Chapter 2 《新任取締役の日頃の情報源 ( 複数回答 ) 》 96.0 % 61.1 % 48.4 % 38.1 % 41.3 % 新聞・雑誌 業界誌・紙 テレビ・ラジオ 講演・セミナー等 専門誌・紙 人脈 167 % インターネット ではまずい。言うまでもなく、いい情報や価値ある情報は、いつの しかし、一国一城の主 owner となった起業家 entrepreneur がこれ 任を取らなくていいのだから、活字を盲信してもまだ救われる。 ーマン取締役だったら、なあなあ主義 live-and let-live basis で誰も責 だが、そんなことで本当にいいのだろうか ? もちろん、サラリ バカ」は 7 割にも上っている。 判明した。専門雑誌・新聞を人れると、活字情報を重視する「活字 任取締役が新聞や雑誌を最も重要な情報源 source にしていることが トにして公表している。その 1999 年の調査では、実に 4 割もの新 「新任取締役の素顔に関する調査」 ( 1999 年 7 月、日本能率協会調べ ) 人脈 26.2 % 新聞・雑誌 40.5 % 専門誌 ; 紙一 15.9 % 業界誌・紙 12.7 % インターネット 2.4 。 / 講演・セミナー等 08 % \ その他・無回答 1.5 % 0.8 % その他 《新任取締役が最も重視する情報源》
Chapter 2 きた一方的な発表記事が大半だ。 新聞は宅配制度 h 。 medeliver メで何百万人もの読者を囲い込み、 記者クラブでの発表記事や会見記事でお茶を濁しておけば、経営は 安定する。記者は体を張ってスクープを発掘 inves ⅱ gate しなくても 。給料 pay は変わらない。署名記事 b ) , line が中心の欧米のメデ いい ィアでは考えられないことだ。 テレビもスポンサーがついており、ドラマとワイドショーとバラ 工ティー番組で十分成り立つのである。 うした状況 circumstance で、新聞やテレビに役立つナマのネタが掲載されるわけがない。せ いぜい、実売部数で勝負する週刊誌 wee 町、月刊誌 m 。 nthl メ、夕刊 紙 evening tabloid などが、企業の「裏顔 ( 秘密 ) 」 inside に迫ったス クープ特集を組み、どうにか頑張っているぐらいだ。こんな状況で、 活字からネタを引っ張ろうとすること自体バカげている。 こまで読んでも、それでも新聞には情報が盛りだくさんではな いか、と言う人もいるだろう。では、その思いこみがいかに空しい ものか、 2005 年 1 月 27 日付の朝日新聞と日経新聞の記事をもとに そのタネ明かし giveawaysecret をしてみよう。いかに新聞がなにも 伝えていないか nothingtoinform 、また新聞に惑わされると思わぬ 判断ミス misjudgment を犯すかがわかるはずである。 新聞記事は 7 割が企業寄り。素直に信じるとヤケドする この日、朝日、日経ともほぼ 8 割以上が発表記事 r 。 utine story で 埋められていた。朝日は、国内・海外 97 本のストレートニュース ( コ ラム・オピニオン・文化は除く ) を掲載している。そのうち、独自
Chapter 2 症者 seriously illperson ともなると、新聞や雑誌の記事はもちろん、 そこに挟まった広告類さえ盲信するバカがいる。 今度の取材でも、有名雑誌の広告を鵜呑みにして調剤薬局のフラ ンチャイズチェーンに加盟して、わずか半年で 4000 万円もの大損 ロ en 。 rm 。 usl 。 ss をこうむったオーナーがいた。まさに、倒産原因 の 1 つに「新聞 ( 活字 ) 情報の過信」を加えていいぐらいである。 この種のタイプは、自分の足や目を使ってナマ情報 r information の収集 gather をするのではなく、マスコミが垂れ流す企業の「表の 顔 = 建前」 cosmetic face を単純 simply に信じ切っている人たちだ。新 聞や雑誌は正しい、と思ってウラ取り back research をしない。鵜呑 みにするのだ。リストラ起業家やバリバリ活躍するヤリ手タイプ、 専門職 expert などに多い。