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現代の戦争は、開戦劈頭、つまりドンパチ開始当初における航空優勢の確立いかんが、その後の戦 争の帰趨に大きな影響をあたえる。先守防衛を国是とするわが国は、航空撃滅戦での先制攻撃は許 されない。したがって、敵国の着上陸侵攻に際して戦闘の主導権を握られては、戦車の活躍の場も せいぜい機動防御が関の山だろうな。局地的航空優勢を獲得してそれを徐々に拡大し、機が熟すま でひたすら堪えた後に反撃に出るしかあるまい。 これが、冷戦時代の旧ソ連軍の場合であれば、大量に装備された戦車に濃密な砲兵火力を組み合 わせ、全縦深にわたっての同時打撃によって、迅速かつ一挙に敵を撃破するドクトリンを旨として いた。なにしろ、かっての大祖国戦争においては電撃戦を確立したドイツ軍を相手に戦ったのだか ら、その影響も多分にあるだろうよ。 しかし、かりにわが国が、冷戦時代に旧ソ連軍と砲火を交えていたとしても、華々しい大戦車戦 はまず生起しなかっただろう。なぜかってえと、前に説明したように、わが国土は山地が主体で、 平野部は狭隘なうえに市街地や水田の占める面積が意外と大きいしな。したがって、局地的かつ小 規模な戦車戦は発生しても、数百輌もの戦車が同時に交戦するような大規模戦車戦はあり得ない。 それだけの規模の戦場となるべき地積がないからだ。 太郎「ちえ、残念だなあ」 おじさん「しかも戦車戦といっても、通常は戦車が単独で敵戦車と戦闘することは少ない。戦車 とは、あくまで敵戦車を撃破するための主役で、自走もしくは歩兵携行の対戦車火器と組み合わせ て運用されるのだ。 130

各国 MB T の全備重量比較 ( 単位 = t) 80 60 40 20 0 接七 ま が厄 パ重 ま 自 圧式 が戦 約車 工上 在面 で だす る 隊不 れ小 し渡 能れ ば川 そ程 車川 煙 を水 突 、方 、か の ひ頑履後 な単 ン ユ 丈帯 ノ なす ケ ル ど で 架 双 し を る が 状水重 深 に よ っ て は そ の と き は 渡た兵通破 れ橋部過壊 を 呼 ん 門 橋 や 自 走 浮 な オ喬 の 、度 な 上昜 ム も あ る の よ っ な っ て い て も さ て い た り そ つ で く と も 大 と も : な、 っ も い い な橋過 が か か 、介車 な 河存直 0 度 な ら 簡 に 。通川 で き る 戦 が る 地 形 障 害 の 中 も は と く に お お む ね 5 メ ト 丿レ と い た と ろ か な 現 代 の 戦 で あ れ は、 よ っ て も 異 る ど れ く ら い の 深 さ の に渡深 れ る か を 小 数 が値は で さ て お ぎ は 渡 渉 だ が れ し ) さ ン ス で も 戦 車 に 踏 ま て は と た ま り も な 全 が か か る わ け で い く ら な M 2 コ し た コ ト も な さ そ つ だ 、が平 そ - の に 戦 車 の 地 〇 九 kg 月リ と にゴ ん ば た い 四 に ま れ て し ま - つ た と が あ る ん だ 68

おじさん「まったく同感だ。その島国ニッポンでは、戦車部隊が出動するような事態になる前に、 すでに海上戦や航空戦がはじまっていることだろう」 太郎「でも、そうは言っても、陸自の駐屯地にいきなり弾道ミサイルや巡航ミサイルが飛んで来 るかも知れないでしよ、つ ? 」 おじさん「その可能性も否定できんが、実際には国際情勢が緊迫してきたら、訓練として出動準 備する。それが応急出動訓練なのさ。それに現代戦では、よほど情報収集を怠っていないかぎり、 駐車場に整然と並んでいる戦車の上に、突如として空対地ミサイルが降って来る、というマヌケな 奇襲のされ方はまず起こらないと考えていい。 準それに、飛んで来るのが弾道ミサイルだとしたら、戦車部隊にはどうしようもないな。ミサイル 出防衛は、海自や空自に対処してもらうしかないな。 隊 さて、とにかく出動準備だ」 部 車 戦 ・目 「モタモタするな ! 」陸自戦車部隊の出動準備 陸 太郎「じゃあ、有事の場合、実際の出動準備はどんな感じなんスかね ? るおじさん「自衛隊では、自転車やリャカーはべっとして、およそエンジンっきの車輌は中隊長印 タを押した『車両運行指令書』という書類がなければ動かせない。有事であろうとなかろうとだ」 タ 太郎「よく草刈り作業に『バロネス』って名前の草刈り機を使っているけど、あれはどうなの ? 」 モ おじさん「おっと、アレには運行指令書は必要なかったな。バロネスはあくまで自走式草刈り機

