一、どんな体制でも、消費者が商品のレベルを決め、 国民が政治のレベルを決める 中国の商品がどうしてだめかって、消費者がだめだからなんです。それで満足し 尸違しなく商品力は、絶対 ちゃうもん。政治が国民のレベルに適合しているように、劃 ) 消費者のレベルが決めていると思う。 日本のメーカーの多くの「商品」は、何で今まで中国で売れないかっていうと、 「であるべき」と言うから売れない。それは企業側や担当者の「であるべき」でしょ う。消費者は、経済や市場や自分たちの収人の変化を見てそう思ってない。 先週も老人ホームを経営している友人が日本から来た。何回も来る。親友なんです。 。何で中国で商売しなきゃいけないのか」「いや、今は 僕は、「あんた来なくていし 日本で老人ホームの市場はないから」。ないからといって、無理することないじゃな
0 それで、何回見ても決められない。彼いわく、今中国のモデルルームを見ると、み んなべッドが必ず二つある。二人用です。だから絶対だめと一一一口う。富裕層をねらいた いからと思っているのに、富裕層なら絶対二つだとは思えない 僕は日本でも中国でもこの事業領域には興味ないからこの業界を知ってるわけでは ない。でも、どこを見てもなぜか、高級老人ホームでも一つの部屋にべッド二つ。一 人寝用のべッドが二つ。ルームメイトといってね。私は知らないんだけど。 たまたま、ある中国のこの業界の専門家に会った。高級老人ホームでも一つの部屋 わ 変 にべッド二つ。一人寝用のべッドが二つというのはどうしてと聞いた。 も で 国 の 中国人のプライバシー感覚 ど 多分、中国の女性と一緒に一年間暮らせばわかるように、中国人は、特に女性なん 原 かは、日本みたいにプライバシーに対して敏感じゃない。平気で女性同士裸で一緒に 理 原 や いるとか。我々でいうと女生らしくないんだけど。だから、なぜか一人よりももちろ 質 本 ん二人のほうがいいって、ほとんどの人が思っている。 しいと老人自身が思っている。 そういうもんだという思い込みの文化の伝統かもしれない つまり、一人よりも二
0 体験と立ち位置の違いによって見えたこと、気づいたこと る必要はなくなるから。それで、今度はべンツとか乗用車で顕示し始めた。それも過 程の問題だと思う。 文化の差をお互いに受け入れるしかない だけど前に言った「差異」の半分か三分の一ぐらいは、永遠に文化の差として、特 に日中のビジネスマンで行ったり来たりする人にとって、もうそれは受け入れるしか ないかなと思うんです。 例えば女性のあり方って結構大きいですよ。僕はこの半年、「えつ、女はこれでい いのか」と思うことがいつばいあるんです。自分の妹とその主人っまり義理の弟を見 ると、家庭はちゃんと普通にやっていると思うんですが、「あなたは何でこんなこと をするの」「何で旦那にそういうことをさせるの」と妹に言っても、「うん ? 彼はそ れでいいんだから私もこれでいいの」。「兄ちゃんは兄ちゃんで義姉さんと自由にやれ こしし」、「義姉さんは日本人だから、ああいうふうで別にいいんだけど、私たちはこ れでいいんだから」と妹は言う。 老人ホームで気づいたことをお話します。このあいだ取材に行って聞いたら、入居
人のほうかしし ) と思う人がいる。マーケットとしては、そう考える人がたくさんいる ということです。ということは、べッド一つにするというのはコストを倍にすること になる。 不動産もビジネスだから、少なくともコストを倍かけて、お客さんの満足が倍にな つまり中国の 一割も上がらない。だから商売が成り立たない るか。全くならない 老人ホームビジネス事情はこういうことなんです。 じゃ、僕はどっちかといえば、絶対一人。うちの奥さんも絶対一人。華僑でもほと んど一人、これは理屈じゃない マーケティングと投票行動は同じかもしれない マーケティングとはある意 マーケティングと投票は一緒と考えてもおかしくない 味でビジネス ( 商売 ) における政治と置き換えられる。政治家も同じ文脈で考えると 商品と同じ。票はお金。我々が商品として買う。それは本音で投票したと同じです。 あれは投票です。レジは投票箱なんだ。 だから、そういう視点に立てば、国民、消費者が最後に政治を決めているのと同じ 1 2 0
