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検索対象: 本当によい教育を実現するための覚書
97件見つかりました。

1. 本当によい教育を実現するための覚書

第 7 部私塾を作りたい一メンターの紹介ー であったことがわかるでしよう。ものすごい執念を感じます。それはこんな歌が示しています。「かく すればかくなるものと知りながら已むに已まれぬ大和魂」というものです。こんなことをすればこう なる ( 大変なことになる ) と分かっていても、やらずにはいられないことがある、と言ったようなこと を歌ったものです。やらずにはいられないという思いから何かをやってしまう。本当の信念を持った人 間を体現するような内容です。 松陰は地元の萩に戻ると、松下村塾で教えるようになります。塾生の年齢を隔てなく接し、一方的に 教えるだけでなく塾生とともに学んだそうです。その教育的思想は現代でも通用するもので、松陰語録 などをまとめた本は根強い人気があります。それらの中からいくつかを紹介します。 人をやる気にさせる五つの教育術 一、隠れた才能を発掘し、長所を伸ばすようにする。 一、頑張ったら褒めて自信をつけさせ、やる気を引き出す。 一、失敗しても、次につながるアドバイスをし、勇気を出させる。 一、個性を大切にし、本人に向いた教材をあてがい、個別教育をする。 一、ライバルを設定し、互いに切磋琢磨させる。 松陰語録が教える「勉強のコツ」 〇学問は、自分の得手不得手をしつかり見極めて工夫せよ 〇頭の良し悪しに関係なく、誰にだって一つや二つの才能があるものだ。全力を傾けて努力すればそ の才能が開花し、大成できるはずだ。人をやる気にさせ、隠れた才能を大きく伸ばす秘訣はこれに尽き る 0 6

2. 本当によい教育を実現するための覚書

第 4 部予備校の問題点 本書は現役の大学生で特に将来教員を目指すような学生が、主にボランティアで勉強の解説動画を収録 し、無料でざ utube に公開するというネットサービスを作った人たちの物語です。利益追求のためでは なく、あくまでも日本の教育をよくするために奮闘するこのような物語には、心を打たれるものがあり ます。 このタイトルが示す通り、そこには予備校なんか要らないんじゃないかという思想があります。とは しえ僕には理解できるような、しかし全面的に納得できるか判断がっかないという、なんとももやもや した気持ちがありました。機会の平等には同意するものの、予備校というものは本当に難関大学に行き たい生徒にとってはやはり必要なものなのだろうと思っていたのです。そんなときに一冊の本と出会い ました。それが、武田塾という塾を運営している林尚弘という方の著書『予備校に行っている人は読ま ないでください』という本です。何とも挑発的なタイトルですが、中身は誠実で、著者の実際の体験に 裏打ちされた思想があり、一言で言うと予備校は金儲け主義の悪しきものだと断じているのです。これ は僕にとって目からウロコの内容でした。 ■予備校で成績が上がらない理由 なぜそのような思想を持つに至ったかというと、著者自身が高校時代と浪人時代あわせて 4 年間、予 備校に通ったからなのだそうです ( かかった費用は万円 ) 。そして結果的に学習院大学に入った。 これも受験としては失敗だったと本人は言っています。これはまあデリケートなことなのでここだから 言いますが、学習院はよほどのことがない限り浪人して行くところじゃないでしようね。そのように失 敗した理由は、自分が正しい勉強方法を知らないままに、予備校に通ったからではないかと分析してい るのです。 9

3. 本当によい教育を実現するための覚書

【補論】アイドルについて 東大卒だからテレビに出られて、それが理想的だとするならば、結局は偏差値的な勉強じゃないかと 思われるかもしれません。一部はそうですが、もちろん重要なのはそこではないのです。当然ですが、 テレビを見ていれば多くの人が「地下アイドルが東大ってだけでテレビ出られるなんて気楽なものだ、 と思うでしよう。そこでもし結果が残せなければ悪い印象さえ残すかもしれない。しかしそんなことは 本人が一番良く分かっています。だからそのプレッシャーは相当なものだろうと思います。彼女が東大 卒であることが圧倒的に有利に働いていることは間違いないですが、それはきっかけに過ぎなくて、自 分を相対的に見つめて足りないものを補い続けてきたから、今の活躍があります。それは本当に時間を かけて、徐々に積み重ねてきたものです。 これは本人が語っていたことですが、「ミラクル 9 」というクイズ番組に出たとき、全く活躍できな かった。これが本当に悔しくて、すぐに東大のクイズ研究会の知人に弟子入りして猛勉強したのだとい う。彼女の立場では、そこがタレントとしての勝負どころだとはっきり認識しているからです。そして その努力が実って、「さま」で大活躍を果たした。そんな準備をしていたことを聞いて、驚きました。 やるべきことを見据えて準備をし、実際に結果を出した好例でしよう。 ここで考えたいのが学歴のことです。まずメディア露出するために「東大生」という肩書きが強力な のは火を見るより明らかです。であるならば、これを全力で取りに行くということをもっと考えればい いのではないだろうか。こんなにわかりやすい話はない。もちろん東大というのはその一例で、国立大 学であればプランドがあるだろうし、早慶でも十分通用すると思います。多少なりとも学校の勉強が得 意であったなら、十分に狙う価値のあるものでしよう。その適性がある子にとっては、これは大きな指 針になるはずです。そして一度手に入れれば、その後の人生の節々で精神的に自分を支えてくれるもの になるに違いありません。 106

