久しいが、シビックテックで活躍する灯工ンジニアは .IT に関 するスキルをもって地域課題解決に参画をする市民ととらえ てよいだろう。 市民とは不特定多数の無個性かっ抽象的な、マスの中の 一員というイメージを持つ人もいるかもしれない。しかし、高 度に都市化をした社会での市民とは、高度な教育と余暇、そ してテクノロジーの進化に支えられ、課題解決の思考やスキ ルを持つプレイヤーとして、社会に登場し、活躍の場を求め始 める存在である。 行政が抱えきれない課題を、市民が自発的に解決を目指す 動きが出始め、そのひとっとして、シビックテックの登場はし ていると捉えてよいだろう。都市型社会の発展の中で、彼らの 登場は時間の問題であったともいえる。 シビックテックが挑む 3 つの揺さぶり しかし、彼らの活躍は一足飛びには実現しない。市民とは 不特定多数の無個性かっ抽象的な、マスの中の一員であり、 行政とは、顔の見えない彼らに対し、あまねく均等に、平等に サービスを提供する責任があると、官民の双方が思っている。 シビックテックは、この責任の範囲に 3 つの揺さぶりをかけ る。 ーっ目は、サービス提供者の責任の分担である。ここで、ひ とつの事例を紹介したい。シビックテックのハッカソンで、地 域のゴミ出しの情報を発信するアプリケーションを開発し、 自治体の担当者に見せにいったときことである。このアプリ ケーションは、スマートフォンでゴミの種別や曜日、回収場所 の確認を多言語でできるもので、作り手としては、生活情報の 提供を利便化することで、地域への貢献をかなえたつもりで あった。ゴミ出しに関する情報は、当該自治体の Web サイト に掲載されていたものを使用した。 しかし、自治体の担当者は、そのようなアプリケーションの リリースは控えてほしいという反応を示した。地域のゴミの収 集は自治体が行っている行政のサービスであり、アプリケー ションに誤った情報が掲載された場合、クレームが自治体に 集まり、業務が滞るという不安であった。実際、その地域では 祝祭日でゴミ回収の有無がイレギュラーで発生するとのこと で、クレームが発生する可能性が高いという指摘もあった。ー 市民がよかれと作ったものの責任を自治体が負うのは不適 当であるという文脈である。 ニつ目は、イシューの設定である。こちらも事例を話した い。ある自治体で、シビックテックのアイテアソンやハッカソン を開催する事業が組まれた。その際、解決する課題のテーマ を、ワークショップに参加をする地域の人々で考えるところか らスタートをする設計とした。すると、その自治体の議会で、 住民が地域課題の洗い出しをすることへのイメージがわかな いとか、自治体が推進すると決めた分野とは異なる課題設定 が出てきたらどうするのかといった指摘が、議員からなされ た。 自治体において、地域住民の課題を吸い上げ、問題を提起 し、意思決定をするのは、本来は議会の役割であり、間接民主 主義の制度である。一方で、地域の人々が自分たちで課題を 洗い出し、自ら問いを整理するのは、直接民主主義的な手法 であり、自治体が業務を遂行するにあたり、両者の整合性を いかにとればいいのか、イメージがわかないのであろう。 だからと言って、自治体が定めた課題、論点のみに寄ってい いのかと言うと、 Yes とは言い難い。別な自治体で、健康に関 する課題を設定し、シビックテックでハッカソンを行おうとし た際のこと。地域住民との対話の集会に参加をし、自治体の 職員が健康の課題として、当該自治体の平均寿命の低さとが ん検診率の低さを説明し、この地域の健康の課題は、がん検 診率を向上させることだ、と断じた。すると参加者からは、そ もそも長生きを望んでいない、平均寿命とがん検診率との関 係が不明瞭だ、など反発の声が多数あがった。 自治体は地域をマクロの視点でとらえ、課題を設定する。 上記の事例には、行政職員が地域住民へその課題を「ご説 明」をして「ご理解を求める」という構図があった。しかしそれ は、ひとりひとりの課題や欲求と必ずしもマッチしない。 三つ目は、上記ニ点を踏まえた行政の情報の扱い方であ る。ここ数年、オープンテータの利活用が国内でも叫ばれてい る。しかし、自治体からのオープンテータの開放は、道半ばで ある。オープンテータの「オープン」とは、前述した説明のとお り、単に公開という意味ではなく、生み出されたものがバブリ ックドメインであること、もしくはオープンなライセンスとし て、利用、再頒布、改変、分割、編纂などが自由に行える状態で あることを求めるものである。 しかし、自治体職員がオープンという言葉から連想できる のは「公開」である。 Web サイトに掲載していれば公開であ り、情報公開制度があれば公開であり、それで十分ではない かと、訝しげな反応を示す。ところが、だれでも自由に利用、再 頒布、改変、分割、編纂などが行える状態でテータを出せとい う話になると、だれがどう使うかわからないものは容易に出し づらいという反応に変わる。利用が定かでないものに業務の 時間を割きたくないという実務上の事情もあるが、何より、だ れかが何か誤った利用をしたことで、自治体は責任を負えな いという、先ほどのゴミ出しアプリと同じ問題を、不安視する 声が大きい。 公共の担い手を再設計する これらの状況の背景を整理すると以下のようなことが言え る。自治体は、人口減・少子高齡化対策さらには産業活性 化など、先鋭化する地域課題を多数抱ええている。地域特性 を反映した施策が必要で、社会資本・社会保険の拡充、地域
