失 - みる会図書館


検索対象: 涼宮ハルヒの消失
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1. 涼宮ハルヒの消失

そうすべきだったのだ。そうさせてやるべきだったのだ。責任は俺にもある。ついつい長門任 せにする癖のついていた俺の依存心。長門なら何とでもしてくれるだろうと考えて、そこで思 おろやろう ののし 考停止していた愚か野郎。俺はハルヒ以上に性質の悪い。ハカた。誰を罵る権利もない。 おかげで長門は こいつは世界を変えちまおうとするくらいにおかしくなっちまいやがっ 。、・。こと 2 ・エラーたフ・ うるせえ。そんなもんじゃねえ。 ふつう これは長門の望みだ。こういう普通の世界を、長門は望んだのだ。 きおく 俺の記憶だけを残して、それ以外を、自分を含めたすべてを変えてしまったのだ。 数日間俺を悩ませていた、この疑問の答えだって今なら自明だ。 失 消 の ヒ なんでまた俺だけを元のままにしておいたのか ? 宮 せんたく ゆだ 涼答えは単純、こいつは俺に選択権を委ねたんだ。 変えた世界がいいか、元の世界がいいか。俺に選べというシナリオだ。 「ちくしようめ」 いそん たち

2. 涼宮ハルヒの消失

わか るのは解ります。でなけりや俺は来られなかった。じゃあ朝比奈さん : : : あなたの未来とさっ きの改変された時間は繋がっていないんじゃないですか ? 」 「詳しいことは話せません」 だと思った。禁則事項だからでしよう。 朝比奈さん ( 大 ) は頭を振った。 りつきやく とくしゆがいねん 「解るように説明できないからよ。わたしたちの理論は特殊な概念上の方法論に立脚し ています。それを解るように伝えるのは言葉では無理なんです。初めてわたしが正体を告白し たときのことを覚えてるフ ぎようてん 川沿いの桜並木で、可愛い上級生でしかないと思っていた朝比奈さんの仰天未来人発言を俺 失は聞いた。 の 「あの時のわたしは全然要領を得ないことを言っていたでしょ ? あんな感じにしかならない ヒ レ の。混乱させるだけになるわ」 涼 こんこんと側頭部をノックのようにつつきながら、朝比奈さん ( 大 ) は片目を閉じた。そん 5 な何て事ない動作の一つ一つが色つ。ほい。 「一一一〔葉を用いない概念は言葉以外のものでしか伝えられません。わかる ? 」 くわ

3. 涼宮ハルヒの消失

なぜ ? さっき別れたばかりなのに。 追いかけてきた : : : んじゃないですよね。 あれ、もう一人のあたしはフ どれでもなかった。 「こんばんは、キョンくん」 つや きおく 記憶にある通り、美しい顔をした彼女は、艶やかな微笑みで俺を迎えてくれた。 「あなたとはお久しぶりですね」 ぶさた 大人版朝比奈さんはそう言って片目を閉じた。五ヶ月ちょいのご無沙汰だ、この笑顔を見る のも。 朝比奈さん ( 大 ) は安心しきった子供のような表情で、 失「でも、よかった。ちゃんとここで会えて。ちょっぴり不安たったんですよー。わたしがうつ ヒかりミスをしてないとも限りませんから」 こしくだ かわい 今でもポカが多くて、と朝比奈さんは可愛らしく舌を出した。腰が砕けそうになるくらい魅 宮りよく 涼力的な仕草だったが、ここでヘナチョコになってしまっては元も子もない。 この朝比奈さんは知っている。これから俺がどうすべきかを。 せいぎよ 俺はもつれそうになる舌をどうにか制御して、 ほほえ むか

