自然数 - みる会図書館


検索対象: 論理学をつくる
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1. 論理学をつくる

第Ⅳ部のまとめ 347 記号そのものに求めた。これもまた , 第 II 部でヒンティッカ集合の充足可能性を証明した際に用 いたやり方と同じだった。 ・公理系 AFOL の完全性証明の副産物として , コンパクト性定理とレーヴェンハイム・スコー レムの定理が導かれる。 言語 FOL を用いることによって , ある分野の基本的知識を公理系のかたちで与えることが できる。それは , AFOL の公理 ( 論理公理 ) に , さらにその分野に特有の公理 ( 固有公理 ) を付 け加えることによってなされる。こうした公理系を理論と呼ぶ。 ・理論の例として , ロビンソン算術 Q を紹介した。 Q は自然数とその上の足し算 , かけ算に ついての基本的知識を公理化したものである。 Q はその作り方からして , 自然数の世界をモデル にもっことは当然だが , 自然数とは同型でない構造もモデルにもってしまう。こうしたモデルを 非標準的モデルと言う。ある理論が同型のモデルしかもたない場合 , その理論を範疇的と言う が , 0 は範疇的ではない , ということだ。 ・それどころか FOL で書くことのできる算術の理論はかならず , 自然数全体の集合に同型で ないようなモデルをもってしまうことが証明できる。これにはコンパクト性定理が使われる。 ・第 12 章の最後に , FOL をこれまでとは異なった方向に拡張することを試みた。ギーチ・カ プラン文や「無限にたくさんのものがある」のような文は , FOL の論理式として表すことがで きない。こうした文も翻訳しようとすると , 論理式で述語記号が占めている位置を量化しなけれ ばならない。こうした量化を許す論理を第 2 階の論理と言う。 ・述語への量化を許す第 2 階の言語を用いると , 数学的帰納法の公理が表現可能になる。この 公理を Q に付け加えると , 第 2 階のペアノ算術という公理系になる。第 2 階のペアノ算術 PA2 は範疇的である。つまり , PA2 のモデルはすべて自然数全体の集合に同型なものばかりであ レーヴェンハイム・スコーレムの定理などの性質を失ってしまう。 ・しかしながら , 第 2 階の論理は表現力の高さと引き替えに , 第 1 階の論理がもっていたコン パクト性 , 完全性 ,

2. 論理学をつくる

第 12 章古典論理にもまだ学ぶことがたくさん残ってる 《モデル M 》 論議領域 = 自然数の集合 V(S) : 任意の自然数 n にその次の自然数 n 十 1 を対応させる関数 ( これを後続者関数 succes - sor function と言う ) V( + ) : 自然数 n と m の組にその和を対応させる関数 V( ・ ) : 自然数 n と m の組にその積を対応させる関数 V( の : 自然数 0 331 APL, AFOL などに定義されてきたいくつかの概念は同じように公理的理論にたいしても定義 theorem, 無矛盾性などの定義 を , 単に理論 K のモデルと言う。また理論 K はモデル M をもつ , などと言う。 【定義】理論 Q にとってのモデル M のように , 理論 K のすべての公理を真にするモデル は自分で確かめてほしい。 1 には 0 という風に ) 」ということを述べたものだと言える。 Q 4 以降 自然数がある ( 3 には 2 , は , 「 0 はいかなる自然数の後続者でもない」 , Q3 は , 「 0 以外の自然数には , それぞれ直前の このモデル M で解釈すると例えば Q 1 は , 「異なる自然数の後続者同士もまた異なる」 , Q 2 できる。 【定義】以下の条件を満たす , Q の論理式の有限個の列 BI, B2, あるとする ) を , C の Q における proof ( 証明 ) という。 [ 条件 ] Bi ( ただし 1 ミに n ) は , 次のいずれかである。 ( 1 ) 0 の公理である。 n ( この最後の Bn が C で ( 2 ) 先行する Bj , Bk から変形規則 (MP) によって引き出された式である。 C の proof が存在するとき , C は Q の theorem である , または C は Q において prov- able ( 証明可能 ) であるといい , ト QC と書くことにする。 0 の公理は AFOL の公理と固有公理をあわせたものだから , C が Q の theorem であるという ことは , これまでの言い方からすれば , Q の固有公理の集合から , C への AFOL における演繹が あるということに他ならない。 Q の theorem の例 本当にこれだけで算術と言えるのかなあ ? 例えば , 「 1 十 1 = 2 」は自然数についての最もかん たんな知識だと思うけど , これは 0 の公理の中にはないみたい。これも 0 から theorem として