るものであるというイメージが、人々の間に浸透しているよう に見受けられる。権利に対する理解が貧困であるがゆえの事 象とも言えるので、ハッカソンの主催・運営者と参加対象とな りうる人々の双方に、知的財産権に関する基本的な理解を促 す機会を増やすことが望まれる。 現場での対応 こうした権利関係について、ハッカソンの現場ではどのよう な扱いになっているのか。多数のハッカソンでは、参加規約を 設け、その中で作品等に発生する権利について項目を割いて いる。 イベント型で開催される際は、作品を生み出したアイテア について、バブリックドメインとして、第三者が、無償かつ自由 に利用できるとすることが多い。また、参加者が自ら秘匿した い情報は場に提示しないことや、作品を作る際に、第三者の 権利を侵害しないことなども規約に定められる。また、主催者 が開催レポートなどで、参加者の作品やアイデア、または参加 者自身の写真、映像、音声などを公開することがある旨が定め られるケースもある。 また、主催者が、参加者のアイテアや作品を使ってサービス を起こしたい場合は、主催者に一旦、それらを利用する優先 権を持たせ、一定期間が過ぎたら、誰でも自由に利用すること ができると定められるケースもある。また、主催者側が、参加 者のアイテアや作品を使いたい場合は、参加者との間で協議 を行う旨が定められることもある。 規約のオープン化とプラッシュアップ ハッカソンなどで発生しうる権利関係のトラブルを未然に 防ぐために、上記のような規約を作ることが一般的になって きたが、その土台として大きく貢献をしているのが『ハッカソ ン / メイカソン参加同意書と終了後の確認書および FAQ 』で ある。これは情報科学芸術大学院大学 (IAMAS ) の小林茂教 授が、水野祐弁護士の監修のもと作成したもので、ソフトウェ ア開発プロジェクトのための共有ウエプサービス「 GitHub 」 で公開され、主催者、運営者が積み重ねた試行錯誤やノウハ ウを共有できる仕組みとなっている。多くのハッカソンで参加 規約の土台となっている「参加同意書」のほか、ハッカソン終 了後に参加者が知的財産権に関する意思表示を行うための「 終了後の確認書」も公開されている。 インターネットの世界には、「オープン」という概念がある。 これは、単に公開という意味ではなく、生み出されたものがバ プリックドメインであること、もしくはオープンなライセンスと して、利用、再頒布、改変、分割、編纂などが自由に行える状態 であることを求めるものである。小林教授が提供している『ハ ッカソン / メイカソン参加同意書と終了後の確認書および FAQ 』についても、それ自体がオープンであり、クリエイティ 30 プ・コモンズ・ライセンス【表示 - 継承 4.0 国際】で提供されて いる ( 表示に関する条件または権利も明示的に放棄されてい る ) 。 法に触れる機会としてのハッカソン ハッカソンにおいては、小林教授が築いた土台が適切に運 用されることで、標準的なルールが広がってきている。 しかし、それらをアレンジにする際に、法の専門家が介在し ないことも多いため、現場で判断に迷うことや、本来の趣旨を 逸脱する可能性もある。何より、権利そのものへの理解が不 十分であるために、前述のような漠然とした不安が広がって いることもある。 ハッカソンで主催者や運営者が、知的財産権の扱いも含め た規約を作るという行為は、一般の人々や組織が、法に関係 する定めを自ら作るケースとして捉えてよいだろう。 あらゆる技術が平易に扱えるようになったことで、多くの人 々にとって技術的に高度な創作がより身近となり、多様な表 現が可能な社会が到来した。それによって、ハッカソンのよう な場では、ルール自体もまた、多くの人々が自ら定めることが 求められている。創ることと、決めることは、絶えず近接してお り、創り手の裾野が広がれば、決める人たちの裾野もまた、広 がっていく。 ハッカソンに限って言えば、主催者、運営者と参加者、さら には周囲の第三者との間で定めるべきルールについて、権利 なるものへの理解と知的財産権に関する理解の双方につい て、法を扱う仕事をする人々からの発信や、相談窓口が生ま れ、容易にアクセスできる環境があることが望まれるのでは ないだろうか。 3. シビックテックと公共のあり方をどうするか シビックテックの活躍 近年は SIT を活用することで地域課題の解決をはかろうと いう試みも広がっている。そうした活動はシビックテックと呼 ばれ、 C0de for Japan や、地域名を冠した CODE for AIZU 、 Code fo 「 Kanazawa といった団体が、各地でコミ ュニティを形成し、地域課題の可視化や解決に資するアプリ ケーションの開発で挑戦を続けている。彼らもまた、自治体や 地域の住民とともに、ハッカソンを開催することが多い。ここ で行われるハッカソンは、地域課題解決に資するプロダクト やサービスの最初の試作を行うもので、従来であれば自治体 などの公的機関が担っていたサービスを補完あるいは代替す るものを SIT 工ンジニアたちが担おうとする活動として位置付 けることができる。 都市型社会と市民 自治体からも市民参画、市民協働という言葉が掲げられて