4. 本当によい教育を実現するための覚書

本当によい教育を実現するための覚書さいこ の中で生きていくためのコミュニケーションカ ( 非認知能力 ) を養うためになくてはならないものです。 大人が常に家にいることができるという恵まれた状態でない限り、日中に子供を預かる場所としての機 能も大切です。だから「学校なんか行く必要なし」「公教育はクソ」と完全に切り捨てるのは現実的で ありません。また「オルタナテイプスクール」「シュタイナー教育」なども注目を集めています。一般 的な学校が信用ならないから、新しい学校に行く、という発想では、そちらでもし問題が起こったら結 局は堂々巡りな気がします。これは公立と私立についても一一一一口えることです。公立校は信用ならないが私 立なら安心、という発想はよく聞きますが、その進学した先の私立校が大きな問題を抱えていたらどう するのでしようか。どこに行ったから安心、ということはありません。大切なのはそこでどのように振 る舞うのか。自由にしろ権利にしろ、与えられるものではなく獲得するものなのです。 ・最も必要なのは「選択肢を増やすこと」 この社会でよりよく生きるために最も必要なのは、「バランス感覚」ではないでしようか。学校はそん なに悪いものではない。しかし、学校が世界の全てだと思わないほうがいい。 もちろん教室が世界の全 てではないし、たまたま担任になった先生が唯一の大人ではなし 、。色対的な価値観などはないことを知 る。大人だって間違うことがある。ものごとを相対的に捉えること。外の情報にアクセスし、世界は多 様であるということを知ること。それは「選択肢を増やす」ということで、元をたどれば「世界を知る」 ということでしかないのだと思います。 すべての精神的な問題は「視野が狭いこと」に起因していると思います。プラック企業の問題も、 じめ問題も、自殺に繋がるようなウッもそうですし、クラスに居場所がないとか、イヤな奴がいる、先 生に嫌われているとかいう比較的小さな悩み。そして、将来やりたいことが見つからないというのも、

5. 本当によい教育を実現するための覚書

第 6 部教育現場のあるべき姿 最高じゃないですか。 こういう対応をしたのち、人間が変わったように君は成績が伸び始め、受験にも成功したというこ とです。たまたまかもしれないし、作り話かもしれません ( 実話だと思いますけど ) 。しかし真偽は重 要ではなくて、こういう関わり方は良いと思うのです。親に対してこのような厳しいことを言って、ク レームになったら、退塾されたら。一向に構わないわけです。むしろ迷惑な人間など関わらないほうが そういうメンタリティで仕事をしている。これは公教育の現場では、あるいは十分に大きくなっ てしまった組織では、とてもではないけどできない対応でしよう。 ここには「去る者は追わず、来る者は拒まず」という精神があります。人と人との関係は本来、この ようなものであるべきです。しかし公教育、特に小学校などでこういうクールな態度でいることはあま り好まれませんし、子供たちは「みんな仲良く」という価値観を植え付けられます。当然、教員側もそ れを重視し、クレームを恐れるあまり、強い態度が取れません。「拒んではいけない」という考えに支 配されていれば、もし理不尽な状況を強いられたとしても打開策が見つからず精神を病んでしまうかも しれません。たった一人のクレーマー、たった一人の問題児によって全体が崩壊するというのは、まっ たく珍しい話ではありません。中村淳彦『中年童貞』という本は、介護施設でのそのような実態のルポ を紹介しています。他にもこんな事例もあります。 「追い払われた君」 教室に通いはじめて間もない君が授業前に私のところに質問を持ってきました。まだ誰もいない早 い時間に来て、「この問題の解き方がわかりません」と紙と鉛筆を私に差し出すのです。自分にわかる ように、ここに説明を書いてくれということなのでしよう。親に質問して来いと言われたに違いありま

