昭和基地 - みる会図書館


検索対象: 天声人語にみる戦後50年 上
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1. 天声人語にみる戦後50年 上

* 2 ・ 0 さよなら昭和基地 南極の昭和基地はとうとう″空き家〃になった。住みなれた建物も閉鎖し、越冬隊員も犬たち もみな「宗谷」に乗り移って、あとは自動式気象観測機械だけが今後一年間くらい動いている。 タローとジローだけが " 無人の基地みで留守番したこともあったが、こんどは″生あるもの。は 残っていない。 日本の南極行きは足かけ七年間にわたった。連続六回の遠征で延べ二百二十九人の観測隊員と 五百三十三人の乗組員が参加し、昭和基地の越冬には四回で延べ五十六人がオーロラのもとで極 地生活の貴重な体験をした。その総費用が国費三十一億円余りと民間寄付が約二億円。といって も、よく墜落するジェット戦闘機七、八機分にすぎない。 福島隊員の犠牲は痛ましかったし、カラフト犬を見殺しにしたのは残念だったが、南極探検に ありがちな大きな事故や悲劇を招かなかったのは何よりである。 地球の秘密をさぐる南極観測は、足もとの日常生活には縁の薄い地味な仕事だが、日本隊の学 問的な貢献は外国でも高く評価され、いま昭和基地にポッカリ穴があくのは、十カ国の観測隊に むしろ惜しまれているようだ。 閉鎖はやはりお金の関係でもある。日本学術会議のなかでも人文科学系統では、他のもっと切 実な問題に金を使うべきだとの意見もあった。それに宗谷も老朽船で、継続するなら新鋭の砕氷

2. 天声人語にみる戦後50年 上

1959 ( 昭和 34 年 ) メートル法施行 ( 土地・建物は・ 4 ・ 1 施行 ) 。 昭和基地のカラフト犬・タローとジローの生存を確認。 清宮婚約。「私の選んだ人を見ていただきます」と発一言。 安保改定阻止国民会議結成。 皇太子御成婚。結婚パレード中継でテレビが普及。 スチュワーデス殺人の重要参考人・ベルギー人神父出国。 ・三重県警、山岸会 ( 世界急進 N 革命団 ) 手入れ、幹部逮捕。 ースに決定。 7 ・児島明子、ミス・ユニバ フルシチョフが訪米。 伊勢湾台風、中部地方に明治以後最大の死者五千四十一名。 フルシチョフが訪中 ( 中ソ対立激化 ) 。 0 . に 0 安保闘争批判で西尾末広ら三十三名が社会党離党。 ⅱ・舛安保改定阻止統一行動。国会構内にデモ隊二万人が入る。 っム . 4 ー - 三井鉱山、指名解雇を通告し、三井闘争が始まる。 ・最高裁、砂川事件原判決を破棄し、差し戻す。 この年岩戸景気。教育、日本教育、フジテレビが開局。

3. 天声人語にみる戦後50年 上

リュッオウ・ホルム湾はついにわが観測隊の前に道をひらいた。その東岸オングル島は昭和基 地の名を得て、南極における科学の村づくりの足場となった。観測隊員、乗組員ら三十四名が上 陸、基地に勢ぞろいできたのだから、ますその成功を喜びたい。 ちょうかんず 鳥のように空から見た地図を鳥瞰図という。 ーズ・アイ、つまり鳥の目の視界だが、アメ リカでは″ミスター南極。のバ ード少将が飛行機で南極の上空をしきりに飛ぶようになってから、 両方の意味をひっかけた " バ ード・アイ。という新語ができている。わが観測隊の上陸成功も、 ヘリコプターや水上機の " ード・アイ。に負うところが多い。無氷海面や氷の裂け目なども空 からいち早く発見され、宗谷も雪上車も犬ぞりも " ード・アイ〃の先導で進んだ。南極では磁 石も逆立ちして方向の測定も困難だが、ヘリコプターやセスナーが氷原に旗を落として飛び、そ れを道しるべにするわけだ。 昭和基地は定められたが、そこに家が建ち食糧が貯えられなければ、人間は住めない。観測機 材がそろわなければ、学術観測はできない。それらの物をいかにして基地に運ぶかがこれからの 問題だ。 基地とい 0 てもそれは国の領土ではない。南極には国境はない。あってはならない。学問の世 界村の誕生である。国にとらわれない新しい世界観が、南極を舞台にこれから芽生えてくるだろ

