が頑張れない、元気がないという人々がいます。これはもう最大、最悪なきれ いごとです。 仮に国にビジョンがなくても、それがあなたの頑張れないことと何の関係が あるでしようか。国のビジョンのもとで頑張るのはそれこそ中国の文化大革命 であり、日本の軍国主義ではありませんか。 きれいごとをやめないと本質が見えてきません。きれいごとをやめないと個 人が自立できません。きれいごとをやめないと日本は元気を取り戻せません。 「きれいごと」を言い合っても世の中は何一つ変わりません。 平成二十三年一月 宋文洲
一、「華僑」を理解することでわかること 海外に出かけていく中国人は今、一億人前後いるんですよ。そういう人たちは、こ の十四億人の中にばらまいたら存在感がない。一億までは到達しないかもしれません が。海外に出たことがあるというのが一億人という話です。しよっちゅうという意味 では、一年間例えば五回以上は何千万単位ですね。中国の場合は国籍では華僑を入れ ているから。だから本土の人は、数千万かな。華僑だけでも約六千万いる。華僑とい うのは基本的に中国の永住権 ( グリーンカード ) か国籍を持っている人たちです。っ まりいわゆる国籍はまだ捨ててない。華僑というのは必ず帰ってくるんですが、必ず 中国に留まるとは限りませんけどね。 日本人では海外旅行に出る人たちが年に一千万人、人口の約一割を超えたのが多分 九〇年でしよう。
あとがき トラブルがないときも人々は単純なパタ 1 ンと概念をもってそれぞれの国に 特徴 ( あるいは烙印 ) を付けようとします。「中国人は : 「韓国人は : : 」と。実際に相手国で生活したこともなければ、相手国の人と付 き合ったこともない人にとって大変便利で時には気持ちがいいかもしれません が、そのことで我々は本質と真実から一気に遠ざかります。 平和、繁栄、成長。そして価値、本質、ビジョン。我々が前の三つを求めたい ならば、まず後ろの三つを求めないといけません。口先だけで平和、繁栄、成 長を言っても意味がありません。アジア、特にこれから世界の経済センターに なる東アジア、この我々の故郷にあたる地域に存在する共通の価値、本質、ビ ジョンに気づく必要があります。 本書はそんな強い思いで書かせていただきましたが、皆様の心に少し何かを お届けすることができたでしようか : 」、「日本人は : 宋文洲 1 7 9
まった理由は、もちろん人口がとまったとかあるんだけども、こっちから見て気がっ いたことかあるよ 市場をオープンにすればメリットを享受できる日本ーー農民党だった自民党 ? うちの家内もそう一一一口うけども、要は日本はまだまだ市場をオープンにしていない オープンにしないということの、幾つか事例を説明します。 僕は、田原総一朗さんとはいつも話しているんだけども、どうやっても日本のマス コミはだれも取り上げるつもりもないし興味もないことがあります。確かに取り上げ てもマスコミにはメリットがないしようかない話かもしれないけど 例えば農産物の自給率です。日本の自給率は先進国の最低とか言ってる。どうして かわかりますか。役所が、あれをどうやって計算しているか知ってますか。カロリー 計算です。日本だけです。そういう日本だけが特別な仕組みで計算していること自体 を、一般人には知らせてない。カロリーで計算するのは、私が知っている限り日本だ け。イギリスだってアメリカだってスイスだって、どこの国だってプライス、金額 べースなんです。カロリーで計算すると何が起きるか。まず、日本人が好んで食べる
国語が母国語の生徒は迷惑だし、母国語が違う子供たちはきつい。チャイニースが 第二外国語 セカンドランゲージの子供たちを中心にしているということです。 韓国人の危機感と日本の子供のモチベーション 僕は、一つは中国語を勉強してもらう。もう一つは、いろいろな価値観に触れ合え るから、うちの子供を人れた。そこで感じたのは、韓国人の勢いです。世間に出てや る、出なきや生きていけないという危機感かな。日本は韓国ほどじゃなくても、少し 外に出なきゃいけないという危機感があったほうかいいと実は思う。 僕が感じているんだけど、多分日本の子供たちや学生の一番の問題は、モチベー ションがものすごく低いことだと思う。そういうふうに感じた。それが最近の韓国経 済と日本の経済の勢いの差かなと思った。 今お話したのは、なぜ子供の教育をこっちに持ってきたのかという本質的な理由で す。このハングリーさというか気概が違うでしよ。北京のこの汚い空気よりはソウル : よっきり言って、ここの生活が好きで来る韓 ) に決まっているじゃなし。 のほ , っ刀しし 国人はいないよ。上海だって韓国人はいるしね。やつばり小さな国だから外で稼がな ヾロロ
たがらないし、言わないでしよ。だから誇りなんか持っている人はそう多くない。自 しいところがあれ 分の匠や技術、仕事に打ち込んでいる方は別だけど。ちょっとでも ) ば本当は移りたいんだなと思った。でも、自分の学歴が高くないとか出身大学の世間 での評価が低いとか、あるいは何かの理由があるのかもしれませんが。 基本的に当時の日本の場合は、大手の会社に就職するのは出身大学が何らかの評価 しいところに行けないからそこで我慢してい がないと難しかったですよね。それで、 るだけ。それがもうはっきりわかった、「そんな人材を雇って成果を出したり、競争 に勝たなければいけないなんて : : : 」。 ) ところがあれば、ほかに行くから定着し そのうえ、中小企業の社員は、条件がいし しよっちゅうやめる。中小企業の実態は中国と何にも変わらない。だけど日本 の中小企業の経営者は中国の経営者よりずっときつい 中国人は、上海で失敗しても、北京に来たらだれも知らない。気楽にやっている。 日本の場合は情報化されていて、どこへ行っても経歴がばれる。もともと物理的に日 ネ弓い。だから日本の中小企業の経営者は本当の経営者だ 本は狭いうえに、調査会土もム虫 なと思ったわけです。これはきついと思いましたよ。これが会社をやったときに見え
体験と立ち位置の違いによって見えたこと、気づいたこと つまり、日本が高いのは、品質が高いというのは言いわけのところもあったと思っ たいや、品質がいいのが高いのはわかるけども、そこまで高くしなくたっていし じゃないかと。だから日本は中間が多くてそうなっているのじゃないかと思った。 この前東京に十日間出かけたときに、ある方と前から約束していて、ぜひ一回お会 いしたいと。会ってみたら「宋さん、私のビジネスは、先祖 : : 」。つまりある方は 二代目、おじいさんが一代目。三代目は僕の友達。 中国に進出したいので紹介してほしいと言う。「あなたのところは流通でしよう」 と僕は言った。一言で言えば、建材流通卸業、要するに床とかトイレ、家を建てるエ 事に必要なものすべてを扱う。もともと、日本の戦後は、大工さんが木材をどこか自 由市場に行って買ってきてやっていたらしくて、それでそれを一代目が全部統合して、 材木や建築資材の間屋になった。 僕が知っている限りでは、その一次間屋に、今度は二次問屋がある。二次問屋は町 の材木屋さんみたいなものであって、そこで大工さんが現在でも仕人れをしている。 しかも日本の消費者は、大工さんに、これは材料費、これは施工費と各原価を細か く説明を受けてないらしい。多くの場合「丸ごとこのリフォームエ事は幾ら」です。