五、作詩のコッ ・起承転結に気をつける 起 : 京の五条の糸屋の娘 承 : 姉は十六妹は十四 転 : 諸国大名は弓矢で殺す 結 : 糸屋の娘は眼で殺す 四コママンガと同じ呼吸です。笑わせなくてもよいですが。 ・虚字を上手く使う 「基本ルール」のところで挙げた詩を再掲します。 送元一一使安西元一一の安西に使いするを送る 渭城朝雨滬軽塵渭城の朝雨軽塵をす 客舎青青柳色新客舎青青柳色新たなり 勧君更尽一杯酒君に勧む更に尽くせ一杯の酒 西出陽関無故人西のかた陽関を出れば故人無からん 共言、誰道、誰識、相憐、俯臨など、数多くあります。これで詩の雰囲気が変わります。 ・あわてない 外国語ですから、いきなりマスターするのは不可能です。言葉はそのうち文脈で分かりま す。一首できるたびに浮かれるとよいです。少し時間をあけて推敲します。
六、詩想について 漢詩を作るときは詩想に基本的な方向性があります。風雅と離俗がキーワードです。 風雅とは『詩経』の国風と大雅・小雅のことで、その流れに則っていることを指します。 逆にそこから外れているものを「俗」と言って嫌います。どれだけまとまっていても、俗な ものはよい詩ではありません。 たとえば、アイドルが歌っているところを描写するとして、それだけだと現代社会を描く だけになってしまうので俗です。しかしアイドルの歌に古代の歌舞の雰囲気を重ね合わせれ ば、風雅に詠むことができるかもしれません。 この点を身に付けるには、古典を数多く読むしかありません。といっても突然それをする のは無理なので、ざっと世界観を掴んでいくのがよいと思います。ここで尽くすことは到底 できませんが、「天地の間に人がいます。古代の尭舜の時代に理想の治世がありました。そ の後いろいろあって今に至ります . ということだけ念頭に置いておくとよいと思います。 世界観を掴むには、角川文庫のビギナーズクラシックスのシリーズや、小川環樹・木田章 義『千字文』 ( 岩波文庫 ) あたりが良いのではないかと思います。逆にいきなり四書五経に 取り組むのはお勧めしません。難しくてわけが分かりませんし、ヘンな解釈にハマってしま ったりします。 もしその気があれば、風雅については祇園南海『詩訣』『詩学逢源』を、また一般的な心 得については広瀬淡窓『淡窓詩話』などを読んでみてください。いずれもインターネットで 読むことができます。