本当によい教育を実現するための覚書目次 本当によい教育を実現するための覚書 目次 はじめに 第 1 部教育との関わりについて 第 2 部学童保育の問題点 第 3 部個別指導塾の問題点 第 4 部予備校の問題点 2 8 2 8 8
本当によい教育を実現するための覚書はじめに 導方針も一括管理になり、きめ細やかな対応は難しくなります。ある時点でどうしても売上至上主義に 舵を切らざるを得ず、マニュアルが優先されるようになります。これは構造的に避けられないのでしょ う。そして中学校の目の前の定期テストで良い点数を取ること、具体的には教科書に沿った問題集をや らせているだけで手一杯になっています ( しかも全く効果が上がっていないという大問題があります ) 。 ここに来て、手詰まりになってしまいました。本当によい教育はどこにあるのだろう。そんなことを ずっと考えながら、この個別指導塾での 2 年間の経験一未だ継続中です ) に加えて、教育に関する本を 読み漁ったり、評論家・思想家の言葉に耳を傾けたり、意識の低い学習環境 ( 職場 ) に嫌気がさして成 績上位者 ( 富裕層 ) 向けの塾講師の求人に応募してあっさりと不採用になるなどの経験をする中で、ひ とつの結論に達しました。それは、自分にとって完全に理想的な教育を実現するには、自分自身でそれ を実現するための場所を作るしかないということです。 それは従来型の集団指導の塾や、個別指導塾ではありません。一言で言うとサロン的・コミュニティ 的・寺子屋的なイメージでしようか。それが具体的にどのようなものなのかということは、本書の中で 説明していきたいと思います。本書は、僕が実際の経験の中で感じた現行の教育現場の問題点と、そう 考えるに至った経緯、そして本当に良い教育が行われる場所とはどのようなものかという考えを形にし たものです。 ちろう
本当によい教育を 実現するための ちろう チロウショウジ
チロウショウジ 本当によい教育を 実現するための 宀宝 「「天は人の上に人を造らす、人の下に人を造らす」と言われていますが、 実際には貴賤の別がありますよね。 この人間の貴賤の別は、学ぶか学ばないかによってできるのですよ」 福沢論吉「学問のす、め」 ( 訳・齋藤孝 ) 1
本当によい教育を実現するための覚書目次 参考文献 第 5 部公教育の問題点 第 6 部教育現場のあるべき姿 第 7 部私塾を作りたいーメンターの紹介ー 第 8 部やりたいこと さい′」に 本当のさいごに 【補論】アイドルについて 編集後記 / 著者紹介 / 奥付 102 122 4 4 0 2 4 9 114
本当によい教育を実現するための覚書 0 さいごに 個人史から始まり、自分が考える教育について長々と書いてきてしまいました。ここまでお付き合い いただいてありがとうございます。ここまでを一言でまとめると、やはり「新しい教育の場所を作りた い」ということです。それは既存の公教育でもなければ、予備校や個別・集団学習塾でもない。そうい とにかく自分で作らなければな うところで働くというのではない。それは、誰の指示も受けたくない、 らないというわがままなのかもしれません。でも実際に自分で個人塾を立ち上げて、自分の理想の教育 を信念を持って実践している人が現実にたくさんいる。そういう人たちを見習って、いろいろなものを 参考にしながら、なんとか実現できないかと、考えてきたことを全て書き表したつもりです。 今回、公教育についてもいろいろ考えました。義務教育とはなんなのか。小学校、中学校には果たし て行かなければならないのか。あるいはどのように付き合っていけば良いのか。本書の中でも、労働環 境としての劣悪さ、教育現場としての悪い面などをたくさん書いてしまいました。『バカをつくる学校』 などはまさに学校を諸悪の根源のように書いています。しかし、学校Ⅱ悪だと断罪するだけでは、事態 は前に進みません。 世にある学校が人間をダメにする場所なのだとするならば、学校に通わせないで家庭教育に切り替え る、というのが正解になるでしよう。日本ではあまり一般的ではありませんが、海外では珍しくないよ うです。しかしそれらもまた極端すぎる発想です。実際、公教育の学習指導要領に沿った授業は、まん 、し、将来にわたってかけがえのない友人に出 べんなくいろんなジャンルの情報に触れるのに都合がいし 会えることもあるでしよう。人生の師と出会えるかもしれません。そして何より、勉強だけでなく集団 4 9
第 4 部予備校の問題点 これがいかに軽視されているかということ日々痛感しており、改めて深く考えるきっかけになりました。 まさに、予備校に行く前にやるべきことがあるだろう、ということです。 個人的にすごくいいなと思った文章があったので引用します。 「あらかじめ出題される問題が分かっている「漢字テスト」があったとします。個の漢字を指定され、 一定の時間内で個を覚え、テストをする。この漢字テストで満点が取れるか、取れないかでその生徒 の人生は左右されると僕は考えています。なぜなら、ここで点が取れない生徒は、なにかを「身 につける」方法が備わっていないことが確実だからです。」 これにはものすごく共感します。今目の前にある ( 簡単な ) 問題をキッチリこなすことができなけれ ば、もうそれはやる気がないと宣言しているものですから、その後は推して知るべしです。僕はこのタ イプの問題を出されたら、何か試されている気がして、ゲーム感覚で絶対にクリアしてやろうと思った ーしかなくても、合格点を取れなければ恥ずかしい、という感覚を持ってしまいます。 ものです。満点とま、 中学レベルの定期テストなんて、ほとんどあらかじめ答えが示されているようなものです。しかし自分 小中学生に にはできないと決めつけてしまった子供には、解けなくても恥じらいの感覚はないらしい は、答えまで明示されて試されているのだから解けないと恥ずかしい、という感覚を持たせたいですね。 話がそれましたが、ここに至ってやはり予備校も本当によい教育を実現していないのではないか、と 思一つよ一つになりました。 ワ 1 4
