2 015 年 6 月末にバンガロールでの Association 0 ( lnternational Business ( 通称 < — ) の年次学会に出席しました ( 初めてのインドでした ) 。ちなみに、この—と いう組織は、広く経営学全般をカバーする Academy of Management ( 通称 <0ä) には規 模では及びませんが、国際経営を専門とする研究者が集まる組織では量・質ともに世界 Z O ・ 1 です〔注 1 〕。 アメリカで戦略・ & を 今回、インドでの学会ということで圧倒的にインド人の先生が目立ちました。インドの専門にしてきた私はまだこ 大学はもちろんですが、世界中の大学で活躍する高名な先生も随分来ていらっしゃいましの分野では日が浅いのです が、慶應ビジネススクール た。ソフトバンクに迎えられたニケシュ・アローラ氏もそうですが、インドという国の人 ( ) の同僚の浅川和宏 材輩出力には改めて驚かされます。また、インドのハイテク企業 ( インド企業や多国籍企先生が日本人として 4 人目の Zhao 、 Z. 」 . 、 Anand 、」 . 20 一 3. Beyond bounda 「 y spanners:The 、 collective bridge 、 an efficient inte 「 unitst 「 UCtu 「 e fo ニ「 ans 「 e 「「一 ng collective knowledge. S ざ gic Management 」 OU ョ al, 34 一 5 一 3 ・一 530. 434
うですが、それでは企業全体のアイデンティテイも生まれませんし、それぞれの国のマネ ジャーはそこの王様として満足してしまう、そしてそれぞれの国の視点だけを持ったエス バルであ ノセントリックなローカルマネジャーの集合体になってしまうからです。グロー る意味が失われてしまいます。 ジオセントリックのプラスとマイナス ジオセントリックあるいはグロー バルマインドセットを持った企業の代表例として、ユ ー、ハが挙げられており、トップの次のコメントが引用されています。 私たちはインド人社員をユニリー しなくてはならない。 こうしたグロ ーバルマインドセットを持った企業では、「世界中の現在、そして将来の バ化したいし、インドのユニリー、ハ社員はインド化 354
ました。ああ、みんな同じような問題意識を持っているんだなあと、改めて感じました。 最後に初インドについて一一一三いろいろみんなに脅されて、予防注射をしたり、 下痢の 薬を買ったりしてびくびくして行ったのですが、食事はホテルでほとんど食べていたこと もあり、何の問題もありませんでした。ただ、道路は猛烈に混んでいて、あちこちで絶え 間なくクラクションが鳴り、 7 時開始の直例の。ハーティーも、 1 時間前にバスは出たので すが、着いたのは 8 時半でした。中国もそうでしたが「次はインド」と言われながら、お そらくもう何年か ( 十何年か ) は今の状態が続くのではないでしようか。そして、ふと気 づくといつの間にか大市場、大国になっている、そのタイミング、その予兆をどう見極め るかが多くの企業の先行きを左右するのでしよう。 今回は怖いもの知らずの家内も一緒に行って、学会中は他の奥さま連中と現地のツアー に参加して買い物などをしていました。帰ってきて一一一口。 「インドは本当に上と下のギャップがすごいわね。天国と地獄のほうがまだ近いんじゃな いの」 第 1 2 章インドで考えた組織的コミュー ー・ケ一ション 447
フェローに選ばれています。 業のインド法人 ) のトップが参加したセッションも随分あり、この章でご紹介するべー フェローってなんだっていう ーはその中の一つのセッションがきっかけです。 話ですが、基本的には国際経 セッションのタイトルはバーチャル・オーガニゼーション (VirtualOrganizations)0 サ営分野での多大な貢献を評価 ヾレされて選ばれる名誉のサーク プタイトルは Managing Learning and Sharing Knowledge across Borders 、つまりグロ ル ( 世界中で現在約 3 人 ) 化が当たり前になってきた現在、企業は国境を超えてどのように知識、ノウハウを共有化 で、プロ野球にたとえると 「名球会」みたいなものとお すればよいのかという洋の東西を問わず基本的でかっ切実なテーマです。 考えください。 このセッションにはオハイオ州立大学のアナン教授 ( インド人で、今回の論文の共著 者 ) のほか、インテル、インド第 2 の—企業と言われるウイプロ (Wipro) からの出席 者も、自社の取り組みについて発表がありました。 ーと組織的コミュニケーション 組織が大きくなり、国際化すればするほどバーチャル・オーガニゼーション化、つまり —でつながることが増えてきます。今回のセッションに参加したインテルにしても、ウ イプロにしても、当然の活用には積極的に取り組んでいるのですが、その発表の肝は 「の活用をどうするか」では実はなく、「の限界をどう補うか」でした。インテル 第 1 2 章インドで考えた組織的コミュ ニ・ケ・一ション 435
