テレビ - みる会図書館


検索対象: 天声人語にみる戦後50年 上
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1. 天声人語にみる戦後50年 上

る。 どちらが本当だろうか。大人でも心ならすもついテレビには時間を食われて困る。まして子ど もをテレビの前に放任しておいたら、プラウン管のとりこになろう。 " テレビッ子。がよく勉強 するとすれば、それは親のしつけがよほどよいということだろう。 テレビをよく視聴する子どもは、幼児でも実に色々なことを知っている。テレビのなかったこ ろの子どもにくらべて、その幅の広い雑知識は驚くべきものがある。が、人間形成にそれがどれ だけ役立つかには疑問がある。いまだに敢えてテレビを家庭に備えぬ親は、一見識というものだ ろう。 暴力や殺人などの番組については、その刺激的な場面を強く印象づけられ、記憶し、思い出す という高校生、青少年が多いそうだ。その累積効果が何かの機会にどんな風に現れるか、問題の あるところだろう。 いっかの調査でも、殺人場面を見ると「胸がスーツとした」という非行少年 があった。またある調査では、。 ヒストルや刀を使う暴力場面よりも、身近にあるナイフ、ひも、 椅子、ガスなどを凶器として用いる場面が、し ) 、っそう刺激的で、子どもの心を不安定にするとい う答えも出た。 子どもは案外 " 子ども向け番組。よりも大人と同じものを見たがるものだ。その辺にもむずか しいところがある。それにしても子どもテレビ漫画の音楽を、あんなに粗野でがさつでないもの にしてもらいたい。

2. 天声人語にみる戦後50年 上

「戦後は終わった」どころではない切実な社会問題である。それで各地の親たちが高校増設を求 める市民集会を開き、全国知事会も国庫補助や地方起債などを政府、自民党に強く要望している。 なるほど終戦っ子の高校生は四十一年から減るが、社会全般からいえば、所得の向上によって高 校進学率は今後ふえるばかりだろう。就職条件にしても高校くらい出ていないと社会に浮かび上 がれない。むしろ高校は " 準義務制〃にすべき時世だといえる。 教室が少々がらあきになっても、それが世界水準なみである。勉強したがる若い世代に、もっ と血の通う温かい思いやりで教育行政をやってもらいたい。 テレビッ子 * 貶 0 テレビの児童、青少年に与える影響について文部省が調査したところによると、家庭でそれほ ど心配する必要はないと楽観的な見方をしている。いわゆる " テレビ・チャイルド。はテレビの 前にしがみついて、運動もせす、勉強の時間も少なくなり、夜ふかしで睡眠時間も短くなりはせ 和ぬか、というのが親たちの心配である。ところがこの調査によると、テレビも二、三年たつうち に慣れて子どもらの珍しがる気持ちも薄れ、次第に落ちついてくるのが実情だという。またテレ 年 ビのある家庭の青少年の方がかえって勉強するそうだ。 ところが民間放送連盟の調査では、テレビ所有世帯の児童は読書の親しみが薄れ、非テレビ所 有所帯の子どもの方が、読書や日記をつける習慣、ものを考えることが多いという結果が出てい

3. 天声人語にみる戦後50年 上

少年法では十八歳末満のものに対しては「死刑をもって処断すべきときは無期刑を科す」とあ り、死刑を言い渡すことはできない。この被告の場合はその年齢制限をほんの少し超過して死刑 の判決となった。 戦後、一審で死刑判決を受けた少年はこれで二十人目だという。殺人、放火、婦女暴行などが 重なった凶悪な犯罪で、ちかごろは二十歳未満の少年でも大人と変わらない悪質犯罪がいかに多 いかを物語る。少年法の " 少年の年齢。がよく問題になるゆえんだ。 判決理由には「小説、映画などの影響で女性に対して欲情をいだくようになり、この欲情のた め二人の女性に対して婦女暴行、殺人の罪を犯したのだ」と指摘している。関谷裁判長は「被告 の残忍性は映画、テレビの影響が多いと思われ、文学の邪悪な要素だけをかたよって吸収したよ うだ」と語っている。 先日の「週刊朝日」によると、東京の三つのテレビで土曜と日曜の二日間に " 七十二人の殺 人。があったという。これは全くひどい話で、若い世代に悪影響がないはずがない。最後には正 義の士が勝って悪をこらしめたからよい、などと安つばい言いわけで逃げてま、ナよ、。 。しレオしテレヒ と映画はよほど自省の要がある。 人命軽視の凶悪な少年被告は死刑の判決を受けた。それは " 一罰百戒。として多少は犯罪の予 防にも役立とう。が、それだけで問題は解決しない。 この少年に限らす、大酒飲みの父親、一部 屋に一家八人も寝るといった悪い生活環境、それに映画・テレビなどの好ましからぬ社会環境な ど、悪質犯罪を生む苗床はいたる所にある。ことに少年の場合、犯罪一歩手前で目の行きとどい