3. 論理学をつくる

124 第Ⅱ部論理学をひろげる カッコ省略のための取り決め 余分なカッコを省略するための取り決めは L のときのものがそのまま使える。 この取り決めの結果 , 例えば (Vxpx → (x) は VxPx → Qx に , VX(-•PX) は VX¯IPX にな 5.3.2 量化子の作用域と変項の自由な現れ・束縛された現れ 「不自然」な論理式 我々の論理式の定義をすこしいじると気がっくことだけれど , この定義では直観的にみて不自 然に思われる論理式もたくさん生み出されてしまう。例えば , (a) V xPy のように量化子につい ている個体変項と述語記号の後ろの個体変項がずれているもの。 (b) ヨ YQa のように量化子がつ いているけれど述語記号の後ろに個体変項がないもの。 (c) ヨ XVXPX のように余分に量化子が ついているもの。これらは日本語に対応する表現がなさそうだ。こんなのが出てくるのはイヤだ なあ・・・ この定義でも我々の目的にとって必要な ここでとることのできる選択肢は 2 つある。第 1 に 論理式はすべて出てくるんだから , 多少わけのわからんものが余計に論理式に混ざったってよし とするというおおらかな方針がある。第 2 に , 定義を手直ししてこうした記号列を論理式から排 除するという神経質な方針がある。問題は , 不自然な記号列を論理式から排除しようとすると , 定義が込み入ってくるということだ。つまり生み出される論理式の自然さをとるか , 定義の単純 さをとるかのトレード・オフになっているわけだ。本書は第 1 のおおらか路線を採用する。そし て , ( a ) ( b ) ( c ) のような記号列もいったんは論理式の仲間に入れておいて , こういった「不自然な」 論理式に共通する構造上の特徴は何だろうということを考えてみたい。最初から論理式の仲間に 入れないでおくと , こうした記号列をそもそも考察対象にすることができなくなってしまう。あ とで , V xPy は Py, ヨ yQa は Qa, ヨ x ▽ xPx は V xPx と論理的に同値になるようにしておけ ばいいんだから , こいつらも論理式として認めてあげよう。 変項の自由な現れ・束縛された現れ 定義によると , Px, ( Pa △ Qx ) のように量化子を伴わない裸の個体変項が残っているような論 理式も生じる。これは日本語では , 「 ~ はアニメおたくである」とか「タランティーノは映画監 督であり , ~ は女優である」のような空所を含む命題モドキに相当する。こうした命題モドキは 真偽が定まらない。このような場合 , 個体変項 x は自由に現れている (occur free) とか , 自由 変項 (freevariable) であると言おう。これに対し , VxPx, ヨ y ( PY △ QY ) のような論理式は 「すべてのものはいずれ滅びる」とか「曲芸をするなめくじがいる」のように空所無しに日本語 の命題に翻訳される。これらの個体変項は束縛されて現れている (occurbound) と言おう。 ところが , 1 つの論理式の中に何カ所か x が出てくるような場合 , 出現箇所に応じて自由変 項であるところも束縛変項であるところもある。例えば , ヨ xPx △ Qx はヨ xPx と Qx が ^ で くつついたものだから , px の x は束縛変項だが Qx の x は自由変項だ。だけど , ヨ x(PxAQx)