いわばこの「活字幻想」「情報幻想」とい う思い込みが、シロウトが見込み違いを引き起こす大きな要因 big factor になっている。 新聞報道がいかにひどいか、具体例をあげるのは簡単だ。新聞に は、ほとんど毎日のように訂正記事 c 。 rrecti 。 n が載っているからだ。 こで重箱の隅をつつくような新聞の間違いをあげつらうつもり はないが、最近の日経流通新聞に、あまりにもひどい記事 terrible st 。 r メが載ったので、紹介しよう。念のため書いておくが、私は日 経に恨みはない。そして、こうした間違い error は、日経以外にも あふれんばかりに存在していることもお断りしておく。 さて、その記事はこうである。 《ヒットの芽大塚製薬「ホワイトアイリスフレッシュ」 め容器、女性に的》 ( 2005 年 3 月 4 日、日経流通新聞 MJ ) 70 小さ
Contents 無防備な団塊世代を狙う投資グループ 殺し文句は「出資金が 1 年で倍に ! 」 日経にも悪徳商法の広告が載っている・ 朝日、祝冗、 CoIumn1 「マルチ商法」って何 ? ・ 起業でハマる 3 つのワナ 乃ど K ⅲ Tr 7 み雇 & トゞん化 第 2 章 「会社病」、「新聞病」、「依存病」の 3 つの落とし穴 サラリーマンを蝕む「会社病」 【実例 7 】テレビ電話によるパソコン教育システム 新聞や雑誌には、予想以上の間違いが 企業の「表の顔」しか見ない「新聞病」 新聞記事は 7 割が企業寄り。素直に信じるとヤケドする メディアがこぞって取り上げた全日空のキャンペーン・ 金もアイデアも営業も他人任せで失敗するバカ クーリング・オフなど通用しない起業の厳しい掟 やつばり「起業バカ」は治らない 「起業後諸に待ち受ける誘惑とワナ お 4 4 〃イ Trap 、乃おれな学〃”〃 4 眦加イ” 第 3 章 事業パートナーや出資者にハメられる ! 【実例 8 】伝説のディスコ「ジュリアナ東京」 【実例 9 】ユニクロ 【実例 10 】ドン・キホーテ 起業家に群がる「脱サラブローカー」たち 名刺 10 枚を操る代理店プローカーが仕掛ける錬金術 新聞、雑誌、折り込みチラシで反響を拾う -4 -4 ・戸っ 7
lhree Kinds ofTraps S tart-ups Face 私が言いたいのは、新聞や雑誌にはこうした企業よりの記事ばか りあふれている点に注意 pa メ atten ⅱ。 n すべきだということだ。表向 き、いい記事ばかり並ぶが、そのウラ behindthescene には、どん な企業も世間に知られたくない秘密の「裏顔」を抱えている。そし て現実のビジネスは、新聞などに書かれていない本音 reali と利害 interest がぶつかる、ドロドロの交渉事なのである。 要は、喰うか喰われるかのガチンコ勝負だ。しかもそれは密室 closed room で行われる。そこにシロウトが、コロッと騙される伏 線 preliminary が張ってある。いわゆる「引っかけられた」「こんな ハズじゃなかった」という失敗である。 最近は社員 50 名ぐらいの企業でも株式公開 g 。 ingpublic をし ており、 IR ( 投資家向け広報 ) 担当を置き情報操作 in 応 rmati 。 n manipulation がうまい。メディアをどう利用するか、日夜腐心して いる。それ故、新聞情報は単なる参考資料にとどめておくべきだ。 むしろ、新聞に載ったのはなにかウラがあるな、とカンぐってかか るぐらいの気持ちで交渉 bargain する方がケガしないで済むだろう。 金もアイデアも営業も他人任せで失敗するバカ 最後に「依存病」について触れておこう。これもオヤジサラリー マンが罹りやすい典型的な「他カ本願病」 reliance upon others 「親 方日の丸病」 dependence on the government だ。人間誰しも弱いから、 「権威主義」 authorities に寄りかかりたい、という側面 aspect もある だろう。 「会社病」じゃないが、長くサラリーマンをやっていると、知らず 79