の生産力の整備などを進めるために、独自の自治体計画やシ ビル・ミニマムを策定しなければならない。しかし、地域のニ ーズは多様化する反面、慢性的な財政難に苦しんでいる実態 があるほか、市民の能力向上により課題解決の力は相対的に 劣化をし、さらには縦割りによるパフォーマンス低下もある。 自治体が担ってきた責任と役割は、再分担が必要となってい る。 それに対し、サービスの受け手である市民は、あらゆる利 害の当事者であり、高度に都市化した社会では、ライフライン の利用、社会保険の適用、交通・施設の利用など、生活の大半 が、行政が担っている政策・制度に左右されている。 一方で、市民の間からは、高度な専門性を持つ職業人が多 数現れ SIT 活用の知見とスキルや社会問題の調査・実証にお いて行政職員をしのぐ専門性を有するに至っている訂 T の進 展により求められるスキルの水準が下がってきたことで、シビ ックテックのような活動にも関わりやすくなったほか、高度な 調査・分析・考察を行う市民層の登場と拡大も見られてきた。 ハッカソンでは工ンジニアとして活躍する人が、職業上の 専門であるコンサルティング能力を活かして、シビックテック の活動として、出身自治体や周辺地域に助言を行うケースも 出ている。市民は、地域の課題に対し、解決の当事者としてい つでも関われる状態にある。 責任と役割を再分担すべき自治体は、市民が地域の課題の 設定から解決まで関われる参加システムを独創的に構成し、 市民へ日常的な批判と参画を促し、その創意を結集し、市民 とともに立法権および行政権を行使できる仕組みをテサイン してはどうだろうか。 オープンテータも、単なるお知らせである「広報情報」から、 政策制度を作る前の検討・議論の素材となる情報として、地 域で直面している多様な課題を争点として提示する「争点情 報」、自治体の地域特性、政策構造がわかる「基礎情報」、個別 の課題を解決するための技術的な情報となる「専門情報」な どを政策情報として開放していくことが求められる。 解釈から立法へ これらのイメージは、オープンテータやシビックテッ久ハッ カソンという言葉がなかった 1990 年代に、すでに政治学者 の松下圭一氏 ( 故人 ) が提唱しているものである。ここで希求 されているのは、課題解決に高度な能力を発揮しうる人々が、 その担い手となり、その参画の仕組みや、個別の課題解決の プロセスだ。シビックテックのハッカソンもその中に組み込ま れる一手段であり、それらのテサインは法によって描かれる ものだろう。 法を扱う人も、技術を扱う人も、自らの関わり方についても 創造的であるべきで、オープンの定義や直接民主主義といっ 32 た言葉を念頭に置いた上で、自らの知見をどのように社会へ 還元していくことが望ましいのか、議論の場を増やしてはどう だろうか。 4. 技術と法が社会を発展させる 技術だけでは社会は発展しない が革新的かっ魅力的なのは、その活用によってヒト、カ ネ、モノ、情報の流れが劇的に変わり、人々の暮らしに何らか の向上がはかられるからだろう。これは何も灯に限った話で はなく、古くは自動車の発明も同様だったはずだ。 最近は特ロ T による新たなサービスの登場が目覚ましく、 シェアリングエコノミーという新たなビジネスモデルも登場 した。海外のサービスの躍進は目覚ましく、 Airbnb のような 民泊サービスや Uber といった運転サービスも、国内で急速 に広まっている。しかし、これらのサービスには、既存の法に 抵触するのではないかという議論が絶えない。 技術の発展は新しいサービスを生み、人の生活に利便性や 快適さをもたらすが、既存の社会のルールがそれらの登場を 想定しないため、法律への違反を含めた既存の社会システム との不整合を起こす。新しいルールを定め、社会を適切に発 展させるために技術とそれによって生まれるプロダクトや サービスを、世に広めていくことが求められる。 先に挙げた自動車も登場間もない頃のイギリスでは、旗を 掲げる馬車に先導され、そのあとを走らなければならないと いうルールがあった。そこから年月を重ね、日本でも道路関 連、交通関連、環境関連、工業規格関連、さらには貿易関連な ど、あらゆる分野で自動車がある社会を前提とした法が膨大 に作られ、現代の自動車社会が成り立っている。について も、まさにその入口に差し掛かり、膨大な法の整備が待ち構え ているのではないだろうか。 