4. 論理学をつくる

A. A little bit of mathematics 限にたくさんあるすべての論理式に番号を振って , 0 番から順番に並べることができるのでなく てはならない。つまり , すべての論理式の集合が可算集合であることを示しておかなくてはなら ない。このための方法はいろいろあるが , 最もシンプルにして華麗なのはゲーデル数を用いるや り方だ。 まず , いくつか確認しておこう。 ( 1 ) L, MPL, IPL, FOL のいずれにせよ , 本書で導入した論理言語の語彙 ( 括弧 , 結合子 , 原 子式 , 述語記号 , 量化子 , 関数記号など ) の総数は高々可算無限個である。 ( 2 ) それらの語彙を , 論理式の定義に述べられた規則に従って並べて論理式をつくるわけだ。 こで , 我々が行った論理式の定義では , いくらでも長い論理式を生み出すことが可能だが , そ うして生み出される 1 つ 1 つの論理式の長さは有限である。つまり , 本書の論理言語では , 無限 に長い論理式 ( つまり無限にたくさんの記号を含む論理式 ) というものはありえない。無限に長い 論理式を認める論理学もありうる (infinitary logic と呼ばれる ) が , 本書ではそれは扱っていな この確認のもとで , すべての論理式からなる集合が高々可算集合だということを証明しよう。 ただし , その大筋だけを示すことにする。まず , 論理式をつくる語彙のそれぞれに次のように奇 数を割り当てる。その割り当てを関数 g で表そう。 g(()=3, g())=5, g ( 司 = 7 , g い ) = 9 , g(V)=11, g ( → ) = 13 , g い ) = 15 , g(P)=17, g(Q)=19, g(R)=21, ( 1 ) により , 本書で導入した論理言語の語彙は高々可算無限個だから , 割り当てる数がなくなっ てしまう記号が出てくるということはない。その上で , これらの記号を並べてつくった記号の有 限列 ma2 ・・・ an のそれぞれに次のような自然数を割り当てる。 g ( ・・・ an ) = 2g ( , ) ・ 3g ( ) ・・・ P ( 。 ) ただしここで , prn は n 番目の素数を表すものとする。 そうすると例えば次のように , 各記号列にはそれぞれ異なる自然数が対応することになる。 g(•P) = 2g い ) ・ 3g(P) = 27 ・ 317 g ( P → Q ) = 2g ( P ). 3g い ). 5g ( Q ) = 217 ・ 313 ・ 519 この自然数をそれぞれの論理式のゲーデル数と呼び , 関数 g をゲーデル数化 (Gödel number- ing) と言う。異なる記号列には異なる自然数が対応することを理解するには , どのような自然 数もただ一通りに素因数分解されるということに注目すればよい。例えば 108000 という自然数 は , 25 ・ 33 ・ 53 という仕方でしか素因数分解できない。したがって , この自然数は , 「 ) ) ( 」という 記号列のゲーデル数であって , 他の記号列のゲーデル数にはなれない。 このようにして , それぞれの有限記号列にはそれぞれ異なるゲーデル数が対応していることが わかった。そこで , これらの記号列のうち , 論理式になっているものだけをとりだし , それらの 論理式を対応するゲーデル数の小さなものから順番に並べ , 0 , 1 , 2 , 3 , ・・・という具合に番号をつけ 直すことができる。こうして , すべての論理式に自然数の番号をつけて一列に並べること ( 枚挙 enumeration と言う ) ができる。 365

5. 論理学をつくる

第Ⅳ部論理学はここから先が面白い ! 338 《モデル M 十 ) V(c) : 自然数 n + 1 V( の : 自然数 0 V( ・ ) : 乗法関数 V( + ) : 加法関数 V(S) : 後続者関数 論議領域 = 自然数全体の集合 進んだ話題のロードマップ このモデルのもとで , K に含まれるすべての論理式は真になる。もともと K の公理だった式 フル装備した言語として FOL を導入したのだけれど , 実はその FOL をもってしてもどうにも 閉鎖的な批評家たち 12.5.1 FOL では表現できない命題かある ? 12.5 第 2 階の論理 かなる自然数でもないものが少なくとも 1 つ含まれる。■ ら , 個体定項 c に割り当てられるものはいかなる自然数でもありえない。したがって , M 十にはい しかし , M 十は自然数の集合と同型ではない。 M 十においては , C 式のすべてが真になるのだか ことが分かる。そのモデルを M 十としよう。 論理式の集合に他ならないから , コンパクト性定理 ( 328 ページ ) が使えて , K 十もモデルをもつ 以上より , K 十のいかなる有限部分集合 K 十 ' もモデルをもっことが示された。 K 十は第 1 階の 真になる。というわけで , このようにつくったモデルは K 十 ' を充足する。 釈される。したがって , c に n 十 1 を割り当てるモデルのもとでは , K 十・に含まれる C 式もすべて に含まれる C 式はみな , c が n 以下の何らかの自然数と異なるということを表現するものとして解 が真になるのは当たり前である。また , n は K 十 ' に含まれる C 式のうち最大の番号だから , K 十・ お互いしか褒めないような批評家たちがいる 表現できない命題がまだ存在する。その一番わかりやすい例は次のものだ Mx, 「 x は y を褒める」というのを Axy と書くことにし , 論議領域は批評家全体の集合という このことを FOL で表現することはできる。つまり , 「 x は日本マロン派に属する」というのを というわけだ。いやな集団だねえ。 う。この日本マロン派に属する批評家たちが誰かを褒めるとしたら必ず同じ派閥の人に限られる 家たちのなかに , ある派閥ができているわけだ。かりにその派閥を「日本マロン派」と名づけよ 使って書くことはどうしてもできない。この命題をパラフレーズして考えてみよう。まず , 批評 これはギーチ・カプラン文 (Geach-KapIan sentence) と呼ばれる。これを FOL の語彙だけを ヨ xMxAVxVy((MxAAxy) → (x*yAMy)) ・ ことにすると ,

