鳥類 - みる会図書館


検索対象: 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上
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1. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

362 て好まれる「ハープ (herp) 」という非公式なグレード名がある。 ーベトロジー (Herpetology) というのは、爬虫類 ( 鳥類を除く ) と両生類の研究のことである。 ープとはハーベトロジストが 研究する動物というだけの意味の珍しい種類の単語で、動物の定義のしかたとしてはかなりまずい ものである。他の名前で唯一近いものは、聖書に出てくる「這うもの」である。 もう一つのグレード名の例は魚類である。「魚類」には、サメ類、絶滅したさまざまな化石動物、 硬骨魚類 ( マスやスズキなど ) およびシーラカンス類が含まれる。しかしマスは、サメ類に対する よりは、人間に対してのほうが近い親戚である ( そしてシーラカンスのほうがマスよりも人間にも っと近い親戚である ) 。したがって「魚類」は、人類 ( およびすべての哺乳類、鳥類、および両生 類 ) を排除しているがゆえに分岐群ではない。魚類は、魚のように見える動物を総称するグレード なのである。グレードの用語法を厳密に規定することは多かれ少なかれ不可能である。魚竜とイル 力は魚類のように見える。そして食べればきっと魚のような味がすることだろうが、彼らはけっし て魚類という「グレード」のメンバーに数えられない。なぜなら、彼らは魚類でなかった祖先から 魚らしいものに逆戻りしたからである。 もしあなたが、 共通の出発点から複数の系列が平行的に一つの方向に向かって前進的に行進して いくのが進化だと強く信じているのなら、グレードによる命名法は、あなたにとってはうまくいく。 たとえば、あなたが、 類縁のある多数の系統が、それぞれ独立に両生類状態から爬虫類状態を経て、 哺乳類状態へと平行に進化していくと考えているのならば、哺乳類グレードに至る途中で爬虫類グ レードを通過するという言い方ができるだろう。この並列行進に似たようなことが実際に起こって いたのかもしれない。それは、尊敬する脊椎動物古生物学者ハロルド・ピュージーから、私自身が 教え込まれた考えである。私はこの考えが大好きだが、一般的に自明な事柄として受け人れるよう

2. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

名 モアは消え去り、もういないー オ マ の エピオルニス類とモア類 ( しかし、肉食性のフォロラコス類も他のさまざまな絶滅した飛べない巨 ン 鳥もそうではない ) は走鳥類で、この古い鳥類グループには、現在では、南アメリカのレア、オースラ ニューギニアとオーストラリアのヒクイドリ、ニュージーランドのキーウイ、一 トラリアのエミュ そしてかってはアジアにふつうに見られヨーロッパにもいたが現在ではアフリカとアラプ地方に限定 されているダチョウが含まれる。 私は自然淘汰の力が気に人っており、走鳥類が、〈ドードーの物語〉のメッセージを裏づけるよう に、その飛べないという特徴を世界のさまざまな地域で独立に進化させたのだと報告できれば大いに 満足できたことだろう。言い換えると、走鳥類が、異なった場所における平行的な圧力によって表面 的に類似するようにつき動かされた人為的な分類群だと言いたいところなのである。しかし、残念な がらそうではない。私がこれからエピオルニスについて語ろうとする真の走鳥類の物語は、非常に違 ったものである。そして、最終的には、よりいっそう魅力的であることが判明するかもしれないこと を述べておかなければならない。〈エピオルニスの物語〉は、その〈エピローグ〉と合わせて、ゴン ドワナの物語、そして現在ではプレートテクトニクスと呼ばれる、大陸移動の物語をなしているので ある。 類 ヒクイドリ、レア、キーウイ、モア、そし 走鳥類は真の自然分類群である。ダチョウ、エミュー 蜥 てエピオルニスは、お互いどうしが、他のいかなる鳥類とよりも近い類縁関係にある。そして彼らの 6 共通の祖先も飛ぶことができなかった。おそらくは最初は、ゴンドワナ大陸沖のどこかとっくに忘れ プ去られた島に飛び渡った後、しかるべき〈ドードーの物語〉的な理由によって翼を失ったのであろう。 4

3. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

4 1 2 しかしそれは、まだ走鳥類が、現在の南半球の大陸や島でその子係が示しているような別々の姿に分 裂していく前のことだった。さらに、走鳥類が他の鳥類から分かれたのは極端なほど昔のことだった。 走鳥類は次に述べるような意味で本当に古いグループなのである。現生の鳥類は二つのグループに大 別できる。一方は走鳥類とシギダチョウ類 ( 飛ぶことができる南アメリカの一群の鳥類 ) である。も う一方は現生の残りすべての鳥類を一緒にしたものである。そこで、もしあなたが鳥なら、走鳥類 / シギダチョウ類かそれ以外の鳥類のどちらかということであり、この二つのカテゴリーへの分裂は、 現生の鳥類で知られる最も古い区分なのであを。 したがって、走鳥類は、同じように翼をもたない共通の祖先で結ばれた自然分類群なのである。こ のことは、すべての走鳥類の初期の祖先が空を飛んだことを否定するものではない。もちろん、彼ら は空を飛んだ。そうでなければ何のために、 ( 彼らの大部分は ) 痕跡的な翼をもつのか。しかし、現とけで 類たら と暁 スはた 在まで生き残っているすべての走鳥類の最も新しい共通祖先は、その子孫たちが今日見られるような鳥種か のるる てべす トルき さまざまな走鳥類のグループへと枝分かれしていくずっと以前に、その翼を短い切り株のような痕跡べ飛在 す ( 存 リト生 たリで 器官に退化させてしまっていた。これは、祖先が遠隔の島まで飛んで渡り、その後でそれぞれに翼をの類が 生鳥 , き。カ でるリ 力しメ 失っていったという聞き慣れた〈ドードーの物語〉を裏切るものである。走鳥類は、飛翔という利点、い はかで とてア をもっことなしに、現在の遠く離れた本拠地に到達したのである。どのようにして、彼らはそこにた由つん 理く含 ~ か・かて るいも 飛つけ どりついたのだろうか す、種 、見か ーレーし で一・か一に き側な 縁拠世 彼らは歩いたのだ。道中ずっし。どうしてそんなことができたのか。これこそまさに、〈エピオル 書外べ 近証新 との始 ニスの物語〉の重要なポイントである。そこには海はなかった。渡る必要がなかったのだ。現在私た縁く 類石ら の類なる鳥化か ちが別々の大陸として知っているものは一つに合体していて、この大きな飛べない鳥は足をぬらすここのであ走う世 一 8 となく歩いていけたのだ。

4. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

361 哺乳類型爬虫類 ささかうんざ 哺乳類型爬虫類に向かう前に、い りするような用語法に直面する。爬虫類とか哺乳 類といった用語は、「クレード ( 分岐群 ) 」あるい は「グレード ( 分類階級 ) 」と呼ぶことができる ( 両者は互いに相容れないものではない ) 。分岐群 とは、一つの祖先とそのすべての子孫からなる一 群の動物のことである。「鳥類」は正しい分岐群 を構成している。従来理解されてきた意味での 「爬虫類」は正しい分岐群を構成していないな ぜなら、鳥類を排除しているからである。その結 果、生物学者は爬虫類を「側系統的」であると呼 ぶ。一部の爬虫類 ( たとえばワニ類 ) は、他の爬 虫類 ( カメ類 ) より爬虫類でないもの ( 鳥類 ) に 近い親戚である。爬虫類のすべてが何か共通のも のをもっているかぎりにおいて、彼らは一つの クレード 分岐群ではなく一つの分類階級のメンバーなので ある。グレードとは、前進的と認められるような 一つの進化的趨勢のなかで類似の段階に到達した 一群の動物のことである。 しかし、もう一つ、米国の動物学者たちによっ すうせい を = カンブリア紀 0 = オルドビス紀 S = シルル紀 D = テポン紀 C = 石炭紀 白亜紀末 P = ベルム紀 T = 三畳紀 」 = ジュラ紀 K = 白亜紀 E = パレオジン N = ネオジン ベルム紀末 0 7 オルドヒス紀末 テポン紀後期 ( 0 0 一 0 っ ) 4 海生生物の属の絶滅率 ( % ) 三畳紀後期 0 2 0 0 0 0 200 300 地質学的時間 ( 単位 : 1 OO 万年前 ) 顕世代を通じての海生生物の属数で見た絶滅率 Sepkoski [ 260 ] より改変。 100 400 500

5. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

428 ランデヴー ランデヴーの重要里程標からわずか三〇〇〇万年ほ どしかさかのぼらない三億四〇〇〇万年前、石炭紀初期 に、私たち羊膜類 ( 哺乳類と爬虫類および鳥類を統合す る名前 ) は、ランデヴー地点Ⅳにおいて、両生類たちに 出会う。下の地球の復元図は、当時の世界がおそらくそ : うだったと思われる世界をおおまかに示したものである。 南極の氷冠が形成され始めており、赤道周辺にはヒカゲ ノカズラ類の熱帯森林があり、気候はたぶん現在の気候 に似たものであった。ただし、もちろん、動物相と植物 相は非常に異なっていた。 私たちの一億七五〇〇万代前あたりの祖父母にあたる コンセスターには、現存するすべての四肢類 ( ( e ( rapod ) の祖先である。四肢類は四本足の動物という意味である。 四本足で歩かない人類は逸脱した四肢類であるが、これ 両生類 を′シベリア ラ ービア平 イン 南慢大陸 南アメリカ 沈み込み帯 ーー△ーー ( 三角印は沈み込みの方向 を示す ) およそ 3 億 5600 万年前の石炭紀初期の地球 [ 257 ] 古大陸ゴンドワナが南極に位置しているのに対して、パンゲアを形成することになった一連の衝突の一部 分として、ローラシア ( 時にはユーラメリカとも呼はれる ) がそれに近づき、最終的にあいだにあった海 を閉じようとしている。こうしたプレート運動による地殻変動は結果として、アパラチア山脈とパリスカ ン山脈を形成する造山運動 (0 「 ogeny) の時代をもたらした。南極には氷冠が形成され始めており、石炭 紀を通じて成長していく。一方、高緯度地域の陸塊は温暖で、植物が繁茂し、それらは崩壊した後、最終 的に石炭層を形成した。 現在の陸塊

6. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

34 〇 (therians) と呼ばれるが、北方のポレオスフェニダンの子係である。後に南半球、およびゴンドワ ナの分裂に結びつけられるこれらの獣類の動物たち ( たとえばアフリカのアフリカ獣類、南アメリカ およびオーストラリアの有袋類 ) は、北半球で発祥してずっと後に南に移動してゴンドワナ大陸に人 ったオーストラロスフェニダンであった。 ハリモグラ類は乾燥地にすみ、アリとシロアリを食べている さて単孔類そのものに話を移そう。 カモノハシ。。 よまとんどを水中で暮らし、泥のなかの小さな無脊椎動物を食べている。その「くちばし」 は本当にカモのくちばしとよく似ている。ハリモグラ類のくちばしは、もっと円筒状である。ついで ノリモグラ類とカモノハシ類の共通の祖先は、化 ながら、いささか驚くべきことに分子的な証拠は、、 石カモノハシであるオブドウロドンよりも最近まで生きていたことを示唆している。オブドウロドン は、カモに似たくちばしの内部に歯をもっている点を除けば、基本的には現生のカモノハシと同じよ うな姿で同じような暮らしをしていた。このことは、水から出たハリモグラ類がこの二〇〇〇万年の うちに変化し、指のあいだの水かきを失い、カモに似たくちばしを細くして、シロアリを探るための 管にし、防御的なトゲを発達させたことを意味する。 単孔類が爬虫類および鳥類と似ている一つの点が、彼らの名前の由来となっている。単孔類 (Monotremes) はギリシャ語で単一の穴を意味する。爬虫類や鳥類と同じく、肛門、輸尿管、およ そうはいせつこう び生殖管が、単一の共通の開口部、すなわち総排泄腔に開いている。そして他の哺乳類のように顕微 鏡でしか見えない小さな卵ではなく、胎児が孵化するまでの栄養分を含み、強靱な皮状の殻に包まれ た二センチメートルの卵が産み落とされ、胎児は爬虫類や鳥類と同じように、その「くちばし」の先 端についた卵歯を使って、殻から最終的に孵化するのである。 単孔類は他にも、肩の近くにある鎖骨間骨のような典型的な爬虫類的特徴をもっている。これは爬

7. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

錐体を獲得し直したのである。哺乳類は違うが、魚類や爬虫類のような他の脊椎動物の大部分は、三 種類の錐体 ( 三色系 ) ないし四種類の錐体 ( 四色系 ) による色覚をもっており、鳥類とカメ類はもっ と洗練された色覚をもっている。私たちはここで、新世界ザルにおいて特別な状況に出会うことにな り、そしてすぐに、ホ工ザルにおいて、さらに特別な状況に出会うことになる。 興味深いことに、オーストラリアの有袋類は、大部分の哺乳類と違って、三色系のすぐれた色覚を もっという証拠がある。そのことをフクロミッスイとスミントプシスで見つけた ( ワラビーでも見つ かっている ) キャサリン・アレセらは、オーストラリアの ( アメリカのものは違う ) 有袋類が、他の 哺乳類は失ったのに、爬虫類の祖先の視覚色素を保持しているのではないかと示唆した。乳類 は、たとえ色覚が は、おそらく脊椎動物のなかで最も貧軒・な色覚し・れしっていない。大部 あっても、色覚障害の人と嘘し程度いしのでしかない。特筆すべき例外は壷長類一られ彼らが他 して偶然ではない。 のどのグループの哺乳類よりも派手な色を性的なディスプレイに使うのは、 ムたちの近縁者たちを調べることによって、おそらくそれを一度も失うことがなか 哺乳類のよ、 と違って、私たち霊長類が、三色系の色覚を爬虫類の祖先からそのま ったオーストラリアの ではなく、別々に二度 ) 、の・だど言うことができる 見した ( そ ま受け継いだのではなく 、二度目新世ホ工ザルぎた・のだが、ただし、新世界ザル全 一度目。日世界ザル 体にそうだったわけではない。ホ工ザルの色覚は類人猿の色覚と似ているが、それが独立した起源を サ 界 もっということで異なっている。 世 新 三色系が新世界ザルと旧世界ザルで独立して進化しなければならないほど、すぐれた色覚はなぜ重 要なのだろう。人気の高い説は、果実を食べることに対する適応ではないかというものである。緑が テ支配する森の世界で、果実はその色彩によって際だっ。このことは、おそらく偶然ではないだろう。

8. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

38 / ランデヴー 16 蜥形類 ( 暴走 ) 過程に人って増幅され、両者はがっちりと組み合わされた状態になって、ますます一つの方 向に向かってさらに突き進むことになる。この一つの方向が選ばれるべき圧倒的に強い理由は存在し すうせい ない。たまたま、進化的な趨勢が始まった方向がそちらだったというだけのことなのだ。クジャクの 先祖の雌がより大きな扇を好むという方向に一歩を踏みだしただけなのだ。それだけで、性淘汰の爆 発的なエンジンには十分なのである。それは始動し、進化的な基準からして非常に短期間に、雄はよ り大きなより玉虫色に輝く扇を誇一小するようになってゆき、雌は飽くことを知らなかった。 フウチョウ類のすべての種、他の多くの鳥類、そして魚類、カエル、甲虫、トカゲは、それぞれの 進化的な方向、どれも派手な色彩や奇妙な形状に向かって飛び立っていった。しかし、それぞれ異な った派手な色彩、異なった奇妙な形状に向かって。ここで私たちにとって間題なのは、適切な数学理 論に従えば、性淘汰が進化を恣意的な方向に出発させるようにつき動かし、有用性を失うところまで 事態を過剰に押し進めてしまいがちだということである。人類進化に関する数章で提起したのは、脳 の突然の膨張がまさにそのようなものに見えはしないかという示唆であった。同じことは体毛の突然 の喪失についても、突然二足歩行に踏みだしたことについてさえ、言える。 ダーウインの『人間の由来』は大部分が性淘汰にあてられている。人間以外の動物における性淘汰 についての彼の長大な総説は、ヒトという種の最近の進化の支配的な要因として、性淘汰を推奨する ための前置きになっている。人間が裸であることについては、有用性という理由で体毛を喪失した可 能性を退ける ( 現代のダーウイン主義者が気楽に考えているのよりもっと屈託なく ) ことから始めて いる。性淘汰への彼の信念は、すべての人種において、その人種がどれだけ毛深かろうとどれだけ毛 が少なかろうと、男よりも女のほうが毛深くない傾向があるという観察によって強められた。ダウ インは、人類の祖先が毛深い女を魅力的でないとみなしたのだと信じた。何世代にもわたる男たちが

9. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

1 9 / ランテウー 4 テナガサル類 とめることかできるからである もう一つ注意してしかるべき理由として、 ZZ< の広範な領域で、時々、比較的類縁の遠い動物の あいだで謎の一致が見られる。鳥類が、哺乳類とよりも、カメ、トカゲ、ヘビやワニとより近い類縁 関係にあることを誰も疑ったりはしない ( ランデヴー田を参照 ) 。にもかかわらず、鳥類と哺乳類の 塩基配列は、その遠い類縁関係から予想されるよりもずっと大ぎな類似をもっている。どちら もタンパク質を指定しない 2Z< のなかに過剰なー対合をもっている。ー対合はー対合 。より強固に結合した ZZ< を必要とするのかもし よりも化学的に強く、白血動物・ ( 鳥類と哺乳 れない。理由はどうであ、 ' 、・このー (-) 偏向をもって、すべての温血動物のあいだで密接な類縁関係 があると確信させるのを許さないよう注意すべきである。 2Z< は生物分類学者にとってのユートピ アを約束するように思えるが、そのような危険性を承知していなければならない。ゲノムについては、 まだまだわかっていないことかたくさんあるのだ。 そこで、必要な注意を喚起したうえで、 2Z< にある情報をどうしたら利用できるのだろうか。魅 惑的なことに、書誌学者も、テキストの由来をたどるときに、進化生物学者と」に潺い使うのであ る。そして ( これ以上都合のよいことはないほどに ) 、最良の実例の一つがたまたま、『カンタベリー 物語』プロジェクトがやった仕事なのである。この国際的な書誌学者のシンジケートは、『カンタベ 丿ー物語』の八五の異本の歴史を跡づ " けるのに進化生物学的な手段を利用したのである。これらの大 ヨーサーの原典の復元にあたっ 昔の写本は印刷術。出現する以前に筆写されたものて失わオ て、その研究に最大の期待が寄せられている。と同じように、チョーサーのテキストは、何度 も繰り返される複写を通じて生き残ってきたもので、偶然に生じた変更が写本のなかにそのままにな ってきた。累積した相違点を綿密に数え上げていくことで、書誌学者たちは、複写の歴史、進化の系

10. 祖先の物語 : ドーキンスの生命史 上

406 めったに飛ぶことがないと指摘する。あたかも、このハトのサプグループ 全体が常習的に島に人植し、その飛翔力を失って大型化し、しだいにドー ドーに似ていくかのようである。ドードーそのものと、ロドリゲスドード ーはこの傾向を極端まで推し進めたのである。 〈ドードーの物語〉にどこかしら似たような話は、世界中の島々で繰り 返し起こってきた。ほとんどの場合、飛ぶことのできる種が数のうえで圧 倒している鳥類のさまざまな科の多くが、島嶼では飛べない種を進化させ てきた。モーリシャス島そのものに、大型の飛べないモーリシャスクイナ 力いたこれも今では絶滅してしまったが、時にドードーと混同されるこ とがあったかもしれない ロドリゲス島にもその近縁種のロドリゲスクイナがいた。クイナ類は、 転々と島へ飛び渡って飛べなくなるという〈ドードー物語〉に向いているように思われる。インド洋 の種に加えて、南大西洋のトリスタン・ダ・クーニヤにも飛べないクイナがいるし、太平洋諸島のほ とんどには、それぞれ飛べないクイナの固有種がいるーーあるいはいた。人間がハワイ諸島の鳥類相 を壊滅させる前。ー 」こよ、この諸島には一三種以上の飛べないクイナがいた。全世界で六〇種余りの現生 のクイナ類のうち四分の一以上が飛べない鳥であり、飛べないクイナ類はすべて島にすんでいる ( ニ ューギニアやニュージーランドのような大きな島も含めるとしたら ) 。ひょっとしたら、人類との接 触以来、熱帯太平洋諸島では一一〇〇種ほどが絶滅したのかもしれない モーリシャスにもまた、大型のオウムであるモーリシャスインコがいたが、これも絶滅した。この 冠羽のあるオウムはあまり飛ぶことができず、現在でも生きているニュージーランドのフクロウオウ ム ( 現地名カカボ ) と似たような生態的地位を占めていたのかもしれない ニュージーランドは、多 遠隔の島への侵入に理想的に適した鳥 ミノ / ヾト (Caloenas nicobarica)