0 日本と中国の成長過程を考える ることがきっとあるなというのをとても感じる。だから日本の今のビジネスマンの人 ほかの発展途上の大きなマーケットでうまく たちで、中国でうまくいってないとか いかない理由がもしあるとすると、もう一度考え直さなければいけな ) お客様が企業を育てられるのか 前に話をした老人ホームをその例にすると、例えば日本では「お客様 ( 顧客 ) が企 言葉だと思っていた。だから北京に来 業を育てる」という言葉がある。僕は結構いい て、中国に来て、日本が違った意味で見えてきたことがあります。 「お客様 ( 顧客 ) が企業を育てる」が本当と思っていたんですよ。心底からそう思っ ていた 中国に来て変わった。それはどういうことかというと、地元の人を、つまり昨日も 無錫 ( むしやく ) から北京に来たすごい中小企業のおやじが横に座って、汚い格好を して、まあ田舎者かなと思ったんだけど、一時間以上話を聴いたら、すばらしい経営 をしている。無一文から始めて、今、年間一億五千万ぐらい利益を出している。はっ きり言って、そういう中小企業経営者は、見た目は汚い田舎者でも、北京に出てくる
0 要ないから。つまり特殊な市場だからなんです。 こんなことを言って日本の人は誤解しないでほしいんだけど、悪い意味じゃない あまりにも消費者の要求が厳しいから、そこはちょっと無理という意味。それは多分、 「プルーオーシャン」と「レッドオーシャン」のどっちを選ぶかの話で、日本に行く と こ もっと楽に勝てるところはいっ とレッドオーシャンにも参加できないかもしれない づ 気 ばいある。そう、そこまで必要ないんです。 と これは日本のメーカーの失敗する理由でもあるんだけれども、「これじゃなきゃい こ え けない」と市場や消費者の嗜好を見ないで勝手に思い込んでいる。前にも触れた老人 見 て ホームのべッドの話もそうだけど。 っ よ 一 J 唯一かもしれないけれど、その発想を持っていないのはスズキぐらいだよ。中小企 違 の業だからできる。日本の大手は全部頭が固い。だから僕は、日本の中小企業を本当 置 の「経営」と言うのはそういう意味です。だからあの " おやじ。鈴木修さんがいつも ち 立 と 「おれは中小企業のおやじ」と言っているのは、誇りを持って言っていると思う。決 体 してコンプレックスじゃないから。そ一つじゃなきや、インドで成功できない 日本の大手自動車メーカーのナンバー 2 の方が僕の友人で、北京の家にしよっちゅ
これはも一つ一一一日つまでもない。それは実はそれまでもしよっちゅ一つ、よくあることだか ら、それには全然ショックを受けない。そんなもんだとわかっているから。 むしろ改めて違うなと思ったのは、誤解されてしまうと困るけど一つは国民の「平 均レベル」の低さ。文化とか社会的な雰囲気とかそういったものですがこれを一番実 感したんです。 かなりいろいろあるんだけども、中国はレベルが違う。もちろん日本にだってレベ ルが低いコトやモノはあるんだけど。 これから一一一口うことは全部、程度の話です。絶対的にあるとかないというのはない どこの国でも一緒。 中国の経済力は日本の一九六〇年代か七〇年代じゃないかという議論があるんだけ ども、確かに北京とか上海の市民は車を二台も持っている人がかなりふえていてマイ ホームを持っていて、そう思うと日本の八〇年代かなと思うときがある。だけど、町 を歩くと、若い人までペッペッと痰を吐く。そういう細かいところを見ると、痛感し たのは、果たして中国はあと百年たってちゃんと先進国になれるかなと思った。 皆さんが一言う先進国は収入のことだけども、中国は、上海、北京を合わせると、収
