第二十一九九式破甲爆雷 一、攻撃実施要領 攻撃位置において結束せる破甲爆雷の安全栓を脱し、これを両手に保持し敵戦車の死角 内に突進し最上部の信管を圧して戦車の水平部に設置し数米離隔して機敏に伏臥す。 以下二個以上結束せる場合の攻撃につき記述す。一個の場合も之に準ず。 一「攻撃実施上の着眼 1 、二個以上を結束して使用するを通常とするも、軽戦車または底面の攻撃にありては 一個を使用す。而して結束はなるべく細紐を使用しその結び目は下面にせざる如くす。 2 、信管を圧するには食指を以てす 二個以上結束使用の場合においては、信管は最上部の一個のみ圧するものとす。 3 、信管発火の時機は攻撃直前とす。 4 、攻撃後は直ちにその場に伏臥し、鉄帽を以て頭部を蔽う如く顔を地に着く。 5 、攻撃部位 停車戦車 車体後方の上面、底面、銃砲取付部、覘視孔 行進戦車 背面、底面 ( 交通壕、掩壕等利用し得るとき ) 近時敵戦車は対磁鋼板を使用しあるを以て車体後方の上面の如き水平部分を攻撃する を可とすること多し。 状況に依り兵器を破壊する如く攻撃す。
第二十八一一 ( 四 ) 瓩円錐爆雷、五瓩半球形爆雷 攻撃実施要領 攻撃にあたりては通常爆雷を敵戦車の上面に装着するも、停止戦車に対しては時として 底板を破壊する如く使用することあり 上面攻撃の場合には単一爆雷もしくは吊り下げ式及び固定式の木桿爆雷を、側面攻撃の 場合には投げ掛け式爆雷を使用す。 底板攻撃の場合には木桿もしくは単一爆雷を使用するも、爆雷の安定を良好ならしむる 如く所要の施設を必要とす。 いずれの場合に於いても直前に信管を発火せしめたる後、装置するを通常とす。 第二十九跳梁攻撃 一、攻撃実施要領 爆薬その他適宜の応用材料を以て、勉めて戦車の後方より車上に跳び乗り攻撃す。 、爆薬を以て兵器、潜望鏡等を破壊しまたは戦車内部に投入す。 2 、拳銃を持って照準口または覘視孔より内部の乗員を射殺す。 3 、手榴弾を以て砲塔内または機関室に投入し、乗員を殺傷しまたは機関を破壊す。 4 、時として天幕、外套等を以て砲塔を被い、展望、射撃を妨害す。 一「攻撃実施上の着眼 、銃は車体の後方死角内に置く。 2 、鋲その他足掛かりを利用して傾倒を防ぎ機敏に行動す。
一「現地資材利用のもの 1 、「ガソリン」瓶 要領 平常ノ格納 投擲時ノ點火 一、目、的手投火焔瓶ニ準ズ ( 生「ゴム」 ( 急ノ場合ハ「ゴム」原液ニテモ可 ) 三一 、火焔劑一「ガソリン」 ノ割合ニ混和良ク攪拌ス 生「ずム」ヲ小サク刻メ ' ハ溶解容易ナリ 約一晝夜ニシテ大解シ使用可能ナリ 2 、ロ栓 現地物資タル「ロンビヤ」ヲロ栓ニ使用ス中央ニ小孔ラ開ケ 點火布ノ一端ラ火焔劑ニ浸ス知クス 3 、點火劑 「タラック現地樹皮ョリ製作セル布 ) ヲ「ゴム」 = 浸シ 置キ投擲三際シ火焔劑 = 浸セル方ヲ上方ニ挿換 ~ 點火投擲 スルモノトス火焔劑ニ・「カボック」又ハ硫黄等ラ混入スルモ 大ナル變化ナシ 法
第十一急造爆雷、梱包爆薬 一、急造爆雷 1 、急造爆雷は、敵戦車に肉迫して戦車底板下に投入し、之を壊滅するに用う。 2 、急造爆雷は爆薬、急造薬匡、急造点火薬等により成り、軽戦車、水陸両用戦車等に 対しては五瓩、中戦車に対しては七瓩、重戦車に対しては一〇瓩を可とす。 3 、爆薬は九七式方形黄色薬を使用す。 4 、急造薬匡は、爆薬及び急造点火具を収納するものにして、各種爆雷に応ずる所用寸 法左のごとし。 爆藥 / 形状 ) 藥匡 / 内側寸法 ( 糖 ) 幅長ナ高サ幅長サ高ナ 一、五一五一五一六一六・五 七・ 0 一 一五 , 一一 0 一六一六・五 爆ノ形从 火具 0 七五 藥国ハ木板製トシ點火栓ノ引拔作用ラ確實ナラシムル爲黏火座ラ設′
第一篇対戦車兵器、資材の性能及び取扱 第十本編は左記の如く区分して記述す。 一、急造爆雷、梱包爆薬 二、制式資材 1 、三式手投爆雷 2 、九九式破甲爆雷 3 、棒地雷 4 、九三式戦車地雷 5 、手投煙瓶 6 、手投火焔瓶 7 、一〇〇式火焔発射機 8 、ちび 9 、小銃用「タ」弾 、三式地雷 三、新たに制式となるべき資材 1 、一一 ( 四 ) 瓩円錐爆雷 2 、五瓩半球形爆雷 四、応用資材 1 、制式資材利用のもの 2 、現地資材利用のもの
