もし、原材料費の費目があっても、家電など価格が比較的分かりやすいものはのぞい て「うちではこのくらいかかる」としか説明されての交渉しかできないという。実は 大工さんも材料で抜いているらしい。各段階で、各資材ごとに価格に上乗せしている。 一次問屋のところで一回、町の だから、材料費に三回乗せられているかもしれない。 材木屋さんで一回、施工業者で一回。だから合計三回マージンを乗せられている、材 料からドアの一個の取っ手からトイレの便器まで。 そこに僕は気づいた、それでお会いした方に、あれはどうしてそうなっているので すか、不合理な気がするんだけど、と言ったら「宋さん、そんなことを言ったって、 おれの商売はどうするんだ」「ああ、そうだね」って ( 笑 ) 。「 * * さん、いずれそう なると思一つけど」と一一一口った。 そうしたら「こういう流通のビジネスモデルを中国に持っていきたい」と。僕はあ きれて、「わかった。それでは私は紹介しない」。 はっきり言って、私は紹介しようが なかった。 最近、彼はもう一つのビジネスの領域もやっている。建て売りです。それが売り上 げの三分の一の利益を出している。問屋が売り上げの大半ですが、建て売りもすこし
0 東アジアマーケットでの新しい可能性を考える 標準化も一つの方法ですが、そうすると何を反論されたかというと、「宋さん、う ちの会社はすごい会社なんだよ。標準化できないんだよ」。わかるでしよう。 こういう会社の場合ですが、「標準化できない」と言い出したらもうおしまいです。 できるはずだと言ったらけんかになる。 だから理解者を探し求めて僕は営業して歩くしかなかった。相手にしてくれたの はどういう人かというと。「いや、宋さんね、標準化できないところは多いけど、ど こをどうやったら標準化できるか」って質問、これを僕は相手にする。「うちは難し ゝは、もうさよならと言う。「ああ、そうですか、じゃあまた いから標準化できなし」 ね」って、世の中にはいつばい困ったりんだりしている人がいるから。 前向きな人がいて、「わかるけど、うちの会社は標準化できないところ多い、どう したらいいの」っていう質問に対して、僕は初めて答える。「標準化できない部分は あるんです」と言った。これ、そのとおりだよ。できない部分はもちろんある。 僕が言ってる標準化というのは、「標準化できる部分と標準化できない部分を分け ることも含まれてる」と言った。理解できない日本人は一人もいない。みんな「そ のとおり、そうか」と、「それなら考えてみよう」と。一割でも標準化できたらいい 1 4 7
ところが、僕が本音というときは、日本人も中国人もくそもないの。分けた時点で、 僕にとってはもうおしまい、本質がずれてしまうから。 要は、言いたいことは、決して日本人の美学への否定ではなくて、もっと、あなた かどう思うかというのを自信を持って答えてほしい。 名刺を捨てて、肩書を捨てて、 あくまで個人で考えて、答えを出して生きるということを願っているんです。組織の こととか国のこととか、とりあえず切り離して。 日本は終身雇用と言うけど、実際は日本にはいろいろな会社があって、全員終身雇 用になったわけないじゃない。今なら、「終身雇用はうそでしよ」と言って、やっと 日本人はそうだなと思うようになったかもしれないけれど。だから、人間は理屈じゃ ない。あのとき、二十年くらい前までは多くの日本人がそう思っていた。 その話題になると、多くの場合「あんたみたいな国」「中国と違うから」とか言う。 つまり、そのときは、あの時点での状況では通じるフィクション ( 虚構 ) だったよう にも思えるし、テクニックかもしれないという気もする。 つまり商店や家業と形は変っても企業は、もう何千年も世の中でビジネスをやって きて、全世界でもビジネスをやっているんです。 1 3 4