6. 本当によい教育を実現するための覚書

第 5 部公教育の問題点 いわば『表のカリキュラム』である。その裏には、はるかに大切な裏のカリキュラムが隠されている その内容は三つ。今でも産業主義の国では守られている。時間を守ること、命令に従順なこと、反復作 業を嫌がらないこと。この三つが、流れ作業を前提とした工場労働者に求められている資質だ」 この一文は僕の中で強く残りました。そして数年が経ったあと、本書を書き始めた中でたまたま図書 館で見つけた『バカをつくる学校』という本を少し紹介しようと思います。タイトレま、 ノーしかにもな感じ がするのですが、著者の経歴が面白かった。ジョン・テイラー・ガットというアメリカの公立校教師で、 ニューヨーク市で年にわたり教師を努め、ニューヨーク州の最優秀教師も選出されたという経歴の持 ち主です。 そんな人が、「学校教育は十二年の禁固刑だ」とか「学校は魂の抜け殻どもの刑務所だ」とか「もう 学校はいらない」とか「読み書き計算は百時間もあれば自宅で習得できる」とかとにかく学校教育とい うものに強烈にこき下ろしているという内容です。そこで筆者は、義務教育における七つの大罪という ものを挙げているので、紹介します。以下はほとんどが抜粋 ( 引用 ) です。 ■義務教育の七つの大罪 一貫性のなさ 教える内容に一貫性がない。教えることに全く脈絡がない。まともな人間が求めるのは、ばらばらの 事実ではなく、意味である。しかしパッチワークのような時間割や、生のデータからは、意味を模索す ることなどできない。一流の学校でさえ、カリキュラムとその順序については多くの矛盾を抱えている。 しかし、子供たちはそうした矛盾に怒りや困惑を表すことも許されず、それを「質の高い教育」として 押し付けられている。 4

7. 本当によい教育を実現するための覚書

第 2 部学童保育の問題点 ■子供を見張るだけの仕事 僕は都内某区某小学校の学童保育の求人をハローワークで見つけ、応募。その場で採用が決まりまし た。アルバイトですからこんなもんです。時給は円 ( 泣 ) 。時に出勤し、時くらいにやって くる 1 ' 2 年生がランドセルをロッカーにしまうのを見守る。改めてこの年代の子どもと接すると、幼 稚園児と変わらないということを思い出させられます。そこから 1 時間もすれば 3S6 年生がやってき てやりたいことを始めていきます。最初に良いなと思ったのは、ゲーム類・おもちゃ類が豊富にあるこ とです。オセロから将棋からマンカラ ( おはじきを使ったゲーム ) 、野球盤、レゴプロック、 Z O 、 トランプ、なんでもござれ。小学生向けの本、漫画など到れり尽くせり。これは確かに退屈しないだろ 一つと思いました。 職員は持ち場が 3 つあり、室内、体育館、校庭を日替わりでローテーションするというものでした。 しかし仕事をしていく中で、子供たちの笑顔を見て微笑ましい気持ちになる・・というよりも、ストレ スが溜まる一方であるということが徐々にわかってきます。それは子供たちにというよりは、職員同士 の人間関係も含めた環境そのものに大きな原因がありました。 室内は、上記のようにゲームや読書をしているのを見守っているだけです。たまに将棋の相手をした り、マンカラの相手をしたり、ケンカをやめさせたり、騒いで走り回っている子供を静止させたりしま す ( 一時的に動物園状態になったりします ) 。 体育館は主にドッジボールをさせる仕事です。職員は審判とラインズマンとなって、試合をさせます。 もちろん参加するのは希望者だけなのですが、気づいた点といえばその参加意欲に性差はなく、僕自身

8. 本当によい教育を実現するための覚書

第 7 部私塾を作りたい一メンターの紹介ー を持てと。菅野仁先生の「クールティーチャー宣言」は宮本哲也氏の「冷血先生」に通じるものがあり ますが、よりマイルドな語り口です。実は菅野先生の名前を知ったのは、今年の訃報によってでした。 ですので、これも何かの縁なのかあるいはメッセージなのかと勝手に感じております。齋藤孝先生はあ まりにも著書が多い人ですが、教養や語彙力、暗唱、また古き良き日本の古典を大切にしているという 印象があり ( 『声に出して読みたい日本語』が有名 ) 、僕はそこにものすごく共感しています。また、小 学生国語のテキストに採用されている文章が多く、学問との向き合い方に関してかなりレベルの高いこ とを要求する人だと感じます。 特に重要な著書 内田樹『先生はえらい』『下流志向』『街場のメディア論』 藤原正彦『国家の品格』『祖国とは国語』 菅野仁『教育幻想ークールティーチャー宣一一一一口ー』 齋藤孝『語彙カこそが教養である』『人はなぜ学ばなければならないのか』 ・林修 「いつやるか ? 今でしょ ! 」という一一一一口葉とともに、今ではタレントとして大ブレイクしてしまった林 修先生ですが、僕の中である意味では最も理想とする、心の師匠とも一一 = 〔うべき存在です。僕は林修先生 が好きすぎるので、そのことについて書き始めたら本一冊分を要するでしよう。いずれ林修論を書きた いと思います。それはさておき、彼のすごいところを一言で言うと、教養や勉強というものの大切さを、 実践を伴いながら ( まさに現役予備校講師として、また年間本の講演をこなす中で ) 世の中に発 信しつつ、テレビタレントとしての圧倒的な器用さを発揮しているところでしよう。これは全く新しい

