第五講ですが、「発想による笑い」・ 常識と非常識という分け方は、平面で発想をしてしまう。人間にはどうもそういう癖があ るように思われます。ちょっと、立体的に書いてみます。これを少し倒してみた感じです。 これを、で、ひゆっと上にあげた感じです。それを、こちらから見たり、上から見たり、 こちらから見たり、全体を、あらゆる角度から見るという、そ、ついう感覚。これが、「超常識」、 、ましようか。ちょっと飛び越えて、二次元で物事を考えないで、三 ー常識とでもいし 次元でものを発想するというのが大切なことではないかなあと、いつも思います。 歴史上の出来事を見ておりましても、いつもこの向き 合ったような、枠内の状况だけで発想していると、何も 浮かんでこない 。ところが、「超常識」というのを考え たら、新しい発想を生み出す、大きなヒントになるんで はないかと、こういうふうに田 5 っています。そして、ユ ーモアというのは、常識も非常識もわかったうえでの、 超常識のところへ心をおくことによって、それを納得さ せられるのかなというふうに、最近私は思ってます。こ 、ついうふうにすると楽です。 「そんなんもあるな、そんなんもあるな、ふんふん、 いろいろあるな」というふうにすると、とても考え方か 厂オフ = 0 ロロ 141
か「さむい」とかいうのは全部、演芸のほうからきた言葉であります。 発想による笑い まあ、そこまではみなさんほおーと思っていただいたらよいと思います。さて、皆さんの 日常の中で、毎日に笑いがあると楽しいのは以前から申し上げておりましたけれども、そう いう笑いのバリエーションということを考えていきますと、この「慶應塾生新聞」の三田探 偵事務所のみなさんが、早稲田へ行くという発想がます面白いわな。それで大隈さんの前で、 慶応の歌を歌うっちゅう、それはもう、発想の面白みです。だから、くすくすっとこう刺激 しされるわけですね。 る その次に、もうひとつ、伝統的な遊びとして、みなさんも日常の中でけっこう使ってると 思いますが、言葉による笑いという、この二つに、大きく分けられるのかなあと思っていま 一一一一口葉による笑いと発想による笑い。言葉による笑いの同音異義語は、もう、ワーフロ叩い でてるといくらでも出てきますね。「そんな字違うやろ」という字、 いつばいありますね。同音 講なんだけど意味が違うという同音異義語。それから、よく似た音なんですけれど意味がぜん 第ぜん違うという類似音異義語というのに分けられると思います。このへんのところについて 129
うに、アプローチの仕方はたくさんあるんだというのを、こう、発想するというのが、発想師 による笑いなのであります。 心の隙間をちょっと突かれてしまったような感じ。ストーンと落とされたような落下感。 落ちた感じ。ここに、私が「落語」という字を書いてますが、言葉によってストーンと、イ メージも発想も落とされた感じとい、つところに、ど、つも、「落語」とい、つ一言葉のルーツとい、つ のがあるような感じです。 心の隙間を突く こ、つい、つ遊びを、も、つ一例出してみることにしましよ、つ。も、つケ ーキはいいですね。はい、 三リットルの立方体の器と、五 リットルの器があります。これで正確に四リットルを計って下さい という問題が出ているとします。お水を計って下さい。お水はそこ のプールのところにありますから、いくらでも汲めます。三リット ルと五リットルの器しかなくて、四リットルを正確に計りたいので す。どうすればいいですか ? これは、いろいろアイデアが浮かぶかと思いますが、彼はど、つで
いいたしませんで、洒落たるなあーと、その時のビデオをいまだ 私はそ、つい、つことはいっさ に大切に保管しております ( 笑 ) 。気分が落ち込んだ時、そういうのを見て、楽しんでいます。 私、変な奴でしよ。慣れてね。でも、そういうものなんですね。 私共のような落語家は、非常識というものを常識としてなりわいにしている部分がありま す。ちょっと言い方がややこしいかもわかりませんが、常識という枠、概念というものに対 して、われわれは枠の外から発想するから笑いがとれたりすることもあるのです。ところが、 どういうわけですか、これが、発想のみならす、その行動すなわち体全部が危ないという藝 人が、昔は住めました。橫山やすしさんなんかはその最後の人物です。枠外ですよ、面白す 」ます - から。 通常の発想じゃないなあということがしばしばありました。私は大変お世話になりました ですが、交差点で見かけると、大きな声で「遊びにいこや」と言いますから、ありかたいー さど困るのです。朝まで帰れなくなることもしゆっちゅうですからね。私はホテルのロビーで み会った時にも柱の陰に隠れたんですよ。ところが彼は動物的勘を持っていますから、「隠れて 「もあかんぞ」 ( 笑 ) 普通じゃないぐらい面白いんですよ。で、やることすごいですからね。高 そ速道路の出口からバックで逆に走って入ったり。まわりで見てると面白いんですが、身内は 講大変ですよ。そういった藝人が住みにくくなって、藝人に常識を求める時代になりましたか 第ら、誠に困った時代なのです。自己責任と、自己管理の出来て、非常識的発想も出来る藝人
です 発想によろ笑い これ大事をしです。 第五講