私は受け人れるよ、どう、逆にあなたは勇気あるかって。一種の意地でした。村上さ んはそ一つい一つことを偉そ一つに一一戸つけれども、中はわからないでしようと、これは当時、 私は本当に彼に言った。 つまり僕としては、いつまでも経営陣と対抗みたいな構図はよくないから、一回 人って、企業側の苦しみを見てごらんなさいと。今度は株主がおまえを攻撃するか ら、一回体験してみろと言ったのよ。そうすればもうちょっとあなたと社長とのやり とりがスムーズにいくんじゃないかと。株主と経営者はいつまでも対立するものじゃ ないと僕は思ったの。対抗する場面があっていいけれども、「利害が対立するもんだ」 という思い込みや構図はよくないと思った。そう言ったら彼が、「おれは今までで初 めてだよ、こんなことを一言われたのは。そのとおりだよ。おれ一回やってみるよ」と 言って。それで、社外役員になったんです。 社外役員になって三カ月目、彼が世の中からいろいろ言われることになった。阪神 のことからですよ。阪神の株を買い始めたら、忘れもしないけども、まず監督の星野 さんが「あれは人でなし」とか言った。世の中は急に、特に世論が回転し始めた。星 野さんはすごい影響力もあるし、それが多分きっかけだと思うけど。とにかく阪神に
ビールメーカーの大手は、地ビールなんかをビールメーカーと認めてないから、地 ビールは別として、日本はもう三、四社しかない、サッポロを人れても。それでまた 統合するというんだけど、僕はネスレのまねを日本はしていいかどうかと思っている んです。ネスレはどこの国かわかってるよね。スイスです。 日本とスイスだけになるんならばいいんですよ。でも、僕は違うと思うな。日本は スイスになっていいのかね、なれないと思うよ。スイスはマーケットがないから もう一つ、よく経済学者が日本は潜在成長力があるのに需要が足りないから、さら に伸びるという仮説を言いますよね。本来だったら、日本というのはもう少し る が年二、三 % ぐらい伸びていいはずだと勝手に言う経済学者がたくさんいて、僕らも え 考 を そう思わないわけでもないんだけど、現実に起こっていることは名目の、売り 程 上げは一九八〇年代の終わりぐらいからほとんどずっと横ばいか、むしろ減っている。 成 の 二十年間ぐらい変わってない。賃金も減っている。だから伸びてないのに、みんなは 国 中 と そのことをわかっていない。政治家はきれいごとで一一一口うためにそう思うのかもしれな 本 いけ・い」、も 0 中国から日本のマーケットを見たときに、日本のマーケットが伸びにくくなってし
から物が売れない状態になった。 中国は物を作ればこれからも売れる。土地は今現在、完全に投機状態。当時、日本 では、私が覚えているのは、日本人はだれもが買う物はもうないと、あとは入れかわ る更新需要だけだからと言っていたと思う。 中国は、そうじゃない。見ればわかる、あの貧乏人の多さが。だから、不動産のバ プルがあったとしても、こういう局所的なものは、つぶした後は経済はどうなるかが 予想がっかない。逆に言うと、もう少し落ちついて地味に発展していく過程になるか もしれない。不動産投機の連中を痛い目に遭わせてね。 中国人にとっては投機も投資も同じ これはある意味では本質であり余談なんだけど、英語でスベキュレーションと言い ますけど、日本語では投機と投資と分けるんだけど、中国人ってみんな投機が好き。 投機と投資はほとんど分けてない。日本人は分けているんだけどね、実際は同じ。 中国の人たちが、仮に不動産がもし投資対象としておもしろくなくなったときに、 どこに行くかを考えると。現実の例えば、レア・アースとかコモディティのゴールド
ただ、さっきの話で残念なのは、日本人のビジネスマンたちが、その発想がすごく 小さいと思っているのは、今のベトナムに日本の技術を持っていったときに、ベトナ ム人が幸せになるのか、韓国人のほうがリスクを背負えるのかって、そういう議論が なくて、もしただ競争で負けた勝ったと思っていただけだとしたら、それはすごく寂 しい。本当にあの国が原子力エネルギーの平和利用の維持運営ができて、それを日本 がビジネスとしてやることが、長い両国の関係にとっていいことだっていうことまで 考えて言ってほしかった。でも、考えてないでしよう。非常に単純な、場合によれば 感情論しかないから。 