第四十四軍管区 ( 師管区 ) 部隊は当該管区を通過する決戦部隊の宿営、給養を担 任し、あるいは交通路、通信網の整備、確保に努め、以てこれら部隊の機動を神速 ならしむるを要す 第四十五高級指揮官は交通路の統制、整理に関し万般の施策を講じて機動の整斉 円滑を期するを要す 軍隊は交通軍紀を厳守し交通整理部隊の指示に絶対に従うべし 第四十六機動の細部、特に戦場機動に関しては「橋頭陣地の攻撃」による 第四節攻撃戦闘 第四十七決戦攻勢の要は、激烈凄惨なる戦況、極度の消耗を覚悟し将帥以下毅然 として敢闘不屈の意志を以てあくまで攻撃を続行し敵を圧倒撃滅するにあり 第四十八決戦は、通常海岸の狭隘なる地域に於ける橋頭陣地に対する攻撃にして 時間的、地域的に策略を施すの余地少なく、激烈凄惨なる局地戦闘に終始するを常 態とす。従って諸兵戦力の統合発揮に関しては、高級指揮官以下最大の努力を払う を要す 第四十九橋頭陣地に対する攻撃は、単なる一点突破を以てしては目的を達成しが たきを以て、攻撃に用うべき兵力に稽え数個の突破点を選定するを可とす。而して
第三十一高級指揮官は敵の上陸企図に関する判断に基づき戦備の度を定め、作戦 及び戦闘準備に関する準拠を示すと共に随時の奇襲に対応するを要す 第三十一一戦備転移、機動及び戦闘開始等は本作戦の特性に鑑み特に俊敏神速なる べし。之が為簡単明瞭なる伝達法 ( 例えば略号発令の型式 ) を準備し置くを要す 第二節沿岸防御戦闘 第三十三沿岸防御に任ずる兵団は優勢なる敵上陸軍及び空挺部隊の進寇に対し長 期克くその陣地に之を拘束し、為し得る限り甚大なる損害を与え、以て主力の攻勢 を容易にしらしめ、あるいは支作戦本面の持久を担任す 戦闘の遂行にあたりては、戦機を捕捉し勉めて攻勢的に任務を達成するを要す 第三十四防御戦闘は各種の手段を尽くして積極主動的に実施し、敵の物的戦力を 封じ、その弱点に乗ずるを要す 之が為火力及び逆襲に依るのほか、挺身奇襲、誘致、伏撃、逆上陸等溌剌果敢な る戦闘を遂行するを要す 第三十五集中する兵団の戦場到着に伴し ' 、、沿岸防御に任じある兵団は攻勢のため の支拶 ( しとう ) を確保し攻勢準備を援護す。攻勢開始にあたりては、攻勢兵団 に連繋し攻撃を敢行す
第九高級指揮官はそれぞれその地位と責務とに即応する統帥指揮に専念し心魂 を尽くして敵を撃砕すべき方策の確立と之が実行貫徹を期するを要す 各級指揮官は自らの信念と熱意とを以て部下将兵全員に決死必勝の信念を透徹せ しむるを要す 第十指揮官は火力、制空力等戦場の実相を正当に認識し之が対策を研究、創意 し、熾烈なる砲爆撃、戦車、火炎、ガス攻撃等激烈凄惨なる情景に対処し冷静沈着 毅然として之を凌駕、圧倒すべき手段を講じ、靱強なる戦闘を遂行するを要す 第十一決戦間は傷病者は後送せざるを本旨とす 負傷者に対する最大の戦友道は速やかに敵を撃滅するに在るを銘肝し、敵撃滅の 一途に邁進するを要す。戦友の看護、付添は之を認めず 戦闘間は衛生部員は第一線に進出して治療に任ずべし 第十一一戦闘中の部隊の後退は之を許さず 斥候、伝令、挺身攻撃部隊の目的達成後の原隊復帰のみ後方に向かう行進を許す 第十三作戦軍は全部隊、全兵種ことごとく戦闘部隊なり 後方、補給、衛生勤務等に任ずる部隊も、常に戦闘を準備し命に応じ第一線に進 出、突撃に参加すべきものとす 徒手の将兵は第一線戦死者または敵の銃器を執り戦闘を遂行すべし 第十四敵は住民、婦女、老幼を先頭に立てて前進し、我が戦意の消磨を計ること