っノ ナイフ ケ は、もうちょっと詳しくあとでやりますけれど、この講義の 中では、まず発想による笑い、これから始めていきましよう。 なんか行き詰まってしまった時に、こういう風に発想すれ ば、あっという間に問題は解けるというのを、皆さんと一緒 に考えてみたいと思います。 ここに丸いケーキがありまして ( 黒板に書く ) 、ナイフがあ ります。このナイフは、三回しか使、つことができません。こ のケーキを切っていきます。まず最初、二つにストーンと切 りました。そして、次ももう一度縦に、二回切りました。も うすでにナイフは二回使いました。あと一回だけしか使えま せんが、このケーキを八個に分けたいのです。さあ、こうい 、つ時に、ど、つしますか ? ・ : ああ、前の彼は手をこう横にやって、 さあ、皆さんも。 こうやればいいんだ、と。そうですね、こうい、つふ、つに横に 切ると、あっというまに八個になるんですね。これはどうい 、つ話をしているかとい、つと、こ、っ切りました。次もこ、っ切り ました。じゃあ、あと一回といわれて八個と言われた時に、 130
楽になっていきますし、迷路へ頭が入りこんでしまうということも、なかろうと思います。 = 日といいますか、越えて行くという、そういう感じ。これか発想による笑い、超 常識というところかなと思っています。ューモリストは超常識的感覚も持っているのです 言葉による笑い 前半において、発想による笑いのお話をしました。では今度は、「言葉による笑い」という ところを見ていきます。これは、「言葉の遊びーです。言葉の遊びでは、どんなものをみなさ ん知っていますか ? 小 さい頃から、一一一口葉ではどんなことをして遊びましたか ? 小さい時はみなさんは、しりとりとかですね、そうですねえ、言葉遊びとしては、数え歌 もそ、つでしようし、その類のところで、わりと止まっていたり、もう少し、なぞなぞなんか をですね、たくさん、小さい時からしていると思います。で、言葉の遊びの中に、「回文」と いうのがあります。回文っていうのは、上から読んでも下から読んでも同じになるというで すね、たとえば「にわのわに」というのは回文ですね。 我々の先輩で、立川談志師匠がいらっしゃいますが、私たちはよく、「だんしがしんだ」と 言うてます。これは上から読んでも下から読んでも、「だんしがしんだ」なのです。私の、住 んでます神戸の家の近所に、「かしま」さんていう、歯医者さんがあります。そこの看板は 142
古典の中にべースがある 落語には、そういう、「へえつ」って思うような発想がたくさんありまして、例えば「あた ま山」という話。ある男が、さくらんほの実を種のまま飲み込んでしまいまして、次の春に なりますと、頭のてつべんから、ブツッとなんか出てきます。あれ ? と思ってると、それ がどんどんどんどん大きくなってまいりまして、頭の上で桜の木が満開になるんです。桜が 満開ですから、人が寄りまして、頭の上で宴会を始める。飲めや歌えで、なかには野球拳し たり、もどすやつがいたりして、そいつの頭にいろんなものがかかりますから、ノイローゼ になりまして、この木さえなければというんで、この木を抜いてしまうんですね。 界抜いてしまうと、ここに大きな穴があきますから、表歩いてたら雨が降ってきまして、こ のこに水が溜まりまして、大きな池ができます。そこに魚が住み始めまして、今度は釣り堀や 古ちゅうんでいろんなやつが釣りをし始めるんですよ。ときには針を鼻に引っかけられたり、 で目に引っかけられたりして、この男はもうこんな体になってしまって、ショックで生きてい そけない、生きてても面白くないというんで、この池に身を投げて死んでしまう。 講ええ ? すごいですよね。そんな発想がよくできるもんだと思います。これは「あたま山」 第っていう話です。実はこの話と同じような話が、ヨーロッパの、一回目の講義で言いました幻
第一講 それではみな¥、し、試験 A' 、ぐ 第ニ講 どうです、笑いの奧は架いで ( よう。 第三講 では、総論と ( 1 、笑いの効用につい 1 考え 1 みま ( よう。 第四講 では、具体的に、笑いの効用考察 ( 1 みま ( よ 第五講 です発想によろ笑い」、これい大事なしで 1 、プー・ます 0 1 刀
第五講ですが、「発想による笑い」・ っー ッ印かついたような状態になっています。これを動か しましよ、つ。これをこちらへ、これをこちらへ移動さ せればよいのです。それを上から見た図を書きますと、 こ、ついうふうになっているはずです ( 上図 ) 。それを縦 にすとーんと切れば、あっとい、つまに八個になるじゃ ないですか。 どうでか。今の皆さんの心の中に、あっ、という、 、いの間隙をつかれたとい、つか、そ、つい、つ思いかしませ んでしたか。あ、そうだったんだと、心の隙間をふつ と突かれる、こ、つい、つことって、けっこ、つ笑いにつな かるような気がいたします。 これを見せると、そうしないで、ケーキを重ねては どうですかという意見もありました。わかりますね。 ケーキを四段重ねにして、それでずばっと切れば、八 個に分かれます。しかしそれではイチゴがぐしゃぐし やになりますな、と言いますと、そんなことはかまい ません、と、ある人はおっしゃいました。そういうふ 135