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検索対象: 漢詩の作り方
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1. 漢詩の作り方

しこついて 七、訓読ー 訓読は総合的に行います。実は決まった型はありません。 送元一一使安西元一一の安西に使いするを送る 渭城朝雨滬軽塵渭城の朝雨軽塵をす 客舎青青柳色新客舎青青柳色新たなり 勧君更尽一杯酒君に勧む更に尽くせ一杯の酒 西出陽関無故人西のかた陽関を出れば故人無からん 次のように読んでも構わないわけです。 渭城朝雨混軽塵渭城の朝の雨は軽塵を滬し 客舎青青柳色新客舎は青青として柳の色は新たなり 勧君更尽一杯酒君に更に一杯の酒を尽くすことを勧む 西出陽関無故人西の陽関を出れば故人無からん どちらがより盛り上がるかは明らかだと思います。 「君に勧む更に尽くせ一杯の酒ー 「君に更に一杯の酒を尽くすことを勧む」 読み上げたときなるほどと思わせるような訓み方をしてあげて下さい。 説明はこれでおしまいです。参考文献を載せておきます。

2. 漢詩の作り方

一、基本ルール 漢詩にはいくつかの基本ルールがあります。例を取って説明します。 送元一一使安西元一一の安西に使いするを送る 渭城朝雨溷軽塵渭城の朝雨軽塵を溷す 客舎青青柳色新客舎青青柳色新たなり 勧君更尽一杯酒君に勧む更に尽くせ一杯の酒 西出陽関無故人西のかた陽関を出れば故人無からん ①漢字一文字ずつに唐代の発音があり、平 ( まっすぐ ) か仄 ( 変化 ) かに分けられます。 ②旬末には平声種類から一種類を選んで押韻します。 ( 仄声も可ですがここでは略します ) ③意味は 2 + 2 + 3 文字で取ります。 つまり右の詩はこうなっています。 ( 平〇、仄・、韻◎ ) 渭城朝雨軽塵、客舎青青柳色新、勧君更尽一杯酒、西出陽関無故人 ・・〇〇・・◎、・〇〇・・〇・、〇・〇〇〇・◎ ・〇〇・・〇◎、 不思議と、なんとなく意味が取れたように感じると思います。今はそれで大丈夫です。 ④平仄の配置にはルールがあります。 246 文字目は・〇・か〇・〇の順 ( 二四不同、一一六対 ) 135 文字目は平仄どちらでも可 ( 一三五不論 ) どこでも三文字は・〇・の順番にしない ( 孤平の禁 ) 旬末三文字は〇〇〇にしない ( 平三連の禁 ) そこで平仄の配置は次の通りです。これに具体的な言葉をあてはめていきます。

3. 漢詩の作り方

五、作詩のコッ ・起承転結に気をつける 起 : 京の五条の糸屋の娘 承 : 姉は十六妹は十四 転 : 諸国大名は弓矢で殺す 結 : 糸屋の娘は眼で殺す 四コママンガと同じ呼吸です。笑わせなくてもよいですが。 ・虚字を上手く使う 「基本ルール」のところで挙げた詩を再掲します。 送元一一使安西元一一の安西に使いするを送る 渭城朝雨滬軽塵渭城の朝雨軽塵をす 客舎青青柳色新客舎青青柳色新たなり 勧君更尽一杯酒君に勧む更に尽くせ一杯の酒 西出陽関無故人西のかた陽関を出れば故人無からん 共言、誰道、誰識、相憐、俯臨など、数多くあります。これで詩の雰囲気が変わります。 ・あわてない 外国語ですから、いきなりマスターするのは不可能です。言葉はそのうち文脈で分かりま す。一首できるたびに浮かれるとよいです。少し時間をあけて推敲します。