おじさん「かっての第二次世界大戦時、ドイツ軍による電撃戦が確立される以前は、戦車は歩兵 支援のために存在すると言っても過言ではなかった。しかし、現代戦においては『歩戦協同』、自 衛隊では『普戦協同』というけれども、戦車に歩兵が随伴し、相互に連係して戦闘するのが常識だ。 いかに戦車が陸の王者とはいえ、その衝撃力をもってしても陣地占領することは不可能でね。逆 に歩兵だけでは機動力と火力の発揮に制約があるし、装甲防御力という面では己の着用する防弾チ ョッキのみが頼りなんだ。そこで、 <æo によって歩兵を装甲化し機動力をあたえ、戦車に随伴さ せて戦闘するようになったのだよ。 ところで、御主はタクシーを利用したことがあるだろう ? 」 太郎「は ? 当然あるに決まってるじゃないスか。いまどきの現代人で一度もタクシーに乗った ことのない人って、まずいないでしよう。でもなんで ? 」 おじさん「当たり前だが、タクシーは『ヘイ、タクシー ! 』と手を挙げるだけで停車してくれる。 いや、べつに『ヘイ』と叫ぶ必要もないけどな。そして『ヘイ、どちらまで ? 』とのゝ 先を告げれば自宅の玄関先にも横付けしてくれる。まあ、江戸っ子じゃあるまいし、いちいち『へ イ』もないだろうがな。 、つまり装甲人員輸送車は、その用途から『戦場タクシー』と表現される。七三式装甲車 が代表的だな。だが、 乗用タクシーのようにドア・トウ・ドアというわけではない。突撃発起点で、 客である兵隊さんは下車しなければならないからだ。これは、現在の、つまり装甲歩兵戦闘 戦場タクシー <CO と戦車の関係 110

闘車輌の燃費向上も追求していただきたいものだな」 戦車戦はどのように行なわれるか おじさん「さて、戦車戦。当然だが、戦車戦は敵の戦車と交戦することで発生するよな。では、 戦車戦はどのように行なわれるのか説明しよう。ます、敵国の着上陸侵攻により防衛出動命令が発 令されると、陸上自衛隊の各部隊は基礎配置と称して年度防衛計画に示された場所に展開すること となっている。この場所がどこであるかは防衛秘密だから、いくらおじさんが元自衛官だったから といっても、下っ端隊員には知る由もない。基礎配置は、シミュレーション・ウォー・ボードゲー ムをプレイするようなマニアには『部隊初期配置』と言い換えたほうがわかりやすいかな。 そして、戦闘は戦場で行なわれるから、基礎配置された部隊は、それが戦車連隊や大隊などの場 合なら師団や旅団といった、上級部隊の作戦計画に基づいて決定された『戦場』へ移動するわけだ。 もちろんただ移動するわけではなく、敵に対して有利な体勢を占めることが重要だ。だから、まず は緊要地形の確保といって、予想される敵の侵攻に対して有利な地形を陣地占領することになる」 太郎「キンヨウチケイのカクホですか。聞き慣れない軍事用語がガンガン出てくるなあ。そうか と思えば、横文字や略号も多いッスね おじさん「なあに、そのうち御主も知らぬ間にだんだんと覚えるさ。それでだ、戦車部隊は普通 科部隊と違って地域、つまりある場所の土地を占領・確保する能力はないから、単に分散・偽装し たうえで攻撃発起に備え、集結地に待機するのが一般的だ。これを『機動展開』という。

