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検索対象: 本当によい教育を実現するための覚書
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1. 本当によい教育を実現するための覚書

第 4 部予備校の問題点 0 第 4 部予備校の問題点 僕の中で予備校というのは東進衛星予備校や代ゼミ、 N 会、河合塾、『ビリギャル』で一躍有名にな った名古屋の青藍義塾など ( 2014 年に解散、後に個別指導塾「坪田塾」となる ) 、華やかな経歴を 持っスター講師による講義が受けられる場所という印象です。そしてここでは主に、大学受験のための 予備校を想定しています。かかる費用も安くはないでしよう。僕自身は通ったことがないし、また講師 として働くかということを考えたときに、とてもじゃないけど自分に務まるとは思えないでいます。難 関大学、関東で言えば国立の東大、東エ大、一橋大、私立であれば早慶、といったところになるのでし ようが、自分のような地方のしがない国立大卒では、学歴的にも学力的にも荷が重すぎるだろうという 判断です。 僕がそのようなところで働きたいか、あるいは働けるのかはさておき、予備校といわれるものにも問 題点はあるようです。あるレベル以上の難関大学を目指す高校生・浪人生のうち、少なくない数の若者 たちが予備校に通っているという現実があるでしよう。そしてそれだけの教育費をかけることができる 家庭ほど、難関大学に合格させやすい。大学の偏差値と親の収入が綺麗に相関関係があるというのは事 実としてあります。つまり東京大学に通う学生の親の収入が、最も高いというわけです。 これはあくまでもそういう傾向があるという話ですが、とはいえこれは収入や身分レベルを再生産し、 階級を固定化する方向にはたらいているのではないかという指摘があります。経済的に恵まれていない 家庭の子は、難関大学に入るのが難しい。その問題意識から、機会の平等を目指したのが、花房孟胤 ( た けつぐ ) 氏が立ち上げた『 manavee ( マナビー ) 』と、氏の著書『予備校なんてぶつ潰そうぜ。』でした。 8

2. 本当によい教育を実現するための覚書

第 4 部予備校の問題点 本書は現役の大学生で特に将来教員を目指すような学生が、主にボランティアで勉強の解説動画を収録 し、無料でざ utube に公開するというネットサービスを作った人たちの物語です。利益追求のためでは なく、あくまでも日本の教育をよくするために奮闘するこのような物語には、心を打たれるものがあり ます。 このタイトルが示す通り、そこには予備校なんか要らないんじゃないかという思想があります。とは しえ僕には理解できるような、しかし全面的に納得できるか判断がっかないという、なんとももやもや した気持ちがありました。機会の平等には同意するものの、予備校というものは本当に難関大学に行き たい生徒にとってはやはり必要なものなのだろうと思っていたのです。そんなときに一冊の本と出会い ました。それが、武田塾という塾を運営している林尚弘という方の著書『予備校に行っている人は読ま ないでください』という本です。何とも挑発的なタイトルですが、中身は誠実で、著者の実際の体験に 裏打ちされた思想があり、一言で言うと予備校は金儲け主義の悪しきものだと断じているのです。これ は僕にとって目からウロコの内容でした。 ■予備校で成績が上がらない理由 なぜそのような思想を持つに至ったかというと、著者自身が高校時代と浪人時代あわせて 4 年間、予 備校に通ったからなのだそうです ( かかった費用は万円 ) 。そして結果的に学習院大学に入った。 これも受験としては失敗だったと本人は言っています。これはまあデリケートなことなのでここだから 言いますが、学習院はよほどのことがない限り浪人して行くところじゃないでしようね。そのように失 敗した理由は、自分が正しい勉強方法を知らないままに、予備校に通ったからではないかと分析してい るのです。 9