るまで確立せしむること緊要なり 之が為各種情報機関及び通信網は速やかに完整し戦況の推移を洞察し随時之を補 備増強するを要す 既往に於ける防空専用の情報通信の組織は、速やかに地上決戦に即応する如く整 備するを要す 第六十一一情報勤務の成否は、事前の教育訓練に依るところ大なり 各級指揮官は情報、通信関係者の訓練に努力し、その能力を向上するを要す 第七章交通、通信 第六十三国土に於ける対上陸作戦成立の重要なる要件は、交通、通信の完備にあ 而して敵の空襲は逐日激化し交通、通信作戦は既に進展しつつありと知るべし 第六十四交通作戦必勝の要訣は、事前に万全の体制を確立すると共に、作戦の終 始を通じ旺盛不屈の闘志を以て惨烈なる戦況に処し交通、通信の確保を期するにあ 第六十五交通、通信に関する作戦準備中、主要なるもの左のごとし
なる敵に対し長期にわたり作戦せざるべからず 持久正面の戦闘に任ずる軍隊は、一兵に至るまで全局の勝利は一に懸りて将兵の 勇戦敢闘にあるを銘心しあらゆる苦難を克服し勇躍任務の完遂に邁進すべし 第五十八持久戦闘を企図する場合には、大規模なる障碍地帯の設定及び交通遮断 を実施するを要す。この際之が実行の時機を失せざること及び火力を伴わざる障碍 は大なる期待を保し難きに注意するを要す 而して障碍等に配置せられたる軍隊は単に防守に専念することなく巧みに攻防の 手段を併用すること緊要なり 第五十九持久正面に於いては敵をして既設飛行場を使用せしめざる為、我が使用 を期待せざる飛行場は根底より之を破壊し、且っ敵の修理設定を妨害すべき処置を 講ずるを要す 第六章情報勤務 第六十対上陸作戦に於いて主決戦方面の決定機宜を制するは情報勤務の成果に俟 っところ大なり 第六十一情報勤務を適切ならしむるには、各兵団に一貫せる情報体系を末梢に至
第五十三敵陣前の火力障壁を突破し、その外殻を破砕するは必ずしも難からず。 我が攻撃の進展を阻碍するものは熾烈なる砲爆のほか、陣内縦深にわたる敵の近戦 火力と機甲反撃とにあり。兵団は諸兵種特に歩戦砲工の緊密なる協同と縦長戦力と により絶えず攻撃威力を培養発揮しつつ一意突進を継続し、敵の抵抗組織の全縦深 を撃摧するを要す 第五章持久方面の作戦 第五十四持久方面の作戦指導は状況により千変万化すべきも、要は決戦攻勢を成 立せしむる唯一終局の目的としてその行動を律せざるべからず 第五十五敵の進攻を受けたる持久正面の軍司令官は、攻勢により之を撃滅すべき や、持久抵抗により時間の余裕を得るを主とすべきやを定むべしといえども、持久 任務達成の最良の方策は攻勢にあるを想い、果敢溌剌の気勢を失わざるを要す 第五十六持久正面に於いて攻勢的に作戦を指導する場合に於いては特に慎重周到 なる戦術的考按を以てし、敵の火力の陥穽に陥り戦力を消耗して全般の目的達成に 背馳 ( はいち・行き違う、反対になること ) するが如きことなきを要す 第五十七主決戦方面に徹底せる戦力を集中する為、持久正面の軍隊は極めて優勢
銘記すべし 第三十九軍隊の機動は作戦時に於ける交通網破壊の状況に鑑み、集中及び戦場付 近の機動共に主として行軍に依らざるべからず。然れども鉄道、水路その他の輸送 機関を利用して機動の神速を図るを必要とす。軍需品の移動は勉めて鉄道、水路を 利用するを要す 第四十機動に関する訓練は高等司令部以下之を行うものとす。即ち情報、通信、 集合、機動発起、交通統制、行軍力の増大、対空部署、陽動、欺瞞等に関し総合的 に演練するを要す 第四十一行軍間の傷者、患者は万難を排して同行し決戦に参加せしむべし。