法で人の意識が変わる 個人情報について人々が過敏になったのは、インターネッ トの普及とそれに伴う個人情報保護法の制定のあたりだった ことは、記憶に新しい。また、著作物の利用やニ次創作に関す るあらゆる問題意識が提起されるようになったのも、ニ次創 作を発表できる Web サービスの普及と、ライセンス管理団体 との利害調整が発生したことによるところが大きいだろう。 による新たなプロダクトやサービスの創出により、法がどう対 応するかで人の意識が形成され、人と人、組織と組織の関係 も変わってくる。 法社会制度ハッカソンという試み こうした問題意識のもと .IT 業界や法を扱う人々の有志に よる「法社会制度ハッカソン」という試みが行われている。ハッ カソンと言っても、創作するのはアプリケーションではなく、
第 8 部 ハッカソンから考える法と政策制度 ~ いくつかの論点提示の試み みやぎモバイルビジネス研究会会長 / 工イチタス株式会社代表取締役社長 1 . ハッカソンの広がりと論点のはじまり 技術の一般化と作り手の拡大 の進化はあらゆるプロダクトやサービスを生み出し、人 々の生活に様々な利便性や快適さをもたらしている。クラウド やセンサー、 loT 、ドローン、プロックチェーン、 AR 、 VR 技術 も、一般の T 工ンジニアたちにとって扱いやすい水準となって きたことで、作り手も裾野へと広がり、少人数でユニークなプ ロダクトやサービスを生み出すことが可能となってきた。 そうした技術を扱って、大企業では実現しにくい創造的か つ革新的なプロダクトやサービスを世に出すべンチャー企業 や、さらには、新たな市場を開拓することで急成長を狙う、い わゆるスタートアップを目指す起業家の存在もクローズアッ プされている。 あらゆる人々が、市場に登場した新しい T を用いて、ユニ クなプロダクトやサービスを作れる環境が整ってきたことで、 即興と言っていいスビードで試作をすることも可能になって きた。この試作をイベントのような形で、人々が行う場が目立 つようになってきた。これがハッカソンと呼ばれる取り組みで ある。 活用が進むハッカソン ハッカソンとは、 Hack ( ハック ) と Marathon ( マラソン ) の 掛け合わせによる造語で、ハッカーと称される腕利きの工 ンジニアたちが、一堂に会して 1 日、 2 日の短期間で、アプリケ ーションなどの開発を試みる取り組みを指す。近年、国内でも サービスの試作品を開発するイベントとして、週末に開催 されるケースが増えている。 主催者は、企業であったり、自治体であったり SIT コミュニ ティと呼ばれる工ンジニアの勉強会や団体などが挙げら れ、目的も、企業によるサービス創出や、地域課題解決に資す るアプリケーションの開発 SIT と一次産業など異分野連携の 事例づくりなど多様化し、あらゆる場面での活用が進んでい る。 灯の活用によって、社会課題の解決や、新たなビジネスを 生み出せるのではないかという期待が、ここ数年で高まって 原亮 おり、実際、ハッカソンをきっかけに作られたアプリケーショ ンが、自治体と連携したサービスとしてリリースされるケース や、一次産業向けのサービスとしてリリースしたチームが、起 業をして全国展開をはかる事例も生まれている。 サービス創出の手段としてハッカソンがひろがることで、社 会と法、あるいは政策制度の領域に携わる者に、どのような 議論が求められていくのか。本稿でいくつかの論点の提示を 試みたい。 2. 知的財産権とハッカソン 漠然とした不安 ハッカソンを開催する際によく問われるのが、ハッカソンで 生み出された作品に発生すると思われる権利とその扱いにつ いてである。 この議論に入口で、ひとつ留意しておきたいのは、現場にお いてこの問いを提起するのが、知的財産権などの知識や理解 があるわけでもなく、また、何が問題として起こるのかを必ず しも具体的に想定していない人々が多いという点だ。 主催や運営する側にとっては、参加者が生み出す創作物に は何かしらの権利が発生し、権利とはすなわち何かしらの紛 争を起こしうる要素であり、ハッカソンとは、そうした紛争を 生み出す場になるのではないか、という漠然とした不安であ る。自治体主催でも、企業主催でも、それそれの担当者からこ うした声を聴くことがしばしばある。 参加者の間には、自分たちが生み出した作品にかかる権利 を、他の参加者や主催者に奪われてしまうのではないかとい う不安を抱く者もいる。実際、コンテスト形式で開催されたハ ッカソンで、受賞作品を利用する権利や発生しうる知的著作 権の一切を主催者に帰属させ、かっ対価の支払いも行わない とする規約が掲げられ、反発の声が多くあがったケースもあ る。 権利に対するイメージ こうした問いが発生する背景として、権利とは人と人の間 に、厄介ごとを生む不安要素であり、弱者にとって奪い取られ 29