3. 本当によい教育を実現するための覚書

第 4 部予備校の問題点 予備校はとにかく難関大学の合格実績を売りにしますが、そこにえげつないカラクリがあります。一 言で言うと実績の水増しです。極めて優秀な生徒に、受講料が無料になる特別優待券を配布し、無料で 通わせるのです。無料ならばという理由で通ってくれればしめたものですし、仮に 1 回だけ模試を受け に来た、体験授業を聞いた、というだけでもその生徒が大学に合格してしまえば実績にカウントするの です。そういうレベルの高い生徒は、当然のことながら東大に合格する可能性が極めて高い。そこでは、 ある年の東京大学の合格者が 3108 人で、主要な予備校の東京大学の合格実績を足し算すると 430 2 人になったというデータを紹介しています。 こんなことはその業界に詳しい人なら当たり前の話だと思われるかもしれないですが、やはり効果は 絶大です。受験を控えた高校生はやはり少しでも数字の多いところに行きたいと思うし、そこに悪質な し 1S2 年のことで利用者も入れ替わっていくから、黙認されてい カラクリがあったとしても、せいぜ、 くのです。そして、受験に成功するか失敗するかギリギリのライン、あるいは高確率で失敗するであろ う学生からこそ、ガッツリ受講料を搾取する。これだけ受講しないと受かりませんよ ! と煽ってね。む しろ受験に失敗してもらったほうが予備校としては儲かる。というといかにも陰謀論的な思想に聞こえ るかもしれませんが、現実としてそうなっています。大学に受かれば実績として使え、落ちればもしか したら浪人としてもう一年通ってくれるかもしれないというふうに、どちらに転んでもオイシイのです。 少数の優秀な生徒は選ばれし貴族のようなものであり、大多数の落ちこぼれの連中がカモ ( Ⅱ奴隷 ) で あるという図式は、フランス革命前夜の階級社会だと表現しています。 ■エンタティンメントとして満足度の高い授業 予備校では確かにクオリティの高い講義が展開されています。しかし成績向上に結びつかない。それ 0 4

4. 本当によい教育を実現するための覚書

第 4 部予備校の問題点 は個人の能力ややる気にもよるのでしようが、理由の一つとして授業がエンタティンメントとして優れ ているからなのだそうです。つまりショーとして面白い。高揚させられる。だから満足感がある。しか し結局は本人の地道な努力が必要であり、それがなければ肝心の学力向上には結びつかないというので す。このときにむしろ、勉強した気分になるのはマイナスに作用します。これはなんとなくわかる話で す。僕なんかもし林修先生の授業を聞いたら、興奮しつばなしになる予感がします。他にも、個々人の レベルに合った講義を提案せずに、難易度が合わないためにいくら授業を聞いても理解できなかったり、 基礎と応用の内容を同時並行でやったりと、とても効率が悪いことなども指摘されています。集団授業 や、カリキュラムがきっちり決められた環境では、起こりうる事態でしよう。 そして著者は、自分に対してとても熱心にアドバイスしてくれて全幅の信頼を寄せていた担任の講師 が、予備校を出た後に実は売り上げトップのセールスマンだったと知って愕然としたと言います。その 信頼していた講師に言われるがままにいろんな講座を取ってきたら、実はただの凄腕セールスマンだっ たとなれば、これは確かに強烈でしよう。自分は金儲けに利用されただけじゃないのか。これも教育と 売り上げ至上主義の相性の悪さの例ではないでしようか。 ■予備校に行く前にやるべきことがある そしてこの本は予備校の悪口を延々言っているだけではありません。学習のあるべき方法として「学 習の三段階」というものを提唱していて、詳細は省きますがこれが極めて基本に立ち返った、誠実な、 説得力のあるものになっています。簡単に言うと基礎をしつかり固めることがまず大前提 ( 基本的な英 単語、漢字が書けない時点でダメだろ ! というレベル ) で、人は忘れる生き物だからすぐに復習するこ とが大事、という内容です。当たり前すぎる話なのですが、現在個別指導塾で働いている僕にとっては 4