落伍 は軍人の本領をわきまえざる非行と知るべし 第四十一一行軍部署は対空戦備を主として之を定む 高級指揮官は防空部隊の配置、運用に万全を期すると共に軍隊は自ら対空戦闘の 処置を講じ、敵機の執拗なる妨害を排除しつつ行軍を敢行すべきものとす 第四十三地障特に河川、湖沼、海峡の神速なる渡過は周到なる事前準備に依り期 し得るものとす。高級指揮官は渡過の為徒渉場、夜間架橋昼間撤収、河底橋等の施 設を実施すると共に防空、欺瞞等の処置に遺憾なきを要す 軍隊はたとい配当渡過材料の不十分なる場合に於いても自ら応用材料を利用して 地障の克服に勉むべきものとす
躊躇するの弊に陥らざることに留意するを要す 第二十七築城は最高指揮官の鞏固 ( きようこ ) なる意志に基づく適切なる戦闘指 揮と守備軍隊の敢闘とにより初めてその価値を発揮す 第二十八軍隊は作戦上の要求に基づき、自己の築設したる築城を離れて他方面に おいて戦闘しあるいは他に再び築城を実施せざるべからざることあり。斯くの如き 場合に於いては、指揮官以下心機一転新任務に向かい邁進するの覚悟を必要とす 第四章決勝会戦 第一節要則 第二十九決戦攻勢に任ずる兵団は、猛烈果敢なる攻勢を遂行し、一挙に敵上陸軍 を撃滅すべし特に高級指揮官は終始強烈不撓の意志を堅持するを要す 沿岸防御に任じある兵団といえども、機を見て独力攻勢を断行するに躊躇すべか らず 第三十対上陸作戦成立の要件は、沿岸防御に任ずる兵団の長期にわたる靱強なる 戦闘と、攻勢兵団の神速なる機動及び果敢猛烈なる攻撃とにあり
第三十六当初沿岸防御を命ぜられたる兵団に在りても、その一部または主力、状 況によりては全力を多方面に転用して防御に任じあるいは攻勢に参与せしめらるる ことあるを予期すべし 広大なる正面を担任する兵団にありては、その担任地域内に於いてもしばしば兵 力機動を必要とすることあり 兵団編成の特性により機動力充分ならざるものは、自ら所在の資材等を利用し、 あらかじめ所要の機動力を準備するを要す 第三節機動 第三十七敵の制空下、軍隊及び軍需品を神速に決勝点に集中するは戦捷の基礎な り。而して之が整斉 ( せいせい・ととのっていること ) 神速なる実行は事前に於け る交通路と通信網の整備、確保、後方兵站の確立並びに適切なる訓練等周到なる作 戦準備に依り始めて帰し得らるるものとす 神速なる戦力集中を図る為、主決戦方向の決定機宜を制するは高級指揮官の重責 とす 第三十八機動の実行にあたり、敵の砲爆撃、交通遮断、疲労困苦等の障碍を克服 し、戦機に投ずる行動を遂行するは各級指揮官の積極敢為の意志に俟つもの多きを
するを要す 第十八作戦準備を神速に完整するの要訣は、各級指揮官就中高級指揮官の適切な る計画始動と率先垂範及び軍隊の厳粛なる実行貫徹とにあり。事に当たり困難、不 可能を思うは自ら敢闘邁進の気迫に欠くるものと反省すべし 第十九交通、通信、兵站に関する作戦準備については後章による 第二節教育訓練 第二十敵の物的戦力を圧倒撃滅するため作戦準備間最も努力を傾倒すべきは決 戦即応の訓練なり 各級指揮官は寸陰を惜しみて部下軍隊の訓練に邁進すべし 第二十一教育訓練の対象は指揮官を重点とす 上級指揮官は任務完遂を第一義とし、自らの脳漿を搾り研鑽創意すると共に隷下 団隊長、幕僚の教育に最大の努力を傾注すべし 第二十一一教育訓練は凡て戦地教育の要領により特に現地、現場に即する実地教育 に徹底すべし 第二十三高級指揮官は、その作戦計画に基づき速やかに隷下司令部、団隊長を訓 練して作戦、戦闘の要領を徹底す