4. 天声人語にみる戦後50年 上

1955 ( 昭和 30 年 ) 民間六単産、春季賃上げ共闘会議 ( 春闘方式開始 ) 。 衆院選で民主党が第一党 ( 3 ・四第二次鳩山内閣成立 ) 。 英首相チャーチルが辞任。 4 ・ 7 ィーデン内閣成立。 5 ・ 8 都下砂川町で立川基地拡張反対決起大会。砂川闘争始まる。 米軍、北富士演習場で射撃演習強行。各地で基地反対闘争。 宇高連絡船・紫雲丸が貨物船と衝突、死者百六十八名。 ・ソ連・東欧八カ国、友好相互援助 ( ワルシャワ ) 条約調印。 ・朽トニー谷の長男誘拐事件 ( 7 ・ 幻犯人逮捕 ) 。 ・舛共産党六全協で「愛される共産党」へ再発足。 8 ・ 6 広島で第一回原水爆禁止世界大会開催。 ・森永砒素ミルク事件発覚。患者一万余名、死者百十三名。 ・ 2 日本、ガットに正式加盟。 ・社会党統一大会。四カ年の分裂に終止符。 1 ー - Ln 自由民主党結成 ( 保守合同成立、年体制かたまる ) 。 原子力基本法、原子力委員会設置法公布。 この年洗濯機、冷蔵庫、テレビが三種の神器。うたごえ連動広がる。

5. 天声人語にみる戦後50年 上

236 生きていたタロー 南極の昭和基地に樺太犬二頭が元気で生きていたとは、まさにワンダフルである。ヘリコプタ ーで空から舞い降りた隊員たちに、大は喜んでとびつき、「お手を」といわれて、すなおに前足 をあずけて手をなめまわしたそうだ。胸のジーンとするほどいじらしい舌、、こ。 去年の二月に十五頭の樺太犬が置き去りにされてから十一カ月になる。一人の人間もいない寒 烈の基地に、一年近くもどうして生き長らえてきたものか。世界にもまったく前例のない話で、 奇跡といってよかろう。人間に代わって昭和基地の留守居をしてくれた犬たちの英雄的生存によ って、わが南極観測の再挙にも幸先よい夜明けが訪れた気がする。 タローとジローは鎖を引きちぎっていたそうだが、零下二十何度の寒さと物すごいプリザード にどうして生きぬいてきたものか。建物のかげに雪穴でも掘っていたものだろうか。それにして も一年近くの長い間食いつないだことが、動物学的にも常識を超えた不思議とされる。よく訓練 された大は共食いをしないという。あとの十三頭が鎖につながれたまま死んだとすれば、それは 食糧になったかもしれない。犬の本能でその骨はどこかへ埋められたか、プリザードで埋没した かとも考えられる。建物に保存された食べ物をさがし出したかもしれない。が、犬は目の前にあ る物をあるだけ食べてしまう習性で、人間のように一年分を細分して食いのばす知恵はない。や はり空腹に応じて、ペンギンやその卵やアザラシを獲物として捕えては生きのびてきたとしか考 ジロー

6. 天声人語にみる戦後50年 上

0 社会党の再分裂 1 9 を 6 0 ( 昭和年 ) 安保新条約可決 雅樹ちゃん誘拐 炭鉱の労使栃錦の引退 樺美智子さんの死岸から池田へ浅沼委 安保デモ 風流夢譚 員長の暗殺 山口二矢の自殺ケネディ当選 さよなら一九六〇年 1 9 を 6 1 ( 昭和年 ) 河上新委員長 国民保険 滅びゆく野鳥 ーリ・ガガーリン ) 8 宇宙飛行士第一号 ( ュ 崎の騒ぎ 柏鵬両横綱中学浪人 1 9 -6 ワ ( 昭和年 ) サリドマイド禍 さよなら昭和基地三河島の列車衝突 モンロー マーメイド号 ( 堀江謙一 ) 教政党柳田国男の死 安楽死判決 の自殺吉川英治さん教科書無償 砂 判 決 252 ライシャワー大使 原水協の分裂跚釜ケ テレビッ子 287 宗

7. 天声人語にみる戦後50年 上

えられない。 もしそうだとしたら、もっと狂暴な野性に帰っていそうなものだ。ところが、久しぶりに見る 人間をなっかしがって、見捨てられたのをうらみもせす、お手を出したり、じゃれたりしたとい うから、人懐っこいペットとしての気持ちを少しも失っていない。基地の建物にしみついた人間 の匂いをいつもかいでは、野性に帰らす、孤独に耐えながら、主人たちを忘れすにいてくれたの であろうか 人間の醜い争いの絶えない当節、なんとも心温まる南極便りである。宗谷帰国の折には是非連 れ帰って、生きている動物文化財として、長く大切にしたいものだ。電池時計も時を刻んでいた という。まさに生きていた昭和基地である。 小松川女高生殺し 東京の小松川女高生殺しの朝鮮人少年に対して死刑の判決が東京地裁で言い渡された。死刑と 和聞いても何の反応も示さす顔色も変えす、平然として見えたという。裁判長も、「審理のはじめ から罪の意識は全くなかった」と語っている。被告はきようで満十九歳だが、身長一七八センチ ( 五尺九寸 ) 、体重七〇キロ ( 一八・七貫 ) という大きさ。知能の発育もすぐれた方だという。第 一犯行当時は満十八歳二カ月、第二犯行は十八歳五カ月だったが、その " 極悪非道。な犯行は少 年あっかいする必要もないとして、刑事裁判に付された。