を繰り返すわけだ」 太郎「撃っては隠れ、隠れては撃つ。神出鬼没だなあ。まるで狙撃兵ッスね おじさん「まさにそうだな。そして攻撃に際しては、敵の意表をついた経路の選定や企図の秘匿 などは、奇襲効果を最大限に発揮するためにも重要だ。わが国にかぎらす、世界的にも大規模な戦 車戦が可能な地形もそう多くはない。たとえば、関東平野のように一見広大な平野部であっても、 その地誌情報を勘案すれば大規模戦車戦の戦場として、かならすしも適当とは一一一一口えないことがわか る。 なにしろ首都圏の人口密度は高く、郊外にも意外と人家は多い。 主要幹線でありながら、幅員も 狭ければ車線数も少ないくせに交通量は大、という道路も多いしな。それに平野というわりには、 自走架柱橋などの能力以上の地隙が存在したりする。さらには、水田の耕地面積も無視できるレベ ルではないのだよ」 太郎「これじゃ、戦車の機動にも少なからず影響しますね」 におじさん「うん。だから、戦車同士が正面切って激突可能な地積が存在するのは、やはり北海道 くらいのものだろうよ」 の 車 陸の王者、戦車の弱点とは の太郎「ところで、戦車は陸戦における王者と呼ばれたりするけど、弱点も多いよね。無敵ではな いのは言うまでもないけど」

ていなかった」 た っ 太郎「貧弱ウ ! これじゃ豆鉄砲っスねー 弱 おじさん「しかし、その二年後に登場したⅢ も 円車 カ ◎ > 戦号戦車は、当時の対戦車砲では標準的な口径で 中 も の % あった三十七ミリという、まともな戦車砲を装 防 「備していた。しかし、これでも威力不足だとい る うことで、のちに五十ミリ戦車砲が搭載される の そ ゾようになったんだ。のちの電撃戦において主役 ◎界きとなったⅢ号戦車だけど、連合軍の戦車に対し 型 世べ ては、火力の面で遅れをとっていた。そのため ◎第と 第一線を引退するのも早く、後継のⅣ号戦車に の ア ◎ 取って替わられたのだ。 ・◎・ タ イ そして一九三九年九月、ドイツは五十二個師 団もの大兵力をもって、突如ポーランドに侵攻した。この侵攻作戦は、Ⅱ号・Ⅲ号戦車を装備した 装甲師団を中核としたものでね。その各部隊は、機械化された装甲擲弾兵が戦車に随伴し、さらに はユンカースースツーカ急降下爆撃機の支援をうけていたんだ。これは、現代戦における米 国の『エア・ランド ・バトル』の先駆けとも鸞つべき空陸一体の作戦でもあった。 これにより、旧式装備のポーランド軍はわすか十八日間で壊滅した。このドイツ軍の侵攻作戦が、

マーク I から九〇式まで。戦車の歴史 従来の常識を覆すほど迅速かっ電撃的であったことから、ク電撃戦 ( プリツツ・クリーグ ) クと呼ば ーかん れたんだ。ドイツ軍の確立した電撃戦は、翌年のフランス侵攻でも如何なく効果を発揮した。シャ ール型戦車などの有力な戦車を保有していたフランスも、戦車が活躍する間もなくあっさりと 降伏してしまったくらいだ。 ところが、地上戦において向かうところ敵なし イの大陸軍国ドイツも、同じ大陸軍国たるソ連をも 車相手にするようになると、さすがに苦戦しはじめ 号 の 強 e ー中戦車は、火力も装甲防護力も、そして機 最 ッ動力もが、ドイツ軍戦車のそれを圧倒していたん ドだ。最初に出現した型は、七十六ミリ ( 正確には 七十六・二ミリだが ) 戦車砲を搭載していたから e し 登祐と呼ばれる。 期 この戦車が優れているのは、避弾経始に優れた 大デザインと低い履帯接地圧にある。とくに後者は、 道路の鋪装率が低かったソ連ならではと言うべき 第ものでね、泥濘地における走破性に優れていたん だ。これは、ぬかるみで苦戦したドイツ軍戦車と 0 0 。◎。◎。◎。◎ T ー 34 に対キ亢してドイツが開発した、 V 号戦車パンター 0

2 戦車への乗車要領 車砲操装 縦填 長手手手 下車時の定位 短間隔 短間隔 形戦車への乗車は、それぞれ 隊の隊形に整列した後、車長 の「乗車」の号令によって の 実施するのが基本である。 ト国」 れ乗車にあたっては、車体お ま よび砲塔部の「手かけ」や ー 9 圉 「足かけ」を使用して、定 集 められた順序に従って乗り 9 砲手 込むのだ。 ろ ′ー車長 戦 れ ま 集 の形 車隊 戦の し倒 9 目 - 短間隔