の一つの例示でしよ。 アメリカと中国の本屋さんに行ってください。と中国という一一一一口葉がついてい る本がどのぐらいあるかと。ほとんどない。あるのは政府系の本です。 僕と中川昭一さんとの本のタイトルは、『どうした、日本』です。これは私が決め たタイトルじゃない。出版社が売れてほしいから、決めた。 『やつばり変だよ日本の営業』。このタイトルも僕の本意じゃない。僕はこの本の中 身は営業の話なのにと思うけど、出版社は皆さん、申しわけないけれども宋さん、タ イトルは「日本」をつけないと売れないと言う。 『やつばり変だよ日本の営業』『ここが変だよ日本の管理職』。一個人が日本を語る のが好きなんです。僕は、ここがきれいごとだと思う。 どうして、まず個人が語らないのか。日本とあなた、あなたの営業と何の関係があ る。日本が占領されて、存亡の危機の非常に大変厳しい状況ならわかるけども、日本 は世界ナンバー 2 の国です。日本国全体と個人が日常的に向き合う必要があるので しようか。あなたの現実的な人生と何の関係があるのでしよう。家では奥さんに向 かって日本の何を語るのですか。セックスのときは日本のためにセックスしてますか 1 3 0
0 体験と立ち位置の違いによって見えたこと、気づいたこと 日中は別の空間にいる それと、中国はなかなか日本の市場に入り切れていないんです。それも一つの理由 だと思う。つまり、日本にどうせ行けないんだからということもあると思う。つまり、 服とかは別としてどうせ中国製品は日本に人れない。日中韓は貿易では、いつも日本 が黒字です。いつも構造的な赤字を抱えているのは日中では中国、日韓では韓国です。 日本の市場のことにちょっと戻ると、日本で中国の製品が何とかやっていけそうと か、勝てそうな分野はないと思う。それははっきり言ってフェアな競争を前提に考え る日本の消費者が満足するような、そこまでのレベルには中国製の商品が到達するの はなかなか難しいと思う それが別の空間という意味です。つまり、中国の企業は、日本で何かっくって日本 に売ろうという意識があまりない 大切な認識なんだけど、日本の企業と違うのは、中国の企業は売れるところがいっ ばいあるから、そこに出てい く。例えば、今プラジルとかロシアとかアフリカとかア メリカとかでも売れる。でもいろいろ売れている。日本ははっきり言って一番厳 しい市場です。
ビールメーカーの大手は、地ビールなんかをビールメーカーと認めてないから、地 ビールは別として、日本はもう三、四社しかない、サッポロを人れても。それでまた 統合するというんだけど、僕はネスレのまねを日本はしていいかどうかと思っている んです。ネスレはどこの国かわかってるよね。スイスです。 日本とスイスだけになるんならばいいんですよ。でも、僕は違うと思うな。日本は スイスになっていいのかね、なれないと思うよ。スイスはマーケットがないから もう一つ、よく経済学者が日本は潜在成長力があるのに需要が足りないから、さら に伸びるという仮説を言いますよね。本来だったら、日本というのはもう少し る が年二、三 % ぐらい伸びていいはずだと勝手に言う経済学者がたくさんいて、僕らも え 考 を そう思わないわけでもないんだけど、現実に起こっていることは名目の、売り 程 上げは一九八〇年代の終わりぐらいからほとんどずっと横ばいか、むしろ減っている。 成 の 二十年間ぐらい変わってない。賃金も減っている。だから伸びてないのに、みんなは 国 中 と そのことをわかっていない。政治家はきれいごとで一一一口うためにそう思うのかもしれな 本 いけ・い」、も 0 中国から日本のマーケットを見たときに、日本のマーケットが伸びにくくなってし
教育こそ重要なインフラ 日本が次のステージに行く本当のインフラというのは、教育なんだと思う。本当は ここが一番次のステージに行くための重要なインフラだと思う。 日本は、少なくとも今までの成長を支えたインフラとこれからのインフラは違う。 何で僕がそう思うかというと、前に説明した「プレイス」を広げようと思ったら、教 育を変えないとプレイスは広がらない。そのためのインフラが教育ということを国民 に理解してもらうというのは大変だと思う。教師を全部入れかえなきゃいけないで しよう。すごい大変。大変なコストがかかる。昔の高度成長を支えたインフラよりも コストかかかるかも知れない 何で日本の今の教育はだめになったかというと、日本の教育のよさが少ないからで もないし、日本の教育水準が下がったのではないし。つまり、まだ明治維新の教育の ビジョンと枠組みと変わってない。 ) しまだに「底上げ」を一所懸命やることに力を人 れている気がします。 底上げというのは、今中国に必要なんだよ。でも、日本ぐらいになったら、底上げ じゃない。日本ぐらいになると、やつばりそれこそもっと上に突出するような優秀な 1 0 8
まった理由は、もちろん人口がとまったとかあるんだけども、こっちから見て気がっ いたことかあるよ 市場をオープンにすればメリットを享受できる日本ーー農民党だった自民党 ? うちの家内もそう一一一口うけども、要は日本はまだまだ市場をオープンにしていない オープンにしないということの、幾つか事例を説明します。 僕は、田原総一朗さんとはいつも話しているんだけども、どうやっても日本のマス コミはだれも取り上げるつもりもないし興味もないことがあります。確かに取り上げ てもマスコミにはメリットがないしようかない話かもしれないけど 例えば農産物の自給率です。日本の自給率は先進国の最低とか言ってる。どうして かわかりますか。役所が、あれをどうやって計算しているか知ってますか。カロリー 計算です。日本だけです。そういう日本だけが特別な仕組みで計算していること自体 を、一般人には知らせてない。カロリーで計算するのは、私が知っている限り日本だ け。イギリスだってアメリカだってスイスだって、どこの国だってプライス、金額 べースなんです。カロリーで計算すると何が起きるか。まず、日本人が好んで食べる
