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検索対象: 知的生活習慣
54件見つかりました。

1. 知的生活習慣

担保にとられていた紙型をあさっていたら、『修辞的残像』があった。すぐ出す気に なった、という。 うれしかった。もう陽の目を見ることもあるまいと思っていた旧著を再刊してやろ うとい、つところがあろ、つとは、夢にも考えたことがない。 『修辞的残像』を出してもらえるなら、やはり垂水書房版で眠っている『近代読者 論』も、出していただけないか。おそるおそるそう一言うと、「いいですよ。両方、出 しましよう」と言ってくれた。ありがたカた 後になって、小尾さんが丸山眞男ら有力思想家ととくに親しかったと知って少しお どろいた。私はそれとは無縁というかむしろ反対の考えをもっていた知的風土にいた のである。本来なら小尾さんは、そんな人間の仕事に目をかけてはいけなかったので ある。 そんなことを知ってか知らずか、小尾さんは、私の仕事にやさしかった。その後、編 の 『エデイターシップ』『異本論』など、ざっと数えただけでも十五冊くらいの本がみす ず書房から出た。

2. 知的生活習慣

先日のそういう会で、クラウドについての話と、高血圧による疾患についてのレポ ートをきいて、みんなでワイワイガャガャやった。話がだんだん脱線して、日本海側 の地方が太平洋側に比。へて自殺者が多いのはなぜだろう。日照時間と関係があるかな 、レし・欧一」 いかについて勝手なことをしゃべっていた。熱帯地方には自殺者がすくなく 多いのも日照時間と関係しそうだ。こういうおしゃ。へりは体にも、いにも好影響を与え るらし、。 もメンバ ーのみんなが、うすうす、そう感じているようである。体調で欠席 するものがほとんどない。 大きな声でしゃべるのははしたないことのようにしつけられてきた。ことに女性は 声を大きくしないのがよいとされる。イギリスに、「こどもは見られるべし、聞かれ る。へからず」という判じ文みたいなことわざがある。人前では黙っていなさい、 う教訓である。やはり、おしゃ。へりはよくないとされているのである。しかし、それ はこどものこと。イギリス人は、クラブというものをこしらえて、話すたのしみをも っことに成功した。 われわれも、われわれなりにみおしゃ。へりクの健康文化をつくることは可能である。 リ 9 声を出す

3. 知的生活習慣

も知っていたが、こういう知的会話の会で食べながらおしゃ。へりするのは山海の珍味 にまさるかもしれない。ただ注意しないといけないのは、しゃべりながら食事をする ごえん と食べたものをのどにつまらせやすい。誤嚥はこわい 人の名前を出すと、ゴシップや、かげ口になりやすい。なる。へく人の名を出さない。 できるだけ、あった話ではなく、未来に向かった浮世ばなれたことを、みんなでつつ ゞ、まっさりよく、なる き合ってたのしむ。そうすると、めいめいの頭のはたらきカ そういう仮説のもとに心おきなく、何でも思ったことをしゃ。へる。おそらく、こんな に楽しいことはほかにあるま、 と思われる。 会の日をその都度決めるのは面倒だから、私は一計を案じた。 : 力さね会にする のである。一月一日は別格例外とし、二月二日、三月三日、四月四日と、数字の重な る日にきめると、忘れることもなく、ずっとさきまで日がきまって便利である。もう 十年くらい続いているが、こういう会はひとつに限るのは残念である。毎月の第三木 曜日を面会日にした人もあるから、第何曜会ならいくつでもできる。第三木曜の三木 会、第一土曜のクいちど会クもこしらえた。

4. 知的生活習慣

腹式呼吸で声を出さないと大声は出ないし、声の通りもわるい。はなれていると聞 こえないのである。多くの先生が胸式呼吸をしている。腹式にすべきだが、胸式呼吸 を腹式にかえるのは、ちょっとしたコツがいる。放っておくといつまでもノド先だけ の声しか出せない。大声を出していれば、腹式になることが多い。昔、声の仕事をす る芸人が、屋根にのば 0 て、寒風に向か 0 て大声を出してきたえたと言われたものだ が、そういう修業をした人はもちろん腹式呼吸、腹式発声になっていたはずで、マイ クのない時代、観客によく通る声を出すには腹式しかない。一般の人間はそんなこと も知らず、一生を終える。学校の先生も知らないで働き出して、思いがけない病気に 見舞われた、というわけである。 その代わり、発声を運動の一種と考えると、声を出すのはたいへん健康によいとい 、つことがわかる 声を出すのがいい運動になるということがは「きり認められていない。厚生省 ( 当 時 ) が、運動量をェクササイズで表示するようにしたのは進んだ考えだった。 戦後、政治的ニ、アンスを含むようになって、労働運動、 ' 運動クということばが、 リ 4

5. 知的生活習慣

風邪の効用 さんざん風邪に苦しめられてきて、新しい考えに達した。われわれはときどき風邪 をひかないといけない。風邪をびくことがより厄介な病気にかからない予防になる、 風邪で健康が守られているのだと思ったのである。 風邪など一度もびいたことがない、と威張っていたのが、かりそめの病気で、あっ という間に亡くなってしまうということがある。医者にかかったことがないのを自慢 にしていた友人が、四十代で亡くなった。たえず風邪や喘息に苦しめられている弱虫 のこちらが、いつまでたってもくたばらない。ひょっとすると風邪のおかげかもしれ ない。だとすれば、適当に風邪をびいた方が健康的だということになる。 風邪もひかず、クスリものまないという人は、たとえていうと、高速道路をクルマ で飛ばしているようなもの。プレーキなどかけることを忘れるかもしれない。それに 引きかえ、風邪ひきは信号の多い一般道を行くクルマに似ている。走ろうとしてもす 事 ぐ赤信号、走り出したと思うと、また信号、出したくてもスビードを出せないが、 166

