ソ連 - みる会図書館


検索対象: 天声人語にみる戦後50年 下
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1. 天声人語にみる戦後50年 下

ソ連邦消滅 一つにまとまっていたソ連邦が、消滅ときまった。年末までに、連邦機関を廃止するかロシア 共和国の管轄に移すかして、独立国家共同体に移行する。ソ連、六十九年の歴史に終止符、だ。 二人の会談で合意ができた。ソ連のゴルバチョフ大統領とロシア共和国のエリツイン大統領。 ゴルバチョフ氏は連邦の必要を力説していたが、これで自らの進退についても決断を迫られる。 三つのスラブ系共和国が、連邦解体の動きを加速した。ロシア、ウクライナ、ペラルーシ ( 白 ロシア ) 。続いてカザフなど中央アジアの五共和国が共同体に加わる予定だ。ソ連を構成する十 二の共和国のうち、さらにほかの共和国も加盟の意思を表明している。 四つの条件が必要だ、と会談前にゴルバチョフ氏は言ったそうだ。ソ連最高会議による共同体 創設の批准。防衛条約の締結。共通防衛政策を進められるよう、対外政策を調整することについ ての合意。そして、共同体に参加する共和国間の経済関係の早急な明確化。 成五つの原則が対ソ政策の基本、とのべたのは米国のペーカー国務長官だ。情勢を懸念し、自ら の原則を立てた。ソ連の将来はソ連人自身が決める。既存の国際的国境、共和国間の国境の尊重。 年 民主主義と法治主義の尊重。人権の保護。国際法と国際的義務の尊重。 六つの条件があって初めて価格自由化政策が成り立つ、と来日したヤプリンスキー・ソ連国家 3 間経済委員会副議長が語「た。財政の安定、民営化の推進、貿易の自由化、為替レートの安定化、

2. 天声人語にみる戦後50年 下

172 サハロフ流刑 ひばう 私は祖国が好きだ。祖国の風物、祖国の文化、そこに生きる人びとを愛する。だから誹謗 いいながらも、サハロフ博士はソ連の現体制を批判し続 者の役割を負うのは気が進まない。そう 裏切り者、反逆者、帝国主義の手先、そういった非難の中で、博士はたぶん、良心から激しく ほとばしるものを大切に守り続けたのだろう。ソ連史上最年少で科学アカデミー会員に選ばれ、 「ソ連水爆の父」と呼ばれたサハロフ氏は、若くして「超特権階級」の一員だった。その博士が なぜ、栄誉や高給や快適な生活を捨てて、反体制運動にのりだしたのか。 いちばん強烈な動機は、自由への希求だったのではないか。今回のサハロフ氏流刑は、人間の 生存にとって自由とは何か、という古くて新しい宿題を私たちに残した。世界史とは、自由の意 といった哲学者がいたが、サハロフ氏はまさにこの「自由の 識の進歩以外のなにものでもない、 意識の進歩」のため、闘いの先頭に立っているのだ、という気がする。 ソ連国内では公表されなかった名著『進歩・平和共存および知的自由』の中で、博士は「三つ の思想の自由」について書いている。第一は情報の入手と普及の自由であり、第二は先入観にと らわれぬ、だいたんな討論の自由だ。第三は、権威と偏見からの自由である。 反体制的言論を封ずるソ連の国内法や官僚寡頭政治がいかに知的自由の実現を妨げているかを、 しゃ

3. 天声人語にみる戦後50年 下

377 1 的 1 年 ( 平成 3 年 ) も「ソ連共産党に対する信頼」の高さを強調する。 そのアンドロポフ氏は「ソビエト社会は一枚岩であり一体である」とも言った。国内でも国外 でも、共産主義運動で「一枚岩」という表現が使われた時期があ 0 た。岩のひび割れが目立ち始 めて久しいが、ついに総本山の岩が崩れる気配だ。 二十世紀の初めから、世界を分けてきた資本主義と共産主義。その一方を担ってきたソ連共産 党が解散する、というのだから、世紀に一度の革命的な出来事である。組織の持っ悪、官僚主義、 独裁、特権階級 : : : 崩壊にいたる原因は多様だ。 人々は風通しのよい社会を求め、共産党に見切りをつけた。革命の後は、とかく無秩序になり やすい。おそらく党の解散から連邦の解体へと、今後も長い間、混乱が続くに違いない。どう う形の国が立ち現れてくるか。 『共産党宣言』の結語「万国のプロレタリア、団結せよ」を記した板に、モスクワ市民が加筆し たそうだ。「共産主義に反対して」と。 * 0 ) . っ 4 バルト三国独立承認の旅 一九四〇年。半世紀以上も前のことだ。エストニアがソ連に併合された。町にソ連の戦車がや って来た。首都タリンの日本領事館にも、ソ連軍の兵士が乱入した。室内を荒らし、備品を窓か ら道路に投げ捨てる。

