「現実的なヴィジョンを打ち出さなければなりません」という割には、なぜ立憲主義に反 するかという点の記述は乏しい。「個人の自由や権利を尊重する政治」の実現を求めてい るが、安倍政権が個人の自由や権利を尊重していないとも思えない。 彼らは街頭演説などで「おれたちの声を聞け」「おれたちは主権者だ」とよく叫ぶ。他 者の意見は間違っているとの前提で、自分たちの意見が絶対に正しいという一方的な見解 の表明でしかない。後に詳しく触れるが、この独善的な傾向は、共産党の体質とも実によ く似ている。 さらに、彼らは《持続可能で健全な成長と公正な分配によって、人々の生活の保障を実 現する政治を求めます》と憲法以外についても口にするが、結局は《安倍政権は格差拡大 と雇用の不安定化を促進し、中間層・貧困層を切り捨てた、いびつな成長戦略を実行して います》と共産党の主張を繰り返す。消費税率の川 % への引き上げにも反対で、「プラッ クな資本主義」だとして企業批判をさかんに展開しているところも共産党そのものであ 外交は《対話と協調に基づく平和的な外交・安全保障政策を求めます》《北東アジアの 協調的安全保障体制の構築へ向けてイニシアテイプを発揮するべき》という点も、非現実 的な「北東アジア平和協力構想」を提唱する共産党の主張そのままと言っていし
《制服向上委員会の皆さん。党創立記念講演会のご案内を送ったら、レッスン前に来てく ださいました。志位委員長の 1 時間半近い講演を、しつかりノートとって聞いて。「難し い言葉もあったけど、歴史の流れがわかって、勉強になりました」と》 笑みをたたえ小池が制服向上委員会のメンバー 5 人とともに党本部で記念撮影した写真 も掲載されていた。 川代の少女たちが、あまたの共産党員に交じって志位の記念講演で " 学習 ~ したわけで ある。では、彼女たちはこの日、何を学んだのか。 講演で志位は、安保関連法案が衆院を通過したことについて「政府・与党が数の暴力で 強行採決した。国民主権の大原則に反する許し難い歴史的な暴挙であり断固抗議の声を突 きつける」と安倍政権を批判し、「条約、予算と違って法案に自然成立はない。国民的な 運動を広げに広げて圧倒的世論で安倍政権をさらに追い詰めるなら、参院で採決不能の立 ち往生に追い込むことが可能だ。戦いはこれからだ」と強調した。 さらに、「日本共産党年の歴史」に触れながら、「天皇制の専制政治を倒し、国民主権 の日本を築くことを命懸けで主張し戦い抜いてきた、日本共産党が掲げた国民主権の旗 は、戦後、日本国憲法の中に刻み込まれた」と力説。「平和と民主主義を希求する国民の 巨大なエネルギ 1 に自信をもち、必ず廃案に追い込むよう頑張ろう」「安倍政権の存在こ
集会参加者の % は共産党支持者 の主張や活動が、半ば共産党と一体化していることは明白だ。 も参加した安保関連法反対のデモでは、先導する車両が共産党関係者が使 用している赤色の模様をあしらった車両とナンバーが同一だった。もちろん「共産党」と の表記はされていない。共産党系の労組「全労連」の車両を使っていたこともあった。 共産党やは、安保関連法を「戦争法」と呼び、違法であるかのような主張 を展開する。だが、議院内閣制の日本において、国政選挙で多数の議席を得た政党が構成 する内閣が正当な手続きで法案を提出し、国会で審議し、成立させた法律について「国民 の声を聞いていない」と主張することは、議会制民主主義を否定する危うい発想と言わざ るを得ない。 自分たちの主張のみが正しく、気に人らない他者の意見はすべて間違いだという発想か ら抜け切れないため、国会で成立した法律に対して「国民の声を聞いていない」「おれた ちの声を聞け」などという発言が飛び出すことになる。 43 第一章 S E A L D s と共産党
