八、参考文献 本冊子はあくまでも入り口です。以下の本を実際に手にとって作ってみて下さい。 ・太刀掛呂山『誰にもできる漢詩の作り方』 スタンダードな本。たぶん一番使い良い。要電話。 ・釈清潭・林古溪『作詩関門』明治書院 入手しやすい。ただしちょっと高い。 ・新田大作『作法叢書漢詩の作り方』明治書院 入手しやすい。比較的安価。詩語集は『作詩関門』とほほ同じ。 ・滝川昇『詩韻活法』 ネットで入手できる ( 早稲田大学古典籍データベース ) 。明治のものだが、当時の エネルギーが反映されているので読めるならおすすめ。 ・石川忠久『漢詩鑑賞事典』 ( 講談社学術文庫 ) 漢詩の歴史を大づかみすることができる。これと岩波文庫その他から出ている本を 読み比べながら好みを探っていくとよいと思います。 書店の漢詩のコーナーは、大きな書店に小さくある程度です。古書店をめぐることをお すすめします。 中上級になると『詩韻含英』や『韻府一隅』ひいては『佩文韻府气それに典故を集め た『円機活法』といった書物が必要になってきます。いっか覗いてみてください。 以上
漢詩の作り方 一、基本ルル 二、平仄式一覧 三、旬の作り方 四、対旬の作り方 五、作詩のコッ 六、詩想について 七、訓読について 八、参考文献 ※この冊子は、漢詩を作ってみたい人向けの概説です。 ※本冊子は本書に挙げた参考文献ほか拙作『南望楼詩話』 ( 第一回文学フリマ京都にて頒布 ) に挙げた諸書等より得た知識をもとに作成したものです。 ※国語便覧程度の知識がある人を対象とします。 ( 具体的には、「返り点・一一一点」「五言・七言」「絶旬・律詩」と聞いてなんとなく分かる方 向けです ) 以上ご了承下さい。
六、詩想について 漢詩を作るときは詩想に基本的な方向性があります。風雅と離俗がキーワードです。 風雅とは『詩経』の国風と大雅・小雅のことで、その流れに則っていることを指します。 逆にそこから外れているものを「俗」と言って嫌います。どれだけまとまっていても、俗な ものはよい詩ではありません。 たとえば、アイドルが歌っているところを描写するとして、それだけだと現代社会を描く だけになってしまうので俗です。しかしアイドルの歌に古代の歌舞の雰囲気を重ね合わせれ ば、風雅に詠むことができるかもしれません。 この点を身に付けるには、古典を数多く読むしかありません。といっても突然それをする のは無理なので、ざっと世界観を掴んでいくのがよいと思います。ここで尽くすことは到底 できませんが、「天地の間に人がいます。古代の尭舜の時代に理想の治世がありました。そ の後いろいろあって今に至ります . ということだけ念頭に置いておくとよいと思います。 世界観を掴むには、角川文庫のビギナーズクラシックスのシリーズや、小川環樹・木田章 義『千字文』 ( 岩波文庫 ) あたりが良いのではないかと思います。逆にいきなり四書五経に 取り組むのはお勧めしません。難しくてわけが分かりませんし、ヘンな解釈にハマってしま ったりします。 もしその気があれば、風雅については祇園南海『詩訣』『詩学逢源』を、また一般的な心 得については広瀬淡窓『淡窓詩話』などを読んでみてください。いずれもインターネットで 読むことができます。
しこついて 七、訓読ー 訓読は総合的に行います。実は決まった型はありません。 送元一一使安西元一一の安西に使いするを送る 渭城朝雨滬軽塵渭城の朝雨軽塵をす 客舎青青柳色新客舎青青柳色新たなり 勧君更尽一杯酒君に勧む更に尽くせ一杯の酒 西出陽関無故人西のかた陽関を出れば故人無からん 次のように読んでも構わないわけです。 渭城朝雨混軽塵渭城の朝の雨は軽塵を滬し 客舎青青柳色新客舎は青青として柳の色は新たなり 勧君更尽一杯酒君に更に一杯の酒を尽くすことを勧む 西出陽関無故人西の陽関を出れば故人無からん どちらがより盛り上がるかは明らかだと思います。 「君に勧む更に尽くせ一杯の酒ー 「君に更に一杯の酒を尽くすことを勧む」 読み上げたときなるほどと思わせるような訓み方をしてあげて下さい。 説明はこれでおしまいです。参考文献を載せておきます。