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検索対象: 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由
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1. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

デジタルな日本人 よく日本人は「曖昧だ」といわれますが、そもそも「ガイジンーという一言葉、そして日 本人論が常に「いいか悪いか」の両極端に分かれるように、日本人のメンタリティーは デジタルなのかもしれません。前掲の図とは一見反対のように思えますが、「連続」を前 提にしているからこそ、そうならないものは認めない、「ヨソ者」と考えてしまうのです。 日本人以外の作った寿司を「日本食」と認めないメンタリティーがあるのと同様に、「完 璧である「まるごと信頼できる」と判断するかどうかがすべてを決めるようなところが あり、ある仕事ではパート ナーであるけれども、ある仕事では競合だとか、さらに言えば お互いに言いたいことを言い合って、対立の中からー•- の解を求めるという考 え方がなじみにくいのではないでしようか。 そうしたデジタルの思考が、カルチュア・ショックの大きな源になっているような気が します。「まるごと」受け人れてもらえないと、自分は疎外されたと思ってしまうのです。 そう考えてみると、「内向的になる」理由もよく分かります。 実際、アメリカ人はよくしゃべります。意味がないことも多いです。それは、おそらく 第 6 章 40 年前に語られた日本のグローパル化の課題 133

2. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

自分 ( のアイデンティティ ) をよく知る そうした英語での苦労、そして「プロ」に目覚める経験を経て、さらには 3 年間の充電 期間を経て、「日本人が日本人であることに誇りと自信を持って、 100 % 自分自身であ バル企業 ることで、世界に貢献する」という宣言とともに、増田氏はナイキというグロー に復帰します。 この宣言には 2 つの大切な要素が人っていることにお気づきでしよう。一つはもちろん 「自分」ですが、もう一つは「日本人」です。 私たちは「日本」「日本人」という言葉をよく使いますが、実は自らの歴史や現状をあ まり知らないということはないでしようか ? 私がそう感じたのは、初めてアメリカに長 く滞在したの 2 年間でした。行ったのは 1992 年で、若干バ。フルの名残もあり、 「日本的経営」に興味のあるアメリカ人、ヨーロッパ人同級生も結構いました ( 当時はア ジアからの留学生の 8 割以上を日本人が占めていました ) 。 しかし、そうした同級生から日本に関する基本的な質問をされても、うまく答えきれな かったり、極めてステレオタイプの表面的な答えでお茶を濁したことが何度もありました。 自分がいかに「日本」を知らないか、日本にいるとなかなか意識しないことを痛感しまし 第 7 章リーダーシップは自分の中にしかない 155

3. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

素晴らしい文化があるからこそ、その制約を受けてしまう。それは日本だけではなく他 の国でもいえることでしよう。問題は「内向的になり、日本文化の断片にしがみつこうと する」、自信を本当に持つのではなく「逃げ場」としての自信を求める、さらに言えば他 者を貶めることで相対的に自信を持とうという ( 無意識の ) 傾向です。 日本人の「自信観」 中根氏はさらに掘り下げて、日本人の「自信観」を問います。ふと周りを見渡すと、多 くの書籍、あるいはマスコミで聞かれるのは、「日本人だめ論」か「日本人素晴らしい 論」のどちらかです。そのほうが売れるからかもしれませんが、極めて偏っていると思わ ざるを得ません。中根氏はずばりと言います。 : また、低次元に見えてくるのである。 的なものより感情的な要素が大きくなる。 それに反比例して、故国のシステムが理想化されてくる。 第 6 章 40 年前に語られた日本のグロー / ヾル化の課題 125

4. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

極端に言えば、日本人の世界観、あるいは関係観とは「究極的にはつながっている」と いうことであり、欧米のそれは「どこまでいっても違うものは違う」ということではない かと思います。実は、この原稿を書いたのはシンガポールのホテルなのですが、インタビ ューをさせていただいた日本企業のアジア地域統括拠点の部長さんは、結局海外のビジネ スパートナーを選ぶときに最も大切な要素とは「信頼ーであり、「短期的な利益ではなく、 長期的に価値観が合うかどうか」とおっしやっていました。これはある意味日本企業だけ ではないと思うのですが、中根氏が引用している次の話を聞くと、むむーと、うなずかざ るを得ません。 ( インド人の ) 彼が私に語った日本人との経験によると、日本人ははじめはたいへん : しかし、いったん、アグリーメントが 用心深く、なかなかことが進まなかった。 : これ できてしまうと、日本人ほどこちらを信用してしまう人たちはほかにない。 に対して、イギリス人、その他欧米の人々は、簡単にアグリーメントにいたるが、そ の後がそれはやかましく、面倒なのだそうだ。 132

5. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

義はともかく ) です。実は、「日本の経済の発展、世界的な国際化の進展により、各分野 における国際交流がとみに活発となり、外国人との接触は急激に増加してきている」と バル」という一言葉は出てきませんが、 まえがきにある、本書のテーマも同じです。「グロー そのタイトル通り、日本人の「カルチュア・ショック」 ( 通常は「カルチャーショック」 とするのでしようが、本書の表記に従います ) の本質を掘り下げ、異文化への適応に対す る問題提起をしています。 日本人のカルチュア・ショックを議論するのに、著者はまず「日本食」から始めます。 最近では寿司やてんぶらだけでなく、例えばラーメン、牛丼、うどんなど多くの外食チェ ーンが海外進出をし、失敗もありながら、成功をしている企業も多くみられます。「日本 食がプーム」と聞くと、何か自分がほめられたような気になります。 なぜ「日本食」は高い評価を得るのか ? それは、味、ヘルシーといった点だけでなく、 東京オリン。ヒック決定のカギとなったともいわれる「おもてなし」、日本ならではのサー ビスが大きな要素になっていることは間違いありません。逆に言えば、「日本食」という のは、日本という文化に根差した「ガラパゴス商品」の典型なのです。日本という文化の 中で鍛えられ、純化された結品であるからこそ高い評価を受けるのではないでしようか。 翻って、「ガラパゴス」といえば携帯電話です。実は、日本の携帯電話というのはすご 第 6 章 40 年前に語られた日本のグローバル化の課題 123

6. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

逆に「高給で人材をさらっていく」といわれる欧米企業の多くは、先ほどの 2 つの図で 示した通り異質である、違うという意識がしつかりとあり、その意味で世界の共通言語 であるお金で評価するしかないという潔さがあります。一方で日本企業はアジアの人々 は「異質」ではあると認識しているものの、どこがどう「異質」なのかについてはいまひ れはと思う人材を日本に連れていったりと、マスコミの批判とは反対に、涙ぐましい努力 をしている企業も少なくないという印象でした。ただ、前に取り上げた「日本的連続の思 考」という点で言えば、次の指摘にも耳を傾けておく必要はあると思います。 日本人の異質を認めない連続性の思想である。 ・ : したがって、外国人に対しても、 日本人が積極的にことを構えようとする時、「人間は皆同じなんだ、誠意をもってす れば通じる」「同じアジア人だ、仲良くしよう」という姿勢になるのである。 かし ) 異質であるという認識に立って初めて相手を理解しようという努力も払われる のである。 140

7. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

一言で言えば「自分の中に基軸がない」ということです。コンプレックスです。「思う に、日本人の方はコンプレックスをお持ちになりすぎるのではないでしようか」というマ レーシア人トップの言葉を引きながら、中根氏はカルチュア・ショックが強いことと、自 分に本当の自信がなく、精神的に不安定になることとの関連を指摘されています。後ほど もう少し突っ込んで議論しますが、日本企業の海外進出、特にアジアの進出に関しても、 一方で技術や商品力に自信を持ちながら、他方で地元の慣習や顧客ニーズの違いに翻弄さ れ自信を喪失している企業が随分あるように思います。結果として、中国などで「訳知り インド人、中国人、英国人などと比べて、日本人には本当の意味で日本文化を誇りに 思う人が少ないのはどういうわけであろうか。 日本ほどよい国はないといって、他国のことを必要以上にけなすタイプの人々は、本 当の意味で日本文化に自信をもっていない人々といえよう。「ヨーロッパなどっまら ない、もうダメだ」などといった帰国談をする人が、どんなに不安気に、自信なくョ ーロツ。ハに滞在していたかは、本国の人々の知らないところである。彼らは観念的に 日本文化に自信をもっているにすぎないのである。 126

8. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

かないときに、「ステレオタイプの説明に走ることです。例えば「なぜ御社は今意思決【注四 定ができないのか」と問われて「日本企業はコンセンサスが大事だから」みたいなことを 言ってしまうのです。そうすると、相手が納得する場合は多いのですが、本当の問題を掘 り下げることがストップしてしまい、また自社の本当のよさを伝える努力がなされなくな ってしまうと思うのです。 次の年に向けて ここまで読まれた方は、なぜ、私が本書を読んで「驚愕」したのかがお分かりだと思い ます。そうです、年前の日本人論、あるいはカルチュア・ショックについての中根氏の 観察と意見は、今でもほぼそのまま当てはまるという現実です。 「私たちは何をしていたんだ」「失われた年」などと言って、新たな「日本人だめ論」 を展開するつもりはありません。ただし本書の指摘の多くは、現経営陣だけでなく、これ から日本企業を引っ張る若い方々も、もう一度かみしめなくてはならないものでしよう。 「日本食」のすごさ、人気という話から始めましたが、実は日本に対して外国人 ( 欧米、 アジア両方 ) の友人が口をそろえて言うのは、「日本には世界中の最高の料理がある」と この点は「論文篇」第Ⅱ章で も触れています。 第 6 章 40 年前に語られた日本のグローパノレ化の課題 145

9. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

日本人のそうしたコンプレックスの背景には、例えば語学力の問題、戦争に負けたとい う歴史の問題、あるいは西洋人に比べた容姿などがあるでしよう〔注 顔の現地コンサルタント」にだまされたという話もしばしば聞きます。再び中根氏の指摘 です。 どの国でも積極的に外国人に近づいてくる人々というのがある。それは周知のよう に、あまり歓迎すべき種類の人々ではないことが多い。その土地の本格派というかよ い人々と接するためには、こちらがある程度積極的に出て、相手をひきつけるだけの 力がなくてはならないのである。どの国でも日本社会ほど肩書きは意味をもたないし、 人物そのものの魅力、実力が高く買われる。相当な肩書きをもち、日本で常にチャホ ャされるのに馴れている人が、外国でさびしそうにしているのを見ることがある。タ テ社会でない外国では、おもしろく働きかけない限り人は近づかないからである。 題 の レ ロ グ の そういえば、年ほど前、本 日 < の 1 年目のクラスで私が れ 日本を紹介するときに、日 ら 五ロ 本の漫画やテレビコマーシャ 一三ロ ルに、日本人向けの商品であ畆 るにもかかわらず、いかに金年 一 4 一 髪、目が青く、容姿端麗の西 章 洋人が多く登場しているかと いう話をした記憶があります。第 【注 4 〕 127

10. 経済学者の読み方 あなたの会社が理不尽な理由

沈黙に耐えられないというのもあるのでしようが、そうした「ムダ話」を通じて、お互い の距離感を測っているところがあるのかもしれません。どこは違い、どこは共通なのかと いう点です。 デジタルで、まるごと受け入れてもらう、信頼してもらうことを求めることは必ずし も悪いことではないと思います。ただし、そこに起こりがちなのは、「なかなか友達にな れない」という焦りであったり、「どうせわかってもらえない」という卑屈さであったり、 「信じていたのに」という失望であったりすることはないでしようか。「日本人は、自分た ちを外国人がよく理解していない、とか、外国人には日本のことがわかるものか、という 気持ちが相当強いが、もしそれが事実であるとすれば、日本人は外国の人々をよく理解し ていないし、外国のことがわかるはずがないということになる」という中根氏の指摘は、 そのあたりのことをついているような気がします。私たちのどこかに「わかる」とは「完 全にわかる」「まるごとわかる」ことでないといけないという、強迫観念があるのです〔注 謙虚であったり、日本文化を誇ることはとても大切なことですが、もう少し「自然にふ るまう」ためには、そうしたデジタルで線を引いてしまうのではなく、少しジャブを打ち ながら相手と自分のよさ、悪さ、共通点と違いを見極めるようなことをしてみることが必 これは英語力についても同じ ように感じます。 〔注 5 〕 134