5. 本当によい教育を実現するための覚書

第 4 部予備校の問題点 これがいかに軽視されているかということ日々痛感しており、改めて深く考えるきっかけになりました。 まさに、予備校に行く前にやるべきことがあるだろう、ということです。 個人的にすごくいいなと思った文章があったので引用します。 「あらかじめ出題される問題が分かっている「漢字テスト」があったとします。個の漢字を指定され、 一定の時間内で個を覚え、テストをする。この漢字テストで満点が取れるか、取れないかでその生徒 の人生は左右されると僕は考えています。なぜなら、ここで点が取れない生徒は、なにかを「身 につける」方法が備わっていないことが確実だからです。」 これにはものすごく共感します。今目の前にある ( 簡単な ) 問題をキッチリこなすことができなけれ ば、もうそれはやる気がないと宣言しているものですから、その後は推して知るべしです。僕はこのタ イプの問題を出されたら、何か試されている気がして、ゲーム感覚で絶対にクリアしてやろうと思った ーしかなくても、合格点を取れなければ恥ずかしい、という感覚を持ってしまいます。 ものです。満点とま、 中学レベルの定期テストなんて、ほとんどあらかじめ答えが示されているようなものです。しかし自分 小中学生に にはできないと決めつけてしまった子供には、解けなくても恥じらいの感覚はないらしい は、答えまで明示されて試されているのだから解けないと恥ずかしい、という感覚を持たせたいですね。 話がそれましたが、ここに至ってやはり予備校も本当によい教育を実現していないのではないか、と 思一つよ一つになりました。 ワ 1 4

6. 本当によい教育を実現するための覚書

第 4 部予備校の問題点 43

7. 本当によい教育を実現するための覚書

本当によい教育を実現するための覚書目次 本当によい教育を実現するための覚書 目次 はじめに 第 1 部教育との関わりについて 第 2 部学童保育の問題点 第 3 部個別指導塾の問題点 第 4 部予備校の問題点 2 8 2 8 8

8. 本当によい教育を実現するための覚書

第 6 部教育現場のあるべき姿 0 第 6 部教育現場のあるべき姿 ここまで自分の体験なども踏まえながら、また色々な先人の著書を参照しながら学童保育、個別指導 塾、予備校、公教育について考えてきました。いったい理想的な教育とはどこにあるのでしようか。 お金を払って何かを習いに行くというのは、専門的な知識やスキルを身につけるためだと思います。 それは例えばスポーツ少年団や、茶道・花道など、ピアノやバイオリンなどの楽器関係全般、ダンスや ボーカルレッスン、合唱団、芸能関係の養成所などです。そういうものにお金を払うのは、幾分か価値 があるでしよう。たとえそれが自己満足で、夢を見るためだけの甘いものだったとしても ( ここでは僕 がお笑い養成所に鬨万円払って 1 年間通ったことが想定されています ) 、やはりその存在自体に価値は あると思います。そして学習塾という業種でも、英会話スクールだとか、主にや鉄緑会に代 表されるハイレベルな環境、東進などに代表される難関大学を目指すための予備校などにはもちろんお 金を払う価値があります ( あくまでも環境に対してです ) 。しかし、親の教育放棄と怠慢を助長し、子 供に無為な時間を過ごさせ、ただのお金儲けのためでしかない個別指導塾というものには、社会的な価 値が感じられません。 ■高校教科書レベルの内容を修めればかなりの教養人である 僕は少なくとも、高校で習うレベルの知識は常識だと思っています。もちろん僕だって知らないこと や苦手な教科は山ほどあるし ( そもそも英語が苦手、社会は中学生レベルも危うい ) 、かなり背伸びを してこんなことを言っていますが、そういう心構えでいたいという意味です。斎藤孝先生も、高校レベ