だった。契約書は偽造されたものだ。」と主張しているとしよ う。ここで、この契約書が信用できるかどうかを検討するに は、いくつかの推理を経る必要がある。 まず、契約書の最後の署名欄を見ると、売主の名前が手書 きで署名され、その横に売主の実印 ( 役所に届け出て、必要に 応じて印鑑登録証明書の交付を受けられる印章 ) が押印され ている。ところで、日本はハンコ社会であり、特に実印に対す る信用が厚い。それは、普通は実印を大切に管理しており、安 易に他人に貸したりはしないという前提があるからである。そ こで、紙面に実印が押印されているときは、その押印は本人 ( 売主 ) の意思に基づいてなされたものに違いないという推定 が働く。そして押印した者は、その書面に記載された内容が 自己の意思に反しているときに押印するようなことはないだ ろうから、押印が意思に基づいている以上、紙面に記載されて いる内容のとおりの意思表示があったのであろうという推定 が働く。 このような推論過程を、法律の世界では「ニ段の推定」と呼 んでおり、ニ段目の推定は法律で規定されている。すなわち、 民事訴訟法 228 条 4 項は、文書が紙媒体で作成される場合 において本人又は代理人の署名又は押印があれば、その文 書は真正に成立したものと法律上推定するとしている。「真正 に成立する」とは、署名又は押印をした者 ( 文書作成者 ) の意 思が表示されたものと認められるという意味である。もっと も、署名又は押印自体には、その文書がいつから存在したか、 作成後に内容が改ざんされていないかといった点について は、何の確実性も担保していない。文書が電子的なデータで あるとき、紙媒体における署名又は押印に代わる存在が電子 署名である。電子署名は、実印の保管のような経験則による 推定ではなく、暗号技術によって新たな推論過程を構築して いる。 2 電子署名 スマートコントラクトに活用されているプロックチェーンを 利用した仕組みにおいては、取引 (Transaction) を行う当 事者間での本人確認及び非改ざん検証において、公開鍵を利 用した電子署名の検証により行われる。プロックチェーン技 術自体の解説は後編に委ね、本稿ではまず電子署名の技術 的な仕組みを概観する。 ( 1 ) 電子署名とは 作成される文書が電子データの形式の場合には、筆跡鑑 定や印影の対照 ( 押印された跡と印章の比較 ) による文書の 真正な成立の確認を行うことができない。また、紙へ記録さ れる文書とは異なり、電子テータは容易に複製や改ざんがで きてしまうため、原本 ( Original) と複製 ( Copy ) の区別が本 質的に不可能である。そのため、電子テータについて民事訴 訟における証拠力を確保するためには、署名又は押印に代わ る電子テータ作成者の新たな証拠が必要となる。このような 要請をハッシュ関数と公開鍵基盤 ( PKI) という要素技術の組 み合わせにより可能とした技術が、電子署名である。 9 ここでいう電子署名とは、電磁的記録に記録された情報 ( 電子テータ ) について作成者を示す目的で行われる暗号化 等の措置で、改変が行われていないかどうか確認することが できるものをいうと法律上定義されている ( 電子署名及び認 証業務に関する法律 2 条 1 項 ) 。 ( 2 ) ハッシュ関数と公開鍵基盤 ( PKD 電子署名の仕組みが、ハッシュ関数と公開鍵基盤を用いて どのように作成者と改変が行われていなことを確認するかの 基本的な仕組みを図 1 に示す。ここでは、電子証明書を利用 した電子データの安全な送信方法についてのみ説明し、電子 証明書の発行処理及び認証局の働きについては詳論しない。 まず、①送信者は、電子データをハッシュ関数により変換し てハッシュ値を生成する。ハッシュ関数とは、任意長の電子テ ータから固定長のハッシュ値 9 という数列を計算する数学的 処理である。ここで用いられるハッシュ関数は、元の電子デー タが 1 ビットでも変化したら、ハッシュ値が非常に高い確率で 異なる値になる性質 ( 衝突耐性 ) 1 。と、ハッシュ値から元の電 子テータを逆算できない性質 ( 一方向性 ) を有している必要 がある 11 。 次に、②送信者は、このハッシュ値を電子証明書で証明さ れている公開鍵に対応する秘密鍵で暗号化する。この暗号化 された結果が電子署名である。公開鍵と秘密鍵は常にペアで 生成され、秘密鍵で暗号化された情報は対応する公開鍵での み復号可能である。秘密鍵は送信者のみが有しており、第三 者とは共有しない。 その後、③送信者は、電子データ ( 平文 ) と電子署名を結合 し、④先ほどの秘密鍵に対応する公開鍵を証明する電子証明 書とともに受信者へ送信する。⑤受信者は、電子証明書が失 効されていないかなどの電子証明書の有効性を、認証局 (C A) に対して確認した上で 12 、⑦公開鍵で電子署名を復号す る。そして、送信者のものであることが証明された公開鍵で電 子署名が復号できたということは、この電子署名は当該公開 鍵に対応する秘密鍵で暗号化されたことを意味している。 よって、この電子署名が秘密鍵の所有者である送信者によっ てなされたものであることが検証できたこととなる。 9 例えば、本稿脱稿時において時刻認証業務認定事業者が採用する SHA -256 というハッシュ関数を用いた場合には、元の電子データのファイルサイズにかかわらず、ハッシュ値 は常に 256 ビットとなる。 1 0 仮に衝突耐性が低いと、ハッシュ値が同じでも元の電子データが異なるおそれがあり、改変が行われていなし、か否かの検証 ( 手順⑧ ) にハッシュ値を用いることができない。 1 1 結城浩「暗号技術入門第 3 版」 ()B Creative 、 201 5 ) 174 頁 1 2 公開鍵基盤における認証局の役割は、誤解を恐れすに言えば、印鑑登録証明における地方自治体や法務局の役割と類似する。 1 7