4. 漢詩の作り方

四、対旬の作り方 律詩の頷聯・頸聯は必ず対旬を用います ( 他で用いても可です ) 。例を取って説明します。 春望杜甫 国破山河在国破れて山河在り 城春草木深城春にして草木深し 感時花濺涙時に感じては花にも涙を濺ぎ 恨別鳥驚心別れを恨んでは鳥にも心を驚かす 烽火連三月烽火三月に連なり 家書抵萬金家書萬金に抵る 白頭掻更短白頭掻かけば更に短く 渾欲不勝簪渾べて簪に勝えざらんと欲す 国破山河在感時花濺涙烽火連三月 城春草木深恨別鳥驚心家書抵萬金 左右で対応していますね。これが対旬です。 ※対旬を通じて話が流れるようなものがベストです ( 流水対 ) 。 ※対旬が入った詩語集を活用すると良いです。

5. 漢詩の作り方

一一 0 一七年五月七日初版発行・頒市於文学フリマ東京 作者田直 ( 稲江 ) twitter: 酔翁 (@kanbunyomi) 3i1 】 seiichi k@hotmail. com

6. 漢詩の作り方

八、参考文献 本冊子はあくまでも入り口です。以下の本を実際に手にとって作ってみて下さい。 ・太刀掛呂山『誰にもできる漢詩の作り方』 スタンダードな本。たぶん一番使い良い。要電話。 ・釈清潭・林古溪『作詩関門』明治書院 入手しやすい。ただしちょっと高い。 ・新田大作『作法叢書漢詩の作り方』明治書院 入手しやすい。比較的安価。詩語集は『作詩関門』とほほ同じ。 ・滝川昇『詩韻活法』 ネットで入手できる ( 早稲田大学古典籍データベース ) 。明治のものだが、当時の エネルギーが反映されているので読めるならおすすめ。 ・石川忠久『漢詩鑑賞事典』 ( 講談社学術文庫 ) 漢詩の歴史を大づかみすることができる。これと岩波文庫その他から出ている本を 読み比べながら好みを探っていくとよいと思います。 書店の漢詩のコーナーは、大きな書店に小さくある程度です。古書店をめぐることをお すすめします。 中上級になると『詩韻含英』や『韻府一隅』ひいては『佩文韻府气それに典故を集め た『円機活法』といった書物が必要になってきます。いっか覗いてみてください。 以上

7. 漢詩の作り方

六、詩想について 漢詩を作るときは詩想に基本的な方向性があります。風雅と離俗がキーワードです。 風雅とは『詩経』の国風と大雅・小雅のことで、その流れに則っていることを指します。 逆にそこから外れているものを「俗」と言って嫌います。どれだけまとまっていても、俗な ものはよい詩ではありません。 たとえば、アイドルが歌っているところを描写するとして、それだけだと現代社会を描く だけになってしまうので俗です。しかしアイドルの歌に古代の歌舞の雰囲気を重ね合わせれ ば、風雅に詠むことができるかもしれません。 この点を身に付けるには、古典を数多く読むしかありません。といっても突然それをする のは無理なので、ざっと世界観を掴んでいくのがよいと思います。ここで尽くすことは到底 できませんが、「天地の間に人がいます。古代の尭舜の時代に理想の治世がありました。そ の後いろいろあって今に至ります . ということだけ念頭に置いておくとよいと思います。 世界観を掴むには、角川文庫のビギナーズクラシックスのシリーズや、小川環樹・木田章 義『千字文』 ( 岩波文庫 ) あたりが良いのではないかと思います。逆にいきなり四書五経に 取り組むのはお勧めしません。難しくてわけが分かりませんし、ヘンな解釈にハマってしま ったりします。 もしその気があれば、風雅については祇園南海『詩訣』『詩学逢源』を、また一般的な心 得については広瀬淡窓『淡窓詩話』などを読んでみてください。いずれもインターネットで 読むことができます。