9. 本当によい教育を実現するための覚書

第 7 部私塾を作りたい一メンターの紹介ー るべき姿なのではないか、そんなことを考えています。 ・アドラー ( 岸見一郎 ) フロイト、ユングと並び、「心理学の三大巨頭」とされている「アドラー心理学」がプームになって います。その火付け役となったのが『嫌われる勇気』 ( ダイヤモンド社 ) でしよう。本書は日本のアドラ ー心理学研究の第一人者である岸見一郎氏と、フリーランスライターの古賀史健氏が書いたもので、哲 人と青年の対話形式で物語が進んでいきます。上記のふたりが登場人物となって展開していく小説のよ うにも読める作品です。僕自身、この本でアドラー心理学というものを知りました。 今では売上 150 万部を超え、十分に認知されているといっても良い本書ですが、やはり僕にとって も大きな影響を与えられた本です。今さら感があるからこそ、あえて強調しておきたい。 これを分かっ たふりをするのはいけないし、ベストセラーだからといって侮ってもいけない。国民的必読書に指定す芻 るべきではないでしようか。ちなみに僕がこの本と出会ったのは発売されてすぐ、書店に平積みされて いるのを見かけたときです。売上に関する宣伝文句はなかったように思います ( 〇〇万部突破、という ような ) 。そしてタイトルを見た瞬間に、今読むべき本だと確信しました。ここで言いたいのは、この 本に関して一一一一口えば僕はかなりの古参ヲタだということです。ま、余談ですが。 タイトルが示す通り、本書のメッセージは本当にやりたいことを実現するには、嫌われることを恐れ てはいけないということでしよう。一貫して「勇気」を持っことを求められます。もちろん本書の知見 はそれだけではありません。「過去は存在しない」という考え方、「トラウマは認めない , 「すべての悩 みは「対人関係の悩み」である」「劣等感と劣等コンプレックスの違い」「貢献感」「課題の分離」「共同 体感覚」など、重要なワードが盛りだくさんです。詳細は本書にあたっていただくとして、最重要図書

10. 本当によい教育を実現するための覚書

第 8 部やりたいこと ます。これは何とかしてゲーム感覚でやってもらいましよう。小学生の段階でこれをしつかりやること は、間違いなく大きな財産になります。それは公文式が証明しています。あと、字が汚いことも認めま せん。汚い字が認められるのは、ひと目でそれと分かる超秀才だけです。秀才にしろ、他人が解読でき ないような字を書いていては、まともな評価をされるわけがありません。人は第一印象がほとんどなの ですから、ダメ人間認定されて終わりです。 そして僕は子供が各々勉強している様子を眺めながら、アレコレと口を出します。今取り組んでいる 問題に関連して「コレは知っているか ? 」「ソレの延長がコレだよ」などと、先の学年の内容をほのめ かしたり、別のジャンルの知識と繋げたり、具体例を上げたりします。スキさえあれば社会問題や道徳・ 倫理観を考えさせるような質問を繰り出していきます ( もちろん相手の没入のジャマはしませんが、笑 ) 。 例えば「数学で奇数の否定 ( つまり奇数でない数 ) は偶数であると。これはハッキリわかります。でも この社会にはハッキリ割り切れないものがある。むしろ分けられないことの方が多い。例えば男性の否 8 定は女性だろうか。生物学的にはそうかもしれない。しかし社会的には性的マイノリティというものに ついて考えた方が良いかもしれないね。ここに多様性の問題がある。思想や宗教においては、味方でな い人間Ⅱ敵と認定することで、人間は戦争を繰り返してきたのではないか」と、こんな具合です。あく までも例ですが。それはやはり橋本武先生のところでも紹介したように、学問には寄り道が大切で、新 しい言葉・概念に触れさせることにつながると思うからです。 生まれてきたばかりの赤ん坊は当然、自分の中に言葉というものがありません。完全にゼロです。そ こから徐々に言葉を獲得していくわけですが、頭の中から沸いてきたり自ら発見するわけではありませ ん。それは全て外部から獲得していくのです。特に乳幼児期、幼少期においては母親による語りかけが そのほとんどの情報源であると言われています。だからこそ母親の絵本の読み聞かせなどは子供の知能