6. 知的生活習慣

それからどれくらい経。たか、記憶は例によ。てあいまいだが、天野さんが創刊 誌「本」の編集長になった。彼女がやってきて連載を書いてくれと言う。はじめて のことで、うれしかった。 それが『知的創造のヒント』 ( 講談社現代新書 ) の一冊として出ることになって、天 野さんは、さきの十万部売ってみせるというせりふを思い出したのだろう。 「賭けをしませんか。この本が十万部以上売れたら私の勝ち、それ以下だったら先生 の勝ち。負けた方がご馳走するということにしましよう」 と言った。この『知的創造のヒント』は最終的には三十七万部くらい売れたようだが、 賭けの期日のときにすでに軽く十万をこえて、めでたく私の負けとなり、天野さんに ご馳走した。 その後五年くらいして出した『思考の整理学』 ( 筑摩書房 ) は『知的創造のヒント』 を書き改めたようなものだった。はじめはチョロチョロ売れていたのが発行後二十年 くらいして突如、売れだした。

7. 知的生活習慣

昔、イギリスの少年が、将来いちばんなりたいものはなにか、と訊かれて「ポース ト・マン」 ( 郵便配達 ) と答える、という話をきいて、たいへん親しみを覚えた。おそ らく、郵便を待つ人たちの間で育ったのであろう。イギリスは文句なく、世界一の郵 便好きの多い国である。 そのイギリスでの話。独立して両親とは別々に暮らしているびとり子がときどき両 親をたずねる。夕食をして帰る。帰った息子はその夜、寝る前に、両親にあてて、今 夜はご馳走さま、また近いうちにおじゃまします、といった礼状を書く。親の方も負 けてはいない、夫婦別々に息子あてに手紙を書く。よく来てくれました。たいへんた といったメールである。 のしかった : : また、なるべく早いうちにおいでください それをクうらやましいクと言って、ニューヨーク・タイムズに書いたアメリカ人女 性があった。私はそれを読んで、何ともいえない美しいものを感じた。 日本も昔は筆まめ、といって、よく手紙を書いたものだが、電話が普及してから筆 不精が多くなった。ものを貰った人が礼状を出さない。電話で相手を呼び出して、お ある。 210

8. 知的生活習慣

どん発散させてしまうのが健康的である。ここまでは考えなくてもわかっているが、 そのさきがわからない。 口に出してしゃ。へってしまいたいという気持ちを抑えれば、 生理的に有害になる。しかし抑圧の内圧をうまく利用すれば、新しいことを考え出す エネルギーに転用することができるのではないか。 感情をその場で発散させてしまうのではなく、胸の中へ押し込めておく。胸の中の 内圧が上がる。それをほかの目的を見つけて、発散する。大きな力を発揮できる。ち ようど、ガソリンを大気中で燃せば燃えるだけであるが、気筒の中で燃焼させれば工 ンジンを動かす馬力を出すのに似ている。よく、発憤するというのも、抑圧された感 情のあるのが普通だ。 そのように考えると、喜怒哀楽を派手に表に出すのは賢明ではないことになる。ガ ソリンをただ燃やすようなもので、大したことはない。。 くっと抑え、我慢すると、エ ネルギーが内燃化する。爆発的。ハワーを出すことができる そこまで考えて、枕もとの裏紙に、感情内燃化というメモを書きつける。 あとで起きて、小テーマのマスター ・ノートに大略を移した。 073 メモをつける

9. 知的生活習慣

ゆとりがない。 これはつい先年のことだが、ある研究者が新説を出した。声を出すのはたいへん工 ネルギーを要することで、教室で大声の授業をするのは軽いジョギングをするくらい 疲労するという説である。小学校の先生は毎日、四、五時間のジョギングをしている ことになる。強い人でなければ倒れてもおかしくない。 ことに戦前は栄養が悪かった から発病の危険は大きかったのである。 戦前の教員養成はいまに比べてはるかに充実していた。こまかいことまでいちいち 教えたが、 発声の訓練はまったくしなかった。諸外国でもしていなかったのだから、 それを模倣した日本の教員養成が、ク声クを無視したのは是非もない。現在において も、教員資格取得のための教職の単位に。発声訓練クはない。近代教育の不備のびと つである。 しゃべることは体によい 学校の先生で発声についてよく知っている人はすくない。 リ 3 声を出す

10. 知的生活習慣

礼を一言うのが、どんなに失礼であるか、知る人がすくない。礼状を書かないくらいだ から、ひとにものを贈るときに案内をしなくてはいけないことも知らない。デ なんかに頼んでク送りつけるのである。昔は、案内のない贈りものは受け取らない のが常識だった。どんな危険なものかわからないという用心もあった。 ときに得体の知れない荷物があったりして事件になる。きちんと、手紙を出してい れば、振り込め詐欺などにびつかかることもすくなくなるに違いない。 私は、目を悪くして、字を書くのが不自由にな「たから、も「ばら郵便を待つよう になり、手紙はがきを書くのはよくよくのときである。かっては、むやみに書いた。 自分では気がっかなかったが、はがきだけでも年に八百枚くらい書いていたらしい。 この地区の本局、はがきをよく出して感心だと言「て、一日局長のようなものにして くれて、あとでご馳走にな 0 たこともある。二百枚包みのはがきを度々買うので目立 ったらしい。 2 い手紙を書く