第 2 章 来世で使えるかもしれない電気数学 6 2.3 オームの法則 オームの法則とは、素子に流れる電流と電圧の関係を述べたものですが、本来、受動素子であ る抵抗について述べています。ですが、本書ではコイルやコンデンサに対しての電圧、電流につ いてもひっくるめてオームの法則ということにします。難しいことは抜きにして、抵抗、コイル、 コンデンサのオームの法則を表 2.1 にまとめました。これから先、話を進めていくにあたり、この 表をみながら回路方程式を立ててみてください。 2 4 キルヒホッフの法則 キルヒホッフの法則とは、回路に流れる電流について、電圧について述べたものです。電流に ついて述べたものを“電流則 ( または第 1 法則 ) ”、電圧について述べたものを“電圧則 ( または 第 2 法則 ) ”と呼んでいます。サクッと説明すると、以下のとおりです。 キルヒホッフの電流則 ( 第 1 法則 ) ある接点において、接点に向かって流入する電流の総和と送出する電流の総和は等しい。 キルヒホッフの電圧則 ( 第 2 法則 ) ある閉回路において、起電圧の総和と電圧降下の総和は等しい。 「いや、そんなことわかっとるわ ! ! 」とお思いの方が多いかと思いますので w 、 この項は回路 表 2.1 オームの法則 抵抗 コイノレ コンテ、ン、ナ 素子 記号 過渡応答 市 t ) = ルの 電圧 ) 市 電流 周波数応答 電圧 レ = XcI = レ = XLI = ツカ / レ レ 電流 XL = ツん 1 電 ) 市 電 ) = c = ツ wC レ インピーダンス / 2 冗 ー [rad/s]o ※ただし、 = 2 冗工 = ※周波数応答は、あくまで定常状態の時 ( 単一の周波数を印加した時 ) を述べていることに 注意。 dq(t) ※電流のを電荷ので表すこともある。
2.4 キルヒホッフの法則 図 2.2 回路その 1 方程式のテンプレートを挙げていきます。テンプレート回路が解けるようになれば、回路の規模 が大きくなろうが解いていくことができるようになると思います。途中式もしつかり書いていき ますので、計算のテクニックも参考にしてください。 2.4 ユ回路その 1 協の点において、キルヒホッフの電流則を立てていきます。召 1 に流れる電流は に流れる電流は - で表せます。召 1 と召 2 に流れる電流は同じなので、 巧ー協協 となります。ここから協について式を変形していきます。 . R 1 1 十君 川十 協応協応新一塒墅塒新一塒新圻 新応協一川 一一十 1 2 1 十召 2 召 1 召 2 ( 2.1 ) 君 1 = 2 = 月と置くと、 協 = - 新
2.4 キルヒホッフの法則 図 2.4 回路その 3 召 2 3 2.4.3 回路その 3 回路その 2 に更に抵抗を追加しました。協の点について、キルヒホッフの電流則を立てます。 このとき、電流の向きはテキトーで構いません。今回はム , わは協の点に向かって流れ込む電 流、ムは協の点から流れ出す電流と定義します。 ム十わー あとは回路その 1 、その 2 と同じ要領で、式を立て、協について式を変形していきます。 ム十わ = / 3 巧ー協協ー協 巧協 1 召 2 月 3 召 1 召 2 召 3 協協 十 - ー - 十 君 1 君 2 3 召 1 2 召 3 十一一十一一とおくと、 十一一十 1 召 2 3 1 一召一川 一塒協 ( 2.3 ) ちなみに、 1 = 月 2 = 3 と置くと、 この“回路その 3 ”が解けるようになれば、枝が 4 本になろうが 5 本になろうが要領は一緒です。
Ⅱ 1 目次 まえがき イントロダクション 第 1 章 イントロダクションのイントロダクション 来世で使えるかもしれない電気数学 第 2 章 2.1 電子部品には受動素子と能動素子がある . 2.2 回路方程式と微分方程式とラブラス変換 . 2.3 オームの法則 2.4 キルヒホッフの法則 2.5 テブナンの定理 . 2.6 Y- △変換・△ -Y 変換 現世で使えるかもしれないオペアンプ入門 第 3 章 3.1 オペアンプとは何者じゃ ? 3.2 オペアンプ回路 ~ 基本のキ ~ 1 1 っつつけ、 6 、 6 っ一り 1 1 -1 1 一 4 つ」っ 1 っ 4 41 参考文献 あとがき 43