9. 本当によい教育を実現するための覚書

本当によい教育を実現するための覚書はじめに ては全くの未経験。大学時代に教育実習と、少しの家庭教師をやったことがある程度です。 「教育」とはいっても、もう一度教員採用試験にチャレンジするということではありません。公教育 は違うと思ったからです。昨今、学校教員の職場環境の悪さが叫ばれています。モンスターベアレント の問題、長時間労働、学級崩壊、いじめ問題、心を病んでうつになる、人手不足が常態化している、部 活という名の休日出勤な、それはさながらプラ〉ク企業のように言われています。すでに覆われてし まったある種の空気に対して、まさにその空気の中に入って抗うことは相当に難しい。これは責任感と か根性とか、子供が好きという気持ちだけでどうにかなるレベルを超えています。現役の先生方には最 大限の敬意を払いますが、僕にはできそうにありません。 そうなると次に思いつくのは学習塾です。学習塾にも東進衛星予備校に代表されるような難関大学合 格を目指すための予備校、難関中学・高校の合格者数を競う、鉄緑会などの進学塾、学校の 授業についていくことをサポートするための個別指導塾など様々あります。自分は地方出身のため、残 念ながら中学受験を経験していないし ( 中学校、ましてや小学校に受験がある世界を知らなかった ) 、 難関大学を目指す生徒を指導するだけの学力もありません ( 学歴も自信もありません ) 。申し訳程度に、 小学校・中学校教諭免許を持っているだけです。ここでもやはり消去法の結果、またそのハードルの低 さから、チャレンジしたのがとある個別指導塾でした。これが歳の時です。 これは学生がするアルバイトとしても定番であるくらいに手軽に始められ、時給も悪くないという、 好条件が揃っている仕事でした。そこから 2 年が経過し、貴重な経験を積ませてもらっていると同時に、 ある種の限界を感じています。青天の霹靂で時給が下がるという憂き目にも遭いました ( 詳細は省きま すが & 的な何かです ) 。しかし本質はそこではありません。一言で言うと、本当によい教育が行わ れていないと感じています。規模の大きな塾は大抵、全国展開をしています。そうなれば教室運営も指 、 6

10. 本当によい教育を実現するための覚書

参考文献一覧 ☆中室牧子「「学力」の経済学」 中森明夫「寂しさの力」 西角けい子「すべての成績は、国語力で 9 割決まる ! 」 西林克彦「わかったつもり読解力がっかない本当の原因」 二村ヒトシ「すべてはモテるためである」 橋本武「橋本式国語勉強法」 橋本武「伝説の灘高国語教師の「学問のすすめ」」 花房孟胤「予備校なんてぶつ潰そうぜ。」 羽生善治「決断力」 濱野智史「アーキテクチャの生態系【情報環境はいかに設計されてきたか」 濱野智史「前田敦子はキリストを超えた】〈宗教〉としての絽」 林修「いつやるか ? 今でしょ ! 」 林修「受験必要論人生の基礎は受験で作り得る」 林修「林修の仕事原論」 林修「林修の「今読みたい」日本文学講座」 林修・小池百合子「異端のススメ」 林尚弘「予備校に行っている人は読まないでください」 ピエール・バイヤール「読んでいない本について堂々と語る方法」 姫野たま「潜行地下アイドルの人に言えない生活」 ーバードに現役合格」 廣津留真理「世界に通用する一流の育て方地方公立から〈塾なしで〉 pha 「ニートの歩き方一お金がなくても楽しく暮らすためのインターネット活用法」 pha 「しないことリスト」 pha 「持たない幸福論働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない」 藤原正彦「祖国とは国語」 ☆藤原正彦「国家の品格」 藤原正彦「決定版この国のけじめ」 藤原正彦「古風堂々数学者」 古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち」 古市憲寿「生き方は「自分」で決める」 ( 「僕たちの前途」改題 ) 古市憲寿「だから日本はズレている」 古市憲寿「保育園義務教育化」 古市憲寿・加藤嘉一「頼れない国でどう生きようか」 部屋を考える会「部屋を活かせば頭が良くなる」 118