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検索対象: 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問
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1. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

アメリカ人ですら今や原爆投下の非を認めつつあるのだが ? 然だと言われるだろうか。ならばドイツをこ覧いただきたい。 1945 年 8 月 6 2 無関連要因 ( 第 3 問 ) によって評価するという過ちを助長する。 的に重要な違いによって戦争を評価するのではなく、破壊手段の違いという ことを認めるべきだろう。原爆投下批判は、戦争の理由や名目といった倫理 論理的な考察の場では、毒ガスも機関銃も原理的には等しく非人道的である なのは、軍縮政策や反戦運動のような実践的な場においてである。倫理的・ 批判が当たらないことは、第 54 問で見た。しかも、概して完璧主義が有害 は、「完璧主義の誤謬」に陥っていると批判されるかもしれない。その種の と爆弾による殺傷も一律に非人道的と非難されねばならない、と固執するの である。戦争を禁するためには、「非人道的兵器」だけでなく伝統的な銃弾 止や核兵器廃絶運動にも通する偽善的倫理を批判するさいに重要になる論点 ③の趣旨は、一般にはあまり語られないことだが、生物・化学兵器の禁 みかもしれないが、論理と美は相反するものではない。 ルでの多層な自由意思の試された事件だった。これは戦争を美化しすぎた読 駆け引きに多く依存したアジアの終戦はかなり複雑で、個人や国家の各レベ 次大戦終結の論理である。力すく一本槍のヨーロッパの終戦よりも、精神的 つの超自然の化学反応としての和平。単純化すればこれが本書の考える第二 の名誉を守ろうとした俗悪日本軍を懐柔することができた。二つの俗悪と二 爆弾という超自然が、聖断という超自然を呼び出し、国民の血によって自ら 帝国陸軍は面子を失わすに聖断に従うことができた。赤軍という俗悪と原子 ソ連参戦と原爆投下が重なるという絶望的状況がむしろ天佑となって、日本 ②の趣旨は、評判が悪いというより気づいていない人が多い定説である。 の責任は重い。 ひとり「愚者のシナリオ」を描き続けて国民に大惨害をもたらした日本政府 る中で、日本だけがはっきり国益に反した非合理な政策を続けていた。ただ ことだったのである。 1945 年 8 月には、世界各国が合理的に利益を追求す 方をしてきた。連合国が「対日戦はまだまだ続く」と考えたのは無理ならぬ れていた日本ではあるが、その軍隊はドイツ軍よりもはるかに狂信的な戦い かったことを意味する。ナチス政権に比べればはるかに正気な政府に率いら 府が消滅した。そのような先例の存在は、日本もその轍を踏む確率が低くな の日本よりすっと絶望的な状況で何ヶ月も戦ったあげく、首都が陥落して政

2. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

0 0 5 まえがき のか ! 」 この論法は、情緒的な反応「被爆者の苦しみがわかっていない」の延長上 にあるもので、現実に強い影響力を持っている。妥当性と影響力のギャップ の大きいこの種の議論は、対処に細心の注意が必要である。この諭法の扱い かたが気になるかたは、第 54 ~ 57 問を先にお読みください。 『論理パラドクス』「論理サノヾイノヾル』「心理パラドクス』などの読者は、 問題文の中に提示された材料だけによって、つまり予備知識なしの論理思考 だけで正解を見つける練習にある程度慣れているだろう。応用論理編の本書 では、少し異なった種類のクエスチョンに取り組んでいただく。今回は問題 文の背後に、膨大な歴史的事実が控えているのだ。それらの中から取捨選択 して最も説得力ある推論を試み、最も信じやすい結論 ( 答え ) に辿り着いて いただくというわけである。 したがって本書は、前 3 冊とは異なり、純然たる論理演習書ではない。混 沌とどこまでも拡がった「歴史」の諸データを関連づけながら、最も合理的 で整合的と思われる主張をまとめる実践的訓練である。第二次世界大戦の論 理的含意や倫理的教訓が汲み尽くされていないことは、年月を経るにつれ 却って新聞などでの扱いが多くなっている事実に示されている。底知れぬ細 部が絡みあった史上最大の戦争を終わらせたくあの大事件〉について本書が 試行的に辿った各ステップは、日常の大小無数の決断・評価・議論にあたっ て最良のモデルとなるであろう。

3. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

5 6 被爆者のことをさらによーく考えると ? 「扇情的な写真が判断を変えるく理由〉になるなどと私は思ってなどいない。 単に、判断を変えるく原因〉になっていると私は感じるのだ。そしてその原 因の力に従って判断を変えたまでだ」 しかしこの弁明は的外れである。たしかに、扇情的な写真が人の判断を変 えるく原因〉として働くことは事実である。そしてく理由〉が論理的な要因 であるのに対してく原因〉は物理的な要因であり、したがって、く原因〉に よって動かされたからといって「非論理的」と責められるいわれはないだろ う。「非論理的」というのはく間違った理由〉によって判断を変えるような 場合 ( つまり、理由と判断とが合理的に適合していない場合 ) に言われるの が筋であって、物理的原因がどのように判断に影響しようとも、もともと論 理とは関係ない変化なので、「非論理的」ではありえない。それはその通り なのだが、しかし「理由なし」というのもある意味では「空なる理由」とい う理由だと見なすこともできる。空なる理由は、いかなる判断の変更に対し ても「不適切な理由」であろう。「理由を伴わない単なる原因」によって判 断変更することは、「空なる理由という不適切な理由」によって判断を変え ることなので、やはり「非論理的」なのだ。 あるいは、論理的な理由を伴わない単なる原因による変化が許されるとし ても、量的な変化にかぎられるべきである。つまり、「今までアメリカ軍の 方針は間違っていると思っていたが、この黒焦げ死体の写真を見てからます ますその思いが強くなった」「サイバン陥落の時点で本土空襲を予期できた 日本政府が即時降伏しなかった罪は重いと怒りを禁じえなかったが、崖から 赤ん坊を投げ捨てたあと自ら飛び降りる女性の映像を見てからますますその ・・このような心情の変化なら、く空なる理由〉による 思いが強くなった」 動かされ方としても合理的と言える。 他方、「今までアメリカ軍の方針は間違っていると思っていたが、この写 真を見てから、悪いのは日本政府のほうだという考えに変わった」「サイバ ン陥落の時点で即時降伏しなかった日本政府の罪は重いと怒っていたが、 ・・このような心情 の映像を見てから怒りの矛先がアメリカ軍に変わった」・ の変化は不合理である。なぜなら、東京大空襲への認識の「論理構造」は、 写真を見る前と後とでは変わっていないはすだからである。事実的情報内容 を持たない扇情的写真による変化は、従来の価値判断の論理構造を同型に

4. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

23 0 9 7 なせ「国家」に無条件降伏を要求したのか ? 分割の誤謬 2zl 0 9 9 今さら無条件降伏要求を責めても仕方ないだろう ? 演繹定理 2 S 1 0 2 日本国民の自由意思なら結構ではないか ? 寛容の原則 26 1 0 5 「国体護持」の論理とは何なのか ? 「認める」という関係 2 7 1 0 8 面子と面子の衝突は腹芸で妥協 ? 暗示的意味 2 8 1 1 0 単独不講和を協定しておいて降伏などできない ? 31 構造的同型性 1 22 ポッタ・ム宣言とハルノートはそっくりだが・・ 3 ② 大東亜共栄圏ダカレスタンダード天災論 1 1 7 ドイツ降伏は絶好のチャンスだったか ? 2 9 心理的拘束と論理的拘束多重決定選択効果 完劈主義の誤謬 1 3 4 推測上の利益と現実の犠牲を天秤にかけると ? 個人的資任 1 3 0 「議会への説明」というプレッシャーは何なのか ? 33 換喩的戦略 1 2 8 天皇制を認めるく試み〉くらいしてもよかったのでは ? 3 2 原因と結果を取り違える誤り 1 2 5 原爆が戦争を引き延ばしたという理屈は成立するか ? 1 3 6 1 4 3 1 4 6 1 4 9 1 5 7 1 6 0 1 6 3 1 6 4 1 6 8 1 7 3 1 7 6 1 8 0 3S 20 億ドルかけたからには何が何でも成果出せ ? コンコルドの誤謬誤った前提への依存虚構の同調圧力 36 過去に囚われるのは当然といえば当然 ? 倫理的整合性ニつのコンコルドの誤謬 37 連合国も非道の限りを尽くしているのでは ? 「お互い様」の論理 : 肯定バージョン 3 8 不公平な裁きのもとで「正義」とは何様なのか ? 勝者の裁き意味の全体論カテゴリーミスティク永久文 3 9 天皇を免責したアメリカは正しかったのか ? 天皇機関説 天皇の戦争責任と原爆投下の正当性は関係があるのか ? 自己規定のバラドクス 皇室との和平交渉の余地はあっただろうか ? 過剰な補償 zl 2 イメージ戦略からも原爆投下は失策だった ? 不当な一般化選択効果 3 「君側の奸」が聖断を歪めている ? 意図の再定義アドホックな仮説論点先取の誤謬 日本本土侵攻で「犠牲者 100 万人」はありえない ? 動機によるバイアス意図主義 ZS 日ソ中立条約破棄はいくらなんでも酷すぎる ? 倫理的正当性 ソ連参戦でいったい誰が得をしたのか ? 功利的必要性

5. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

な残虐行為が論理上容認できてしまうがゆえに、原爆投下の正しさが強力な 戦争否定の論拠となる。背理法は、あくまであの戦争から原爆投下の正しさ を導く論理の流れが成立することに依存している。かりにホロコーストを正 しいとする議論が成立するとしても、戦争からホロコーストの正しさを導く 論理が成り立たないかぎり、背理法によってもホロコースト擁護は「戦争反 対」の倫理の根拠にはなりえない。原爆投下の場合は、戦争から原爆投下の 正しさを導く諭理が成り立つがゆえに、背理法によって原爆投下擁護は「戦 争反対」の倫理の根拠になりうるのである。 マ確証バイアス * 可能性より現実を重んじる現実バイアスの一般的な形は、本当に 現実かどうかはともかく「現実に真だと自分が思う仮説」を重視する という「確証バイアス」である。たとえば、「地球温暖化で極地の氷が 溶け海面上昇が起こる」という仮説が正しいと思い込んでいる人は、「温 暖化によって極地の氷が増える」という理論や実験的証拠 ( 温暖化に より大気の水蒸気量・降雨量か増えて極地に降った雪が氷に加算され る、という理論など ) がいかに説得的かっ豊富であろうとも無視した り軽視したりし、自説に有利な学説を偏重する。この確証バイアスの 特殊な場合が、もはや「正しいと思っている仮説」ではなく「現実に 起きたがゆえに正しいと知っている事柄」を偏重する現実ノヾイアスで ある。原爆投下で多くの人が亡くなり、本土決戦で亡くなった人はい ない、というのは単なる仮説ではなく誰もが認める現実なので、原爆 投下の死者を本上決戦の死者よりも重んするバイアスは確証バイアス の中でも特別な「現実バイアス」となる。 ただし、確証バイアスが仮説の真実性そのものに関するバイアスで あるのに対して、現実ノヾイアスは仮説に含まれる価値概念に関するバ イアスであることが多い。いすれも、係留ヒューリスティクス ( 第 7 問 ) と同根と見ることができる。 戦争論理学 あの原爆投下を考える 62 問

6. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

て特定の誰の生存権も侵されてはいないからである。 不幸にして結果的に交通事故死した人たちの遺族は、「乗用車容認政策は 仕方がなかった」と言われても、怒ることはないだろう。死者への冒濆だと も思わないだろう。原爆投下も同様ではないだろうか。誰が殺されることに なるのかは、結果論である。特定の人々が人柱として捧げられたわけではな い。交通事故による犠牲を、産業社会の維持のためにやむをえないと諦めら れる論理からすれば、原爆投下についても「戦争を終わらせるためには仕方 がなかった」と肯定するのが筋ということになりはしないだろうか ( ただし この論理の問題点については、第 59 問で再度議論する ) 。 これは、第 54 問で見た「現実が可能よりも重要 ( 現実バイアス ) 」と似 たメカニズムで、「特定が不特定より重要 ( 特定者バイアス ) 」という心理で あり、論理である。互いに似てはいるが、現実バイアスに比べて特定者ノヾイ アスは倫理的に正当である。現実ノヾイアスはニつの可能な犠牲者のどちらが 現実の犠牲者となるべきだったかをめぐる選好であり、単に実際どちらが実 現したかという結果論で好みを選ぶしかない。その選好には、結果論とは独 立した倫理的基準は働いていない。対して特定者ノヾイアスは、一つの現実の 犠牲者がどうやって選ばれたかに関する選好であり、一方の選ばれかたは人 権侵害だが他方の選ばれかたはそうでない、といった倫理的相違が、実際ど ちらが実現したかとは独立に事前に判定できる。したがって、現実ノヾイアス は肯定論を批判する根拠としては無効だったのに対し、特定者バイアスは肯 定論を支持する根拠として有効なのである。原爆犠牲者は特定者として人権 侵害的に選ばれたわけではないからだ。 第六の論点については次問で、第七の論点は次々問で考えよう。 2 2 0 戦争論理学 本島等「長崎市長のことば」岩波ブックレット No. 146 あの原爆投下を考える 62 問

7. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

な は ま や ら ード・モルガンの法則 二重基準→ダブルスタンダード 中での区別 内的関係 爆発オチ 背理法 排中律 ノンゼロサムゲーム 二分法 ニヒリズム 二項対立 二重否定 二重効果 美的情報 美人投票のパラドクス 必要条件 必要十分条件 必要悪 反実在論 ハンディキャップ原理 パラダイム変換 ハックグラウンド定数 ヒューリスティクス ( 発見法 ) 法の遡及 法至上主義 謀殺 変項 分析的方法 分割の誤謬 プーメラン効果 ( 論拠逆用 ) 不当な類推 不当な一般化 物理主義 不可能命題 ファインチューニング 表現主義 無制限変項の原則 無関連要因重視の誤り→無関連要因 無関連要因→無関連要因重視の誤り 未必の故意 マッチボンプ マスキング効果 埋没原価 ポストホックの誤謬 ( 効果 ) 論理構造 論点先取 倫理的整合性 量の格率 立論と反論 立証責任 弱い指令主義 予防ワクチン ( 論 ) ( 効果 ) 予定調和 蒙昧主義 メンテナンス わーわら人形論法 索引 250 , 252 , 254255 46 , 48 , 49 , 151 , 168 217 , 223 , 224 , 226 , 228 , 229 168 , 170 143 , 144 241 , 246 21 , 22 , 110 206 225 253 200 55 , 58 , 59 , 60 , 63 , 135 104 , 105 255 , 260 26 , 27 , 255 , 259 , 260 234 , 236 , 23 乙 238 , 239 , 240 93 , 94 , 96 , 137 , 175 , 201 71 , 73 1 37 34 , 37 , 48 , 75 , 78 , 127 , 193 155 , 1 56 , 226 151 236 , 237 , 239 105 150 97 , 98 , 155 225 , 226 190 , 191 , 198 , 199 164 , 165 , 249 217 241 , 245 , 248 , 254 206 249 , 250 226 , 228 199 90 , 91 , 92 , 93 , 129 , 238 , 250 92 , 93 , 176 14 , 230 , 232 , 257 204 , 206 , 207 116 , 117 , 226 83 , 85 , 86 , 87 , 89 208 254 210 , 214 , 215 , 216 , 217 64 79 , 82 25 14 , 121 , 207 25 255 18 , 20 , 234 , 236 120 , 146 , 148 , 240 25 107

8. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

論理用語・学術用語索引 2 索引 25 115 , 250 , 251 168 , 170 22 , 23 , 191 21 , 214 136 , 138 , 142 , 192 , 195 , 1 , 225 108 , 110 28 , 30 , 32 , 57 , 135 , 173 , 175 , 185 , 188 , 250 224 , 228 155 , 156 , 226 149 190 , 241 , 245 , 247 45 , 81 , 107 , 130 , 192 , 1 93 , 194 , 196 , 215 130 71 249 99 , 101 , 136 , 154 149 , 154 , 155 146 , 147 , 148 107 216 247 149 , 1 51 212 207 217 14 , 15 , 230 221 , 226 , 227 , 228 , 229 13 , 134 , 136 , 149 , 212 , 215 , 259 128 , 130 102 , 103 , 104 , 105 , 217 , 243 229 , 233 , 234 201203 , 204 46 , 48 246 194 206 14 , 229 , 234 , 238 221 , 223 250 , 253 , 254 , 259 65 , 68 , 69 19 38 , 40 , 216 , 249 135 50 , 52 125 , 127 221 71 , 72 212 210 , 212 , 216 , 220 , 230 233 , 234 64 , 93 59 , 62 , 64 122 , 123 , 124 70 , 203 , 204 , 205 , 207 , 208 , 225 69 , 70 , 71 , 121 , 125 , 233 190 , 241 , 245 , 247 136 , 137 , 138 , 139 , 140 , 141 , 142 , 143 , 144 , 145 , 234 7 7 あ か 間での区別 因果応報説 意味論 意味の全体論 意味の遡及 意味情報 意図主義 暗示的意味 誤った前提への依存 アプリオリ アナロジーの誤謬 アドホックな仮説 後知恵 ( パイアス ) 因果関係 隠喩 ウェー - ノヾー - 右脳思考 演繹定理 永久文 - フェヒナーの法則 外的関係 確証パイアス 過少情報 カテゴリーミスティク 可能的 ( 損害 ) →現実的 ( 損害 ) 神の意思 含意のパラドクス 感傷的一元論 感情に訴える議論 完璧主義の誤謬 換喩 寛容の原則 規則功利主義 期待効用 ( 期待値 ) 逆ポストホックの誤謬 協調の原理 共通原因 虚構主義 緊急避難 空なる理由 愚者のシナリオ 薫製ニシン 形式的 ( に正しい ) 契約説 係留ヒューリスティクス 結果主義 決定論 ( 歴史決定論 ) 権威による論証 「お互い様」の論理 コンコルドの誤謬 語用論 功利主義 効用 構造的同型 ( 性 ) 構成的ジレンマ 後件肯定の誤謬 行為功利主義 現実パイアス 現実的 ( 損害 ) →可能的 ( 損害 ) 限界効用逓減の法則 原因と理由 原因と結果を取り違える誤り

9. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

1 4 3 36 過去に囚われるのは当然といえば当然 ? うつかりイエスと答えてもノーと答えても、「捕虜の虐待を以前はして いた」ことが肯定されてしまう仕組みになっている。これは、「あなた は捕虜の虐待をしていましたか ? 」「 ( していたならば ) もうやめました か ? 」という二つの質問に分けて尋ねられるべきものである。第一の 質問が隠されることにより「誤った前提」を形成し、質問全体にどう 答えても回答者の真意が伝わらないような罠が出来上がっているので ある。 「硫黄島の真実と東京大空襲」コロムビアミュージックエンタティンメント [DVD] 「 The world at war 秘録・第ニ次世界大戦」東北新社 [DVD] 加藤陽子「戦争の論理ーー旧露戦争から太平洋戦争まで」勁草書房 3 6 / 62 過去に囚われるのは当然といえば当然 ? 倫理的整合性ニつのコンコルドの誤謬 前問の答えで肯定派が拠所にできるのはこういうことだろう。コン コルドの誤謬が不合理な姿勢であることは認められるが、コンコルド の誤謬というのはこく自然な、誰もが囚われていた態度なのであり、 とくに原爆投下についてだけ見られる誤謬ではない。そもそも日本の 勝ち目がなくなった時点ですぐ降伏せすに神風特攻などで無駄に命を 「ここで降伏す 使い捨てしたこと自体がコンコルドの誤謬だった るとこれまで祖国に殉じてきた英霊に申し訳が立たない」。全員がコン コルドの誤謬に浸かって合理的な損得計算ができなくなった「総力戦」 の只中、そのクライマックスに、原爆投下という「コンコルドの大誤謬」 が犯されたのは必然であり、やむをえなかったのではないか。 否定派は納得できない。「仕方がなかった」「自然だった」で正当化 できれば誰も苦労しない。それは「自然主義の誤謬」 ( 第 9 問 ) の容 認にあたる。ある誤謬を犯すことが人間心理にとって自然だからとい うことでその誤謬を正当化できるなら、コンコルドの誤謬の例は、

10. 戦争論理学 : あの原爆投下を考える62問

C 0 n t e n t s 47 1 8 5 日本政府が満州に移動したかもしれない ? 意図主義 1 8 8 原爆投下の政治経済的影響って結局 ? 理論的認識と実践的配慮 1 9 0 原爆肯定論者は、核兵器を容認するつもりなのか ? 論理的意味と因果的影響不当な類推 S 2 1 9 2 不用意な議論が核兵器容認に利用されることは確かでは ? 因果関係と相関関係誤った前提への依存 SI 1 9 7 肯定論の影響が心配だからとりあえす否定すればいいのか ? 忖度のバラドクス S 2 2 0 1 原爆肯定論の損得勘定、よくよく考えれば ? 期待効用 S 3 2 0 4 原爆肯定の潜在的悪影響はやはり侮れない ? 倫理的実在論と反実在論原則と特殊判断 2 1 0 被爆者のことを考えても原爆投下を肯定できるのか ? 現実バイアス慈悲深い殺人のバラドクス背理法 2 1 8 2 4 1 2 5 0 2 5 5 2 2 1 2 2 6 2 2 9 2 3 4 2 6 2 2 6 4 2 6 5 2 6 6 2 6 8 2 7 7 S S 被爆者のことをもっと考えると何が見えてくるか ? S9 努力の美徳性規則功利主義 原爆開発は確かに科学的快挙だったが・ S8 美的情報と論理構造 実感を重んすると論理はどうなる ? S7 感情に訴える議論原因と理由空なる理由 被爆者のことをさらにもっと考えると ? S6 ステレオタイプ化特定者バイアス 論理用語・学術用語索引 事項名・人名索引 あとがき 3 ポッダム宣言 2 カイロ宣新 付録 1 否定論・肯定論それぞれの主な論拠 ( 本書の大まかな流れ ) 修正主義無関連要因重視の誤り アメリカ人ですら今や原爆投下の非を認めつつあるのだが ? 62 後知恵バイアスド・モルガンの法則愚者のシナリオ 原爆投下を回避するには御都合主義的ャラセが必要だった ? 61 ファインチューニング意味論と語用論量の格率 日本は結局本当に無条件降伏したのか ? ニ重効果未必の故意緊急避難 戦災者の中で被爆者は別格でありうるか ?