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検索対象: 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜
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1. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

中国における蘖と餅麹の歴史 中国には数千年前、商の時代に、すでに蘖や麹を使った醴や麹酒が存在していたことが 報告されている。 その証拠として、五経の一つにあげられ、中国でもっとも古い書物とされる『書経』 ( 尚書ともいう。孔子編 ) の中に、商 ( 殷 ) の時代 ( 紀元前一六世紀前半—前一一世紀 ) の王、 高宗 ( 武丁 ) が傅説という臣下を評して「若作酒醴、爾維曲蘖」すなわち、「汝は酒や醴 をつくる場合の麹や蘖である」と言っていて、中国では、すでに四〇〇〇—三〇〇〇年前 第 5 章蘖と餅麭 ふえっ

2. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

古代朝鮮の酒づくり 紀元六三六年に成立した『周書』によると、百済には内地 ( 中国 ) と同じように酒醴が あると記されている。これは古代における中国によるたび重なる朝鮮支配 ( 紀元前 = 一世紀 の燕による支配、紀元前二世紀の漢による支配など ) により、中国の酒醴のつくり方が中国 から朝鮮に伝播していたためであろう。 さらに、張智鉉教授の最近の報告によると、朝鮮半島では三国形成期 ( 紀元前一世紀 ) に、すでに酒麹と穀芽を利用した二種類の穀酒時代に入り、青銅器時代までに導入された すべての穀物 ( 米、小麦、大麦、アワ、キビ ) がその酒づくりの原料になっていたことがわ かる。ついで、三国時代 ( 紀元前五七—紀元六七六 ) の前期になると、すでに中国人の間 に「高句麗人は酒をつく 0 て飲むのが上手」と伝えられていて、さらに下 0 て三国時代後 で、彼の酒づくりの方法は、もちろん、その当時の朝鮮の酒づくりになら 0 たものである と考えられる。次に、当時の朝鮮の酒づくりを見てみよう。

3. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

第 5 章蘖と餅麹 あまざけ 期には、百済の高度の酒造技術が中国に認められていた。また、穀酒文化と醴酒文化が存 在していて、酒用麹を利用した酒醸造技術と酒用麹または穀芽を利用した醴酒醸造技術が 定着していた。また、高句麗の醸造技術は中国にまで影響を及・ほして、曲阿酒は中国で再 現され、また、新羅酒も唐代の風流人に愛用さ れた、と張教授はその報告の中で述べている。 ヌ それゆえ、わが国に渡来した活日は大神神社 麹雄 で、中国の二種類の方法をまねて、穀芽 ( 蘖 ) 餅道 一方では、酒 のを用いて祭祀用の醴酒をつくり、 酒 去。 用麹 ( 餅麹 ? ) を用いて麹酒をつくったものと る れ れ 考えられる。しかも、醴酒づくりに使用する糖 ら ら 化剤の蘖 ( 穀芽 ) に芽米 ( 籾を発芽させたもの ) っ っ で かを使用したのではないだろうか。というのも、 当時、米は貴重品であり、朝廷では祭祀用の神 酒の製造に白米が使用されていたと考えられる のであゑしかし、芽米のでん粉分解酵素であ

4. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

ン わが国でも、しとぎは昔から伝統的な神への供え物で チ あったが、おそらく、前章で述べたように中国の江南地方称 ルチト から、紀元前五世紀頃、呉、越などの非漢民族 ( 南方モンの名酒一ム・サイイ 麹の興ャレイ、プ ゴロイド ) が戦禍を逃れてわが国の北九州地区に数次にわ餅酒紹ジプアウタタ たって渡来したとき、稲作とともに、しとぎ、ロ噛み酒な 米 料 カ どの製法を伝授したのではないかと考えられる。このほ か、しとぎが古代に、中国から朝鮮経由でわが国にもたらけ 粉米ク米米米米米 おんちコちちちちち されたという説もある。 でもシももももも ア ジ ア 名麹 南 ア の 東 、餅葯ルギギパプギ用 しとぎから米餅麹へ、ーー中国・朝鮮の場合 方 米酒ムララルプラ併 地 と 南 江 方ア 粢 ( 餐 ) の文字が見出される最も古い記録は約三〇〇〇国 ンア餅 南ルネオピシ 年前に栄えた中国の周朝廟に捧げられた神饌品の中に出て 江一ドネリ一 ト域国パンルイイレ麹 表地中ネイボタフマ吠

5. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

また、古代の酒づくりにおけるこうした変遷については、私の発表とほとんど同時 ( 一 九九二年 ) に、花井四郎氏は『黄土に生まれた酒』の中で、古代中国の酒づくりの変遷に ついて、蘖 ( 小麦麦芽 ) からカビ汚染蘖 ( 蘖麹 ) 、ついで餅麹へと発展した可能性を示唆し ている。 それでは、中国、朝鮮で古代から現代にいたるまで盛んに行なわれてきている餅麹によ る酒づくりが、なぜ日本に根を下ろさなかったのだろうか。 を酒づくりに使用されている餅麹とは、前に述べたように、生の穀類 ( ときには一部を加 る 熱した穀類を用いる ) を粗く砕き、水を加え、ときには種麹を入れ、手または足で固め、 餅保温して、アミラーゼ生産菌のカビやアルコール発酵性酵母などを繁殖させた固形物を、 章 煉瓦状、団子状、ところによっては円板状などの種々の形にしたものである。それゆえ、 第 この麹は糖化剤であると同時に、アルコール発酵用の酒母でもある。したがって、蒸煮し た穀類にこの餅麹を加えることにより、穀類中の糊化でん粉はカビのアミラーゼで糖化さ れ、生成された糖分は酵母によってアルコールにかえられて独得の酒 ( たとえば、中国に おける黄酒 ) ができるのである。 日本の文献の中では、餅麹による酒づくりの片鱗は『延喜式』の中にある「造酒司ー 12 ー

6. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

いる。たとえば、「典薬寮」 ( 巻三十七 ) の中には、次のように記録されている。すなわち、 四味理仲丸甘剤。 : ・酒九升、酢二斗八升。糯米一石。蘖三斗。 大黄蜀椒各二斤八両。 : ・苟草麹濁活各一斤四両 ( 同上 ) 。 こうした記録は、前述のように、餅麹が煉瓦状とか団子状などの塊状をしているため、 づ 容量で計りにくいからと考えられる。一方、「釋奠新」での酒づくりではその記述は次の る ようになっている。 其醴斉以白米一斗八升爲粉。以九升爲麹。酪斉以斉米一斗二升爲粉。以六升爲麹。 章 つまり、この場合は、六升の米の粉を固め、種麹を加え、餅麹にしたものと思われる。 第 この項以外は蘖 ( 米パラ麹 ) を用いた酒づくりで、『延喜式』の時代、すなわち、紀元 一〇世紀の頃の日本では、古く中国や朝鮮から伝わ 0 たであろう餅麹による酒づくりはほ とんど行なわれなくなっていたと考えられる。その理由は、たぶん、わが国の気候風土の 中では、餅麹に適した微生物が育成できなかったためだろう。 それでは、中世以来、日本では餅麹による酒づくりは完全に途絶えてしまったのだろう ( 一 ) 雑給析 ( 三 ) 左右近衛府各册十七種。

7. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

来た道」において、近年になってわかってきた考古学上の新知見や傍証などをもとにして、 日本酒は中国の江南地方で先史時代に生まれた米麹の酒を源流にして、殷・周の古代王朝 時代につづく春秋戦国時代に、江南地方からわが国に渡来した人々によって、稲作農耕儀 礼の酒として伝えられたのであるとしている。 また、花井氏はそのほかの説として、日本の神話・伝説を中心に書いた歴史書で七—八 づ世紀頃に成立したといわれている『古事記』の中に、朝鮮の百済から須須許理という酒づ の くりの技術者が渡来して、旨酒をつくり、応神天皇に献上したと書かれていることをもと 代 本にした鄭大聲氏の朝鮮からの渡来説や、さらに、麹を使ってつくる酒がアッサムから中国 西南部の雲南にかけての地方で生まれ、中国南部の照葉樹林帯を経て日本に伝播したとい にう中尾佐助氏の説を紹介している。そのほか、よく実った稲穂についた青い稲麹と呼ぶカ ビの胞子を種麹に利用したという文献があることから、日本酒が日本で発明されたとする 小泉武夫氏の説もよく知られているものである。 なおらい 一方、加藤博士は前述の著書の中で、「直会とは神との共飲、共食を意味する。神に供 献したものを口にすることによって、神と同じ霊力が分け与えられるという信仰に基づい ていて、直会が神祭で大きなウェイトを占めていた。神祭はまず、酒づくりから始められ

8. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

がある佐賀県武雄市、佐賀市、秋田県男鹿市、青森県小泊村、福岡県八女市、鹿児島県串 木野市、和歌山県新宮市、三重県熊野市に一様に長粒系品種、または混合型品種の炭化米 が見出されていることを報告し ( 一九九八 ) 、徐福が中国大陸から東渡したことは中国古 代史では事実となっていて、日本における徐福伝説と稲の長粒系品種分布の一致が偶然の 渡一致であろうかと述べて、徐福の来日が史実であったたろうことを示唆している。 の 作 以上見てきたように、古代の日本列島には、南方に起源をもっ南方モンゴロイド ( 縄文 稲 人 ) が渡来し、そのあと朝鮮経由で北方モンゴロイド ( 弥生人 ) が渡来し、それそれの 立 の人々が、陸稲、水稲、水稲栽培技術を日本にもたらしたことが明らかにされつつある。 民 本 章 第

9. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

中国におけるカビ酒とその起源 中国には最も古い起源をもったカビ酒がある。すでに第 5 章で述べたように、孔子 ( 紀 元前六—五世紀 ) により編纂されたといわれている『書経』 ( 尚書 ) の「説命篇」の中に商 代 ( 紀元前一六 —前一一世紀 ) にすでに麹と蘖の区別があり、穀物を発芽させた蘖でつく る醴 ( 主として祭祀用 ) と、餅麹、すなわち穀物を生のまま、または蒸煮したり焙炒した りしてから砕き、穀粉にして水を加えてかためてからカビを生やした餅麹によるカビ酒 ( 麹酒 ) があったようだ。 これらの蘖や餅麹がどのようにして形成されるようになったかについては諸説がある。 ただ、地下貯蔵庫に貯えられていた穀物が豪雨などにより、水に浸り、発芽したり、カビ が生えたりして、蘖や麹が自然発生的に生じ、それらがアルコール発酵して、芳醇なアル 、という点ではどの説も大筋で一致して コール飲料 ( 酒 ) を人々に提供したにちがいない いる。しかし、醴は唐代 ( 紀元七—一〇世紀 ) には賞味されたものの、甘いためか、それ 6

10. 日本酒の起源 : カビ・麹・酒の系譜

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