67 笑いは人生の ~ 瀬戸大橋 ~ て、カみが出てるんですね。でも、なかなか頑張ってやってはる。ところが、そのすぐ後ろ でオレンジカードなんかを売ったりしてるでしよう。 「オリジナルのオレンジカード、白い富士山をバックに、前を走る新幹線。二階建て新幹 線。旅の記念に、贈り物に、大好評をいただいております。ぜひお買い求めください いう必要ないちゅうのや。 ( 笑 ) 大好評やったら、 まあ、小銭かないときは便利なんでしようけど、それを買うたら安うなるのかなと思うた ら、ちょっとも安、つなっとらん。なかにはオレンジカードの意味がぜんぜんわかってないお ばはんもおってね。あれ持ってキオスク行って、ミカン買うたおばちゃんもおんのやからね え。 ( 笑 ) それから「駆け込み乗車は危険ですからおやめくださいてなことをよくいうてます。け ど、こっちは間にムロ、つ思、ったら走りますかな。あれ、ばっと乗ったときに、プシュッと閉 まったらいいんですけど、乗り遅れると大概はヘーいと笑いよる。なかには、ばあっと行っ てプシュッと閉まると、知らんふりして「この電車やないな」 ( 笑 ) こまかすんやね、あないしてね。 あれ、何やろな。皆、、 そうかて、私も乗り遅れるときがあります。乗ろう思ったらピシャッと閉まって格好悪い から、ヘーいと笑おう思うたら、私が笑う前に、乗ってる客が私を見て笑う。 ( 笑 ) わろ 私かて一遍くらい笑うたろ思って待っとったら、向こうからヤクザが来よったんですよ。 ハンチ。ハーマあてた、あの自由業の方ですね、そのヤッちゃんが、乗ろう思ったらピシャッ
ろ 7 無知に甘えていることが恥すかしい ところが、衛星で見てりやそんなものわかるわけですよ。で、アメリカの衛星が「あ、ウ ンチ出てるよ [ と、こういった ( 笑 ) 。それでみーんなバレてしまったんですねえ。それ以 降、いろんなところで原発反対のムープメントが盛り上がってきたんですけども、あれもふ つうのデモゃなしに、ごろーんと寝転んでるだけですね。それで「ダイイング」というのを やってる、つまり「死んだーいうのをやってるわけです。そこへ警察が来て「移動しなさ い、かなんかいうと、こちら側は「死んでる人に声かけないで」 ( 笑 ) 、なんやわけがわから なくなってきますけども、あれはまったく新しい形態のデモではないかと思います。 私が学生のころは、学園紛争の盛りでございまして、関大なんかもすごかったんですけど も、各セクトかありましてね。も、つファッションだけでデモ行進をするというような時代 で、みんなヘルメットをかぶって「ワッショイ、アンポ反対 ! 」とやっとったんです。その 扇子を内ポケットに入れまして、いつもへらへら 1 、ヘらへらーって笑うて歩いておっ たんが、この私です。 ( 笑 ) 上方落語学生連盟というのがありまして、私はそこの理事をやっておりましたですが、そ の関係でソフトボール大会を神戸大学でやったことがあるんです。一応、クラブの団旗があ りますから、私、それ持って神戸大学の坂をこう上がって行きました。そうすると、ヘル メットに「中核」と書いた連中が、ゲバ棒もってうわーっと取り囲みよったんです ( 笑 ) 。 「おまえら、何や」いうてね。「いや、あの、私ら落研でんねんー「落研 ? 何や、落研がー 「ええ、その、ソフトボール大会」「この大事なときに、そんなアホなことするな」て、いわ
無知に甘えていることが恥ずかしい て「芸人をド突くための杖だ」と、もつばらいわれておりますね。 ( 笑 ) この人を扱った笑いのネタもたくさんありまして、例えば『道頓堀川』という話がござい ます。どういう話かといいますと、皆さんは「なんば花月」というのを知ってますか、日曜 の朝早くなんか行ってごらんなさい、若い人がお婆さんを連れて来ては次々と捨てていく ( 笑 ) 、だから、もう会場中、おばんばっかりかドハハノー ッと、こう並んでおりますけども ね。その「なんば花月ーから、会長がちょうど道頓堀の橋の上までやってまいりましたとき いうて、す に、ふっと川面を見ると、たーくさん油が浮いとる。