第五戦車殲滅隊 歩兵聯 ( 大 ) 隊、エ兵聯隊等にありては、戦車殲滅隊を編制し之に所要の対戦車戦闘資材等 を装備し敵戦車の撃滅を図るを可とす。 歩兵作業中 ( 小 ) 隊は之を前項の任務に充当するを可とす。 第 ~ ハ対戦車戦闘及び余裕資材の差異に依る着意 各部隊の対戦車装備及び保有資材は極めて区々なり。故に各部隊は当面の状況就中敵戦車の 状態、資材の現況等に応じ創意工夫を凝らし、以て対戦車能力を最大に発揮せざるべからず。 この際大いに爆薬及び煙を活用しあるいは威力十分ならざる資材を結束使用し、または現地 資材を巧みに利用する等の着意特に緊要なり。 第七各級指揮官の着意 大東亜戦下対戦車戦闘に必勝を期するため各級指揮官は対戦車戦闘の諸準備就中訓練を普遍 深刻且っ精到ならしむると共に、特に限りある対戦車資材の活用及び前送補給に遺憾なから しむるを要す。 第八教育訓練上の着意 一、決死肉攻を敢行する為には、強烈なる攻撃精神と旺盛なる責任観念とを必要とす。一 兵の決死体当たりは、克く戦勢を左右するを銘心し、行往坐臥の間精神要素の涵養を図る 二、兵種及び分 ( 特 ) 業の区分を問わず、全員に教育するを要す。蓋し対戦車戦闘は好む
第二章肉攻用掩体 第三十敵は攻撃にあたり徹底せる砲、爆撃により我を覆滅するに勉め、特に火砲、肉攻部 隊の撃破を図り、また戦車は一地に停止し、我を猛射したる後近迫し来たるべきを以て、肉 攻手は地形を利用するはもちろん、時間の許す限り堅固なる工事を実施するを要す。 第三十一肉攻用掩体は積土を行わず、敵戦車より発見せられざる如く天幕、木材、樹枝等 を以て被覆し、さらに糾草を以て偽装すると共に、敵の砲、爆撃に対する掩護の処置を講ず るを要す。肉攻用掩体の一例左図のごとし。 その一個人壕 圖上 1i0 1.4 米 革品デ利用セル ミ面 監窓、 監用窓 ( 押上ゲ式 ) . 扉版”固定スル / 手掛リ用杭 ーー 0.5 ・・→ , 足掛リ
5 、河川の渡河及び水際達着時 6 、故障のため速度遅緩あるいは停止せるとき 三、通過限定せる場所 1 、村落または市街地 2 、凹 ( 凸 ) 道、橋梁または両側の通行困難なる湿地、密林内等の道路等 第十七肉攻実施上着意すべき事項 一、我が姿を隠せ 肉攻は敵に発見せられざるを以て成功の第一要件とす。故に地形地物の利用を適切にし、 我が攻撃位置を秘匿するとともに、工事の利用、偽装及び遮蔽に注意するを要す。 一「発進時機を適切にせよ 呎尺の距離まで匍匐にて隠蔽近接し、または敵戦車を引き寄せ、不意機敏なる攻撃を行 うは成功の第二要件なり。 過早の突進は戦車その他の射撃により機に先だちて損害を受け、然らざるも戦車退避す。 また遅れて発進するときも失敗す。故に戦車の速度、戦車との離隔度、各種資材の用法 等に応じて発進の時機を適切ならしむるを要す。 三、戦車の死角に突進せよ 敵戦車の対肉攻手段、他方面よりする敵戦車支援火力ならびに我が肉攻支援火力、対戦 車火器の射向等に注意するとともに、各種戦車の射 ( 視 ) 死角及び砲塔の向きを看破し て突如敵戦車の懐こヒ。 ー月ひ込み、機敏なる攻撃を行うを要す。 戦車の死角はその種類及び構造により差異あるも、中戦車級の一例左のごとし。
第十四応用資材 一、制式資材利用のもの 、手榴弾つき棒地雷 目的 : : : 停止戦車の機関部攻撃に用う。 用法 : : : 地雷を右脇に抱え、匍匐して敵戦車に近迫し、小石等にて手榴弾の信管を 発火し、速やかに敵戦車背面機関部上に載せたる後、退避伏臥す。 滑リ止メ ( 繩 ) 4
刺突爆雷は、「モンロー効果」 ( ノイマン効果とも ) を利用した爆雷を棒の先につけ、それ を戦車の弱い部分 ( 側面等 ) に突き出して、まるで突き刺すような形に突いて爆発させ、破 壊するというものです。 昭和十九年十月からのフィリピンでの地上戦や沖縄戦で使われた記録がありますが、これ らは現地で応急的に作られたもののようです。 本書には「刺突爆雷」は掲載されていませんが ( 同じく、 19 4 4 年の米軍マニュアルに も記述はないようです ) 、同じくモンロー効果を利 用した成形炸薬弾である「タ」弾はとっくに制式装 備になっていましたし、同様に三式手投爆雷や円錐 爆雷もすでに掲載されています。これら装備に棒を 装着した「現地で工夫した資材」が刺突爆雷という ことなのでしよう。ちなみに、本書三十。ヘージには 「固定式木桿爆雷」という図版がありますが、これ は刺突爆雷とは異なります。円錐の向きが違うこと に注目してください ( 下図版。パプリックドメイン ) ・下巻をお待ちください。 本書は「対戦車戦闘の参考」の半分弱くらいの内 容までしか掲載しておりません。下巻もいずれ作り ますので、全内容のご確認については、今しばらく お待ちください