4. 涼宮ハルヒの消失

の事態を打開する方法も見つかる。で、ジョンってのは俺のことか。 おう 「キョンだっけ ? それよりマシじゃない。ジョンのほうがよっ。ほど人の名前をしてるわ。欧 米ではありふれた名前よ。誰がつけたの ? キョンなんていうダサダサなニックネーム。あん た、よっ。ほどバカにされてるのね」 しんせき 命名者は親戚のおばちゃんで広めたのは妹だが、それでも ( ルヒの罵倒が心地よく聞こえる のはなぜだろう。そんなに久しぶりというわけでもないのに。 「じゃ、行きましよ」 きんせいかばん ほとんど口を付けていないダージリンティーを惜しみもせず、 ( ルヒは光陽園学院謹製の鞄 を手にした。 一応、尋ねてみた。 失「これから ? どこに」 ごうぜん の すっくとハルヒは立ち上がり、傲然と俺を見下ろしながら叫んだ。 「北高に決まってるでしょ ! 」 きっさ 宮 涼 宣言するが早いか ( ルヒは喫茶店を競歩しながらスキップするみたいな足取りで出て行った。 自動ドアが開くのも待ちきれないといった勢いだった。 実にあいつらしい振る舞いで、俺はそこはかとなく安心する。

5. 涼宮ハルヒの消失

しいそ。けっこうヤ、、ハイんじゃないか」 たた 何とでも言ってくれ。この時ばかりはまったく気にならない。贈まれ口を叩く谷口より、深 やっ 刻そうにうなずく国木田より、もっと腹立たしい奴がいる。 ードラックだ。俺の席の近くに東中の奴がいたなら、一昨日の昼休みに なんて信じがたいハ 谷口が教室にいさえすれば、俺はもっと簡単にハルヒの名を耳にできただろう。誰かが仕込み でもしているのか。出てこい、そいつ。一発殴らせろ。しかしそれもまた後回しでかまわない。 聞くべきことは聞き終えたのだ。なら、次は行動するだけた。 「どこ行くの ? キョン ? トイレかい」 国木田の言葉に振り向きながら、それでいて小走りでドアを目指しながら、俺は答えた。 「早退する」 失 一刻も早く。 消 の 「鞄も持たずに ? じゃま 邪魔だ。 涼「国木田、岡部に訊かれたら俺はベストと赤痢と腸チフスを併発して死にそうだったと伝えて おいてくれ。それから、谷口」 口を開けて俺の行動を見送っていた愛すべきクラスメイトに、俺は心からの感謝を捧げた。 せきり ささ

6. 涼宮ハルヒの消失

それが一段落ついてから、変な感じのする笑みを見せて、 おとと 「キョンよ、サッカーやってるときに国木田から聞いたんだが、お前、一昨日何やら騒いでた んだってな」 一昨日ならお前もいただろう。 「昼休みは保健室で寝てたさ。午後もダルくてポーっとしてたしよ。今日初めて聞いたぜ。朝 はんきようらん 倉がいるとかいないとか言って半狂乱だったんだって ? 」 「まあな」 俺は手をヒラつかせた。とっとと立ち去れという合図だったのだが、谷口はニャケ面のままで、 わめ 「その昜こ 士冫いたかったぜ。お前が喚いたり暴れたりするとこなんそ、そんなしよっちゅう見れ るとは思えねえからな」 失国木田も思い出し顔で、 の 「キョンももう気は確かになったみたいだね。朝倉さんにはつつけんどんだけどさ。彼女と何 ( かあったのかな ? 」 涼説明しても頭が爽やかな人扱いされるだけだろう。だから言わない。筋道が通っているじゃ 、、 0 7 子 / . し、刀 「そういえば、誰かの代わりに朝倉さんがいるのがおかしいっていう話だったよね。その人見 あっか づら さわ