6. 論理学をつくる

350 A. A little bit of mathematics べ限えわ ら低さら し最りか 質のに 性る気系 的すの文 ス解そ ク理 , は イをは分 テ書と自 ン本こ る マ セはあ人 でての スこ書系 ク タるこ ンなこ シに。特 っ具う 、も ) 廻こら がなおか り利てだ ま便しり 集が説か。 の学解ばと 体数くとこ 全たすこ 式しやるな 理とりきわ 論つかで思 るよわ解と あちて理や ん さはつで ノ、にに十 ~ 、も ため学学て にた数中 限くなばな 無い要れん て必すか 1 いろいろな種類の数について 1.1 自然数から有理数まで 自然数 (natural number) というのは , 0 , 1 , 2 , 3 , 4 , ・・・という数のことだ。「 0 」も入れていい の ? と思う人もいるだろう。じつは入れても入れなくてもよいのだが , 本書では 0 も自然数の仲 間に入れて考える。自然数をどれと決めずに表したいときは , n とか m という文字を使うこと が多い。本書でもとくに断らないときは n で任意の自然数を表している。 整数 (integer) というのは , ー 1 , 0 , 1 , 2 , 3 , ・・・という数のこと。 有理数 (rational number) というのは , 整数と整数の比 , つまり (), b は互いに素な整数。 2 ただし b は 0 ではない ) という形をした数のことである。 ( つまり一 5 ) , などは みんな有理数だ。カッコの中の「互いに素」というのは , 「 1 以外に共約数がない」ということ 2 4 6 26 ・・・など , 同じ有理数を表す無 を意味する。この但し書きをつけておかないと , 3 ' 6 ' 9 ' ' 39 ' 数の異なる表現を重複して考えることになってしまう。 1.2 実数 有理数でない数がある。例えばにがそうだ。これは決して整数と整数の比の形では書け ない。こういった数を無理数 (irrational number) という。むろん , にが整数と整数の比では表 せないことはきちんと証明しなければならない。おそらくその証明が , 君たちが教室ではじめて 背理法に接する機会になったはずだ。えっと , どんな証明だったつけ , と思った人は即 , 高校の 教科書を見直すこと。 有理数と無理数の違いはそれを小数で表したときにはっきりする。 = 0 .28571428571428 ・・・ 5 1 13 2 7 2 5

7. 論理学をつくる

第 3 章人工言語に意味を与える 2 重ターンスタイルを拡大解釈する 69 トの定義において , 左辺のが空集合だったらどういうことになるだろう。「 C を構成してい る原子式への真理値割り当てのうち , C を 0 とするような真理値割り当ては存在しない」という ようなことを意味するものになるはずだ。これは C がトートロジーだということである。そこ で , 次のように定義する。 【定義】ト C C はトートロジーである。 逆に , 右辺に何もない場合 , つまり「ト」はどんな意味だと考えたらよいだろうか。定義の うち C が出てくるところをなくしてしまえば , 「に含まれている式を構成している原子式への 真理値割り当てのうち , IA に含まれるすべての式を同時に 1 とするような真理値割り当ては存在 しない」。何と ! I* が矛盾しているということだ。そこで , 次のような書き方も認めることに 【定義】ト 1* は矛盾している。 3.8.2 論理的帰結関係について成り立つ定理 構造にかかわる原理 論理的帰結関係について , 次の定理が成り立つ。 【定理 14 】 ( 1 ) AkA ( つまり , いかなる論理式も自分自身を論理的に帰結する ) ( 2 ) もし kA ならば , r, B l=A ( 3 ) もし IÄト A, A, △ kB ならば r, △ kB 解説と証明 (2) は thinning と呼ばれたり , 単調性 (monotonicity) と呼ばれたりする。 I* から A が論理的 に出てくるのであれば , その前提にさらにどんなこと B をつけ加えても , いぜんとして A は出 てくるということだ。これは , 論理的帰結の定義にてらして考えれば , 当然に成り立っことがら なのだが , 我々が現に行っている推論と比べたときにはちょっと不自然な感じがする。というの は , 我々はいくつかの証拠やデータや知識に基づいて或る結論を出したとしても , さらに多くの 証拠・データ・知識が付け加わると , 以前に出していた結論を撤回するということがよくあるか らだ。こういう現象があるということは , 我々が行っている推論が必ずしもここで扱っている論 理的推論とは限らないことを示している。