'lhree Kinds ofTraps 田 t Start-ups Face 《大塚製薬が二月二十四日に発売した目薬「ホワイトアイリスフレ ッシュ」の滑り出しが好調だ。女性をターゲットにした容器や機能 が特徴。今春予想される花粉の大量飛散も追い風となる見通しで、 初年度の出荷額は三億円を目指している。 ( 中略 ) 充血した目になることを嫌う女性が多いことに注目。血管を収縮 させて目の充血を取り除くための成分「塩酸テトラヒドロゾリン」 と「グリチルリチン酸二カリウム」を配合した。花粉症対策にも効 果があると期待している》 こまで読んで、記事の間違いは「塩酸テトラヒドロゾリン」や 「グリチルリチン酸二カリウム」といった舌をかむような成分なの か、それとも出荷額 3 億円という数字なのか、いろいろ悩んだ人 も多いだろう。 実は記事の間違い mis ね ke はそんなところにあるのではない。本 文 body と見出し headline に書かれた「大塚製薬」が間違いで、本 当は「大正製薬」なのだった。結局のところ、見出しにも本文にも 「大正製薬」の文字がないのだから、この情報を盲信 blindly believe して他社の株 st 。 ck を買ったら大変なことになる。 企業の「表の顔」しか見ない「新聞病」 日本能率協会 Japan Management Association は、毎年、上場企業 listed c 。 mpan メの新任取締役の意識調査を行い、その結果をレポー 71
lhree Kinds ofTraps "lhat Start-ups Face 時代もどんなときも「人」が握っている。人を仲介 medium にして 情報が人ってくる。金儲け ma ngm 。 ney をしたいなら、まず、人 に会い、人を口説き落とさなければならないのだ。それがビジネス の原則中の原則である。 だが、現実には人から取るナマの情報より、活字で得た 2 次情報 や 3 次情報をもとに意思決定 decision making する脱サラ起業家が圧 倒的に多いのだ。インターネット時代のいまは、ネットに頼り切る 「ネットバカ」もこの中に人れてもいいだろう。サラリーマンは、い い情報に接する機会。 pp 。 rtun 呵が少ない、との理由もあろう。実際 のところ、儲け話にアクセスする方法も手段もない。せいぜい、異 業種交流会 pan-industry social event や居酒屋の飲み会くらいだろう。 だが、それにしても、「新聞に載ったものは 100 % 信じる」「雑誌 に出たので間違いない」という、お人好し sucker の活字バカがあ こで再度強調しておきたい。生き馬の まりにも多すぎることは、 眼を抜くビジネスの現場 dog-eat-dogworld で、こんなユルい考え は通用 work しない。 そもそも新聞やテレビは、事件・事故以外、企業の「表顔」 makeup しか報道 cover していない。本当に知りたい「裏顔」 bareface は無視 ignore されている。事件にしても警察からの発表 announce も のだ。これにはメディアの仕組みや記者 rep 。 rters の資質 talent など がからんでいる。 とにもかくにも、新聞には肝心の商売で使えるホントのネタは載 っていない、と知るべきである。なんにしろ、新聞の情報源は、所 轄官庁 proper authorities や大企業広報部 PR department である。そ れも記者クラブ Kisha-Club という、情報のゴミ捨て場から拾って 73
Chapter 1 確かにマルチ商法自体はネズミ講 pyramidfinancescheme と違って 合法 legal だが、その多くは悪質商法といって過言ではない。主宰 している会社は、 500 ~ 600 社ほど設立され野放し状態 atlarge で 蠢いている。その中のカリスマ社長など、毎年発表される長者番付 ベスト 100 人中、常時 5 、 6 人がランク入りしているのだ。 朝日、読売、日経にも悪徳商法の広告が載っている 悪徳会社や詐欺商法は、社会の片隅 corner ofsociety でコソコソ やっているのかというと、そうではない。朝日新聞、読売新聞、日 経新聞などの大マスコミ mass media にも堂々と広告 advertisement 公第新株式発行に関する取第役会決盟公告年 主各位 MTCI 株式会社エムディーシーアイ れ 0 : ′′物・・ m ー 0L00J0 代画載・ 0 一学当・ MTCI は、日経の全面広告でいきなり株主 を募集、 24 億円集めて倒産した。