廃止を争点化することが重要だ、野党には共闘してほしいという要望が出された」「今の 国民一人ひとりが自分の意思をもって自分の言葉で起ち上がっている。 r-za < もマ マの会も一言葉が輝いている。そういう国民運動と共産党が一緒に歩めるだけの党になって いくには奴カ , 刀かいる」 志位は本当に、「五寸釘ぶち込むぞ」やら「安倍のクビをしめるぞー」などの一一一一口葉が輝 いていると思っているのだろうか 共産党とが相思相愛の関係であることは、すでに明白だが、朝日新聞や毎 日新聞、東京新聞などの一部メディアはその実態を報じずに好意的に伝える傾向がある。 その象徴が年 3 月に日に放映された z の看板番組「クロ 1 ズアップ現代」だっ た。年間キャスターを務めた国谷裕子の最後の登場となったこの日の番組のタイトルは 「未来への風— " 痛み。を越える若者たち—」で、の奥田ら若者が「主体的 に声を上げ始めた」と取り上げた。 奥田には単独インタビューを交え、なぜ活動を始めたのかなどを尋ねたを放映し た。ところが、安全保障関連法に反対している抗議集会の模様は伝えたが、「安保関連法 に反対している」とのナレーションは—回もなし。もちろん共産党と < *-a が相思 相愛の関係にあり、主張が瓜二つであることなどに触れることもなかった。
政府構想をアビ 1 ルしているが、党綱領を変えたわけではない。綱領に明記している《日 米安保条約の廃棄》は、あくまで「凍結」という名の棚上げであり、その考えを捨てたわ けではないのである。 志位が「国民的大義」と強調する安保関連法の廃止はともかく、実際に政権を構成した 場合、恒常的に様々な判断が迫られる他の政策の対応はどうするのか。国民連合政府はこ の視点が決定的に欠けている。政治は生き物であり、国民の生活は日々動いているのであ る。 例えば外交だ。共産党が国民連合政府で「日米安保条約の廃棄」を主張しないとして も、政権運営は現状維持だけでは乗り切れない。外交は互いの深い信頼関係があってこそ 成り立つ。共産党は現在の綱領でもいまだ米国を「アメリカ帝国主義」と敵視し、《い ま、アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威と なっている》と明言しており、日米関係についても《きわめて異常な国家的な対米従属の 状態にある》として、その「打破」を訴えている。 このような考えを持っ政党が担う政権が本当に現状維持の外交ができるとは思えない。 経済政策も日々の取り組みが欠かせない。綱領で《大企業・財界の横暴な支配の打破》 を掲げる共産党が、まともな政策を出せるのだろうか。そもそも彼らは、《社会主義・共 134
してやりすぎではないかと感じる人もいるだろう。 だが、公安当局は共産党の主張が気に人らないから監視しているのではない。破防法の 調査対象団体という明確な法的根拠が存在するからだ。政府は、めったにこの事実を公表 してこなかったが、安倍内閣は 2 16 年 3 月日、共産党について「現在においても破 壊活動防止法に基づく調査対象団体である」とする閣議決定を行った。 1952 年の破防法施行以来、共産党は一貫して対象だったとはいえ、閣議決定で明示 するのは、政府関係者が「聞いたことがない」というほど異例の対応だった。 無所属の衆院議員、鈴木貴子の質問主意書に答えた形の答弁書では、共産党について 《警察庁としては、「いわゆる敵の出方論」に立った「暴力革命の方針」に変更はないもの と認識している》と明記したのだ。「敵の出方論」とは、共産党が唱えている「権力側の 出方によっては非平和的手段に訴える」との理念を指す。 共産党は、破防法が制定される前年の引年の第 5 回全国協議会 ( 5 全協 ) で「日本の解 放と民主的変革を平和の手段によって達成しうると考えるのはまちがい」「武装の準備と 行動を開始しなければならない」との方針を決定。「引年綱領」と呼ばれるこの方針に基 づき、騒乱事件や警察襲撃事件が相次いで引き起こされた。答弁書も《政府としては共産 党が日本国内で暴力主義的破壊活動を行った疑いがあるものと認識している》と指摘して 240