1 第 1 章 イントロダクション 本書ではアナログ回路の入門編というテーマで進めていきます。コンセプトとしては、「授業で 理論は勉強して、あとはトラ技とか見ながら雰囲気で作れるようになったけど、ちゃんと理論的 に設計できるようになりたいなあ」と思った私は、“初歩”というほど初心者でもなく、もう 1 歩 踏み込んで回路を作れるようになりたいという想いをこめて『 2 歩目からはじめるアナログ電子回 路』というタイトルにしました。 いろいろな回路の回路方程式をどのように組み立てるのか、どんな途中式で計算しているのか を永遠に語っていきますので、頭が痛くなっちゃうかもしれません w 。 そこで、エラ ~ い大学の先生が書くような堅苦しいのはなるべく抜きにして、「これさえ押さえ ておけば大丈夫 ! 」的なテンプレートものにしていきたいと思いますので、ある程度「ああ ~ んな法則もあったな、ふう ~ ん」と思う人には読みやすいかなあと思います ( っと勝手に思って ます w 。 最終的には、オペアンプで簡単なアナログ回路を自由に作れ、教科書、トラ技に載ってるもの ばかりではなく、ちょっと毛が生えた回路を構築できるように発展していただけると幸いです。 テブナンの定理 キルヒホッフの法則 オームの法則 路を読み解きやすくなります。 ます第一段階として、アナログ回路を読み解くには、以下の法則を最低限マスターすれば、回 1.1 イントロダクションのイントロダクション しれません・・・ ( そこは気分次第ということで w 。 本書でお話する内容は本当にちょっぴりなので、今後続編とか改訂版とかで展開していくかも と思います。 そしてオペアンプの使い方、回路の組み方などが分かれば、やりたいことを実現しやすくなる
3 第 2 章 来世で使えるかもしれない電気数学 ・ Y- △変換、△ -Y 変換 テブナンの定理 キルヒホッフの法則 オームの法則 この章では、電気回路の基礎法則として、以下のものを解説していきます。 回路に入っていると、回路方程式は微分を含んだ微分方程式というものになります。 回路の動作を表した数式を回路方程式と呼んでいます。後述しますが、コイルやコンデンサが 2.2.1 回路方程式とは 2.2 回路方程式と微分方程式とラブラス変換 す ( すごく乱暴 ( - ュ、 ) ! ) 。本章では受動素子で話を進めていきます。 ランジスタ、オペアンプなどの半導体の事を示し、早い話が「受動素子以外の部品」ということで 受動素子とは主に、抵抗、コイル、コンデンサのことを指します。能動素子は、ダイオード、ト 電気回路には、ざっくり分けて、“受動素子”と“能動素子”があります。 理論のお話をする前に、本書で登場する部品について説明しておきましよう。 2 ユ電子部品には受動素子と能動素子がある ようになるかと思います。 ます。波線だけ読んでも実用的に使え、途中式も理解すれば、様々な回路が解けるよう力が付く し、回路を組み立てる数式は途中式も書き、最終的な解にはこのような波線で目印をつけておき イントロダクションでも述べた通り、テンプレート的に使えるように、最小単位の回路を説明
2.4 キルヒホッフの法則 2 下 0.632 0.981 0.993 06 0.2 4 ァ 5 ァ 6 ァ 図 2.6 RC 回路充電の場合 図 2.7 11 0.135 0.050 0018 0 ( 7 4 ァ 5 ァ 6 丁 7T 翫 と RC 回路放電の場合 ■放電の場合初期値にむ 1 の = 0 、む 0 ( 0 ) = おとして、微分方程式解くと式 ( 2.7 ) になります ( 途 中式は省略します ) 。 また、 t について変形すれば、 0 からのまで放電されるまでの時間を求められます。 ・ vo は ) = お e ー 7 の = —RCln ( 2.7 ) ( 2.8 ) 図 2.6 に式 ( 2.5 ) 、図 2.7 に式 ( 2.7 ) をグラフ化したものを示します。式中の C を時定数と 言って、下で表します。 RC 回路においての時定数は物のにかかわらず一定なので、タイマ回路 などに使用されるポヒ。ュラーな回路です。グラフをみると、 5 下ト ] あればほぼ完全に充電、もしく は放電しきる事がわかることから、充電や放電の時間の目安となります。 式 ( 2.4 ) をラブラス変換し、出力 / 人力に変形します。 周波数特性を解く 1 sRC 十 1 V1(s) = ( c + 1 ) 協 ( s ) V1(s) = sRCV0(s) + vo(s) レ 1 ( s ) vo(s) 0 切 . な召 C + 1 ( 2 ・ 9 ) 1 s にツを代入すれば、周波数特性になります ( 式 ( 2.9 ) ) 。 は中途半端に思えますが、電力で見ると入力したエネルギーが 1 / 2 になるという意味です。また、 こで、協 0 切 / 新 ( ) が 1 / になる周波数 / 0 を遮断周波数といいます。 1 / v 朝という数値 1 / ▽をデシベル換算すると、約—3[dB] になります。 式 ( 2.9 ) が 1 / V になる周波数 / 0 は式 ( 2.10 ) のとおりです。 [ ル ] 1 / 0 = 2 冗召 C ( 2 ・ 10 )
10 第 2 章 図 2.5 RC 回路 来世で使えるかもしれない電気数学 2.4.4 その 1 発展型 ~ RC 回路 ~ キルヒホッフの電圧則にしたがって、回路方程式を立ててみます。抵抗召の電圧降下は・ツ ( t ) 、 サ C にしました。 その 1 の回路 ( 図 2.2 ) の発展型ということで、図 2.5 に示すように、召 2 の代わりにコンデン となります。表 2.1 より、コンデンサに流れる電流ツのは ル電 ) + の = 町の コンデンサの電圧降下はのと表せますので、 となるので、 となります。 dvo の 電 ) = c これらを代入すると、 + t ) = 物の RC ( 2 ・ 4 ) さて、式 ( 2.4 ) は微分方程式になっています。 3 ページでお話したとおり、微分方程式を解いて ・の式にすれば過渡状態を、ラブラス変換をして出力 / 入力の比をとれば周波数特性が ぉ 0 ① = 中式は省略します ) 。 過渡状態を解く わかります。 ■充電の場合初期値に物の =E 、 ( 0 ) = 0 として、微分方程式解くと式 ( 2.5 ) になります ( 途 また、 t について変形すれば、 0 からのまで充電されるまでの時間を求められます。 t = —RC ln 1 ー ( 2 ・ 5 ) ( 2.6 )
11 まえがき ・プリント基板関連 きっと役に立つかもしれない数式集 来世で使えるかもしれない電気数式 現世で使えるかもしれない機能回路 ・おいしく考える統計入門 spice メモ 工ミッション (EMI) ・イミュニティ (EMS) メモ ・部品点数法による MTBF 算出法 AKIBAJIN 2017 / 01 / 17 番外編のはじまりはじまり。 しくお願いいたします。 そんなわけで、今回もなるべくわかりやすく書くようにしますので、お付き合いのほど、よろ っと、建前はそんな感じで、早い話「秘伝のタレを売っちゃえ ! 」と思い立っちゃったわけです。 いてみようじゃないか ! それこそオームの法則からはじまって、最終的にオペアンプで回路を組み立てられるものを書 ヒ。ックアップしたもの書けばいいんじゃね ! 」 「いきなりアナログコンヒ。ュータは難しいから、『秘伝のタレ』からアナログ回路の理論部分を さて、本題です。 します。 まで計算した回路方程式とか、理論的なことなどを書いていて、力を入れている章でもあったり 特に『来世で使えるかもしれない電気数式』『現世で使えるかもしれない機能回路』ですが、今 っとまあ、タイトルはふざけてますが w 、内容はしつかりしていると自負しています wo