第 3 章現世で使えるかもしれないオペアンプ入門 ・同相入力範囲・・・壊れはしないが、入力しても演算がおかしくならない電圧範囲。 ゲイン帯域幅・・・応答性 スノレーレート、 3.2 オペアンプ回路 ~ 基本のキ ~ オペアンプは日本語で演算増幅器と述べたとおり、回路の組み方でさまざまな演算ができる部 品です。一例として、図 3.3 にオペアンプで演算できる回路を、精度の出しやすさ、回路構成に着 目してまとめてみました。 24 精度の出しやすさ 出しやすい 絶対値 加算・減算 定数倍 複雑 sin 関数 cos 関数 かんたん sin 関数 cos 関数 ( 時間関数 ) 微分 積分 回路構成 乗算・除算 平方根 難しい オペアンプで演算できる関数 図 3.3 R2 R2 RI Vin RI Vout Vout 十 十 Vin 定数倍回路 ( 左 : 反転増幅回路、右 : 非反転増幅回路 ) 図 3.4 Vn Vout V2 十 Vout 十 加算回路 図 3.5 減算回路 図 3.6
3.2 オペアンプ回路 ~ 基本のキ ~ 定数倍回路 ( 反転増幅回路・非反転増幅回路・分圧回路 ) 加算回路・減算回路 微分回路・積分回路 また、分圧回路も、見方を変えれば 0 ~ 1 倍にの間で定数倍する回路と捉えることができます。 るので、精度を出しやすいと言えます。 反転増幅回路、非反転増幅回路で定数倍を作れます。抵抗 2 本で任意の倍数にすることができ 25 足し算、引き算する回路です。 これも抵抗のみで構成できるので簡単に作ることが出来ます。 人力電圧を微分、または積分する回路です。抵抗とコンデンサで構成するので簡単に作れます が、コンデンサの精度が演算結果の精度に直結します。 Vin Vout Vin Vin 十 図 3.7 2R 左 : 積分回路。右 : 微分回路 Vi n Vout 十 Vout Vout 十 対数回路 ( 超お気楽 Ver. ) 図 3.8 V2 VI 絶対値回路 ( 全波整流回路 ) Rf VR 図 3.9 V2 Vout VI Rf 十 Vout 十 F ET 図 3.10 (a) 乗算回路 ( 原理 ) (b) 乗算回路 ( 超お気楽 Ver. ) 乗算回路
第 3 章現世で使えるかもしれないオペアンプ入門 30 月 2 図 3.14 反転型加算回路 ( 発展形 ) 反転型 ( 発展形 ) 発展系として、複数の電圧の加算回路を図 3.14 に示します。要領は図 3.13 の時と同じです。 = 月れ = とすると、 1 = 召 2
3.2 オペアンプ回路 ~ 基本のキ ~ 31 閉回路 A 月 2 1 十 ・←ム 月 3 閉回路 B 図 3.15 加算回路 ( 非反転型 ) 非反転型 ( 基本形 ) 非反転型の加算増幅回路について説明します。 オペアンプの入力には電流は流れません。したがって、閉回路 A と閉回路 B と回路を 2 つに分 けて考えることができます。これが実際には繋がっていないけど、接点の電圧は同じというバー チャルショートの美味しさです。 閉回路 A のについて接点方程式を立てると、 塒十 。応協応協応協応ル 2 一十十十 1 十 1 1 一一十 1 1 1 2 召 1 十 2 召 1 2 十 新 +
3.2 オペアンプ回路 ~ 基本のキ ~ 29 月 2 72 召 1 十 図 3.13 加算回路 ( 反転型 ) 3.2.3 加算増幅回路 アナログ電圧を足し算することができる回路です。足し算するとともに、電圧の和を定数倍に することもできます。 反転型 ( 基本形 ) 入力端子に電流は流れないので、 1 、召 2 に流れる電流は、そのままノに流れます。 した がって、 ム + わ = が成立します。バーチャルショートで動作しているならば、 = 0 となります。あとは反転増幅回路、非反転増幅回路の時と同様に、各々の抵抗に流れる電流を求 め、代入していきます。 新 協 協 召 1 召 2 召 1 = 2 = 召とおけば、 ( 新 + 協 ) 協 ェ = 1 = 2 ならば、 となります。