た。そして、この方針に基づいて年代後半に、全国的に騒擾事件や警察に対する襲撃 事件等の暴力的破壊活動を繰り広げました。 ( 中略 ) ところで現在、日本共産党は、当時の暴力的破壊活動は「分裂した一方が行ったこと で、党としての活動ではない」と主張しています。しかし、同党が年代後半に暴力的 破壊活動を行ったことは歴史的事実であり、そのことは「白鳥警部射殺事件」「大須騒 擾事件」の判決でも認定されています》 白鳥警部射殺事件とは、 1952 年 1 月幻日夜、札幌市内の路上で、札幌市警警備課長 の白鳥一雄が射殺された事件。捜査本部は、当時、「天誅下る」のビラをまくなど不穏な 動きのあった共産党による犯行と見て党員らを逮捕。「首謀者」とみられる党札幌委員会 委員長は無実を訴えたが、共犯者の証言などもあり最高裁で懲役年の刑が確定した。 大須騒擾事件は年 7 月 7 日、名古屋市の大須球場 ( 当時 ) に地元共産党の主導で群衆 が集まり、制圧しようとした警官隊と衝突した事件。事前に警察側が人手したメモに米軍 施設や警察を襲撃する計画が書かれていた。群衆は火炎瓶を投げつけたり、車を燃やした りして最終的に約人が騒乱罪で起訴され、最高裁でも有罪が確定した。 いずれも年以上前の事件であり、現在とは社会情勢も大きく違うが、最高裁で有罪が 253 第八章なぜ彼らは監視対象なのか
「良い面」「悪い面」を考えるという視点さえ欠けている。ましてや、「戦争はいけなゝ など当たり前の話であり、その戦争をどうやって防ぐか、どうすれば争いが起きないよう になるのか、に全く考えが及んでいない。子供たちを思考停止させ、それこそ、「愚民 化」することを教育の目的に置いているようである。 教育に関しては、全日本教職員組合 ( 全教 ) と呼ばれる組織がある。共産党の下部組織 といえる民青と同じく、全教もまた、実態は共産党の別働隊のような存在となっている。 全教は共産党系労組の全労連傘下にある。 1989 年の連合発足に伴い、日本教職員組 合 ( 日教組 ) とたもとを分かった教職員が全日本教職員組合協議会を結成。その後、日本 高等学校教職員組合と合流して田年に全教が誕生した。厚生労働省の調査によると、年 6 月現在の組合員数は約 7 万 6 千人という。 全教の綱領には「私たちは、資本・権力と政党から独立し、要求にもとづく団結によっ て、教職員の経済的、社会的、政治的地位の向上をはかります」と明記されている。白々 しく「政党から独立」と書いているが、実態を伴っていない。全教主催の集会に共産党幹 部が出席するのは恒例化している。 何よりも安全保障関連法を「戦争法」と呼んでいる上、憲法改正や原発再稼働、消費税 増税、米軍普天間飛行場 ( 沖縄県宜野湾市 ) の名護市辺野古への移設反対などを主張して 81 第二章国民を見下す「ソフト路線」
法を廃止する法案の共同提出にこぎ着け、こ れを機に、参院選の対応という懸案の解消に 踏み切った。 ~ 和 位党首会談に臨んだ志位は「国民連合政府が 志 必要だと主張してきたし、今もその立場は変 党 共わらない。同時に、この問題については賛否 也さまざまだということも承知している。そこ こッ岡で政権の問題は横に置いて選挙協力の協議に 党人り、今後の協議の中でわが党の主張をして むいきたいと考えている」と述べた。ついに方 一 J 針を転換し、国民連合政府構想の凍結を表明 首したのだ。民主党などとの「我慢比べ」に耐 党 党えられなかったと言っていい。 野党首会談では、以下の 4 点を確認した。 ・安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の 閣議決定撤回を共通の目標とする 151 第四章国民連合政府は革命の一里塚
共産党として引き続き、現行憲法の改正を目指すことを国会の場で宣言したのだ。 日本人民共和国憲法草案 野坂は、この約 2 カ月前の鄲年 6 月日の衆院本会議でも、憲法改正案について首相、 吉田茂との論戦を行っている。野坂は質問で、こう訴えた。 「戦争一般の放棄ということが書かれてあるが、戦争にはわれわれの考えでは 2 つの種類 の戦争がある。 2 つの性質の戦争がある。一つは正しくない不正の戦争だ。これは日本の 帝国主義者が満州事変以後起こしたあの戦争、他国征服、侵略の戦争である。これは正し くない。同時に侵略された国が自国を守るための戦争は、われわれは正しい戦争と言って 差し支えないと思う。この憲法草案に戦争一般放棄という形でなしに、われわれはこれを 侵略戦争の放棄、こうするのがもっと的確ではないか。この問題についてわれわれ共産党 はこういう風に主張している」 侵略戦争は論外だと主張する一方、自衛のための戦争の権利まで放棄する必要はないと いうことを切々と訴え、憲法 9 条に反対した。実に明快な見解だった。ところが、これに 198