第 7 部 電子機器を製品化する際に必要な法的対策 ~ 技適・ PSE 対応手法 lmagineers' Guild イマジニア 岩﨑弾 1 . はじめに 日本国内で電波を送信する機器を使用するには、原則とし て免許が必要となります。しかしながら、免許を受けなくても 企画した電子機器を製品にするには、量産して数を作るだ 使用できる場合がいくつかあります。 ( 電波法第 4 条 ) けでは世にリリースすることはできません。量産した機器を製 例えば、電波の強さが著しく微弱な場合などがあります。そ 品にするには、マニュ刃いサポート・保証など、多くのことを の中の 1 つに、いわゆる「技適」を取得している商品を使用す 考慮する必要があります。その 1 つに『認証』があります。量産 る場合があります。なお、条文上では、このような商品の事を、 するだけならもちろん認証は必要ありません。しかし、製品と 「適合表示無線設備」と表記しています。 して世にリリースするのであれば、『認証』についての検討を まずは、実際の認証表示をいくつか見てみたいと思います。 欠かすことはできません 電子機器を製品化する際の認証の中でよく注目されるの は、「技適」と、「 PSE 」です。筆者はこれらの認証をクリアした ュカイ工学 konashil 製品を今まで何台も製品化してきました。しかしながら、実は 認証取得自体はやったことがありません。なせならば、認証取 得しなくても適法に製品化できる方法があるからです。 この部では、実際の製品化における認証取得の実務につい て簡単にこ紹介させていただければと存じます。 2. 技適 「技適」という言葉はお聞きになったことがある方も多いか と思います。では、「技適」とは、どんな言葉の略称なのでしよ うか ? 実は、「技適」は、以下 2 つの制度のそれそれの略称な 証番号 : 011-120018 のです。 1 . 技術基準適合認定 ( 電気通信事業法第 53 条に基づく認定 ) 2. 技術基準適合証明 ( 電波法第 38 条の 2 に基づく証明 ) この 2 つの制度名を略すと、どちらも、「技適」になります。 1 . は、電話機やスマホなどの通信機器を、 NTT ・ KDDI•ソ フトバンクといった電気通信事業者の回線などに接続するた めの技術基準に適合していることを認定する ( 電気通信事業 法第 53 条 ) 制度です。この認定では、通信機器が無線通信を するかどうかは関係ありません。無線通信をしない機器でも、 電気通信事業者の回線に接続する場合は対象になります。 本稿では、 Wi - Fi や日 uetooth 等の無線通信を使用した 製品をリリースする際に必要となる、 2. の技術基準適合証明 についてお話したいと思います。 1 http://konash i.ux-xu.com/ 2 http://www.uni-elec.co.jp/web.pdf 0 ( モジュール部拡大写真 ) 0 ユニ電子 UN ト 01-A0022 . 、、人し C 図・ 2248 011 ・ 12818 0 証番号 : 011-120018 25
証を取得します。認証取得の際に数台のサンプルに対して検 査があります。一方で、工事設計認証は、製品の設計図や、製 造段階の品質に対しての認証となります。技術基準適合証明 とは異なり、認証取得の際に検査をするのは 1 台だけです。モ ジュールに対しての認証、とすると、工事設計認証という名称 は若干の違和感を覚えるかもしれません。近年、部品の小型 化が進んで、無線通信機能をモジュール部品として作れるよ うになりました。それに伴い、「モジュール認証」という考え方 が生まれました。それに対する考え方は、 " 製品 " に対する認証 で「製品認証」と呼びます。日本では、モジュール認証への対 応方法として、モジュールを、「モジュール上の特定無線設備」 と定義し、従来の工事設計認証の制度で対応させることにし ました。その結果、工事設計認証を取得しているモジュールを 使用して商品を作れば、製品自体で技術基準適合証明を取 得しないでも、無線通信モジュールを使用し、モジュールメー カーが取得している工事設計認証の通りに設計することで電 波を送信することができる認証を取得済みの製品を作れるよ うになりました。モジュール認証の場合、認証取得の主体はモ ジュール部品のメーカーになります。認証済みのモジュール を使用して製品化した場合も、技適マーク及び技適番号を表 示する必要があります。