この人がどういう心理かもわかんないけれど、多分普通の庶民だと思う。 堀江さんが逮捕されたことをきっかけに世の中は、がらっと逆転したんだと思う。 一種のカタルシスかも知れない。 現実でしたが、だけどそこまで艮みに満ちたきつい言葉をやじうまが吐くのかなと 思った。これは田原さんとの本の中にも人っているんだけども、あの前後はちょうど 小泉さんの靖国神社の問題も絡んでいたし、中国でも日本の野球かサッカーのチーム に一部の中国の嫌なやつらが失礼なことをしたせいもあると思うけれども。 僕はリコーの関係者に友達が多い 。リコーのグループ会社の社長が僕の友人で、お 互いに家に遊びに行くんです。良く子供と一緒に行ったりしてね。 ある日、「宋さん、ひどい話だ。うちのポストに、中国語が聞こえたら通報しろ」 と近所の警察がビラを人れてきたんだよ。「えつ、それ、どういう意味ですか」。多分、 近くに窃盗団が出たんじゃないの。それで交番が、中国語が聞こえたら電話を入れ ろって。「おれたちの誰かがもし中国語をしゃべったり、あなたが来たらどうするん だ」と僕に言った。「結局どうしたの」「うちの家内が抗議したんだけどね」。「私は中 国人の友人もいるから、中国語をしゃべったら、それでもあんたに通報しなきゃいけ
一定以上の比率の株主になるのをみんな嫌がり、抵抗していたじゃない。当時、覚え てますか ? 村上さんがどこかの会社の株主になったら、みんなどうでした。 当時を思い出すと、例えば、村上さんが村上ファンドの名義で自分の企業の株を買 い始めたら、どうやって防衛するかって、当時みんなそうじゃない。だからそのとき 日本の証券会社、野村證券、日興証券とか大和証券には、村上対策という事業化モデ ルまでできた。だから、どうやって村上が入りにくい企業にするかって、講演会は大 繁盛だった。 そういう意味で、そういう流れや空気は嫌だった。だって、上場しているんだから、 自社の株をだれが買っても自由ですね。 彼が一回、僕のところに来た。それは、『日経ビジネス』でのインタビューに、株 が流動化しても ) しいじゃないか、と私が答えたから。日本の会社はみんな株が流動す るのは嫌だと、個人株主がふえるのは嫌だと。当時僕が『日経ビジネス』で言ったの は、個人株主がふえて不安定になると言うけども、たくさんの個人株主がいれば、個 人の思惑はばらばらだから、売る人もいれば買う人もいる。それは決して不安定では ないよと。リスクが分散していいというようなことを言った。だから、個人株主がふ
三、「きれいごと」、本音と建前をめぐる考察 日本と日本人社会の心象風景 必要でもないのにうそをつく。必要でもないのに、本当のことではない建前のこと を言う。意味もないのに硬い話をする。 僕が言うきれいごとや建前は道具として使う場合は結構です。選挙のときとか社員 大会のときとか、お客さんとの会議とか、新聞、雑誌など必要なときはいいナ 僕がここで何を述べたいかというと、これから述べることは全部統計的な話です。 個人におろしちゃいけないことです。個人におろしたら、私は日本人と中国人は何も 違わないと思う。統計の話と個々の話は違う。統計と傾向です。中国人は痰を吐く ねって、僕は反論しない。なぜならば、本当に吐く人が多い。でも、僕は吐かない ただ、反論する必要はない。ああ多いなということです。 日本人はみそ汁を飲むねって、日本人は刺身を食べますねって、反論しないでしょ ヾ 0 1 2 8