に広まり、多彩な発展を遂げてきた。 ニーチェにとっては、超人の生き方こそ自己中心主『旧約聖書』でエジプトから脱出した同胞 ( イスラ 10 0 義であり、人間らしい生き方である。 エル人 ) を代表して、モーセが神から授かったとさ 釜「・悪〈ぜん・あく〉↓ 6 good ・ evil 、、 gut ・ bÖse れる規律。偶像崇拝の禁止、安息日の遵守、偽証、 よいことと悪いこと。ニーチェはヨーロッパ社〈Äに 殺人、盜み、不倫の禁止などの決まりごとがある。 おける善悪の価値観の起源はユダヤ教・キリスト教 徒のルサンチマンに由来すると主張した。 15
ーチェ哲学 す 厭世主義〈えんせいしゅぎ〉↓ あ ま the ete 「 nal 「 etu 「 n 、、 die ewige Wiede 「 kunft des GIeichen ℃ ess 一ョヨ、、 Pessimismus あ 「時間は無限であり、物質は有限である」という前提人生や社会にはよいことや幸せよりも悪いこと、不て - き勲場アポロン〈あばろん〉↓ 一三ロ に立ち、万物は、同じ順序と脈絡に従って、永遠に幸の方が多く、肯定できるような価値はない、とす A00 = 0 、、 A00 = on み の る人生観や哲学の立場。 くり返されるというニーチェの世界観。ニーチェは っギリシア神話に登場する、光明、芸術、医術、予言 ジ 永遠回帰を「到達しうる最高の肯定の形式」と述べた。 などの神。ニーチェはこれを理性的な秩序のシンポ る脈 紋ルとして、狂騒や陶酔を象徴するディオニュソス的キリスト教的な目的のある直線的な歴史観や、「歴史大いなる正午〈おおいなるしようご〉・æ••- 。。 も お は相反する概念や事象のせめぎ合いで進んでいる」 the g 「 eat コ 00n 、、 de 「 g 「 03e Mittag くつがえ 力。な価値観と対置し、人間の生のあり方について考え れ とするヘーゲルに始まる弁証法的な歴史観を覆そう ニーチェが『ツアラトウストラ』でイメージした、 触 で した試みであるとも解釈できる。永劫回帰とも。 ニヒリズムが徹底された状況。太陽が真上に達し、 ど わ , 森羅万象に等しく光が当たることですべての差異が イエス・キリスト〈いえ ! きりすと〉↓ 8 文 本 Jesus Christ 、、 Jesus Christus なくなる世界のイメージ。 エリーサベト〈えりーざべと〉↓ 120 は で歳ごろからパレスチナで宣教を始め、ペテロなど 、 Elisabeth E Nietzsche ) ン 人の弟子と活動を続けたが、ユダヤ人に捕らえられ、 ( 18 4 6 5 193 5 ) ニーチェの妹。熱狂的な兄 照 参 ローマ総督により十字架刑に処せられた。その後、弟の信奉者で、 1894 年にニーチェ資料館を開設。 の 子たちにより、イエスが救い主 ( キリスト ) であった 三ロ 用 とする信仰が確立し、原始キリスト教の宣教が開始支えた兄思いの半面、ニーチェ死後はヒトラーに接 限 された。ドイツ語の読み方に準じて「イエス」は「イ近し、ナチズムがニーチェ思想を自らを正当化する階序〈か〔じよ〉↓ 2120 ほ・つしょ 0 「 de 「 Of 「 ank 、、 Rango 「 dnung 工ズス」とも読む。 理論として利用する活動を積極的に幇助した。 示 表 人間の強さ、高貴さのランク。ニーチェは、人間に は強さ・弱さのランク ( 階序 ) によってふさわしい イデア〈いであ〉・ 遠近去的思考〈えんきんほうてきしこう〉↓収、。 idea 、、、 ldee 道徳があるとした。 表 pe 「 spectivism 、、 Pe 「 spektivismus 減プラトン哲学で、時空を超越した非物体的、絶対的ニーチェが指摘した人間が根本的に備えているもの の な永遠の「真・善・美」の存在。それらを成立させ の見方、とらえ方。自分に近いものは重大に見え、快楽主義〈か〔らくしゅぎ〉・ hedonism, Epicu 「 eanism 、、エ edonismus, Epiku 「 eismus ※る超越的な根拠のこと。物事の本質。 遠いものは小さく重要でなく見えるとし、その見え 快楽の追求こそが善であり、道徳の基準であり人生 方の内容は当人の欲望によって決まる、とする。ニー 運〈叩愛 0 つんめいあい〉↓ P150 チェは人間にとって遠近法的思考は、「生の根本条の目的であるとする考え方。超人的な生においては、 love 0 → fate 、、 amo 「→ a せ ( ラテン ) 快楽主義は肯定される価値観である。 件」であるとした。 人生のすべてを運命ととらえ、その全部を受け入れ 科学〈かがく〉・ る心の態度。ニヒリスムにのっとれば、すべては無逞人愛〈えんじんあ〔〉↓ P108 science 、、 Wissenschaft 価値であるのだから、人生に「、 しい」「わるい」の furthest love 、、、 Fe 「 nsten- 匚 ebe 世界・宇宙の事象を体系的に記述しようとする学問。 区別はない。出来事を選んで受け入れたり否定する ニーチェが隣人愛の代わりに人間が抱くべきとした ことはできない。人生は、すべて肯定するか、すべ愛。最高の人間たる超人を未来に求め、焦がれる希望人文科学、社会科学なども含まれるが、狭義には自 て否定するかのどちらかしかない 然科学をさす。自然科学は、現象の原理を解明し、 の愛であり、これこそが真の人間愛であるとされる。 再現可能な条件を解明することを目的としている。 くべージさくいん付〉 一三ロ あ行 か行 わイ