それを見て「よっしゃー ぐ緊急会議を開きます。「道頓堀川の底には油田があるから、明日から掘れ ! 」 ( 笑 ) で、芸人たちが朝から晩まで働かされる話でございますけども、なんば掘っても掘っても 油なんか出てこない。芸能界いうのは、 " 水もの ~ ですから、袖とはなかなか馴染みにく、 ところがあるわけで ( 笑 ) 、あほらしいなて思うて上流のほうを見ると、てんぶら屋のおっ さんが油を川にほっとった ( 笑 ) 、それが話のサゲでございます。 今度、この会長が「なんばグランド花月」、略してちゅうのをつくりました。私ら は「なんば・ゼニ稼いだら・気イ済むねんーの略やろと ( 笑 ) 、こういっておるわけですけ し、つ どもね。なんばグランド花月、一遍、行ってください、地下が「デッセ・ジェニー ディスコになってます。さんまちゃんが名前をつけまして、ほんま「ゼニ、でっせ」、これ をひっくり返しただけのことですねえ。 ( 笑 ) そやけど、最近のディスコは布いですね。私も、六本木の「トユウリアーはしよっちゅう
169 眼光紙背で世の中を読む 江戸時代の子供の遊びの中にも、この大仏さんが使われてまして、「大仏さんと大仏殿と どっちか大きい ? ちゅうなことをよ、ついうて遊んだ。 はい、君イ、大仏さんと大仏殿、どっちが大きいですか ? 学生大仏殿 ! 大仏さんの上に大仏殿がありますから。 せやな、大仏殿があるさかい、大仏さんがあんのやもんな。そやから、大仏殿のほうが大 、。ビー、残念でしたア、大仏さんのほうが大きい。あれは座ってるからですウ、立った ら大仏さんのほうが大きい。 ( 笑 ) そんな遊びがな、江戸時代からもうあったんですよ。昔の人も私たちと似たようなことい うとるんだ、すごいねえ。そないな意味では、人間ちゅうのはほとんど進歩してないなてい う気イもするんですが、状況が違うてるだけなんやね。 えー、その奈良の大仏さんがでけましたのが、七五二年ですね。それから何遍も造り直さ れてまして、元禄五年やから江戸時代やね、そのころに開眼供養をしたわけですね。ほで、 ついこの間、昭和の大修理では、屋根瓦が一新された。これに五十億円ぐらいかかったてい われてます。 この大仏さんを扱ったお話というのが、ちゃんと落語のほうにもありましてね。大仏さん の法要をせにやいかんいうときに : : : 大仏さんて、こう。ハンチパーマあてたはるやんか ( 笑 ) 、あれは自然パンチバーマですけども、お目元がまことに優しい、そういうお顔をな さってますねつ。ところがね、法要をせにやいかんいうときに、ばっと見てみると、目工が
そんでチーンて、こうドアが開いたら「ところでな」いうて、話の続きをやったりして る。 ( 笑 ) 私がよく高座で使ってる話ですけども、以前、駅員さんがホームから落ちたことがありま さんのみや してね。三宮の駅の狭いとこで、駅員さん同士が世間話をしていて、ばあんと、こないし て下へ落ちたんです。ほんなん、電車は来てへんから、我はないのやけど、ああいうと 日」 0 0 、ン きっておかしいね、人て 、と上がって来て、エへへと笑うてはるねん。失敗をごまか そうとして笑うんです、痛いやろにねえ。 ( 笑 ) 私、いつも人間いうのを冷静に観察してますから、けったいやなあ思って見てたんです が、そしたら、電車が近づくと、その人がマイク握って「危険ですから、白線まで下がって くださいー ( 笑 ) 落ちた人がいうてんねん、説得力あるでしよ。 駅員のアナウンスも、阪急、阪神、南海、とそれぞれ雰囲気が違いますけども、京阪 電車ちゅうのは何であないムード出してしゃべるんでしようね。あれ、裏声やねん、淀屋 橋イ、ゲイヾ ノ 1 に来てるのかいな思うたわ。 ( 笑 ) 国鉄も民営になって、に変わりましたね。おかげで、長島ジュニア ・ ) のこと を、長島ジェイアールというた、とんでもないやつもおりましたけども、 ( 笑 ) こののアナウンスが、またものすごくおかしい。民間になって一所懸命やろう思う
