連動 - みる会図書館


検索対象: 書の十二則
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1. 書の十二則

れた弾力が抜け、筆の腰が下がってしまいます。筆管をゆるめず、筆先の方向を同じく したままで筆毛まかせに放ち出してください。 放ち出された筆先は、からの位置に移動します。自ずから線は細くなっているこ とでしよう。その細くなった明るい線が、書作において運筆の冴えとなって現われます。 そこで動きをゆるめると冴えがたちまちにぶりますから、から -a に動いた勢いでその まま o に人ってください。あとはその繰り返しです。ただし繰り返しは勢いにまかせず、 テンポを一定にし、しつかりと筆の動きと働きを見て実践してください。上から下まで 筆先を乱されずに繰り返すことができるようになったら、必要な力量がかなり身に付い たといえます。 屈伸による連動の実験 さらに、次に筆先の屈伸による連動も実験しましよう。 これは先の放ち出しよりも筆先を軽く使うことと、左右均等に筆先のパネを働かせて いるところが異なります。とくにこの場合、筆管が右に傾き筆毛が側筆ぎみになってい ると困難です。 124

2. 書の十二則

うになります。そのために連綿体が必要不可欠のものとして浸透していったことは、い たって自然のなりゆきであったといえます。 連動運動と断筆の技法 機能としての必要性から普及していった仮名連綿体は、和歌を美しく書くために最も よく用いられたものですから、書体もそれにふさわしく、どんどん洗練を重ねていきま した。和歌は本来的に朝廷や貴族社会のものでしたから、その子女を教育するために、 和歌集のテキストも特別な工房によって数多く写し上げられました。連綿体は王羲之に よって始められたものですが、それを応用し、美しさとして発展させたのは日本なので す。一字一字を重んじて書く中国では、ときたま草書をむきになって続け書きする人が 現れますが、それはあくまで狂草として特殊視されたものなのです。 仮名の連綿運筆は、第四則で示した筆毛のパネによる二つの連動運動に尽きます。 ま一度、この連動運動に取り組んでください。『一条摂政集』 ( 一二五頁、図 4 ー 9 参照 ) は 連動 1 ( 一二三頁、図 4 ー 7 参照 ) が基盤になるものであり、図 6 ー 5 の「関戸本古今集、は 連動 2 ( 一二五頁、図 4 ー 8 参照 ) が基盤になっています。さらに「本阿弥切」 ( 一二六頁、 150

3. 書の十二則

図 4 ー ) は二つの連動が複雑に交錯しています。筆毛が収筆から次の起筆に転ずる転折 部が、断筆のできるポイントです。断筆することにより、すいふんと連動がやりやすく なった方がある筈です。収筆でいったん筆先を紙面から離し、改めてそこに強く打ち込 んで転折に移るのは、仮名書法における堂々たる一技法です。同じポイントでこの動作 を二度繰り返してもかまいません。何度も繰り返していくうち、打ち込み直してもポイ ントをはずさない技量がやがてついていきます。 集 のを \ 当し、 ) つの、第お 古 本 関 図 151 第 6 則つまったら人れ直す

4. 書の十二則

筆によって書かれています。李柏が東晋の王羲之と生きた時代をほぼ同じくすることか ら、王羲之書法を考える上で、きわめて重視されているものです。行書が気楽に、また 速度をつけて筆を運んだものであることがよく理解されるとともに、造形生において新 鮮さが溢れています。 3 縦への旋回運動 る 米 ~ 市の右旋回 今度は縦方向の旋回の連動です。これも右手書きの運筆においては、とりたてて難し大 回 いことではありません。筆の動いた跡が旋 旋 の よく見え、連動することに邪魔がなく、 向 縦スムーズに筆を運ぶことができるものと第 思います。上から下への動きは太め、途 図中のとくに下半分にふくらみを強くし、

5. 書の十二則

隷書の古い筆法を好み、とくに盛唐の顔真卿書法に身を投じた人で、米董や空海とはか なり異なった作風を展開しています。しかし、筆のパネという観点から見ると、一見し たところでは字中に大きく空間をとってとぼけたような味を出しながら、運筆はしつこ いはかりに筆先を次つぎとねじり返してパネの力を生み出していることがわかります。 パネ連動の実験 この筆毛のパネの連動を身につけるために、次の実験を試みてくたさい のを まず右上方から筆を投げ込むように 集 そ毛す きてち動人れてで止めます。このとき、筆先ネ 向っ放連 の保にのはやや右上方向にあります。次に図のは 管ま上 毛 筆ま右 ように筆毛の腰をしならせ、その反発筆 の 毛力を用いて矢印の方向に放ち出します。 筆 筆管を筆圧に耐えかね、左回りに回す第 4- ことがあってはなりません。左回りに 図 っ乙 筆管が回ると、たちまち筆毛に蓄えら 筆先の / 通過〆 筆の向きを 変えずに返す