第章 インドで考えた組織的コミュニケーション ー k- 化が迫る原点の再考 国際化、
第章インドで考えた組織的コミュニケーション 国際化、 ー化が迫る原点の再考 ・ Zhao 、 Z. 」 . Anand 、」 . 20 一 3. Beyond b000d0 「 y も 000e T 、 collective bridge 、 0 an efficientinte 「 unit 「 uc ど「 e 「 0 「 an e 「「一 ng collective knowledge. Strategic ManagementJournal. まとめにかえて この本を読んで「行進したい気持ち」になりましたか ? 『風の果て』藤沢周平著 451 452 433 434
中身がすごくても共有できなければ持ち腐れ 論文の簡単な解説をしておきます。戦略上特に重要なのは、他社にまねのできない知 識、ノウハウを持っことだといわれます。往々にして、そうした知識・ノウハウは明文化 できる単純知識 (individual knowledge) ではなく、組織の中にある様々な単純知識をどの ようにコーディネートし、共有し、組み合わせ、再配分したらよいかという総合的知識 (collective knowledge) です。例えば、最終アウトブットの製品は、競合企業のものを買 ってくれば分かります。どんな原材料を使っているかも分かるでしよう。しかし、どのよ うに作れば品質もコストも満足できるレベルになるのかはなかなか分かりません。 ただ、ここで一つ問題があります。他社がまねしにくいのは、総合的知識が持っ複雑性 る ・そのために、自分はフォーマルな—での情報交換以外に、インフォーマルなネッ トワークを社内に張り巡らして、たいしたことがないようなことも耳に人れるよう にしているーー・それがボデイランゲージに気をつけるということだ 第 1 2 章インドで考えた組織的コミュニケーション 437
極端に言えば、日本人の世界観、あるいは関係観とは「究極的にはつながっている」と いうことであり、欧米のそれは「どこまでいっても違うものは違う」ということではない かと思います。実は、この原稿を書いたのはシンガポールのホテルなのですが、インタビ ューをさせていただいた日本企業のアジア地域統括拠点の部長さんは、結局海外のビジネ スパートナーを選ぶときに最も大切な要素とは「信頼ーであり、「短期的な利益ではなく、 長期的に価値観が合うかどうか」とおっしやっていました。これはある意味日本企業だけ ではないと思うのですが、中根氏が引用している次の話を聞くと、むむーと、うなずかざ るを得ません。 ( インド人の ) 彼が私に語った日本人との経験によると、日本人ははじめはたいへん : しかし、いったん、アグリーメントが 用心深く、なかなかことが進まなかった。 : これ できてしまうと、日本人ほどこちらを信用してしまう人たちはほかにない。 に対して、イギリス人、その他欧米の人々は、簡単にアグリーメントにいたるが、そ の後がそれはやかましく、面倒なのだそうだ。 132
窓口形 受け手 送り手 全員形 受け手 を対比して議論します。深人りすると大 変なことになるので、極めて単純化して 話します。一つは各部門の窓口 (bound- ary spanner) 同士がやり取りをする方法 です。この最も単純形を考えると、部尸 内での様々な担当者とのやり取りは、窓 口が一手に引き受けてまとめ、それを相 手窓口に伝え、今度はその相手窓口から その部門の各担当に伝えられることにな ります。もう一つはそれぞれの部門の担 当者が、相手部門の担当者、あるいは関 連担当者と直接やり取りする全員形の方 手 法です (collective bridge)0 イメージで いえば、前ページの図の通りです。 この論文の結論はストレートです。 ( 1 ) 単純知識の共有は窓口形が費用対 ニケーション 第 1 2 章インドで考えた組織的コミュ 439
言葉で表された 「経営理念」「価値 観」「ビジョン」 窓口形共有 ( トップ ) たっス し至なイ こ的 そ葉具リ 全員形共有 ( 全員 ) こうしてみてくると、結局「経営理念」「価値観「ビ ジョン」というのは言葉で表されていても、その本質は 言葉ではなく、言葉の背景にある気持ち、感情、情熱な のだと分かります。その意味で、大切なのは「経営理 念」「ビジョン」を、「言葉」として理解する ( 単純知 識 ) ことではなく、自ら様々な体験や顧客や社内外のス テークホルダーとのやり取りを紡ぎ合わせて「立体的に イメージできるか」「実感できるか」 ( 総合的知識 ) とい うことです。 逆に言えば「実感できるかどうか」はそうしたいろい ろな背景や、イメージ、あるいは事例があって初めて可 能です。社長が「顧客満足」なんていう言葉を何度ビデ オで言っても、社員には単純知識としてしか伝わりませ ん。ですから、理念とかビジョンを伝えるということは、 「誰」かが伝えるのではなく、全員で「伝え合う」こと が必要なのではないかと思うのです。自分はこう思う、 ーケーション 第 1 2 章インドで考えた組織的コミュー 443