8. 論理学をつくる

付録 【定理 62 】可算集合を可算個合併させた集合は可算集合である。 【証明】可算集合が可算個あるということは , それぞれの集合に自然数の - A. 0 = {ao,ao,ao, ・ 番号がつけられるということだ。そこで , それらの可算集合たちが , AO, ょ人 1 = { al , al , al , ・ AI , A2, ・・・という具合に並べられているとしよう。このそれぞれの集合に {a2,a2,a2, ・ 属する要素もまた可算個だから , 自然数の番号をふることができる。そ こで , 右の図のように可算集合たちを並べたとしよう。定理にある合併 集合の要素はすべて右図の枠の中に現れてくるはずである。 そこで , 定理 60 の証明と同じように ao, ao, al, a2, al, aä••・という具合に斜めに蛇行しながら 番号をつけて行けばよい。ただし , 重複は省きながら番号づけするものとする。■ 非可算集合はあるのか ー N トー N21 であることがわかった。同じような証明を繰り返せば , 引 = ー N31 = ー NnI = ・・・であることも示すことができる。次元が高くなることは濃度が高くなることではない。 こうなると , 全ての無限集合の濃度は同じなのではないか , という気がしてくる。だとしたら , 非可算集合を定義したが , その定義に当てはまる集合などないのではないか。しかし , そうでは ない。次の定理があるからだ。 【定理 63 】 0 < x く 1 であるようなすべての実数の集合 I は非可算集合である。 【証明】 I と自然数全体の集合の間に全単射は存在しないことを言え ばよい。 I の要素に自然数の番号をつけきることはできず , I の要素 の方がずっとたくさんあるのだ。証明は背理法で行う。つまり , I と 自然数全体の集合の間に全単射が存在すると仮定して矛盾を導けばよ まず , I の要素のうち有限小数をすべて無限小数になおしておく。 例えば 0.5 は 0.499999 ・・・に , 0.32 は 0.319999 ・・・に直す。その上で , I のすべての要素が自然数全体と 1 対 1 対応させられ , 右図のように , 縦に % , 石 , % 2 , ・・という具合 に並べられたと仮定する。もし , I が可算集合であるならば , ここにすべての I の要素が現れてい るはずだ。 そこで , 次のような実数を定義する。 r = 0. aoma2 ・・・ an ( an は rn の小数点以下第 n 十 1 桁目の数に 1 を加えたものとする。ただし , その 数が 9 のときは an は 0 とする ) 上図のように並んでいる場合は , r は 0.2608 ・・・という実数になる。要するに , 図の斜めの線に 沿って , ぶつかった数字より 1 大きな数字を並べてつくった実数である。さて , この r は , この表 に現れるどの実数 rn とも異なる。なぜなら , r はその定義の仕方によって , 実数 rn とは必ず小数点 以下第 n 十 1 桁目が異なっているからである。したがって , r は I の要素でありながら , この表には 362 とができる。■ -8 一 L-O LO ワ 3 C— 11