4. 天声人語にみる戦後50年 下

1991 ( 平成 3 年 ) 終結。 ・多国籍車がイラクを攻撃。湾岸戦争に突入。 政府、多国籍軍に九十億ドル追加支援拠出を決定。 4 ・・ 1 ー 新宿に新都庁舎開庁。高さ一一四三、総工費千五百億円。 都知事選で現職の鈴木俊一知事が圧勝 ( 四選 ) 。 ・ソ連の元首として初めてゴルバチョフ大統領が来日。 ・滋賀県の信楽高原鉄道で列車正面衝突。死者四十二名。 ^ 0 ・つ 0 長崎の雲仙・普賢岳で大火砕流が発生。死者四十三名。 6 ・ 5 南アのデクラーク大統領がアパルトヘイト体制終結宣一言。 野村証券の大口法人投資家への巨額損失補填が発覚。 ワルシャワ条約機構解体。 ・四ソ連でクーデター。三日天下に終わる。 ・四ゴル・ハチョフ、共産党書記長辞任。共産党の解散を提唱。 ⅱ・ 5 宮沢喜一内閣成立。 貶・ 6 ソウル在住の元従軍慰安婦、日本政府に賠償訴訟起こす。 ・ゴルバチョフ、ソ連大統領辞任。日にソ連消滅宣言。 この年不正融資・過剰融資などで経営不振に陥る金融機関続出。

5. 天声人語にみる戦後50年 下

176 き、かっ戦う私たちの意志のあかしだ」。 * LO ・マー チトーの死 チトー大統領の死で、十九世紀生まれの世界の指導者は地球上から姿を消した。年表をくりな がら前世紀に生まれた世界的政治家の名を数えてみる。チトー氏と共にナチスと戦ったルーズベ ルト、チャーチル、スターリン、共に非同盟路線を歩んだネールの諸氏はすでにいない。 トルーマン、アイゼンハワー フルシチョフ、アトリー 毛沢東、ドゴール、ホー・チ・ミン、 といった十九世紀生まれの巨星たちは、第二次大戦後の歴史にそれぞれの個性的な光彩を放ち、 そして国際政治の舞台から消えていった。チトー氏は、その最後の星だった。 インタビューに答える生前の顔をテレビで見ながら、なんというがんじようそうな顔かと思っ ふき た。孤立無援の中でナチスと戦い抜いた顔だ。独立不羈の面魂である。 さすがのスターリンも、この反逆児には手を焼いた。裏切り者だ、ファシストの犬だと非難さ れながらも、この小国の指導者はついにソ連に屈することを拒んだ。「私は、別の道、スターリ ンへの譲歩の道を選ぶこともできた。そうしていたならば、私はさらに ( ソ連から ) 評価され、 光栄を与えられただろう。、、こが、 オその時こそ本当に魂を売ったと感じただろう」。ソ連の集中攻 撃をあびていたころのことばである。 ューゴの独立と解放をめざす指導者にとっては、ソ連の衛星国になることはまさに「魂を売 ( 8 ・ 4 ・没料歳 )

6. 天声人語にみる戦後50年 下

312 に連動する。 二人が何回も演説を繰り返したのは、世界の人びとに訴え、米ソ両国民に訴えることで、国際 世論の支持をねらい、その支持を背に米上院の批准を手中にし、ソ連内強硬派を抑えようという 意図があったからだろう。 メディアぐるみの、メディアを利用した国際政治のありようが定着した、という意味で今回の 米ソ首脳会談は記憶されることになるだろう。ソ連の書記長は「理性の勝利」を強調したが、も し会談が成功すれば、それは「演出の勝利」でもある。

7. 天声人語にみる戦後50年 下

アに連邦人民軍兵士が出動しても、不信感を持っ住民との関係は険悪である。兵士の犠牲者も出 ューゴスラビアでのこういう動きは、このところ各地で激しくなっている壮大な遠心力の作用 のひとこまのように見える。ソ連の国内で起きている、共和国の分離、独立への動き。東欧各国 が進めた独自の民主化、ソ連離れの動き・ その東欧民主化の流れの中で、昨年の初め、ユーゴの共産主義者同盟が事実上解体し、昨年は 複数政党制による選挙が行われた。一党支配のたがが外れ、民族主義が噴き出した形といえる。 ソ連、ユーゴ、クルド族。それそれ底で通じ合う現代の課題を背負っている。どう対処するかは、 国際社会にとっての難題でもある。 千代の富士引退 千代の富士の足の裏には、二つの特徴があるそうだ。一つは「逆三角形」。足の裏を、かかと 成をかなめとした扇子に見立てると、普通よりすっと扇がひらいた形になっている。親指から小指 までの間隔が広い。 年 土踏まずが前後のばねだとすれば、幅の広い扇は、左右のばねとして揺さぶりや投げに有利に 働く。もう一つは「三パーセントの違い」である。かかとを〇、つま先を一〇〇とすると、人の 重心は、四〇のところにある。だが、千代の富士の重心は、つま先寄りの四三バーセントの所に っ ) 0