ここで表示する技適番号は、モジュー ル部品メーカーが取得した工事設計認証の番号を転記する こととなります。 ちなみに、モジュール認証の制度が世界中のすべての国で あるわけではありません。例えば、アメリカ合衆国の FCC で は、モジュール認証の考え方はありません。製品に対して認証 を取得する必要があります。ただし、認証済のモジュールを使 用している場合、製品認証の取得が簡単になるという制度は あります。 余談ではありますが、 " 技適 " は日本独自の認証です。海外の 認証機関でも技適の取得をすることができますが、日本独自 とは言え、「 Giteki Ce はⅲ cation 」では通じません。英語に すると「 M 旧 Certification 」 ( 経産省認証 ) となります。海外 の認証機関や、部品仕入先などのやり取りをする際にはこ注 意のほどを。 簡単にまとめると、工事設計認証を取得しているモジュー ルを使用して製造した商品は、製品に対して技術基準適合証 明を取得しなくてもリリースが可能、ということです。 参考 総務省電波利用ホームページ http://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/monitoring/summary/qa/g- iteki_ma rk/ 6 http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/index.htm 法令テータベース電波法 http://elaw s. e-gov ・ go.jp/search/elawsSearch/eIaws - search/l sg0500/detail?law 旧 = 325AC0000000131 ne rCode = 1 日本における無線通信機器の基準認証制度の概要 ( 総務省 総合通信基盤局電波環境課認証推進室 ) http:〃www.jate.or.jp/jp/chousa/contents/pdf/mic-mra.mu- sen01. pdf 無線設備の技術基準適合証明及び工事設計認証 一般財団法人テレコムエンジニアリングセンター (TELEC) https://www.telec.or.jp/services/tech/index.html 日本の「モジュール認証等」の検討状況℃ CJ ガイドライン WG http://www.tele.soumu ・ go.jp/resource/j/equ/mra/pd- f/24/j-05. pdf 3. PSE マーク PSE マークというものを聞かれたことのある方は多いかと 思います。では、 PSE マークとは何のことなのでしようか ? PSE マークの根拠法は、電気用品安全法です。 PS マークと は、この法律および関連する政令・省令などで定められた安 全基準に適当した電気製品に表示されるものです。 PS 特定電気用品 PS 特定電気用品以外の電気用品 電気用品を製造または輸入を行う事業者に対して、基準に 適合するようにすることは義務付けられています。しかし、技 適マークとは異なり、実は PSE マークを表示することは義務 付けられていません。したがって、 PSE マークがないからと言 って、直ちに適法ではない商品、ということではありません。 「電気用品」とは、建物に設置されているコンセントに接続 して、用いられる機械、器具又は材料のことです。 ( 電気用品安 全法第 2 条 ) そのうち、特に危険又は障害の発生するおそれ が多い電気用品を、特定電気用品として定めています。特定 電気用品に対しては、◇形の PSE マークが付されます。特定 電気用品、特定電気用品以外の電気用品の一覧は、経済産業 省のホームページに記されています。また、どの用品にあたる のかわかりにくいような用品や、同法の対象・非対称について 不定期に同省のホームページ 6 に法解釈についての情報が公 27
れている 3 。 とはいえ、厳密に言えば、お互いの引渡し ( 履行 ) には時間 差が生ずるので、例えば、買主が売買代金を振り込む送金ボ タンを押した瞬間に、目の前にいた売主が自動車のキーを 持って逃亡する可能性もないわけではない。また、遠隔地にい る当事者同士の契約や、実行に一定の手間が掛かる義務 ( 海 外送金や輸出入の手続等 ) だと、この同時性の確保が難しい。 そのため、実務上は、第三者が当事者の間で取引の対象や代 金を預かる存在としてのエスクロー ( Escrow ) を立てること がある。 2 スマートコントラクトの成立と実行 スマートコントラクトの概念は、米国の法学 x 暗号学者であ る Nick Szabo 氏が 1997 年に公表した論文 4 まで遡る。当 時、プロックチェーン技術は未だ存在していなかったが、その コンセプトである「スマートコントラクトにより、コンビュー タ・ネットワークを介して、関係性を定義し、かっ確実性を確 保するために、ユーサ・インターフェイスとプロトコルを統合 する。」 5 という考え方は、現在も踏襲されている。