4. 天声人語にみる戦後50年 上

1953 ( 昭和 28 年 ) 、東京テレビ局で本放送を開始。 3 ・ 5 ソ連・スターリン首相死去。後任はマレンコフ。 衆議院、吉田内閣不信任案可決 ( いわゆるバカヤロー解散 ) 。 ・中国帰還第一船、興安丸が舞鶴に入港。 ・ポストン・マラソンで山田敬蔵選手が世界最高記録で優勝。 第五次吉田内閣成立。 英国のヒラリーがエベレスト初登頂に成功。 ・四原子力スパイ事件の容疑者・ローゼンバーグ夫妻が死刑。 7 ・伊東絹子、ミス・ユニバース三位 ( 「八頭身」流行語に ) 。 朝鮮休戦協定調印。メッカ殺人事件。 日本テレビ、本放送を開始 ( 民放初のテレビ放送 ) 。 ・貶ソ連共産党第一書記にフルシチョフ選任。 水俣市で原因不明の脳患者 ( 水俣病公式認定患者第一号 ) 。 っ 4 . 4- -1 ーっ 4 奄美群島返還の日米協定調印。 「紅白歌合戦」を初の公開放送 ( 以後、人気番組に ) 。 マーケット。 この年街頭、店頭テレビが人気。青山に初のスー

5. 天声人語にみる戦後50年 上

英国の名優オリビエは「モンローこそ誇大宣伝とセンセーシ「ナリズムの完全な犠牲者だ」と ソ連政府機関紙「イズベスチャ」は「ハリウッドはモンローを生み、モンローを殺した」 と評した。それは貪婪あくなき映画資本とマスコミの現代米国文明を皮肉 0 た象徴的な表現であ るにしても、自殺を前提にした言い方ともとれた。 自殺とすればその原因は、彼女自身の持っ内在的なものや、大スターというものの " 作られた 人間像。と " 生身の女。との二重生活の内部分裂などが入りまじ 0 たものだろう。 モンローは肉体の露出と性的魅力を売り物にした。貧しい孤児の時代に「一糸もまとわぬ自分 が教会の前に立ち、人々がその足もとにひざまずいて礼拝」する夢を見たという。が、三十六歳 の彼女は " 肉体女優の限界。を内心感じていたのではないか。「花の色は移りにけりないたづら にわが身世にふるながめせしまに」で、そろそろ " 肉体派。にも別れを告げて、円熟した演技女 優として新しい芸域に転身できる素質があ 0 たのに、その心遣いがなか 0 たハリウッドが恨めし 映画を斜陽化させたテレビに追われた大スターの末路という見方もある。テレビは茶の間的親 和近感のある庶民的スターを必要とし、スターを日常化し短命化したという ( 「朝日ジャーナル」 ) 。 その意味でモンローの死は、映画の一つの時代の終幕といえるかもしれない。 年 ・ 8 ・ 5 没歳 )