話を戻すと、つまり本来はあくまでも体制の問題であり、そういう認識の問題です。 認識かあるかどうか、意識改革したかどうかでしよ。明治維新もそうだと思う。意識 改革は日本が先にやったからそうなった。韓国はおくれたから、あるいは中国はおく れたからそうなった。これは一言うまでもない 翻って、現代を冷静な眼で見れば、今、企業もそうじゃない。意識改革を早くした からサムスンはそうなったのであって、蘇寧は意識改革がおくれたからそうなったん であって、蘇寧の人たちの遺伝子はサムスンの人たちより劣るとは思わない。 1 6 6
うちに、それで「アメリカのどこかに着いたら私のところへ連絡をくださいそして 来てくれませんか」と、その人は試しに行ってみたら本当に採用してくれた。そうい う人がいなくなった。 そこがきちんとクリアできれば、日本の企業も中国に来て成功できるチャンスはあ る。だからべンチャーをもっと育てろと一言うのです。 前述したように、二〇〇六年に、日本はしばらくだめだと思った。べンチャーがだ めになったからです。日本のべンチャーは、あんなのはみんな堀江さんばっかりとか、 べンチャー イコール怪しいとか、 になってしまった。それは象徴的な事件や出来事 があったけど、統計的にどうだったかということを検証していない 日本の経済がこんなに力がないっていうのが、もう何よりも証拠です。どんどん新 しい企業が生まれてこない 中国は何で経済が強いか。共産党が支配していると言うけども、根っこは、私が無 錫からの飛行機の中で会ったあのおじさんたちががんがんアグレッシプにビジネスを 行っているからだと思一つ。 1 0 4
0 いうんだよ。 それまでのアメリカ兵はあれだけの強みを持っていたのにもかかわらず失敗した唯 一の理由は、相手を知っていないと一言うこと。だから負けた。 日本は最近それだよ、この二、三十年です。本来は何にも変わらない人間同士なの に、本来はライバルなのにライバルじゃないと、あんなの相手じゃないと思ってから る そうなった。多分それだと思う。油断し過ぎだよ。 え 考 前に紹介した、無錫のおじさんに聞いてみて僕は何を感じたかというと、彼に聞い を 性 匕し たときです。経営者としてリソースは何が大事と思うかと、企業文化が大事と言って 可 し いるんです。企業文化は何だと思うって彼に聞いた。日本の経営者、中小企業の経営 新 の者に企業文化って、なんていったら、それは美しく作文してくれると思うけど。 無錫のおじさんはものすごくプレークダウンしていた。企業文化というのは、一つ ケ は「社員たちの教育レベル」。つまりは大学を出ているか出てないか、高校を出てる マ ア ジ か、それが一つ。もう一つは、「管理の仕組みがあるかないか」。管理の仕組みは何で ア 東 すかと、私は曖昧を許さないからプレークダウンして聞いていくと、管理の仕組みと は「ルール、規定があるかどうか。それをちゃんと社員の行動に変えたかどうか、習 1 6 9
しよう。様々な方法論があるじゃない。非常にいいタイミングで一つのメールが来た とか、それは別に人間が足を運ばなくてもいし 原理は「」、クオリティとコストとデリバリーのタイミング。そ一つ考えれば、 ものすごく組織的な営業、組織的なマーケティング、組織的な顧客サービスができる の。ところが、格言めいた「言い伝え」とお説教の好きなおやじに限って「おれの人 柄を売る」とか言って猪突猛進する。行って嫌われたら、その企業は、おしまい。も うおまえの会社とは二度とっき合わないと、それでそのお客さんは引いちゃう。会い たくないというのに無理やり行くと " ストーカー。です。でも本人たちは気づかない それが仕事だと思っている。 だから格言めいた「言い伝え」というやつは、多くの場合は普遍性がないのにもか かわらず、あたかも普遍的であるかのように尊重することで、意味を誤って伝えてし まうのには気がっかない 間違った思い込みの例ーー日本には「資源がない」 別の例を挙げてみます。例えば日本の経団連の上のほうの人たちがよく言うのは、