第 3 章現世で使えるかもしれないオペアンプ入門 また、閉回路 B のについて接点方程式を立てると、 協ー垢 4 3 月 4 召 4 召 4 3 君 4 ーー十 十 1 バーチャルショートで動作しているとすれば、 = にであるので、 召 4 十 1 召 3 32 巧十 1 十 2 2 . RI 十 2 となります。 召 1 = 2 = 召 3 = 4 = 召とすれば、 ー十 1 十召十 協 = 2 ・一新十一協 協 = 巧 + 協 新 + 非反転型 ( 発展形 ) 非反転型の加算増幅回路も、複数の入力を加算できるようにしました ( 図 3.16 ) 。図 3.15 と同 様に考えてみます。 閉回路 A の垢について接点方程式を立てると、 巧ー協ー 1 召 1 2 2 れ一 1 れ一 1 新一川新一川 れ月 れ一 1 十一一十・ ・十 1 召 2 1 岳
第 3 章現世で使えるかもしれないオペアンプ入門 34 = 召れ = 月とおいた場合、 上式で、新十協十・・・十のように素直に電圧を加算させたい場合を考えると が成り立てばよいことになる。 . RI = 2 十 1 1 一れ れ十 1 1 一れ 十 1 十 , 1 。 = れ一 1 になるような召とノりを選べばよい。 1 = 2 = れ一 1 = , ぃ R Rß したがって、 れ一 1 とすると、
3.2 オペアンプ回路 ~ 基本のキ ~ 33 閉回路 A 〃ー 1 閉回路 B 非反転型加算回路 ( 発展形 ) 図 3.16 1 1 ( 1 ~ れの並列合成抵抗 ) とおけば、 1 。を 1 君一川 閉回路 B は基本形と同じなので、 十 1 閉回路 A と閉回路 B の式をまとめると、 十 1
現世で使えるかもしれないオペアンプ入門 第 3 章 26 絶対値回路 ( 全波整流回路 ) 入力電圧の絶対値を出力する回路です。俗に言う全波整流回路になります。オペアンプを 2 個 とダイオードを使うため、ちょっと回路が複雑になります。 sin 関数・ cos 関数 で言う時間関数というのは時間とと あえて時間関数でないかそうでないかで分けました もに変化する関数、つまり発振器 ( 正弦波発振器、余弦波発振器 ) のことを指しています。ただ発 振させるだけなら比較的簡単に作ることが出来ますが、出力波形をひずませないように発振させ るには回路がその分複雑になります。しかし、本当のところの入力電圧を与えると三角関数を求 める回路ではなくなっています。 真の三角関数を演算する回路を作るには、折れ線近似回路というものを使います。これを使え ば、任意の関数を演算する回路を作ることができますが、その分回路は複雑さを増します。 指数関数 ( 逆対数回路 ) ・対数関数 =loge(vt)) を演算する回路です。これはダイオード 指数関数む = exp(vt) や対数 = ln 毎 の V ー I 特性一指数関数で表わされることを利用した回路です。回路はとてもピンきりで、一番簡 単な構成は反転増幅回路の 2 本の抵抗のうち、どちらか 1 本をダイオードに変えるだけで出来上 がります。ただ欠点として、半導体の特性をそのまま利用する回路なので、温度変化によって精 度が出せなくなります。精度を保つには、温度補償回路を入れるか、折れ線近似回路にする方法 が考えられますが、その分回路構成が複雑になります。 乗算回路・除算回路 実は、アナログ回路は単純な掛け算、割り算を演算するのが難しいです。定数倍なら簡単なの ですが、変数同士の演算をするには、一番簡単な方法として反転増幅回路 ( または非反転増幅回 路」 ) の 2 本ある抵抗うち、 1 本を入力電圧に対して抵抗値が変化するようにしなくてはなりませ ん。方法として接合型 FET (2SK30ATM とか ) を使う手があります。しかし、半導体ゆえの非 線形性があるので精度を出すには苦労します。 そこで、世の中にはとても便利なアナログ乗算 IC というものが売られています。また、外付け にオペアンプを足すことで割り算や平方根をいった演算もでき、とても便利な IC です。しかし、 ICI 個の価格が非常に高く、 8 ヒ。ンのくせして 1 , 000 円以上します ( 今どきアナログ乗算 IC を買 う人なんてそうそう居ないこともあると思います ) 。 いろいろな演算ができるため、ディジタルコンヒ。ュータが流行る前は、オペアンプなどで構成 された“アナログコンピュータ”で微分方程式を解いていました ( そのあたりは『技術部ならわか るアナログコンヒ。ュータ』シリーズを見てね ) 。 いろいろな演算ができるオペアンプですが、本書では第 2 章を念頭に入れて、基本的なオペア ンプ回路を数式的に解いていきましよう。