8. 天声人語にみる戦後50年 下

起こって、建物の屋根が飛び、放射性物質が上空にふきあげられたのか。原因はまだわからない が、安全装置というものは、二重三重になっていてもどこかスキがあり、そのスキをついて事故 は噴出するのだ。 アメリカでスリ ーマイル島の原発事故があった時、大統領特別委は次のような報告書をだした。 「事故の再発を防ぐには、原発の建設や運転に関する組織や規制、とりわけ原発についての関係 者の認識を抜本的に変えなければならない」と。ソ連の事故が起こったいま、地球上の原発関係 者は再び、このことばをかみしめるべきだろう。 小出昭一郎東大教授は本紙で「巨大技術は必すどこかしら欠陥がある」「巨大技術には批判が ないといけない」と強調しているが、その通りだと思う。ソ連の場合、部外者の批判がはたして どのていどあったのか。 ソ連政府はこの不幸な事故の全容を詳細に公表すべきだろう。放射能汚染で各国に迷惑をかけ る以上、それは当然のことだし、公開の精神こそが事故抑止のきめてになる。 年 和 森の隠者・ノグチゲラ 年 ゃんばる 特別天然記念物の鳥ノグチゲラが絶滅するかもしれない、 ときいたので沖縄本島北部の山原へ 行ってみた。結論をいえば、このままではトキの二の舞いになりかねないと思った。トキの場合 は、仲間が中国に生急していることがわかってきた。だが、ノグチゲラは冲縄で絶滅すれば地球 * 5 ・

9. 天声人語にみる戦後50年 下

収容所列島 * 1 一人の偉大な作家は、一つの強大な政府に匹敵する。ただ一人、ロシアの大地にそびえ立っ作 家ソルジ、ニーツインの姿に、この言葉が決して形容のアヤでないことを知る。彼は、人間の勇 気が何をなし得るかを私たちに教えてくれた。 ソルジェニーツインが死ぬ覚悟をしていることは疑いない。「私が何者かに殺されたら、秘密 警察の手の届かぬ場所で私の作品は公表されるだろう」と公言してきた。秘密警察は躍起になっ てその原稿をさがし、極秘に保管していたレニングラードの婦人を逮捕した。彼女は百二十時間 一睡も許されぬ尋問をうけ、ついに保管場所を自白したあと自殺した。この知らせをうけたソル ジェニーツインは、用心のため国外に出した別のコビーによる二十六万語の『収容所列島』を、 リで出版することを承諾した。 それは各国語に訳され、やがてソ連といくつかの国をのぞく世界中の人々に読まれることにな るだろう。彼を投獄できるあらゆる理由を持ちながら、秘密警察はまだ手を下せずにいる。成り 行き次第では、ソ連の国際的な立場を苦境に陥れるほど、世界の良識の目が彼の一管の筆をじっ と見据えているからである。 『収容所列島』は、半世紀にわたるソ連の恐怖体制を克明に描き出したものだ。レーニンは革命 第一日に秘密警察をスタートさせ、それは国家存立の基礎となって今日までつづき、犠牲者数は

10. 天声人語にみる戦後50年 下

を初代大統領に選ぶ手はすだ。大改革である。強大な権限を持つ大統領が誕生する。内政、外交 の総責任者であり、ソ連軍の最高司令官でもある。 内閣にあたる閣僚会議、首相にあたる閣僚会議議長に、行政の実務をまかせる。これはフラン スの大統領制に似ている。同時に強力な米国の大統領に似た親政の趣もある。最高会議議長や主 要閣僚などを集めた大統領会議を主宰するからだ。なぜ、いま、大統領制に踏み切るのだろう。 これまでもゴルバチョフ氏は権力を持っていた。共産党の最高指導者、書記長としてである。 書記長はソ連の内外政策の方針をきめ指導する、と憲法に規定されていた。ところが事情が変わ 共産党中央委員会総会が、一党独裁をやめる、ときめたのだ。党が持たなくなる権限を大 統領に移すことが必要になる。 いわば党と国家の機能を分離させる措置だ。ソ連の政治の方向をきめるにあたり、大統領は党 政治局の意向にわずらわされない。 もっとも、一党独裁が消え、一人独裁が出現、ではたまらぬ との懸念が出ても当然である。すでに大統領制への反対デモの報道があった。大統領の独走を許 年さぬ規定が工夫されているらしい 成昔の小話に「工場に定刻出勤した労働者が逮捕された。外国製時計所持の疑いで」などという のがあった。コローチチ・アガニョーク誌編集長によると、近ごろの様子は「朝、政治的な小話 をしゃべっても、夕方に逮捕されるようなことはなくなった」。人々は年来の不満をぶちまけて 経済停滞は相変わらすだ。リトアニア「独立」宣一言の動きなど、民族の問題も深刻さを増す。 っ , ) 0