8. 漢詩の作り方

三、句の作り方 前ページの平仄式に沿って詩語を当てはめます。左は詩語集の例 ( 返り点・送りがなは印 刷の都合で抜いてあります ) 。傍点は仄です。 青東風暖煙陽和迎春軽寒融雪小池和風余寒晴日辞寒風 光春生詔景詔風雲晴留寒梅発椒柳梅梅花柳梢草芽柳 同梅梢迎歓酒卮臘映杯満盤遠詼携朋徐歩閑亭林亭詩 成拈美酒行杯幽興半酣対客照初暖深酔庭園木風變 悁大江凍滄渺東沁春風起東風軽風転風気通春通 雲通五雲中残雪中彩霞中万同故人同令節同旭印紅曙霞紅酔顔紅 楽無窮興不窮 具疑冬以初冬似厳冬不冬不覚冬如大冬宗 . 朝宗 . 第 一宗竟誰宗千万峰最上峰聳弧峰渡玉峰対青峰照半峰酒一鍾舞神 竜幵時容不見容斑煙重暉ル重重第少移第暗色濃著光濃 開盛變枡花傾橋葉逢人印丑平花未発迎色迎啼持聞黄 鳥逢佳節梅開高台上千門色東風起登楼興同遊興歓不新称寿 梅花春動舂猶東風變催黄鳥陽舂丗歌雪迎景堪試筆 たとえばこれでどうですか。 △・△〇△・◎ 風暖閑亭興不窮風は暖かく閑亭興窮まらず ※韻は一度選んだグループを最後まで使って下さい ( 一韻到底 ) 。 ※同じ文字は基本的に避けます。 これを最後まで繰り返すと漢詩になります。次に対旬の説明をします。

9. 漢詩の作り方

一一、平仄式一覧 ( 各上段仄起式、下段平起式 ) 七言絶旬平仄式 五言絶旬平仄式 起旬△・△〇△・◎△〇△・・〇◎起旬△・△〇 承旬△〇△・・〇◎△・△〇△・◎承旬△〇△・◎△・・〇◎ △・△〇〇 転旬△〇△・△〇 転旬△〇〇 △・△〇 合旬△・△〇△・◎△〇△・・〇◎合旬△・・〇◎△〇△・◎ 七言律詩平仄式 五 = = 「律詩平仄式 △〇〇 △・△〇△・◎△〇△・・〇◎ △・△〇 首聯 首聯 △〇△・・〇◎△・△〇△・◎ △〇△・◎△・・〇◎ △〇△・△〇 △・△〇〇 △〇〇 △・△〇 頷聯 頷聯 △・△〇△・◎△〇△・・〇◎ △・・〇◎△〇△・◎ △・△〇〇 △〇△・〇〇 △〇〇 △・△〇 頸聯 頸聯 △〇△・・〇◎△・△〇△・◎ △〇△・◎△・・〇◎ △〇△・△〇 △・△〇〇 △・△〇 △〇〇 尾聯 尾聯 △・△〇△・◎△〇△・・〇◎ △・・〇◎△〇△・◎ ※〇 : ・平、・ : ・仄、△平仄どちらでも可、◎・ : 押韻。 ※△〇△は・〇・としないように注意。 ※平起式転旬の下三字のみ・〇・も可。 ※いずれも起旬末の◎は・でも可。「踏み落とし」という。 ※律詩の頷聯・頸聯は必ず対旬とする。 ( 後述 ) △〇〇・・ っ ~

10. 漢詩の作り方

漢詩の作り方 一、基本ルル 二、平仄式一覧 三、旬の作り方 四、対旬の作り方 五、作詩のコッ 六、詩想について 七、訓読について 八、参考文献 ※この冊子は、漢詩を作ってみたい人向けの概説です。 ※本冊子は本書に挙げた参考文献ほか拙作『南望楼詩話』 ( 第一回文学フリマ京都にて頒布 ) に挙げた諸書等より得た知識をもとに作成したものです。 ※国語便覧程度の知識がある人を対象とします。 ( 具体的には、「返り点・一一一点」「五言・七言」「絶旬・律詩」と聞いてなんとなく分かる方 向けです ) 以上ご了承下さい。