ーアミラーゼのほかに大量の。アミラーゼが生成されている。主として、沖縄本 島南部地区。 Ⅳアワを原料とするもの アワ粉を沸騰している湯に入れ、アワ粥をつくり、少し冷やした後、別にとっておい た生のアワ粉を加え、アワ粉のアミラーゼでアワ粥を糖化する。これに若干の砂糖を 加えることがある。宮古島の平良市。 > 米飯に泡盛を加えたもの 米飯の冷ましたものに、水、泡盛、砂糖を加えてつくる。沖縄本島南部地区。 Ⅵ米飯に麹と大麦粉を混入したもの 米飯または米粥に米麹 ( または大麦麹 ) 、大麦粉 ( または米粉 ) を混ぜ、ときには砂糖 を加えてつくる。沖縄本島中部地区、伊平屋島、来間島。 Ⅶ甘藷たけのもの 甘藷を煮てからつぶし、それを石臼で水引きしたものを一升ビンに入れ、密封してお き、三日目から用いる。石垣島川手。 Ⅷ甘藷に麹を混入したもの
ルコアミラーゼ ( でん粉をグルコースにするアミラーゼ ) 活性の強いアスペルギルス・ニ ガー e ミ e ことリゾープス属のカビの一種 ( R ミ 2 sp. ) 、それにでん粉を 液化するーアミラーゼ活性の強いペシロミセス属のカビの一種 ( ミ es sp. ) が 得られている。この菌の同定には私も手伝ったのたが、酵母源として特殊な木の枝を使っ 源 ていて、その小枝からの酵母の分離には成功していない。 起 の そ 。 ( ルク教授たちは餅麹 (Beiju) から赤。 ( ンカビ ( ~ ミ 0 。ミも . ) を分離し、 このカビが芳香成分を生成することを見出している。 カ の南米のインディオは南方モンゴロイド系に属すと考えられていることからも、彼らイン 各 界 ディオによるロ噛み酒が広く分布しているこの地域において、唯一見出されたこのカビ酒 世 づくりが、どのような起源をもち、どのような変遷を経てきたのか、その調査はたいへん 章 興味深い課題である。 第
ラーゼ剤である米粉または生甘蔗を加えて、一夜発酵させた後、飲用に供するという報告 がある。ただし、これについて平敷氏は、甘蔗 ( サトウキビ ) がアミラーゼを含んでいな いので、アミラーゼ活性の強い甘藷 ( サツマイモ ) の誤字であろうと指摘しており、その 可能性は大きい いずれにしても、沖永良部島から報告されているこの方法は、両諸島の中間的方法のよ うである。また、平敷氏が推察しているように、糖化剤に唾液アミラーゼのかわりに植物 性のものを使用する方法は琉球王朝時代に始まったものであろう。 このように唾液アミラーゼにかわる糖化剤が、さまざまに考案されるとともに、ロ噛み を用いる神酒づくりは昭和のはじめには姿を消した、と自らのロ噛み酒づくりの経験を手 記にされた宮城文さんは述べている。 古代の神酒であるロ噛み酒の調製に使用されている唾液アミラーゼにかわって、現在で は甘藷や大麦などの植物由来のものにアミラーゼ給源を求めた、琉球弧に生活する人々の 英知に感服するのであるが、一方では、どのようにして、このような発見、発明がなされ たのか、その経緯を知りたいものである。 ちなみに世界ではじめて発見された結晶のアミラーゼは甘藷 ( サツマイモ ) に含まれる
芽米と麦芽の比較 性 そこで、実際に、芽米とビール会社が調製 可 している乾燥麦芽を使い、それらのアミラー る 時 よ ゼ活性を比較してみたのが、図 5 ー 5 である。 に この実験から明らかなように、やはり、麦芽 アミラーゼの方が芽米アミラーゼより活性が 芽加 数倍大きく、『箋注倭名類聚鈔』に「飴をつ とあ くるのに麦芽を用い、芽米を用いないー るのは理解できる。 ついで、でん粉原料に糊化したうるち米を用い、芽米と麦芽をそれそれのアミラーゼ源 に、糖分をアルコールにする酵母には乾燥圧搾パン酵母を用いてアルコール発酵を試みた。 温度は一五℃である。その結果、図 5 ー 6 に示すように、麦芽アミラーゼ剤を用いた場合 の方が、より速やかに発酵が進むことがわかる。吟醸酵母の「協会 7 号」を使用した場合 も、図 5 ー 7 に示すように、麦芽をアミラーゼ剤にした方がアルコール発酵がスムーズに 進行した。 米 芽 ー 0 0