6. 天声人語にみる戦後50年 上

378 怪獣プーム 子どもの世界では「怪獣プーム」である。ある人が数えてみたら、ざっと四十ほどの怪獣があ ったそうだ。みんな映画、テレビ、マンガに登場した " 銘柄品〃とある。 怪獣界の古つわものといえば戦前ならアメリカ産のキングコング、戦後なら国産のゴジラだ。 最近そくぞく登場するものも、ゴジラ系が多い。見た目に強そうなのと、ぬいぐるみの中に人が ラゴン、バルゴン、ペロリゴン、アロンなど、前世紀の生 はいるのに便利なせいもあるのか。バ き残り組が、たいてい口から火炎を吐いて東京あたりを襲う。 映画に出てきたギャオスという怪獣はコウモリ科に属し、身長六五メートル、とがった頭と大 きな口を持っている。こいつは夜行性で、性質はすこぶる凶悪。どうやら盛り場うらのギャング に似ている。ヒドラというやつは体重二万トン、マッハ・二で飛びまわるが、自家用車をさかんに 襲う。悪質なダンプのようだ。 変種、珍種もある。カネゴンというのは変身人間科で、がまロのような大きな口をもち、銀貨 を食物にする。おこづかいを盛んに要求する女子学生を持っ家では″カネゴンを飼育している〃 という向きもあるらしいが、いやカネゴンとは、議員族の一部を象徴するらしいとの説もある。 テレビのケムラーという怪獣は煙を出し、スモッグで住民をおびやかす。不届きな工場みたい だ。ストップゴンは走るものを空間にとめてしまう。急行停車くらいわけはない。怪獣ならぬ快

7. 天声人語にみる戦後50年 上

276 各派一致の形で " 十字架委員長。が立てられたものらしい 河上さんの演説は耳ざわりなカン高い奇声で悲壮味を帯びた絶叫型である。故浅沼氏と同じく マイクのなかった時代の遺物調で、おまけに " シカバネを乗り越えて。式の悲劇的美辞麗句がは いりすぎる。あれはなんとか改めてもらいたい。 江田書記長は数カ月間の委員長代行中に、例の " 江田節。と呼ばれるムード調でテレビの花形 となり、すっかり人気を高めた。そのあとを受けて河上委員長が相も変わらぬ絶叫演説をやって は、見劣りして損だろう。テレビ対談などでは落ちついた口調で風格がある。あの調子をそのま ま演説にうっしたらどうか。 社会党の歴代委員長は鈴本、浅沼、河上といずれもそろって金銭的に清潔で、人柄もまことに よい。安部磯雄いらい革新政党の伝統的にいいところだ。これは政治の浄化、政治道義確立のた め貴重な礎石となるもので、保守党もこの点では虚心に敬意を払い見習ったらよかろう。 河上さんの人格は立派だが、それだけでは委員長の役目が果たせるものではない。浅沼事件の あとだけに内紛を外にさらけ出したくないとの自重はあるものの、党内派閥の勢力争いは自民党 に劣らぬものがある。もしも河上委員長が党内主導権争いに利用されるだけのロポットと化すよ うでは、本人のためにも社会党の成長のためにも失望せざるを得ない。若いケネディに負けずに、 老委員長、しつかりと指導力を発揮してもらいたい。

8. 天声人語にみる戦後50年 上

川中島の謙信になそらえたか、新潟県出身なのでこの詩がおなじみだったのか、そんなことは わからぬが、この詩の末尾は「流星光底長蛇を逸す」である。流星のごとく飛ぶジ , ット旅客機 を乗っ取ったものの、とどのつまりは長蛇を逸すでは縁起がよくない。「壮士一たび去 0 て復た かえ 還らす」の方がまだ気がきいている。いや、そんなことはどうでもよい 考えさせられるのは、乗客 ( の一部だろうが ) とお別れバーティーめいたものが開かれた点で ある。乗客もおかえしに歌をうたったりしたそうだ。「十九歳だという学生の目に涙が光 0 てい ましてね。その印象が忘れられない」と、羽田で語った乗客もある。帰国したらカンパをして下 さいと頭を下げた " 学生。もあったという。いい気なものだ。 福岡や羽田に帰った乗客の話をテレビで聞いていると、総じて、乗っ取り犯人に対する怒りが うすいことに気がつく。異常な体験と疲れで、考えがまとまらぬせいもあるだろうが、珍しい旅 行でもしてきたような一種の浮き浮きした調子があって、被害者であるのを忘れたらしい人もい る。 まことに日本人は寛容なものである。しばられ、自由を奪われ、人質にされ、不法きわまる監 和禁状態にまる三日以上も置かれても、その重大な犯罪行為に怒らす、お別れのパーティーをや 0 たりする。妙なぐあいに " 情がうつって。しまうらしい。おひとよしというかセンチメンタルと 年 いうか。 " 日本一家。ならではの風景だ。「赤軍派の学生はキチンとして敬語使ったんです「て、 やり方は人道的じゃない ? 」テレビを見ると若い子など、つい「乗「取り」の非人道性を忘れる。 罪を憎んで人を憎ますというが、とかく罪も憎まぬところに日本人の甘さがある。犯人と被害 431