9. 論理学をつくる

A. A little bit of mathematics とができるということを意味する。可算集合の濃度を可算濃度と言う。 このことは , 可算集合の要素は , 0 1 2 3 4 5 0 361 0 からはじめて順番に自然数の番号を漏れなく振っていくこ がっている表になるが ) 。そして , n 行 m 列の箇所に , n/m なる有理数を書き込んでおく。どの正 下の左の図のように , 縦横に 1 から順に自然数を並べた表をつくる。 ( 右にも下にも無限に広 せばよい。そこで有理数の全体を次のように並べることからはじめよう。 このことを証明するには , 有理数の全体に 0 から始まって漏れなく自然数の番号がふれることを示 【証明】有理数全体の集合の方が N よりもずっと要素の数が多いように思えるけれどそうではない。 【定理 60 】正の有理数全体の集合は可算集合である。 の有理数もこの表のどこかに出てくるはずである。 2 1 い 2 3 しす 1 / 4 4 5 1 2 3 4 5 1 1 / 1 2 / 1 3 / 1 4 / 1 5 / 1 2 1 / 2 2 / 2 3 / 2 4 / 2 5 / 2 3 1 / 3 2 / 3 3 / 3 4 / 3 5 / 3 4 1 / 4 2 / 4 3 / 4 4 / 4 5 / 4 5 1 / 5 2 / 5 3 / 5 4 / 5 5 / 5 1 2 4 5 4 な 3 4 / 4 4 / 5 まれ 0 たを 5 / 3 5 / 4 5 / 5 これらの有理数に 0 からはじめて順にもれなく番号をつけることができることを示せばよ の集合 Q も可算集合である。このことを示せ。ただし , 定理 60 の結果は使ってよい。 いまは正の有理数すべての集合が可算集合であることを示したが , 負の有理数も含む有理数全体 練習問題 105 つけることにすればよい。■ 数に何度も番号をつけることになってしまう。そこで , 太線に沿って現れる既約分数だけに番号を ぞれこの表の中に現れるが , これらはみな同じ有理数である。というわけでヘたをすると同じ有理 ただし , この表には重複があるので注意しなければならない。例えば , 1 / 2 も 2 / 4 も 4 / 8 もそれ 1 対 1 に対応づけることができることは明らかだろう。 すべての有理数を数え上げていけばよい。このようにすれば , すべての有理数をすべての自然数と い。そのためには , 右の図で , 太い線が示すような順序 ( 1 / 1 , 1 / 2 , 2 / 1 , 3 / 1 , 2 / 2 , 1 / 3 , 1 / 4 , 2 / 3 , ・・・ ) で 【定理 61 】 N2 は可算集合である。 【証明】定理 60 の証明から明らかだろう。 N2 のすべての要素は上の図と同じようにして並べるこ

10. 論理学をつくる

付録 は非可算なのである。 364 4.3 基数の系列 アレフ 濃度というのは , 集合の要素の個数という概念を無限集合についても使えるように拡張したも のだ。 空集合の濃度は一と表される。空集合の要素の個数は 0 だから , ト 0 と書くことにし よう。次に , A= (a) の濃度いーは同様に 1 と書くことにしよう。 ・・そうすると , それぞれの 自然数は , しかるべき大きさの有限集合の濃度に対応するものだということがわかる。 だとしたら , 無限集合の濃度からもある種の数を引き出すことができるだろう。これはものの 個数としての自然数を無限集合へ拡張したものだ。このように , 濃度をある種の数のようにして 捉えると基数 (cardinalnumber) という言い方をされるようになる。 0 , 1 , 2 , ・・・など , 有限集合の 濃度を表すような基数を有限基数 , 有限基数でない基数を無限基数または超限基数とよぶ。 超限基数は大きさの順に並べることができる。それを順に ド 0 , ド 1 , ド 2 , と書くことにする。この文字はヘブライ語のアルファベットで「 A 」にあたる文字だ。「アレフ」 と読む。ド 0 が最小の無限基数だということになる。実は , ー N ー = ド 0 であることがわかってい る。つまり , 自然数の集合は無限集合のなかでいちばんサイズの小さいものだということだ。 連続体仮説 さて , 連続体濃度 2X0 ( なぜこのように表せるのかについて説明すると長くなるから省略。実は実数 の集合 R と区間 I , さらに N のベキ集合 p ( N ) の濃度はみんな一緒で , 基数 2X 。を用いて表される ) は 自然数全体の集合の濃度ド 0 よりは大きい。では , どのくらい大きいのだろう。カントールは , 2X 。 = ド 1 と予測した。これを連続体仮説 (continuum hypothesis) という。つまり , 連続体濃度 は自然数全体の濃度の次に大きな無限基数だという仮説である。 N と R の中間の大きさの無限 集合はないのだ , と考えたわけだ。 この仮説は正しかったのだろうか。いまでは次のようなことが分かっている。つまり , 集合に ついての基本的な事実を公理系の形でまとめあげた標準的な理論 ( 公理的集合論といわれる ) に おいては , 連続体仮説は provable でない。それどころか , その否定も provable でない。つま り連続体仮説は集合論の公理系から独立なのである。 4.4 すべての論理式は枚挙可能である コンパクト性定理の証明や , リンデンバウムの補助定理の証明の中では , すべての論理式を AO , AI , A2 , ・・・という具合に並べておいて , 最初のものから順番に 1 つずっ IÄに付け加えるかど うかをチェックする・・・というような手続きが含まれていた。こうした操作ができるためには , 無