第 6 部教育現場のあるべき姿 せん。 私は冷ややかにその子の顔をながめ、「この教室は質問禁止なんだ。わからない問題はやるな」と言 って O 君を追い払いました。勇気を振り絞って質問を持ってきた U 君は予想外の展開に驚きましたが、 私のとりつく島もない応対にすごすごと引き下がり、席に着いてその問題を解きはじめました。背中が 寂しそうでしたが放置しました。 これも痛快ですよね。 このような宮本哲也氏の振る舞い方、考え方はとても良いと思いました。しかし氏が主宰する宮本算 数教室ではレベルの高い内容の授業を展開し、実際に難関中学への合格実績を出している。これは僕に 真似できるものではありません。しかし宮本氏は言います。「学習は強い人間として成長するために必要 なもので、中学入試での合格など行きがけの駄賃にすぎない」と。これはまったくもって正しいと思い ます。どこかに合格することが目標なら、それは見ているものがあまりにも浅いと思う。本当の目的が 見えていない。ましてや目の前の定期テストの結果に一喜一憂するとか、鼻で笑うレベルです。 そしてまたここから得られる教訓がありました。それは、自分が主催すれば自分の理想的な環境は作 れるし、宮本氏のように自信を持って教育に携われるのだということです。そしてそれは、自分ひとり でやりくりするような規模でも十分実現可能なんだということです。 一 0
本当によい教育を実現するための覚書さいこ 持しつつ、徹底的に「楽しい」ことにこだわっていきたい。映像だとかゲームだとかパズルだとか、イ べントなんかを重視していきたいというのはそういうことです。趣味と言えるものを見つけられたら、 なおよいです。 ■村上春樹の提言 村上春樹という作家がいます。春樹といえば、現在存命で、世界で最も有名な日本人作家ということ ができるでしよう。今年こそノーベル文学賞を取るのかと話題になるのは、秋の風物詩のようになって います。そのあまりの存在感、ポピュラーぶりに、僕はつい 2 年ほど前までどちらかというと避けてい る存在でした。かって一度だけ読んだ小説 ( アフターダークでした ) が肌に合わなかったという理由も あります。アンチ春樹だったと言っても過言ではないでしよう。しかしある程度年齢を重ね、様々な人 生の紆余曲折も経て読んでみると、驚くほど感銘を受けるものばかりでした。まさにコペルニクス的転四 回です。人生には何回かの転向というものがあるのでしよう。村上氏の、自分の確固たるスタイルを持 っているところ、そしてプレない自信、驕らないところなど本当に推せます。春樹は小説だけでなく、 ェッセイも珠玉の文章が多いのですが、その中で『職業としての小説家』というェッセイ集は、本当に 素晴らしいものでした。 小説家、あるいは文筆家というものは、物事の本質を見出し、抽象化し、文章化するのが仕事なので しよう。本書の中で「学校について、という章があります。自分の思想について、創作について、そし てこれからの日本社会について語るときにおいて、春樹もまた学校 ( Ⅱ教育 ) について語らずにはいら れなかったようです。
第 8 部やりたいこと ■しま必要なもの 以上が僕が考えていることです。考えているだけでは世の中は何も変わらなくて、僕自身も変わるこ とができなくて、実践することだけが問われています。そのために今最も必要なものがこれを実践する ための「場所」です。家賃ということであれば「お金」と言うこともできるのかもしれませんが、それ は本質的なことではありません。幾ばくかのお金が必要なのはまあ言うまでもないことなのですが、と にかくこの計画を実現するための「場所」が必要です。逆に一一 = 〔えば、「場所」さえ確保されれば、明日 にでも始められるようなことなのです。 本書を書く上で一番の目的がここにあります。つまり、この場所を確保するための知恵を、皆様に貸 していただけないでしようか。それなりに大きなモニターと、十数人が見られるようなスペース、本棚 を十分に置けるスペース、あとは多目的な部屋がいくつか、そして最低限、僕自身が住むことができる 部屋がある場所。実は僕は以前から一軒家を想定していました。かっての松下村塾や、江戸時代の寺子 屋がそうであったように。 これを格安で ( もしくは破格で ) 借りることができないだろうか。あるいは現在使われていない、空 家となってしまっている一軒家はないだろうか。もちろんそれなりのスペースであれば、一軒家でなく てもいいのです。場所は ( 個人的な事情から ) 池袋近辺を想定していますが、あるいは山手線の新宿 上野間で。 もしこれを読んで少しでも共感していただけたら、仲間になって欲しいのです。そのための場所の提 供、出資、あるいは情報の提供・拡散だけでも構いません。あなたの助けが必要です。どうか、よろし くお願いします。何かありましたら、ぜひ連絡を下さい 2 9