7. 涼宮ハルヒの消失

「あなたがカードを作ってくれた」 俺は精神的電撃に打たれて動きを止めた。 たな : そうだ。そうでもしないとお前は棚の前から動こうとしなかったからな。ハルヒからの もど めいわく 呼び出しが迷惑電話のようにかかってきていたし、急いで集合地点に戻るためにはそうするし よ、つこ しかし、続く長門の説明は俺の記憶にあるシチュエーションとは異なっていた。この長門の 小さなポッポッ亠尸によると 五月半ば頃に初めて市立図書館に足を踏み入れた長門だが、貸し出しカードの作り方がよく いそが 解らなかった。職員に一声かければ済むものの、少ない職員たちは誰もが忙しそうにしている。 失また、引っ込み思案でロべたな自分にはその勇気がなかった。そうして、いたずらにカウンタ 消 の ーの前をうろうろしているところを、見るに見かねたのだろう、通りすがりの男子高校生がす ヒ レ べての手続きを買って出て、代わりに全部やってくれた。 涼それが、 「あなただった」 長門の顔が俺の方を向き、半秒ほど視線を合わせてからまたコタッの上に落とされた。 ′」ろ 0 0 ふ

8. 涼宮ハルヒの消失

も相変わらすだ。 そして客間はあった。襖で仕切られた部屋がそれのはずだ。 「この部屋、見せてもらっていいか ? 」 きゅ、つす まばた 急須と湯飲みを持ってキッチンから出てきた長門に訊いてみた。長門はゆっくり瞬きしてい 「どうそ」 「ちょっと失礼する」 車輪でも付いているかのように襖は滑らかに開いた。 たたみ 畳しかなかった。 失まあ、そうだろ。そう何度も過去に行ったりしないよな : 消 の俺は襖を元通りに閉めて、こちらを見守っていた長門に両手を開いて見せた。さそかし意味 ていねい のない行動に見えただろう。しかし長門は何も一言わず、コタッ机に湯飲みを二つ置くと丁寧に 涼正座してお茶をつぎ始めた。 あぐら その正面に俺は胡座をかいて座る。最初に来たときもこうだった。長門の入れるお茶を何棒 も無意味に飲んでいて、それからあの宇宙的一人語りを聞いたのだ。あれはやたら暑い新緑の ふすま なめ

9. 涼宮ハルヒの消失

「来る ? 」 長門は俺の爪先を見ている。 「どこにつ・・と俺。 俺の爪先が返事を聞いた。 「わたしの家」 ちんもく 一一分休符ほど沈黙してから俺は言った。 : しいのか ? 」 おくびよう いったいどうしたことだろう。照れ屋なのか臆病なのか積極的なのか全然解らん。この長門 いっかん の精神状態はまるで一貫していない。それともこの時期の平均的な高校女子一年のメンタリテ イはクジラ座星の変光周期並みに不規則なのか ? 失「いし とびら ろうか 消 の長門は俺の視線から逃げるように歩き出した。部室の電気を消し、扉を開いて廊下に姿を消 レ す。 んじよう 涼そしてもちろん、俺も後を追った。長門の部屋。高級分譲マンションの 708 号室。客間を 覗かせてもらうことにしよう。新たなヒントが見つかるかもしれない。 たた もし、そこで別の俺が寝ていたら、ただちに叩き起こしてやる。 のぞ きゅうふ つまさき ね

10. 涼宮ハルヒの消失

煮こごりに閉じこめられたような十二月十八日が終わり、次の一日が始まった。 十二月十九日。 今日から短縮授業に入ゑ本来ならもっと早くに短縮されるはすだったのだが、この前の全 国模試で市立のライバル校に総合成績を追い抜かれたことにムカっ腹を立てた校長が、学力向 むりやりへんこう 上というお題目を唱えて無理矢理変更してしまったのだ。その歴史は変化しなかったようだな。 もくろ はら 変わったのは俺の周辺、北高、 coOco 団の周りだけか。何者かの恣意的な目論みを振り払う 失ことができないまま登校すると、五組の欠席者数はさらに増えていた。谷口もとうとう四十度 消 のが出たかのか、姿がない。 そして俺の後ろの席には今日もハルヒではなく朝倉がいて、 涼「おはよう。今日は目が覚めてる ? だといいんだけど」 「まあな」 かばん 仏頂面で俺は自分の机に鞄を置いた。朝倉は頬杖しながら、 第ニ章 ぬ ほおづえ