8. 天声人語にみる戦後50年 上

1957 ( 昭和 32 年 ) 1 ・ 9 自衛隊機、空中衝突で初事故。 ・美空ひばり、国際劇場で塩酸をかけられ、三週間の負傷。 宗谷がオングル島到着。南極観測隊、昭和基地設営へ。 ・ 8 群馬県相馬ヶ原射撃場で米兵が農婦射殺 ( ジラード事件 ) 。 石橋内閣退陣を受けて岸信介内閣成立。 3 ・ 7 ストックホルムの世界卓球大会で日本が五種目に優勝。 ・最高裁、「チャタレー夫人」の性描写は猥褻と有罪判決。 ・高速自動車国道法公布。 株価暴落。 岸首相が訪米し、日米新時代等に関する共同声明発表。 茨城県東海村の原子力研究所で原子炉に点火。 ー型発射成功。 ・糸川英夫ら、国産ロケット一号機カッパ 2 ・ 4 ソ連、世界初の人工衛星スプートニク一号打ち上げ成功。 貶・ 2 伊豆天城山で元満州皇帝の姪、愛新覚羅慧生が級友と心中。 日教組非常事態宣言 ) 。 愛媛の勤評闘争に警官隊 ( ワ 4 . -1 ー 百円硬貨発行。 この年「有楽町で逢いましよう」が流行。川月に売春汚職発覚。

9. 天声人語にみる戦後50年 上

1956 ( 昭和 31 年 ) 新潟県の弥彦神社で初詣客が将棋倒し、死者百一一十四名。 ・芥川賞に『太陽の季節』の石原慎太郎。太陽族映画が流行。 ・四「週刊新潮」創刊。初の出版社系で、週刊誌プーム起こる。 フルシチョフのスターリン批判 ( トロッキー名誉回復へ ) 。 5 ・ 9 日本登山隊、マナスル初登頂。 売春防止法公布 ( ・ 4 ・ 1 施行 ) 。 経企庁、経済白書発表。「もはや戦後ではない」が流行語に。 ナセル・エジプト大統領、スエズ運河国有化を宣言。 0 . つ」 基地拡張の砂川町第一一次強制測量で警官隊と反対派が衝突。 モスクワで日ソ国交回復に関する共同宣一言調印。 2 ・プダベストで反政府暴動 ( ハンガリー動乱 ) 。 2 ・四イスラエル軍、エジプトに侵入 ( スエズ動乱 ) 。 ・ 8 南極観測船・宗谷が東京出発。 貶・国連総会、日本の国連加盟を全会一致で可決。 っ 4 . っ ) 1 ーワ」 石橋湛山内閣成立。 この年神武景気 ( 年下期 ~ 年上期 ) 。水俣病がふえる。

10. 天声人語にみる戦後50年 上

1970 ( 昭和 45 年 ) わが国初の人工衛星おおすみ打ち上げ成功。 ~ 9 ・大阪千里毳陵で日本万国博覧会 ( 行カ国参加 ) 。 カンポジアでクーデター ( シアヌーク元首解任 ) 。 日航機よど号、赤軍派にハイジャックされる。 大阪・天六でガス爆発。死者七十九名、被災四百戸。 日本山岳会、エベレスト登頂 ( 世界で六番目 ) 。 ・日米安保条約自動延長。 東京・杉並に新型公害の光化学スモッグ発生。 銀座、新宿、池袋などで歩行者天国スタート。 新潟大教授、スモン病は整腸剤キノホルムの薬害と発表。 ・幻東京・銀座でウーマンリプ運動旗揚げ。 0 . 8 1 ・ - っ 4 日銀・公定歩合引き下げ。いざなぎ景気終わる。 1 ーっ 三島由紀夫、市谷の自衛隊に押し入り割腹自殺。 ・沖縄のコザ市で反米暴動、群衆五千人が基地に侵入。 この年種痘ワクチン禍が続発。自動販売機が百万台を突破。 植村直己、世界初の五大陸最高峰登頂者となる。