スマートコン トラクトでは、法律上の契約の要素に当たる部分は、プログラ ム上、ユーザ間の関係性の定義 ( Definition ) としてコーティ ングされる。 例えば、スマートフォンに実装された非接触℃により解錠 される自動車の売買を考えると、解錠権限の譲渡が自動車の キーの引渡しに対応する。仮に、この場合の売買代金の支払 いに暗号通貨を用いることが定義された場合には、法律上の 同時履行の原則 ( キーと代金の同時交換 ) をスマートコントラ クトに、自動執行 (Auto-Execution) のプロトコルとして実 装することも可能である 6 。これは、自動執行の場合は、誰かの 恣意が介在するおそれがなく、システム全体で一種のエスク ロー機能を提供できるからである。この恣意の排除は、プロッ クチェーン技術を活用した DApps (Decentralized App ⅱ cation ) 7 の場合にはより強力となる。 もっとも、すべてのスマートコントラクトがネットワーク上 で完結できるわけではなく、現実の物理空間での裁判所を通 じた執行が必要なケースも存在するであろう。その際に問題 となるのは、スマートコントラクトにおける当事者間の合意の 内容は、どこに存在するのかという点である。 法的に有効な契約といえるためには、当事者間の申込みと 承諾の意思表示の一致があれば、契約の形式は問われない ことは前述したが、スマートコントラクトの場合、契約の要素 はすべてプログラム上の定義としてコーディングされてしまっ ており、ほとんどの場合はユーザの可読性がない。可読性が ない要素を当事者の意思表示の内容となるように実装する ためには、スマートコントラクトにより実現したい契約の要素 については、ユーザ・インターフェイスを通じてユーサ ( 契約 当事者 ) に表示するとともに、申込みと承諾の仕組みをプロト コル上で実装した上で、その一致を確認する (Verify) する必 要がある。 このような当事者の意思表示の一致をプロトコルとユー サ・インターフェイスを通じて確保するという過程は、後述の 電子署名やプロックチェーン技術による非改ざん証明という 機能だけでは実現できない。記録 (Record) が改ざんされて いないということと、記録内容やプロトコルの仕組みが契約 の成立条件として十分かは全く別個の問題であり、スマート コントラクトのデサインを考える上で重要である。 このほかにも、スマートコントラクトのデザインを考える上 では、ある種のスマートコントラクトがアーキテクチャとして テファクトスタンダードとなること上で考慮すべきいくつかの 論点が存在する。例えば、当事者が契約内容をフェアなもの とするために十分な交渉カ (Bargaining Power ) を持たな いとき、スマートコントラクトに実装されるべき契約の要素の 決定プロセス自体をどのように設計するかなどの問題があり 得るが、これらはまた別の機会に検討したい。 Ⅲスマートコントラクトの証拠価値 1 法律上の証拠価値 日本の民事訴訟制度において、証拠となり得る能力 ( 証拠 能力 ) 、すなわち裁判官が判決中で事実を認定する基礎とし て用いることができる資料の種類に制限はない 8 。そのため、 スマートコントラクトを含め、電子的な証拠にも証拠能力は ある。よく、電子的なテータが証拠となり得るかという問いが 提起されるが、これは証拠能力の問題ではなく、証拠として信 頼に値するかどうかという実質的な信用性 ( 実質的証拠カ ) の問題である。 例えば、紙媒体で先ほどの自動車の売買契約書が作成され た場合を考えてみよう。そして売買契約書には代金が 100 万円と記載されているが、売主は「合意した代金は 200 万円 3 民法第 533 条 ( 同時履行の抗弁権 ) は、「双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の 債務が弁済期にないときは、この限りでない。」と規定している。 4 Nick Szab0 "FormaIizing and Securing Relationships on Public Networks" (Peer-Reviewed 」 ou 「 n 引 on the lnternet, Volume 2 , Number 9 , 1 , September 1997 ) 5 "Smart contracts combine p 「 0t0C0 with user interfaces tO formalize and secure relationships over computer networks. " 6 鳥谷部昭寛他「スマートコントラクト本格入門」 ( 技術評論社、 2017 ) 68 頁以下 7 https://github.com/DavidJohnstonCEO/DecentraIizedAppIications 8 ちなみに、刑事訴訟制度上は証拠能力に一定の制限がある。例えば、違法に収集された証拠には、原則的には証拠能力がないとされる。