6. 書の十二則

を再現することに腐心し、かっそれに強い自負を抱いた人ですが、その王羲之書法の精 彩の大きな要因として、このパネの放ち出しの連動があります。 こん′」 - つはんにやきょ - つかいだ 図 4 ー 5 の空海書「金剛般若経解題」は空海 ( 七七八ー八三五 ) の般若経講義の下書き であったと考えられているもので、練達の行草書はまばゆいばかりの精彩を放っていま すが、この精彩も米董において見た、パネの放ち出しのあざやかな連動によって生み出 されています。空海もまた王羲之書法を中国の一流の書人に勝るとも劣らぬ程に身につ けていました。唐朝に留学してその書法を存分に修 得したばかりでなく、かって東大寺正倉院には厖大 と - つもばん 捌な量の王羲之書法の搨模本 ( 精巧な透かし写し ) が収 基蔵されており、それが嵯峨天皇の弘仁年間に出蔵さ れて、嵯峨天皇から篤い信任を受けていた空海は、 それらを目にする機会に恵まれていたことでしよう。 4 図 いま一つ、図 4 ー 6 は清代後期の何紹基 ( 一七九九 ー一八七三 ) の書作からとり出したものです。何紹基 は王羲之系統の書にはあまり関心を示さず、篆書や 122

7. 書の十二則

ろんこの運筆は漢 字の行草書にも応 っ用されるべきもの 弥で、とくに左右の 本両方に均等に筆を 動かす . ことは、固 図まりかけた運筆を のをもみわ 柔軟にし、また運 めに効果的です。 1 ・ 2 の 「本阿弥切」は『一条摂政集』にも増して強靭な線質を表現しており、連動 線の屈曲が著しく圧縮されたものになっています。 126

8. 書の十二則

目次 序章毛筆と脳、運筆と個性・作風 筆は特殊な筆記用具・ 2 毛筆で書すること・ 動いた結果が形であること・ 第一則振り子に動かすーーー横画・縦画を軽やかに運ふ・ 筆のコンディションと手人れ 2 筆の持ちかた・構えかた・ 振り子で線を引く・ 4 横画・縦画を振り子で引く・ 第二則旋回を大きく続けるーーー行書・草書の動きは円運動の連動が基本 1 行書から始めよう 2 横への旋回運動・ 60 54 49 46 88 82

9. 書の十二則

下から上〈の動きでは筆先をすばめて細くします。上から下に動く際に筆先が線の左に あり、右側を側面が通ることも横方向への連動のときと同じです。 ぺいふつ 図 2 ー 7 は北宋の米菴 ( 元章、一〇五一ー一一〇七 ) の「張李明帖」と呼ばれる作品の部 そしよく 分です。米董は蘇軾 ( 東坡 ) 、黄庭堅 ( 山谷 ) と共に宋の三大家に数えられた、中国書道 史上の屈指のテクニシャンでした。米董は王羲之の書法に傾倒したとされますが、その 運筆には旋回運動が盛んに現われています。とくに図 2 ー 8 はその書作中で、王羲之の ・米 図

10. 書の十二則

2 横への旋回運動 単調な旋回の動きが基礎 図のように縦長の楕円形を、右回りの旋回を続けながら繰り返し 書いてみましよう。この旋回の運筆は、右手書きにおいてはとりた てて難しくはありません。それは筆の動いた跡がよく見え、しかも 回右方〈の連動も動きに邪魔がなく、手をスムーズに運べるからです。 の 上から下への動きは途中をとくにふくらませるように太く、下から へ 上への動きは筆先をすぼめて細くしてください。上から下に動く際 には筆先は左にあり、右側は側面が紙面に接します。筆先がもつれ 図 ないよ一つに、 かつ大きさを一定に、そして等間隔に機械的にできる まで繰り返してください この一見したところ単調な旋回の動きが、行草書の書法において