て、ロシアはマーケットでの商売にならない ロシアからもあまり来ない。ど一つも中 国からは行っている人は多いらしい。でも、ロシアから来るのを感じない 次にインドです。中国に来てびつくりしたのは、インドに関するニュースの多さ。 対照的に日本に関するニュースの少なさ。僕にしてみれば、日本は少なくとも先進国 のなかでまだ二位ですから、全世界でも経済の規模でいうと二位ですから、日本関係 のニュースは少なくともアメリカの次かなと思った。最初の三カ月、四カ月は、日・ 中・韓は政治間題がいろいろあって、国民感情とかがあるからだと誤解していた。全 然関係ない。 多分、中国は戦略的にインドを相当意識していると思う、ライバルとして。コンペ テイターとしてね。日本は先進国だからライバルじゃないと思っているんだよ、ここ では。でも、この本の読者は誤解しないでほしい。つまり、日本はもう相手じゃない という意味じゃなくて、日本と中国はトラブルがないと思っている。つまり、トラブ ルがないっていう意味は日本と中国は完全に別の空間で生きていけると思っているら しい。同じ次一兀で競争はしない。
0 東アジアマーケットでの新しい可能性を考える それがなかなか日本ではできていないがためにうまく組み合わせを考えることが苦 手なのか、「新結合」がまだ十全ではないのか。その辺でもう一回、立ち位置や目線 について考える必要があるのかもしれない ちょっと具体的にあった例で説明をします。田原さんに誘われて <Z< コンチネン タルホテルで毎月一回、政治家のだれか、もちろん総理になる前だけど鳩山さんも、 お越しいただいたことがある。毎月一回政治家のだれかにお越しいただいて、日本の 経済政策とか政治について、率直な忌憚のない意見交換をする。 この間は民主党の方が来て、話して帰った。そのあと暇だから僕ら残っている七、 八人がおしゃべりしていた。そこで、だれかがそのときちょうど「ベトナムの原子力、 いや、惜しいね、韓国にとられた」と。そういう話を始めた。日本政府がもっとお金 を出して、日本企業をサポートすべきだと。このままじゃ、日本が原子力は強いと 思っても韓国に負けるじゃないかと。つまり本来は、日本政府はもっと国として原子 力事業を応援すべきという、まともな話をしていた。このままじや韓国に負けるじゃ ないかという話は、別に日本を否定したわけじゃないじゃない。日本人の経営者のだ 1 6 3
一、日本から見えたこと 利益を出していいんだ まず日本から見えたことですが、僕も時代時代や体験・経験の積み重ねによって変 わってきたんです。 二十五年前から日本にいて、日本から見えたことは何かというと、まず、「利益を 出していいんだな」と思ったということです。 中国にいたときは、ヾ ノリバリの社会主義と文化大革命のもとですから。 : ナれ 僕は神様じゃないから、今だって見えていることが本当かどうかわからなし ども相対的に言えば、どうして見えるかというと、日本だけで暮らし成長してきたビ ジネスマンとは違う経験をしているからだと思う。 こういうふうに言えば、僕の見解、僕も変わってきたことがよくわかると思うんで
う。うちのおばあちゃん ( 家内の母親 ) は、納豆も刺身も食べない、本当に。若いと きから食べない つまり、僕が言いたかったことは、そういう傾向がある、統計的にそういうことが いえる、この二つです。例えばその国はこうだねと言った場合は、基本的には、統計 的にそういう傾向があるんだな、割に多いね、ということです。そうじゃない人も 」っよ 日本は割ときれいごとがあるというのは、統計的にそういう傾向が強いですねと 言っている。なぜならば、政治家が言うのは当たり前だけど、普通の国民がその辺の 国居酒屋できれいごとを言うのはほかの国では見られないと思う。中国という意味じゃ ない、アメリカ人の友達を見ても、ああいう話をしない 統計の一つのすごくわかりやすい話をすると、日本人はそういうことをあまり チェックしないからですが。本屋に行く、本や雑誌、本を置いているところに行って、 日本という字を数えてみてください。とても多い 「日本は」「日本は」って、「日本」がつく本がごろごろしているのに気がつくと思 う。何で日本は一般論に置きかえてしまうんだろうと思う。つまりきれいごと好きか 1 2 9
0 人間を育てる教育をしないと、これから人類に役立つような知識を次々創出するよう な国を目指すべきでしよ。そのようなビジョンと枠組みが必要です。 高度成長が終わる前までの日本は、国民のレベルを底上げすればよかったと思う。 特に戦前の一時期まではその原型が必要だった。 先進国人りして、大量生産、大量消費というモデルに依存できなくなった日本は、 アイデアとか構想力とか、みんながやることと違うことをおれはやってみるとかああ いうことかないと生きていけない 日本がいつまでも中国なんかと競争しちゃうのは、海や湖に飛び込むねずみと一緒 る だよ。しかも中国の十四億の中の底辺のほうと。それじゃあ疲れるだけだよ。 え 考 を もしそうならば、次元を変えた競争と協調 ( 役割分担 ) の仕方を考えなきや。つま 程 り、今までの発想は通用しない。やつばり個人個人がアクテイプになって。別に日本 長 の国内に限定した、狭いところで傷口をなめ合っているのが日本人じゃないと私はいっ 中 と も言っている。 本 日 今の時代だから中国にも日本人はいつばいいるけども、だれもが日本のことを大事 にしている。むしろ中国にいるから日本のことを考えざるを得ないと思う。 1 0 9