米 ) を使って醴酒をつくることは容易であることは明らかである。 しかしながら、芽米アミラーゼより麦芽アミラーゼの方がアミラーゼ活性は大きい。そ れなのに、なぜ、醴酒の糖化剤に芽米が使用されたのであろう。その理由を探ってみた。 稲の起源は「アッサム・雲南説」が有力で、それが長江流域の江南で稲作として花開き、 江南から縄文後期 ( 約三〇〇〇年前 ) に北九州・南朝鮮に渡来し、またたく間に日本のほ ぼ全土に植えつけられたと考えられる ( 第 1 章参照 ) 。一方、小麦・大麦の栽培の歴史を 餅たどると、小麦は南西アジアの「肥沃な三日月地帯」と呼ばれる地域で、紀元前七〇〇〇 年頃に栽培化され、紀元前二〇〇〇年頃に中国へ伝播し、日本列島でも縄文時代晩期、あ 章 るいは遅くとも弥生時代には渡来し、栽培されていた。大麦も同じ頃に「肥沃な三日月地 第 帯」で栽培化されたが、日本列島に伝播したのは小麦より少し遅れて、紀元五世紀頃には 日本に存在していたらしい。九三四年に成立した源順著『倭名類聚鈔』の中に、「蘖は芽 米で、飴をつくるーとある。これは中国の百科辞典ともいえる『説文』から引用であるが、 その後の版では「飴は麦蘖でつくり、米蘖ではつくらない」としている。これは、麦芽ア ミラーゼが芽米アミラーゼより強力であることが明らかになったからであろう。
酒であり、その片鱗については第 2 ・ 3 章に述べた。 次に、ビールのように発芽した穀物種子、たとえば、麦芽などのアミラーゼによりでん 粉を糖化し、酵母がその糖を発酵させて酒にする穀芽酒が第二グループに入る。古代エジ プトでは、もつばら麦芽でつくるビールが主要な飲料であったことが知られており、第三 王朝 ( 紀元前二六〇〇年 ) 頃の遺跡からは、ビールの醸造過程を描いた壁画や、ビールを 起 そ死者に供えたという記録が見出されている。また、古代東南アジアには、芽米アミラーゼ による醴 ( 甘酒 ) づくりがあることは第 5 章に述べたとおりである。 の最後に、第三グループに属するものとして、日本の清酒のように、カビのアミラーゼに 各 よりでん粉を糖化し、生成した糖を酵母で発酵させてつくった酒、すなわちカビ酒がある。 界 世 世界的に見ると、高温多湿でカビの生育に適した環境にある東南アジアに、 このカビ酒が 章 羶圧倒的に多い なお、中尾佐助氏は「麹酒の系譜」 ( 一九八八 ) の中で、世界のカビ酒について概観し ている。
まず、第一の群は、酵母により直接エタノールに変換される発酵性の糖、たとえば、グ ルコース、フラクト ース、ショ糖などを含む果実などを発酵させてつくる醸造酒であり、 ブドウ酒、リンゴ酒などがこれに当たる。めずらしいものとして、中央アジアにある、馬 乳や山羊乳などからっくられる乳酒が知られている。特に、ブドウ酒は古代ギリシアや ローマでは、神々に捧げる神聖な酒として尊ばれていた酒であり、人類がつくり出した酒 のなかでも古い起源をもつものである。 第二の群は、イモ類や穀類などのでん粉質を原料としてつくられる醸造酒であり、この 場合には、まずアミラーゼの力をかりて、でん粉質を発酵性の糖にかえることが必要であ る。そのため、この第二の群はアミラーゼ源の種類によって次のような三つのグループに 分けられる。 ます、第一のグループとして、現在では南アメリカを除く地域ではあまり用いられてい ない方法であるが、人の唾液に含まれるアミラーゼによってでん粉を糖化し、生成した糖 を酵母で発酵させた酒、すなわち、ロ噛み酒がある。 南アメリカでは、現在でも、トウモロコシやキャッサ。ハいもを使って、ロ噛み酒がつく られている。また、中国の江南地方、台湾、日本では、ロ噛み酒は古代によく使用された イ 4