写真 : 日経新聞 1999 年 10 月 15 日 ・の物第みを を打って、加盟店や投資家集め を行っている。今回取材した失 敗例でも、新聞や有名雑誌の広 告を鵜呑みにしてダマされたケ ースが目立っていた べンチャー株の公募増資 public stock offering で 24 億円集 めて破綻したエムティーシーア イ (MTCI) 事件などは、その 典型 typical case だろう。 1996 年に設立したプロバイダーの MTCI は、上場 initial public 0 飛 r をエサに投資家を募集したべン チャー投資詐欺だ。そのやり方 52
lhree Kinds ofTraps ' Ⅲ Start-ups Face 常識 c 。 mm 。 nsense からズレているのである。主婦なども家庭のこ としか頭になく、悪徳商法 scam の甘い言葉にコロッと騙されてい る。これは「振り込め詐欺」に引っかかる心理と同じなのである。 第 2 は、新聞などがタレ流す情報を信じきった「新聞病」。 これは「活字バカ」だ。ビジネスマンの大半が、毎日、新聞や雑 誌を読む。そしてその活字系の情報を盲目的 blindly に信じきって いる。これがアプない。この活字信仰は、特に 40 歳以上のバリバ リ働く中高年層 middle-aged and senior segment に多いように見受け られる。 第 3 は、フランチャイズ加盟者などに多い「依存病」だ。 つまり「オンプに抱っこ病」である。フランチャイズ本部に " す べてお任せ " " オンプに抱っこ " となり、思考停止 thought-stopping に陥ってしまう。まさに他人依存症で、いつか誰かがなんとかして くれるという、「神頼みバカ」である。 いずれの場合も、長い間、身分と収人が保証されたサラリー マン生活で飼い馴ら spoiled され、「起業力」や「判断力」が劣化 deteriorate して起こる病状 symptom である。その奥には「起業」を 普段の仕事の延長などと考えた大きなカン違いが潜んでいる。 では、これからその 3 つの見込み違いの原因を分析 analyze し、 なぜ、起業バカが生まれるのか、具体的に検証してみよう。 サラリーマンを蝕む「会社病」 まずは「会社病」だ。またの名を「大企業病」「サラリーマン病」、 さらにいえば、「看板病」「名刺病」などとも呼ぶことができる。 63
Baits andTraps1hat Entrepreneurs H 、℃ to Avoid いう仕組みである。 肝心の 300 億円はウラ金 backdoor money なので会社の経理を通 さず、社長の個人口座 indi ⅵ dualacc 。 unt にジカに振り込まれるらし い。だいたい M 資金詐欺では、この交渉過程 negotiation process で、 現金、上地、手形、株券などが騙し取られて事件が表面化するとい うスジ書きである。 政府の貸し渋り対策費の 20 兆円がヤミ資金に還流 M 資金プローカーは、私が会っただけで 3 人。それぞれちゃん とした事務所を構え、経営コンサルや金融コンサルの表看板。伍 cial title を掲げている。みんな会社顧間をやっていて、引っ張りダコだ。 金額がやたらバカでかいが、この低金利大不況の時代、政界の裏側 behind the scene ではいかにもありそうな話である。このスレスレの ところが騙しのツポなのだ。 現実に、政治家や東京都議などがからんだ中小企業相手の信用保 証協会 credit guarantee association の融資口利き事件などが表面化し、 何度も新聞で報道されている。朝日新聞は 2000 年 10 月 17 日付タ 刊一面トップで、《中小融資不正受給、仲介業者ら取り調べ、東京 地検、都議への依頼視野》と派手な見出しを打って、東京地検特捜 部が中小企業融資をめぐる大がかりな詐欺グループ scamgroup の 捜査 investigation に乗り出したと報じている。政府が中小企業支援 で公的資金 public funds をつぎ込んだスキを、融資詐欺グループに 突かれたのだ。朝日新聞もその点をこう分析している。 125