118 ね、それがぜんぶ盗られてしまいまして、一枚だけ持ってた落語用の着物、これもなくなっ てしまいました。残っていたのはアントニオ猪木の写真集と、私の写真集 ( 笑 ) 、しかも私 の顔には足形がついていたという、まことけしからん泥棒でございまして ( 笑 ) 。「私の絵え を踏むな」て思うたんですが、楽珍が「師匠、そりや、やつばり泥棒もいらんもんはわかっ てますで」て。 ( 笑 ) もうなんちゅうやっちや思うて、一度は破門にしてやろうかと考えましたですか、いうて ることがあまり正しいんでまだ置いとります。 ( 笑 ) ( 一番前の学生一一人に オイ ! 君ら、さっきから何してんねン。 こういう時に写真撮るな、なんちゅうやっちやほんまに、どうせよその学生やろ。 ものみゆさん また、物見遊山で来よったんやろけど、君ら、字いが読めへんのか。「履修届を出してる 人が前十列に座りなさいーて書いてあったやろ。なのに一番前に来たんは、カメラに自信が なかったんと、僕の唾を体で受けたいと思うたからか、べっぺっぺつ。 ( 笑 ) からだ うわっ、みんな、い まの見た僕がべっぺったら、こいつら身体に塗っとんねんで ( 笑 ) 。けったいなやっちゃな、オレは「聖飢魔Ⅱーか。 ( 笑 ) ほんまに、きようは危ないのかうろうろする日いやなあ。 ( 笑 ) 大体、きようは電車の中から危なかったんよ。もう満員やし、そこにス 1 ッびしっと着た おっさんがおって、これがすごいのよ。大つきな声でしゃべってはるから、最初、友だちと
はった。 ( 笑 ) けど、まだ高いなあ。大仏さんがそこで立ち上がってタップダンスを踊るとか ( 笑 ) 、仕 切りするとかな、何かすりや、そりゃあ二千五百円でもかまへんよ。ほで、駐車場代金も最 初は三千円やったんよ。三人家族で行ってみなはれ、拝観するだけで一万円近くになんのや し、車置いといたら三千円やもん、これ困るがなあ。 ほなら、近所の農家の人、考えたがな。田んほの米つくってない休耕地を駐車場にして、 「うちは千五百円でええよ」てやりよった。ほしたら、また安うしやはった。 ( 笑 ) というわけで、私、大仏さんのイベントに行ったんですけども、そのときおもろいなあて 思うたのはね、町内の人も来たはるでしよ。その人たちがみんな「文珍さん、大仏さん見て きはりましたか」て、こう聞くんです。ふつう、お寺さん行くときには「お参りになりまし たか」て尋ねるもんですけどね、「見てきはりましたか」ていう質問しかこないんですね。 これ、奈良の大仏さんでもそうでつけど、昔から大仏さんいうのはあんまり拝まれてるて いう感じではないですねえ。みなさんも修学旅行なんかで行ったと思いますが、大仏さん見 て一所懸命拝んでる人は少のうてね、「おほう、うほほう、大きいなあ。こりや、鼻の穴 か、通ろうか」て。 ( 笑 ) たしかいは「うはあ、おほう」いうただけで帰ってしまうというのが、大仏さんなんやね んな。せやから、江戸時弋の Ⅱ卯こも「大仏は見るものにして尊ばず」いうのがあるくらい でね、昔から尊ぶとか敬うというほどの雰囲気ではなかったんですねえ。
208 で、モモコいうのは、なかなかやんちゃなんですけども、西成区の玉出の出身なんです ね。玉出小学校ていうのがあるんですが、そこんとこの近所に、うちの師匠の桂小文枝が住 んでましてね、昔、私も三年ほどずーっと弟子修業をしておったんです。せやから、その玉 小の前をいつつも通る。ほで、ばちばちテレビに出始めるようになると、もう子供かうるそ うてかなわん。「ぎやー、ぶちとった ( 文珍通った ) 。、 ぶちとった、ぎやー」いいよるわけです ね。その「ぶちとった」というとったやつが、今のモモコやて。 ( 笑 ) ひも あのコ、おもろいんですよ。ある日、新しいスニーカー買うたんですが、あの紐をくくる タイプのやつって、一回ずつほどいたり結んだりすんのが邪魔くさいやんか。一遍履いて表 へばーっと出てまうとね、「ああ、忘れもんしたあー思うて家に帰ってきて、こう物を取り に行くときに、「うーん、靴まだそんなん汚れてないし、紐ほどくのめんどうやな、このま ま上がったろ」いうてね、靴の裏が床につかんように、足を極端にこないして、こないして ェッジ立てて歩くやんか。 ( 笑 ) ほで、モモコも「だれも居らへんし、かまへんわ」て、そーっと上がって行ったんやて。 わからへんわ思うてね。ほな、二階から何や音がすんのやて。「いやア、だれかおるな」て 思うたら、お母はんがね、二階からプーツ履いて下りてきた。 ( 笑 ) 昔のプーツて、ファスナ ] ゃないやつがあんねん。紐、こんなかけるやつがあんのよ。あ れ、まいったなあ。女のコとどっか行ってね、はよう出たいときてあるでしよ。「はよ、行 いうて。あれ、くくってるとき、も くでえ」いうてんのに、「ちょっと待って。ちょっと お
1 ろ 8 考える。あいつは大きな体しとって、あの体重にみんな負けてるんやから、こっちもマワシ の間に重りをつけたらどやろちゅうんで、やるんですね。けど、重りつけて「はつけよい、 のこった」ていうたとたんに、重いから前へそのままコテンとこけて負けてしまう。 ( 笑 ) それやったら、体中にサンオイルをべとべとに塗っといたら、むこうがぶあっときたと き、つるんと滑るやろ、これはええ手やでいうてね、ぶわっとやった。ほな、うまいこと いって、小錦がつるーんと滑ったんですが、その勢いで腹にぼーんて飛ばされて負けてもう たりですね。 ( 笑 ) 体中に般若、い経を書くちゅう方法も考えた。お経を体中に、でえ】っとこう書く、あの 、、・日甲よクリス 『耳なし芳一』みたいなもんですなっ。ほんで、効果あるかなて思うたら チャンやったからわからなんだ。 ( 笑 ) あと、ト錦は兄弟が多いですからね、「貧乏ーと呼んで、精神的にやつつけたろいうこと にして「おまえ、お兄ちゃんのお古着てたやろー ( 笑 ) 、これを、仕切ってる最中にいうんで すき すね。ほな、むこうもびっとびつくりするやろから、その隙をねらってやろうとかねえ。ま あ、いろいろ考えるんですが、次から次と失敗してまうんです。 それから、小錦は薬師丸ひろ子ちゃんのファンなんですね。ほな、小錦が仕切ってるとき に、相手の力士の股の間からひろ子ちゃんが見えてですね、そのときに彼女にひやっとピー スのサインでもさしたらどやろか。そんで、小錦がへなへなとなったとこを、どーんとド突 いたら勝てんのんちゃうかて、これも考えてやってみるんですが、よけいに元気出して負け
110 それと同じようなことを吉本もやろうとしたことがありましてね。お日いさんを一日に三 回ぐらい上げるわけです。私、どうして疲れんのかなあて思うたら、寝てなかったという、 そんなことがあったりしました。 ( 笑 ) えー、話は変わりますけど、落語の中に『皿屋敷』いうお噺がございましてね。これは 知ってると思いますけども、お菊さんというのが出てまいります。彼女はあるお屋敷に奉公 してはるんですが、ここの殿さんが彼女に惚れとったんでございますね。けど、お菊さんは 、。ほんで、もうかわいさ余って贈さ百倍、家宝の十枚の なかなか「うんーというてくれなし お皿が一枚足らんというのを口実に、すごいせつかんをいたします。縄でしばって、水をか けるわ、殴るわ蹴るわ、最後は井戸の上に括りつけてびしつびしっと、もうごっこみた いですね。 ( 笑 ) ついに殿さんが刀でずばーっとお菊さんを袈裟がけにいたしまして、井戸の中にどほん と。ほいで、お菊さんのほうは無念じゃというので、夜な夜な幽霊になって出て、足らんお : 八枚い、つとこ士小で聞 皿を数える。そのお菊さんの幽霊を見たときは、彼女が一枚、一一枚 : ・ いうとこまでぜんぶ聞いてし いて、ざあーっと逃げたらええんですが「九枚、うらめし 5 まうとですね、とりつかれて死んでしまうちゅうことになっとるんですね。 そいで、ある若い衆たちが五、六人集まって「幽霊見よかーちゅうことで出かけて行くん あぜみち ですがね。真っ暗な畦道みたいなとこを歩いていきますから、「一番後ろにおると、何やひ たひた足音が聞こえるような気がすんねんー「そういうときは、お先にどうそというたらえ はなし