序章毛筆と脳、運筆と個性・作風 羊 ( 山羊 ) 毛大筆
とりあえず筆を執りましよう。そのとき、単勾か双勾か、 執っている位置は筆管の下部か中程か上部か、何気なく執 管 筆ったその執筆があなたの自然体です。そこから経験を積ん 先で自分を作り上げていくわけですが、執筆のいかんにかか のわらず、筆毛のパネの力を確かめるこの試みのためには、 垂筆先が紙面に対して垂直にならなくてはなりません。これ は筆管を垂直にするのではありませんから、勘違いのなき 図 ように。筆管が垂直でも筆先が紙面に垂直でなく、筆の側 面を当てていてはこの試みはできません。回腕が手首を回 すことであると述べたとおり、手首は柔らかく回るのがいいのであり、その柔らかさは 筆毛の先を立てるための順応力と解されます。 渦巻きを書き、中心部で筆先を放っ 以上のことを前提にして、さざえのふたのような渦巻きを右回りに、筆先で書いてく ださい。大きい円から小さな円になっていくと、筆先の張りがだんだん強くなる状態が 118
第一則振り子に動かすー・・、、横画・縦画を軽やかに運ぶ 長蜂羊 ( 山羊 ) 毛筆
, ・第第碑を碑 図 0 ー 8 宇治橋断碑 29 序章毛筆と脳、運筆と個性・作風
第五則紙離れをすはやくーー線質には紙離れの跡によ。て 促される錯覚あり 羊 ( 山羊 ) 毛筆 ( 中国筆 )
仮名の連綿 しし収蔵 平安時代から鎌倉時代に至る古い時代に写された歌集や文学作品を古筆とゝ きれ しいます。「高野切」は古来、古筆の王様 や鑑賞の目的で断簡に切ったものを「切」と ) として高い位置づけにある古今和歌集二十巻の写本で、伝承では古今和歌集の撰者であ より 4 のいが、 る紀貫之の筆とされますが、内容は明らかに三人の手になる寄合書であり、その書風に より第一種、第二種、第三種に分類されます。 仮名の美を表す言葉に「し文字長」というものがあります。これは「し」の字を長く 伸ばして書跡を雅に美しく見せるもので、まさしくこれは行の流れの強調以外の何もの でもありません。もともと仮名は漢字の音を用いて日本語を表記するために考案され、 一字一音の原則はありますが、楷書、行書、草書のどれで書いてもよく、各字を離して 表記するものでした。それが速記性と利便性がもつばら優先されて、草書がさらに簡略 3 「高野切第一種」の縦の流れ 196
〈高いの位置の執筆〉 羆谷恒子 保田幸三 今井凌雪 日比野五鳳 101 第 3 則筆 0 執りかた・位置を変える
第 + ニ則姿勢づくりを意図する 平衡感覚を保ち、体を自由に働かせる 狼 ( イタチ ) 毛 / 玉 ( 猫 ) 毛兼毫筆 狼 ( イタチ ) 毛筆
図 0 ー 16 天発神讖碑 図 0 ー 17 金農「世説新語」 39 序章毛筆と脳、運筆と個性・作風
第八則「点」の打ちかたで書法がわかる 「点」は書法の歴史認識と個性の凝縮第 狼 ( イタチ ) 筆 ( 柳葉筆 ) 超長蜂羊 ( 山羊 ) 毛筆