表 5 ー 3 は、それらのアルコール発酵による発酵液の成分の分析結果である。ここから わかるように、生成アルコール濃度、香気成分量、グルコースなどの糖量も、麦芽を用い たアルコール発酵の方が芽米を用いた場合より、はるかに濃厚であった。ところが、麦芽 でつくった米酒はかなり褐色に着色し、味が重くて、複雑な品の悪い味であった。一方、 芽米酒の方は淡色で、あっさりした味と香味をもっていて、できあがった米酒の品質の上 から、アミラーゼ剤としては芽米の方が麦芽よりすぐれていることがわかる。特に吟醸用 餅酵母「協会 7 号」を使用した場合、品質はさらに改良された。 蘖 このことから、たとえ麦芽が活日の活躍した時代にあったとしても、芽米酒の方が良質 章 であるという理由で、古代には芽米をアミラーゼ剤にした醴酒がつくられていたのではな 第 いたろうか、ということが考えられる。 次に、より品質のよい芽米酒をつくることを目的に、清酒醸造で使用されている酘法、 すなわち、発酵液にでん粉質原料とアミラーゼ剤を次々に加えていく段仕込法による、醸 造実験を行なった。なお、「酘法」とは、酒造の過程で、原料を追加しながら味や発酵を 、原料を一挙に投入してしまうと麹の酵素力が弱まるので、それを避 調整することをいし けるために行なう方法であり、すでに『斉民要術』 ( 紀元六世紀 ) にその記述があること と、つは、つ ー 03
その後の調査で、彼らはこの製法を三〇—四〇年前に、同じサ。 ( ンナ地帯に住むクス族 から習い、また、クス族の人たちも、もともとはトウモロコシを使って芽米酒をつくって ついで稲籾に いたが、約一〇〇年前に稲が伝えられた後に、稲を使っての芽米酒づく カビを生やしたカビ酒づくりを考え出したというのである。これは、私たちが提唱した日 本のカビ酒 ( 日本酒 ) における麹の変遷、つまり芽米、さらにカビの生えた芽米、ついで カビの生えた蒸米、すなわち、米バラ麹へと移行したという推察に、たいへんよく似てお り、この一致に驚かされるのである。 では、なぜ芽米から米バラ麹への変遷が起こったのであろうか。その原因としては、私 たちが先の実験で示したように、芽米は一般にアミラーゼ力が弱く、カビによる汚染を受 けた芽米のアミラーゼ力の方がより強いため、酒ができやすかったからだと考えている。 ロ噛み酒の本場、南アメリカのカビ酒 南アメリカのインディオは南方モンゴロイドの系の種族であるといわれているためか、
芽米を用いて醴酒をつくる 芽米の調製と醴酒の製造 まず、籾を使って芽米をつくゑその方法は、 時 図 5 ー 1 に示すように、一晩、水に浸した籾を 摂氏二五度 ( ℃ ) の温度に保った暗い部屋に置 漬菌工芽 浸殺 % 発 き、籾が乾かないようにしておくと、七—八日 み夜秒。所 5 0 「′日っム も で根を出す。そのとき胚芽は籾の中で伸びてい る。それから、室温を三七℃に保ったままで発籾 るアミラーゼは活性が弱く 、芽米では醴酒をつくり得なかったのではないかとも考えられ る。また、アミラーゼ活性の強いことで知られる麦芽が醴酒づ くりになぜ使用されなかっ たかという疑問もわいてくるのである。そこで次のような実験を行ない 、芽米による醴酒 つくりの可能性を探ることとした。 砕 米 芽 図 5 ー 1 芽米の調整法