9. 天声人語にみる戦後50年 上

272 「乱闘に巻きこまれしかわが娘靴さえ脱けて夜半帰り来し」 ( 塚原丈夫 ) 。わが子のデモには母も 父も胸をいためた。「揺れ写るテレビニュースのデモ隊にいっしか吾子を探す哀しみ」 ( 坂水きぬ たお 子 ) 。そして樺さんが死んだ。「降りやまぬ雨暗くして安保阻止のデモに斃れし若き命よ」 ( 守屋 矢三郎 ) 五月、チリ津波が日本の岸を洗った。「ざわざわと音して海が涸れてゆく河のあやしく光りつ つあるも」 ( 花石一 ) 。各地で炭鉱の災害が続いた。「炭鉱埋没者名簿のいたまし十八歳の若きも 五十七歳の老いたるも」 ( 倉田逸子 ) 型機がソ連で撃墜され、バリ首脳会談もお流れになった。「黒いジェット機撃墜さるるニ ュースのあと襲う不安に児をいだきしむ」 ( 初野雄一 ) ダッコちゃんが流行した。「真似やすきものに婦女子のカンカン帽・ウインキーありて日本の 少女」 ( 真崎徹 ) 。そして雅樹ちゃん殺しがあった。「残虐に幼児逝かしめせせら笑む歪みし世相 をしわ寄せし顔」 ( 佐瀬道夫 ) 選挙を前に浅沼委員長が暗殺された。「少年突如演壇に走り人を刺すテレビもかなしこの国に して」 ( 高橋蕉雨 ) 。「一じんのきらめき秋の日に散りて日本は暗し浅沼委員長の死」 ( 田口謙一 ) 偽牛カン事件もあった。「馬の肉鯨の肉と罐に詰め牛肉で売るこの国の商魂」 ( 友田沢次 ) 。そ して景気のよさそうな所得倍増論も「貧富の差拡大するとう記事読めば常のごとくに家事はかど らす」 ( 高木みどり ) と感する人も多く、諸物価軒並み値上がりのうちに、ことしも暮れてゆく。

10. 天声人語にみる戦後50年 上

320 全米の怒りを代表して、オズワルドにリンチを加えたつもりかもしれないが、浅はかなことをや ったものだ。 この行為は、「大統領暗殺」を本当に憎んだことにならぬ。これから明らかになろうとする憎 むべきものの焦点をばかしてしまい、かっ、アメリカの恥の上塗りをしている。そればかりか、 多くの人にいろんな推測を抱かせる。ォズワルドはあやつられた「殺し屋」であり、ルビーはま たその「消し屋」ではないか、というような憶測もできぬことではない。 ルビーという男は「ロー・アンド・オーダー」 ( 法と秩序 ) という、アメリカ人が最もよく口 このルビー にする言葉の精神を裏切った。″、 しらざる腕立て〃だ。思慮のなさもはなはだしい。 に対して、アメリカの一部には称賛の声もあって、「勲章を与えるべきだ」といった婦人もある とのことだ。そうだとすれば、アメリカ社会のある人々は取り乱しているといわざるをえない。 ルビーを英雄扱いとはとんでもないことだ。暗殺と暴力に対する世界の憎しみに、結果としては ″水をさした〃おろかものではないか。 アメリカは大きな不幸といっしょに、暗い部分をさらけ出している。科学の粋を集めたリレー 衛星が大統領暗殺の報をのせた。容疑者射殺のシーンがまるでドラマのようにテレビで全米に中 継された。文明のおそろしい皮肉だ。むろん、アメリカだけの問題ではない。 ( ・Ⅱ・幻没幻歳 )